ポケモントレーナー サトシ
言わずと知れた伝説的トレーナー。何気に次期フロンティアブレーン候補。10歳なのに14年近く旅をしてるのは内緒。
20.掴み取れ! 共闘のサトシとシンジ!
トバリシティ レイジの育て屋
トバリシティの郊外にシンジの兄、レイジが経営する育て屋があった。そこがリベレート団のクロスケに狙われたため、急遽シンジはシンオウに戻って来たのだ。
「で、なんでこんなにいるんだ?」
シンジは育て屋に来たメンツを見て呟いた。ジムリーダーのスモモはまだしも、何故サトシもいるのだと。
「いいじゃないか。味方は多い方がいいし」
「レイジさんのピンチだからな!」
レイジとサトシはあまりにタイプが似ている。だからこそ反発したわけなのだが。そもそもレイジとサトシの接点がシンジにわからなかった。接点が見えなくても関係がある、それがサトシなのだ。
「まあいい。いつものメンツと思いきや誰かが足りないのも気にはしない」
シンジは並んだサトシとタケシを見て、ヒカリが足りないことに気付く。彼女の代わりに来たというアーシェなる女性は、レイジに何の関係があるのかわからない。
「ヒカリくんはボクが無理矢理置いてきたのさ。恨むならボクを恨みなさい」
「置いてくる必要あったのか?」
「あのコンテストのリボンは彼女がグランドフェスティバルで優勝するのに必要なのさ。アッシュくんをパートナーにすればリボン獲得は間違いない」
仕方なく、サトシ達はヒカリに電話することにした。シンジもアッシュの名前が出たので、彼にライブキャスターをかけてみることにした。
「もしもし、俺だ」
『あ、シンジだ』
「大丈夫女が迷惑かけてないか?」
『何よその言い方!』
「かけてるな」
アッシュを押し退けたヒカリを見て、シンジは溜息をつく。サトシはシンジのライブキャスターを覗き込む。
「ヒカリ、こっちは俺達に任せてコンテスト頑張れよ!」
『コンテストは終わったわ。今から向かうとこなの。サトシ達も人手がいるでしょ?』
「仲間は多い方がいいもんな!」
後ほどヒカリが合流するらしい。面倒な仲間達が集まり、ますますシンジは溜息をつく。久々の実家なのにこれほど疲れることになろうとは。
「よし、みんなのポケモンを見せてくれ。体調を今のうちに確認しよう」
レイジが全員にポケモンを出させ、体調管理を行う。
「みんな出てこい!」
サトシが出したのはドタイトス、ムクホーク、グライオン、ゴウカザル、ブイゼル、そして初めから出ているピカチュウ。怱々たるメンバーはシンオウリーグの面々だ。そこに加えてリザードン、ジュカイン、オオスバメ、オニゴーリとエース勢が揃う中、何故かミジュマルもいた。
「ついてきちゃったのか」
「全くお前は変わらないな」
ポケモンに追跡されるサトシにシンジは呆れた。シンオウリーグ以降、何一つ変わらない。
シンジのポケモンは全て出揃っている。タケシもラッキー、ウソッキー、グレックルを出した。
「これだけいると心強いね」
「アーシェさんも出して下さい」
タケシに促され、アーシェもポケモンを出す。アーシェはタケシより年上だが、恒例のナンパからのグレックルによるどくづきは既に初対面で終了した。
「プロト! シャルル! オサフネ!」
アーシェが出したのはアバゴーラのプロト、マリルリのシャルル、フタチマルのオサフネだ。
「おねーさんと仲良くしてね」
ミジュマルとオサフネは進化前、進化系の関係である。オサフネは雌らしく、アーシェはそうミジュマルを諭した。
「敵は不動産王と呼ばれるクロスケだ。本人は大したことないが、金で優秀なトレーナーやポケモンを雇う可能性がある」
「その可能性は低いね。優秀なトレーナーほど金じゃ動かんだろうし、金で買ったポケモンが言うこと聞くかね?」
