ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 フィオネ
 ポケモン
 水タイプ
 海の温度が高くなると頭の浮き袋を膨らませて海面を集団で漂う。


番外 海の日のフィオネ

 サザナミタウン

 

 ロケット団のボス、サカキはようやく見つけた息子のシルバーとバカンスに来ていた。ロケット団を結成してまで探した息子だ。何とか空白の間に深まった溝を埋めたい。

 「親父ー、それと幹部共、何か飲み物いるか?」

 『ストロングゼロ』

 「真昼間から酒かよ……」

 それはシルバーも同じである。しかし、こうも幹部まで揃って昼間から酒を要求とは、ロケット団の連帯恐るべし。

 「それよりシルバー、そんな黒ずくめで暑くないかい?」

 「ラムダとランスも同じだろーが」

 サカキの心配をよそに、シルバーは海辺を歩く。すると、1匹の青いポケモンを見つけた。本で見たマナフィのようだが、何かが違う。

 「なんだこいつ」

 シルバーが図鑑で確認すると、そのポケモンはフィオネであることがわかった。

 「フィオネってポケモンなのか。マナフィっぽいな」

 「そいつを引き渡してもらおう!」

 シルバーがフィオネを見ていると、かの有名なブルジョワ伯爵が来たではないか。その太い腕に抱き着く水着の女性は愛人のセイレンである。多数の水着を持ち合わせる彼女は、今日は黒いビキニを着ている。白い肌と合わさり、不健全な色気を辺りに振り撒く。

 「なんだお前」

 「そいつは私達が興行の為に用意したポケモンだ。逃げてしまったので部下共に追わせていたが、まさか私が見つけるとはな!」

 ブルジョワ伯爵はリベレート団のボスである。しかしポケモンの解放を謡うリベレート団のボスがポケモンを興行に使うとは何事か。やはり優先順位は金儲けが上で、ポケモンの解放とやらは二の次なのか。

 「興行だと?」

 「貧しい庶民共にそいつを使ったショーを見せ、ポケモンの解放に使う資金を蓄えるのだ!」

 「解放の為にポケモンを利用? 意味がわからん」

 ブルジョワ伯爵の考えには矛盾があり過ぎてシルバーも混乱し始めた。ポケモンサーカスの様にポケモンとの連帯が必要な興行なら『ポケモンを道具にする』のではなく普通のトレーナーに近い。が、連帯を取るには信頼が必要で、その信頼があるポケモンはトレーナーから逃げ出さないだろうことを考えるとブルジョワ伯爵はフィオネを道具にした興行をしようとしているに違いない。

 「全く、一昔前の私を見てる様だ」

 「親父……」

 シルバーの傍にサカキが並び立つ。アロハシャツにハーフパンツと休日の父親のテンプレートみたいな格好をしてるが、ただのデブであるブルジョワ伯爵を威圧するには十分な迫力がある。

 「ちょうど2対2だ。ダブルバトルで私達が勝ったらフィオネを解放してもらおう」

 「貴様は……ロケット団のボス、サカキか!」

 さすがにブルジョワ伯爵もサカキを知っていた。以前はトキワジムリーダーとして有名だったが、ある事件を境にロケット団のボスとしての方が有名になった。

 「ポケモンを道具にする奴らの筆頭が私達の邪魔をするか!」

 「貴様らの組織には一貫性が無い。解放するなら解放、道具にするなら道具に。それに私は目的を果たして、ロケット団は必要無くなった。今や幹部は私を慕ってるだけだしな」

 2つの組織のボスが対峙するが、その関係は対等ではない。プレッシャーに耐え兼ねたブルジョワ伯爵はモンスターボールを取り出す。

 「それでよい。行け、ドサイドン!」

 「頼んだオーダイル!」

 サカキはドサイドン、シルバーはオーダイルを出す。シルバーのオーダイルはウツギ博士から盗んだものだが、とある敗北を機にポケモン達と素直に接し、信頼関係を築いていた。

 「おのれ、奴らをぶちのめせ、ジバコイル!」

 「行きなさい、ルンパッパ!」

 慌てた伯爵はジバコイルを、セイレンはルンパッパを繰り出した。それぞれ、シルバーとサカキのポケモンに有利だ。オマケに、ジバコイルはふうせんを持っている。これで地面技は当たらない。

