ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 ブルジョワ伯爵は複数の愛人を有しており、それ専用の別荘を持つ。その別荘はエントランスから愛人達に与えられた個室に向かえる仕組みで、昔のシステムになぞらえて後宮と伯爵は呼んでいる。


番外 ブルジョワ伯爵の愛人達

 ブルジョワ後宮 エントランス

 

 イッシュ地方のある場所に、その建造物はあった。ブルジョワ後宮、伯爵が愛人達の為に建てた豪邸だ。エントランスからそれぞれの部屋へ行くことが出来る。そのエントランスでは、愛人達が伯爵の寵愛を受けようと待ち構えていることだろう。

 しかし、彼女達は皆伯爵を愛していない。愛しているのは伯爵の金だけだ。なんと寂しい人生だろうか。金が無ければ愛を得られないとは。

 伯爵は金が目当てと知らず、愛人達が自分を本気で愛してると信じてエントランスに入る。世間体を気にした結婚相手では味わえない、甘美な情事に伯爵は溺れていた。無論、妻に見つかればタチワキの海にポケモンの餌として細かく切り刻まれた上で沈められるのがオチだ。

 エントランスには複数の扉があり、それぞれが愛人の個室に繋がっている。

 「さあ来てくれ私の愛しい人達! 今日は頼みたいことがある」

 ブルジョワ伯爵が呼ぶも、誰も来ない。そもそもエントランスから呼び出すシステムもエントランスで待ってくれるシステムも無かったと、伯爵は思い出して部屋に通じる扉を開いた。

 選んだのは『ジャスミン』と刻印された扉。そこを開けると、賭博に使う遊戯台が並ぶ部屋に通じた。部屋の中央には真っ赤なシーツで彩られた天蓋付きベッドがある。

 「今日はジャスミンの気分だ。中々、間が縮まらず困るんだ」

 伯爵はベッドまで寄る。ベッドは天蓋から吊した薄いカーテンを閉めてあり、伯爵はきっとジャスミンなる人物が中で寝てると信じて疑わなかった。

 「おや?」

 しかし、ベッドには脱ぎ捨てられた衣服があるだけだ。赤いチャイナドレスに黒の長手袋とニーソックスは彼女の仕事着である。長手袋やソックスを彩る花の装飾は間違いなく、ジャスミンがオーダーメードしたものだ。

 「手紙?」

 その衣服には手紙が添えられていた。花柄が綺麗な封筒に便箋、それを彩る美しい漢語はジャスミンの直筆。

 『親愛なる伯爵様へ。私は仕事でしばらく戻りません。そんなの常常だから今更気にしないわよね? 申し訳程度にホウエン興行で着てた服を置いていくわ。ホウエンって暑くて、仕事が忙しくて着替えもままならないのよね。キンセツの郊外で育て屋夫婦の家に行ったけど、夫婦が親切にシャワーを貸してくれたから助かったわ。服は着替えたけど洗う時間無くて。夫婦のお孫さん、大学に行ってていないんですって。私も会いたいな、そのお孫さんのバシャーモとゴウカザル』

 「ふむ、まあいいだろう」

 ジャスミンの手紙には、最後にキスマークだけが残されていた。伯爵は今までボディタッチが限界だったジャスミンの汗が染み付いた服で、なんと満足してしまった。それだけ彼女はガードが厳しいのだ。

 手紙に書かれたバシャーモの漢語を見て、伯爵は誰かのバシャーモにヤグルマ開発のための重機を破壊された損害を思い出す。安物とはいえ、それなりの数を壊されたら痛い。

 「他の奴にするか。キャサリンは仕事でいないし」

 伯爵は諦めて他の部屋に向かう。エントランスに戻ると、レザーのライダースーツを着た女性と鉢合わせる。ピンクの髪を伸ばし、唇はどんなグロスよりもグロッシー。タイトなスーツで浮き出るボディラインは人間の肉体美を極めた彫刻の様だ。

 汗で輝く肌に、伯爵は見入られていた。女性が気恥ずかしそうに身体をよじると、ピッタリ合ったスーツがギチギチと音を立てる。

 「今夜はリリスにしよう。今決めた」

 「その前に汗流して来ますね」

 「ああ。仕事を頼みたい奴がいるから先に行ってなさい」

 女性、リリスは自分の部屋に向かう。彼女はよくバイクを乗り回している。伯爵は目的の扉に向かい、それを開く。

 扉の先は室内プールだ。優雅にネオラントが跳ね、南国の植物が生い茂る。

 「セイレン。いたか」

 伯爵は波の出るプールにペタンと座る水着姿の女性に声をかける。近くでトロピウスが彼女の身体を葉っぱの翼で扇ぐ。短い茶髪にハイビスカスの髪飾りを付け、同じくハイビスカスの模様が入った青いビキニを着ている。パレオが波に揺れる。