シンジはクロスケが資金力で戦力を補充してくると踏んだが、アーシェはそれを心配していない。
「そうか、なら安心だ。そろそろお昼だな、俺に任せろ」
時計を見たシンジは家に戻り、ある場所に電話をかけた。カントー地方のウツノミヤだ。餃子が有名なウツノミヤでは、『餃子協会』に電話するだけでウツノミヤ中の餃子が出前注文できる。無論、チルドになってしまうがカイリュー便ですぐに届く。
「もしもし、トバリシティのシンジですが餃子の注文を……」
『すいません。餃子の出前は最近やってないんですよ』
「何?」
「業界の圧力なんじゃないか? サービス良すぎだし」
しかし、どうやら出前をやっていないらしい。あまりにサービスが良すぎで、餃子業界から圧力が掛かってるのだろうとアーシェは予想した。
「どういうことだ……?」
「そんな真似しそうなのはブルジョワ財閥くらいだけどね」
「ふん。仕方ない、スーパーに買いに行く」
シンジは諦めてスーパーまで買いに行った。ブルジョワ財閥が出前出来ない様に圧力を掛けてるなら、アッシュの件以外にもブルジョワ財閥を潰す理由が出来た。
不動産王クロスケはアッシュの父親である。認知してるかは不明だが、ともかくアッシュとの関係にケジメを付けるには倒すべき相手なのだ。
スーパーに着いたシンジは冷凍食品コーナーを眺める。餃子はチルドである場合が多い。しかし、冷凍食品コーナーにはブルジョワ財閥の子会社が作った冷凍食品しかなかった。
「餃子はあるな。だが嫌な予感が……」
シンジは餃子を見つけ、パッケージを確認する。その嫌な予感は的中。パッケージに『ニンニクを使わないヘルシー餃子』と書いてあった。
「馬鹿野郎……!」
シンジは愕然とした。ニンニクを使わない餃子に何の意味があるんだろうか。
「おい、どうしたシンジ」
ライバルの取り乱しぶりを心配してサトシとピカチュウが追い付いた。冷静なシンジがあそこまで取り乱すなどただ事ではないと察したのだ。
「工場はトバリシティか。行くぞ、奴らにニンニクの重要さを教えてやる」
「あ、おい待てよ!」
シンジとサトシはトバリシティにあるブルジョワ財閥の子会社、ブルジョワチルドの工場へ向かう。船で商品を運ぶため、港と一体になっている。元々は多目的の港だったが、ブルジョワチルドが不当占拠してるのだ。
「埠頭を不当占拠。なんちゃって」
「つまらん。冷凍工場に入る前から寒くするな」
シンジとサトシを追って来たアーシェが合流する。アーシェが思い付いたダジャレは実に寒かったという。
「じゃあボクは船潰して来るよ」
「俺達は入口から攻める」
「おいおい、ただの工場を壊すのか?」
いくらブルジョワ財閥のものといえ、無関係な工場破壊を躊躇うサトシ。しかし、その視界に無理矢理連れてかれる氷ポケモンが映り、前言を撤回する。
「ポケモンを無理矢理働かせるなんて許せない! やろう、シンジ!」
「当然だ」
そんなわけで3人はブルジョワチルドの工場を襲撃した。工場の職員は大して強くない。リーグ経験者のシンジとサトシには軽い相手だ。
「ゴウカザル、フレアドライブ!」
「エレキブル、かみなりだ!」
サトシはいつも通りに強い技で突き進む。シンジも怒りに駆られて不必要な高威力技を出す。職員のポケモン達は一たまりもない。
こうしてあっという間に工場は壊滅した。船もアーシェに沈められ、職員達はポケモン労働基準法違反で逮捕されることになった。
「終わったな」
工場はもはや廃墟と化していた。さすがシンジ、やり過ぎである。
「おい、あれ見ろよ」
合流したサトシが向かってくる大量の人影を見つける。スーツの男達が騒ぎを聞き付け、やって来たのだろう。全員がリベレート団のバッチを付けている。
「お前か」