 「ルンパッパ、あまごい!」

 セイレンはルンパッパにあまごいで雨を降らさせる。せっかくのビーチが台なしな技だが、これには理由がある。

 「ジバコイル、かみなりだ!」

 伯爵はジバコイルにかみなりを指示。オーダイルを狙ったかみなりは雨のおかげで必ず当たる。

 「詰めが甘い」

 しかし、かみなりは狙いが逸れてドサイドンの角に直撃。ドサイドンは地面タイプなので電気技は効かない。

 「ねらいのまと?」

 シルバーはドサイドンが持ってるアイテムに気付いた。流鏑馬の的みたいなそれは『ねらいのまと』。普通は効かない攻撃が効く様になるアイテムで、例えばゴーストに格闘技が当たったり、地面に電気技が当たったり。

 ドサイドンは地面タイプでの電気無効を失ったがひらいしんで結局電気を吸収した。これによって特殊攻撃力が上昇。

 「充電完了! ドサイドン、アームハンマーだ!」

 「物理技かよ!」

 だが、サカキが選んだのはひらいしんによる恩恵を受けられない物理技のアームハンマー。何故この選択なのか。

 「なんか充電してパワーアップしたみたいで、カッコイイからだ!」

 サカキはカッコイイからこれをしたのだ。現にドサイドンの技構成もドリルライナー、アームハンマー、がんせきほう、最後に申し訳程度のじしんとロマン重視。わかってらっしゃる。

 「シルバーよ。バトルは楽しまなければな」

 「ケースバイケースだろ」

 今はフィオネの命運がかかっているため遊んでる時ではない。しかしながら、サカキはそれでも倒せる相手と判断して遊んでるのだ。ジムリーダーの観察眼は健在。

 「ジバコイルがッ!」

 ジバコイルは効果抜群の格闘技を受け、とくせいのがんじょうでギリギリ持ちこたえた。しかし、ふうせんが割れてしまった。

 「ルンパッパ、ドサイドンにハイドロポンプ!」

 「させるか! オーダイル、ばかぢから!」

 セイレンはルンパッパにハイドロポンプを指示。シルバーはオーダイルに鋼対策として持たせたばかぢからを使い、ルンパッパを投げ飛ばしてそれを防ぐ。

 「ルンパッパ!」

 ルンパッパは一撃で倒れた。相手の場にはこれでジバコイルが残るのみ。ジバコイルは怒りに燃えているが、これはサカキ達に対するものではない。

 「な、なんだその目ウボァー!」

 ジバコイルは伯爵に向かってかみなりを放つ。雨なので上手く命中し、伯爵は奇妙な断末魔を上げて吹っ飛んだ。

 「ドレディア、にほんばれよ」

 セイレンはドレディアを出し、にほんばれを使わせた。雨が上がっていく。

 「フィオネは好きにしたら?」

 「どういう風の吹きまわしだ?」

 「私はあの人を利用してるだけだもの。少し運動したら火照ってきちゃった、帰ってシャワー浴びよっと」

 セイレンはフィオネをシルバーに托すとその場を離れた。シルバーは当初の目的通り、フィオネを海に帰した。

 「一枚岩に成れない組織か、哀れだな」

 リベレート団は組織にも関わらず意識統一が甘い。サカキはそれを感じ取り、彼らの崩壊を予感した。ロケット団は未来のチャンピオンとはいえ10歳の子供に滅ぼされた。リベレート団はそれ以上に呆気ない幕切れを迎えるに違いない。




 トレーナーカード
 ポケモントレーナー シルバー
 サカキの息子。幼少期に消息を絶ち、サカキは彼の捜索のためロケット団を立ち上げたといわれている。

 ロケット団 サカキ
 お馴染み、ロケット団のボス。部下からの信頼も厚く、ロケット団復活を計画した幹部達はわざわざ彼を呼び寄せての復活を望んだ。
 威厳のある面が強調されがちだが、ユーモアが無いわけでもない。以前から片鱗は見せていたが、息子のシルバーと再会してからはしょっちゅう見せるようになったとは幹部の談。
 もうだんだん、アニメのロケット団がポケモン献上を計画する時の想像のサカキに近づいてる気がする。
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