 トロピウスの果物を口にしながら、セイレンは伯爵を振り向く。

 「なにかしら?」

 「頼みたいことがある。タチワキコンビナートを潰して石油を奪ってほしい」

 伯爵は単刀直入に依頼する。セイレンは立ち上がり、トロピウスを従えて歩く。伯爵は彼女の一挙手一投足に魅了される。南国の香りを振り撒く美女というのは、都会では会えないものだ。肌が小麦色に焼けてれば完璧だと、伯爵はいつも思う。

 「わかった。その代わり終わったら、約束よ?」

 「わかってる」

 セイレンは伯爵に念押しし、屋内プールを去る。このブルジョワ後宮は複数の愛人がいるのだが、彼女達は争わない。伯爵を愛してるわけではないからだ。金目当てにしても、愛人全員を十分満足させる財産を伯爵は持ち合わせている。

 

 ヒウンシティ周辺 海上 豪華客船

 

 ヒウンシティの海上を、深夜に進む豪華客船があった。その中には巨大なカジノがあり、富豪達の欲望をさらに高める。

 「まったく、あのエロ親父は。あれで興奮するの? 臭いだけじゃない?」

 そのルーレット台に腰掛け、チップを弄ぶ女性がいた。ヤミカラスの濡れ羽を思わせる黒い髪を伸ばし、赤いチャイナドレスを纏う東洋系の美女だ。

 チャイナドレスは本来露出の高い衣服で、彼女は胸元が開いて深いスリットが両側に入ったものを着ている。しかし、腕に黒い長手袋を付け、脚を黒のニーソックスで包んでるため肌の露出が相対的に控えめになっている。

 「ベッド出来た?」

 ルーレットで遊ぶ富豪達にその美女、ジャスミンが聞く。脚を組み、両手の指を絡めて富豪達を見渡す。白い肌に黒のアクセントが入ることで、引き締まった印象を与える。薄手のソックスや手袋を透けて見える肌の色に、富豪達は生唾を呑む。流し目も色っぽい。富豪はいずれも初老の男性だ。

 「男なら、一点に賭けちゃいなさい」

 ジャスミンは艶やかな唇でチップをくわえ、富豪達を挑発する。富豪達は思い思いの場所に、1番高額なチップを山積みに一点賭けする。

 「そう。それでいいのよ」

 脚を伸ばし、そのままルーレット台から下りるジャスミン。ハイヒールを鳴らし、ルーレットに手をかける。細い指がルーレットの取っ手に絡まり、それを回す。銀の玉をルーレットへ落とし、結果を待つ。

 「残念」

 しかし、予想が的中した者はいない。チップをかき集めたジャスミンは、1人の富豪に目を向ける。そして彼に近づき、おもむろに膝に座る。

 「貴方が1番多く賭けてくれたわね。謝謝。男らしくて好きよ」

 首を抱きしめ、頬を擦り寄せる。富豪は戸惑いながらも嬉しそうな表情を見せた。こんな美女に上気した顔で、上目遣いになり見つめられたら男は堪らないだろう。彼女は化粧もファンデとチークを乗せ、口紅もリップを塗った程度の軽いもの。素材がいいのだ。

 「ああ、もしよかったら今夜部屋に……」

 「あ、火照ってきちゃったから夜風に当たって来るね」

 富豪が彼女を部屋に誘おうとするも、ジャスミンは上手くかわした。富豪は誰しも資産に反比例して孤独。一夜限りだとしても妖艶な美女との情事に溺れて紛らわせたいのだ。

 ジャスミンはカジノを通り抜ける。彼女が振り撒く甘い香りと美貌に誰しもが振り向く。

 「漂亮!」

 甲板に出たジャスミンはヒウンの夜景に感嘆した。ネオンが水面に映って揺れる。髪が夜風に靡き、同じく甲板で外の空気を吸いに来た人々を魅了する。

 大人っぽい普段の態度と、こうして素の面を見せた時の幼さがギャップとなり、より一層男を引き付ける。

 「ウインディ。一緒に風でも浴びましょ」

 ボールからウインディを出す。ジャスミンに良く懐いており、すぐに擦り寄って来る。

 「『ホウエンの舞姫』のおかげでショーも盛り上がるし、彼女達にはお礼をしないとね」

 ジャスミンはこの船旅の途中でスカウトしたコーディネーターとその弟にする謝礼を今から考えていた。




 トレーナーカード
 ギャンブラー ジャスミン
 手持ち
 ローブシン♂
 カイリキー♂
 コジョフー♀
 エンブオー♂
 ウインディ♂

 おとなのおねえさん キャサリン
 手持ち
 ムウマージ♀

 ビキニのおねえさん セイレン
 手持ち
 トロピウス♀
 マラカッチ♀
 マラカッチ♂
 ルンパッパ♂
 ルンパッパ♀
 ネオラント♀

 バイクのり リリス
 手持ち
 メタモン
 クロバット♀
 マタドガス♀
 ゾロアーク♀
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