シンジはその先頭で踏ん反り返っている男を見付けた。奴がクロスケだ。アッシュの父親とは思えない不遜ぶりだ。シラコといいクロスケといい、何をどうしたらアッシュが生まれるのか不明な両親だ。特徴的な紫の瞳も、両親からの遺伝ではないのかシラコもクロスケも紫色の瞳ではない。
クロスケは工場の惨事を目の当たりにし、船破壊から戻ってきたアーシェを含めた3人に聞く。
「君らがこれをしたのか?」
「そうだ。ニンニク抜きなど餃子を愚弄する真似をするからだ」
「嘘はいけない。君らの様な女子供に出来るはずもない」
クロスケはどうやら現実逃避をしているらしい。冷静に考えればリーグ経験者が2人もいる現状から、普通に予想出来る被害だろう。
「なら、目に物見せるしかないようだな。ここでケリを付けさせてもらうぞ、不動産王クロスケ!」
「子供が大人に刃向かうもんじゃないということを教えねばならないようだな」
シンジはこれ幸いと敵将を討ちに出る。相手が自分達を舐めて自ら戦場に来るチャンスはこれが最後だろう。
「ドタイトス、バトルスタンバイ!」
「ドタイトス、君に決めた!」
「はくしゃく!」
サトシとシンジはドタイトスを出した。アーシェはオスのブルンゲルであるはくしゃくを出す。ドタイトスが2匹並ぶと圧巻である。まだ現実を直視出来ないのか、クロスケ達はむざむざバトルの準備をした。
「子供が育てたポケモンが、私が金を掛けて端正に育てたポケモンに敵うものか。いでよマニューラ!」
クロスケとスーツの男達はマニューラを大量に繰り出した。素早さと相性ではドタイトスが負けている。しかし、アーシェが打って出る。
「はくしゃく、トリックルーム!」
「なんだ? 時空が歪む!」
トリックルームは素早さが遅いほど早く動ける空間を生み出す技である。素早さの高いマニューラはドタイトスより遅くされてしまうため、クロスケは慌てる。
「ドタイトス、ロッククライムだ!」
サトシのドタイトスが素早く動き回り、マニューラ達を倒していく。ナエトル以来、久しぶりのスピードバトルにドタイトスも嬉しそうだ。
「ドタイトス、リーフストーム!」
シンジも素早くリーフストームをぶち込んでいく。クロスケの部下達は一瞬で壊滅していった。
「ば、馬鹿な! 金を掛けて揃えたポケモンがこんな……」
「金だけで強くなれるか」
トリックルームが消え、時空の歪みが元に戻る。金を掛けた程度では強くならないからシンジは厳選をするのだ。優秀なポケモンを手に入れても、バトルに勝つにはそいつと息を合わせなければならない。
「トリックルームか。コウヘイを思い出すな」
サトシはシンオウリーグで戦った相手を思い出した。即効で決める彼のスタイルに対策を取ったコウヘイは、トリックルームを使用したのだ。
「くそ、覚えてろ!」
クロスケは悪態をついて逃げ出した。これで全てが解決したわけではないが、クロスケの戦力を削ぐことが出来た。
「トバリ埠頭を解放、これで奴らの資金力を削ぐことが出来たな」
「よし、俺もリベレート団が占拠した施設を奪い返すぞ!」
一つの施設を解放出来たことで、リベレート団の戦力も落ちるだろう。ブルジョワチルドの工場はまだあるが、少なくとも餃子の製造は不可能だ。
「ニンニク抜きなど、餃子を愚弄した報いは必ず受けてもらうぞブルジョワ財閥!」
シンジは未だ怒りに燃えていた。餃子は彼の大好物で、10皿は軽いとのこと。それを愚弄されて怒りを抑えられるほどシンジは大人ではない。やはり年相応な面もまだ見せる。
「諦めると思ったか! 死ねい!」
先程去ったかと思ったクロスケがガマゲロゲを大量に出してシンジ達に不意打ちした。3人はポケモンを戻しており、反応が出来なかった。
「アイン、リーフブレード!」
だが、誰かの指示で跳んで来たリーフィアがリーフブレードでガマゲロゲを倒し、事なきを得た。クロスケは今度こそ退散した。
「あの、これは何があったの?」
「餃子を愚弄した者の末路だ」
後ろから質問が飛んできたため、シンジは答えにならない答えを返す。シンジが振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。傍にアインと呼ばれたリーフィアがいるため、ガマゲロゲを倒したのは彼女と思われる。
黒髪を背中まで伸ばし、赤い瞳は夕焼けの様な輝きを放っていた。肌は白く、キッサキに降る雪を思い起こさせる。服装は半袖の黒いブラウスに赤いネクタイ、短い赤のプリーツスカートに黒いニーソックスと、赤と黒のツートンカラーで纏められている。かなりの美少女である。
ブーツを鳴らして辺りを見渡すと、ますます顔に浮かべる困惑の色が濃くなる。頭のアホ毛がピコピコ動き、しばらく考えていた。
「ブルジョワチルドの工場がポケモン労働基準法に違反してるって聞いたから見に来たけど……なあにこれ?」
「おあいにくさま、工場はもう壊しちゃったよ」
アーシェが概要を伝える。少女の腕章からして何かの組織のメンバーだろうが、完全にお株を取られた形だ。
少女は状況を理解し、話を進める。
「壊しちゃったなら仕方ないです。私の名前はイヴ、『ポケモン犯罪防止委員会』のメンバーです」
「そんなのがあるのか」
「この工場を破壊した後はレイジさんに合流してクロスケ氏の捕縛に当たる予定でした」
要するに新戦力。これはまた頼もしいのだが、どんどん厄介そうな奴が増えてシンジは頭が痛い。
「とにかくここではなんだ、一回育て屋に戻ろう」
アーシェの指示で全員が育て屋に戻ることに。育て屋で待ってたレイジとタケシ、スモモを含め、とりあえず委員会とやらの方針を聞くことにした。リビングでくつろぎながらである。
「我々委員会は度重なるクロスケ氏のポケモン犯罪を止めるべく、メンバーである私の派遣を決定したの」
ソファに座ったイヴが話を進める。その委員会が何処に属するものかもわからないが、ブルジョワ財閥やクロスケの様な権力者に刃向かえるということは腐敗した組織ではなさそうだ。
「ポケモン犯罪防止委員会はホウエンリーグに属する組織なんだ。ポケモンリーグ本部至上主義者がホウエンを襲った時やシンオウで八賢老と呼ばれる人達が好き放題しても警察は止められなかったから、ホウエンリーグのダイゴさんやバトルフロンティアのジンダイさんが作ったんだ」
レイジは委員会の設立について話す。サトシには聞き慣れない事件が2つあったが、気にしない。
「初めは国際警察も反対したけど、市民の声がそれを押し切って警察と同等の逮捕権を持つ組織になったのさ」
「国際警察にもハンサムさんみたいに設立に賛成した人がいたの」
「へー、ハンサムさんが賛成してたんだ」
さすがに10歳であるサトシには社会的云々というのはわからないらしい。シンジもポケモンには詳しいが社会についてはサトシと同じくらいの知識しかない。
「シンジ、お前が出会った大学のエルトはこの2つの事件に関係してる」
「何?」
「あの人が?」
レイジの口からエルトの名前が出たため、面識のあるシンジとタケシは反応を返す。『本部至上主義者の侵略』と『八賢老の暴走』。一つはポケモンリーグはセキエイの本部のみであると主張する団体がホウエンを襲ったもので、もう一つはシンオウを牛耳る老人が暴走。
サトシとシンジはイヴから渡された資料を見て、事件を確認した。
「何を隠そう、一見関係のない事件の全てに『エルト』と『神を名乗る男』が登場している」
「あいつ、何者なんだ?」
「一緒に旅をしたけどわからない。だけど、神を名乗る男がエルトを『神殺し』と呼んで未来の破壊を防ぐ為に倒そうとしていたのは間違いない」
エルトは神から『神殺し』と呼ばれていた。資料によると、神は崩壊した未来からやって来て、エルトを殺して未来の崩壊を防ごうとしていた。
「これが神様か」
「わからんぞ? 本人がそう言ってるだけかもしれない」
資料には神の姿が写されている写真がある。人間の様な姿をしているが、所々に伝説のポケモン、ディアルガとパルキアを想起させるディティールがある。
「この男が未来の崩壊を予想していたかは微妙なの。未来から来たって話も眉唾」
「つまり、エルトが神殺しの可能性も低いか」
イヴとレイジはしばらく考える。神と名乗る男を目の当たりにした2人は正直、彼に胡散臭さを感じずにはいられなかった。敵対した身として、未来を守りたいなら絶対しない様な行動の数々も見てきたからだ。
「とにかく、私が八賢老の事件について説明するの。ブルジョワ財閥やクロスケが占拠してるのがこの事件に縁がある土地ばかりだから、嫌な予感がするの」
イヴは自らが体験した事件を語り始めた。
イッシュ地方 ブルジョアジー号テラス
「眠れない……」
アッシュは眠れない夜を過ごしていた。VIPルームでジャスミンと共に寝ていたアッシュだが、抱き枕にされていたため、脱出してテラスで夜風を浴びていた。
「歌?」
そんな彼の耳に歌が届く。優しい歌声が風に乗ってきた。甘い声だった。女性、それも幼い少女のものだろうか。
氷の身体を持つしもべ、海の孤島にただ一人。
岩の身体を持つしもべ、砂漠の中で暇してる。
鋼の身体を持つしもべ、雨が止むのを待っている。
三つのしもべが揃う時、再び王が起き上がる。
「これはホウエン地方の民謡だな」
「知ってるのシャルル?」
アッシュの頭の上に乗ったルリリのシャルルが歌を知っていた。ホウエン地方の民謡だそうだ。民謡には伝説のポケモンを歌ったものが多いらしいが、これもその一つだろうか。
「なんでも、歌が示す場所に伝説のポケモンが眠ってるって話だ」
「へー」
アッシュはそれを聞くと、心地好い夜風を浴びて、甘い歌声で眠くなったのでベットに戻った。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、見間違え」
シャルルは一瞬、アッシュの瞳が強く光った気がした。しかし、月の光が反射しただけだと考えてシャルルは何も言わなかった。今夜は、綺麗な満月が浮かぶ。
5年前 マサゴの海岸
「……ここは?」
全てが始まったのは5年前のある日だ。イヴは詳しく思い出せないが、両親と共に調査船『グランホエルオー』に乗っていたはずである。
救命ボートの中で目を覚ましたイヴは、流れつくまでのことを思いだそうとする。しかし、頭に鈍い痛みが走って思い出せない。グランホエルオーに乗っていたら八賢老の手下を名乗る男達が船を沈めた、程度の粗筋しか思い出せない。それ以上は無理だった。
「うぅ……」
身体を起こそうにも、疲労で立ち上がれない。海の眩しい日差しが、漂流する間彼女の体力を奪っていたのだ。ボートに少し水が溜まっているのにイヴは気付いた。それが真水であるため、嵐にも遭ったという事実が明らかになる。
「お父さん……お母さん……」
身体が動かせないまま、イヴは両親を想う。しかし、なぜか両親の顔を思い浮かべようとするとまた頭痛がする。
「あぐっ! どうして、なの?」
起こせない身体に力を入れると激痛が走る。長い黒髪は潮風で傷み、濡れた服が肌に張り付く。今は深夜、濡れた身体が夜風に吹かれると体温が奪われる。
(私は死ぬの?)
イヴは10歳にして死を覚悟した。空を見上げると、綺麗な三日月だった。
「クレセリアだ! すげえ!」
誰かの声が聞こえ、それを最後にイヴの意識は途切れた。これこそ、彼女の運命を変え、宿命と向き合う出会いとなった。
トレーナーカード
いいんかい イヴ
年齢 14歳(現在)
性別 女
詳細は次回からの「八賢老編」で