ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 現在状況
 アッシュ
 タチワキシティにてヒュウの合流を待つ。謎の少女、シルフィと出会い、ポケウッドへ。

 イヴ
 ヒカリをカイリューに乗せてシンオウへ。コトブキにて、5年前の出来事を思い出す。


24.宿命の出会い、2人のイヴ?

 コトブキシティ

 

 「着いた!」

 カイリュー便に乗せられてシンオウにヒカリが戻ってきた。シンジ達と合流するポイントはコトブキシティ。ここでクロスケはテレビや新聞などのメディアを金で買収しようとしていたのだ。

 しかしそれは無理だろうとイヴは思っていた。5年前、ようやくメディアは忌まわしい呪縛から解放されたのだ。逆戻りは誰もしたくないだろう。

 

 5年前 コトブキシティ

 

 八賢老のバイアを下したイヴとエルトは、次の八賢老が待つコトブキシティを訪れた。

 「最近の政治家はもうちょっと慎重に発言すべきだよね」

 「どうせそんなん捏造だろ?」

 イヴは電車で拾った新聞を読んでいた。今度の相手はメディア王、ここから相手の手口を知ることができる。

 新聞には『新人議員、また失言』と見出しが出ており、議員の失言を取り上げている。この議員は近年の政治家が高齢化していることに批判的な若い新人議員だ。いつまでも地方の要職に高齢な政治家がいては、シンオウは停滞したままだ。

 「その政治家は発言切り貼りされて失言を作られたくないからネットでしか発言していない。だから取材に応じたなんて嘘だ。テレビを見てみろ、本人が発言したシーンを流さずに再現のみだ」

 「今回の敵はあくどいとみた」

 元々の発言を切り貼りして失言扱いにするどころか、無い失言を生み出すとはあくどいという感想しか出ないだろう。

 「見ろ、マスコミに躍らされる人々の群れだ」

 とてもうまそうに見えないラーメン屋に人々が列を成す。店は綺麗だが、ハッキリ言ってそれだけの店だ。店主がタオルを頭に巻いて黒いTシャツ、メニューが一つだけなどこだわりの意味を曲解している。

 「可愛くもないアイドルに人がたかる! カタリンナ? 私、こっちの方が好きだなあ……」

 イヴは新聞の芸能欄に載ったアイドルの話題にツッコミを入れる。パッとしないアイドルに人々が群がっている写真だ。イヴが社会面に載っていた、暴れ者モジャンボを止めたトレーナーの方が美人だと思ったくらいだ。歳はエルトと同じらしい。

 「あんなにCD買ってどうすんだ?」

 「総選挙の投票権が入ってるって」

 トラック山積みでCDを買う人もいた。アイドルの人気投票の投票権が手に入るため、大量に買っていたのだ。そのアイドルの写真をポスターで見たが、カタリンナ並に可愛さは微妙だった。

 「とにかく今回はシロナの裏ルートで八賢老のジョンが出る番組『午前は〇〇 自粛テレビ』の観覧席が手に入らなかった! どうしよう」

 「入らなかったのね」

 観客に紛れてジョンを襲撃する作戦は失敗に終わった。観覧席は株主優待でしか手に入らない代物だ。汚い八賢老さすが汚い。ジョンはテレビ局の経営と司会者を同時に熟す。奴が『ココアを飲めば健康になれる』といえば、科学的根拠が無くてもココアを飲めば健康になれるということになる。そしてココア品薄へ。

 白を黒と言い、黒を白と言い張る偏向マスコミの典型を地で行ってた。

 「さて、マジでどうするか」

 「どうしよう……ね?」

 テレビ局前のベンチで座って作戦を考えていたエルトとイヴだが、いきなりエルトが警察に捕まっていた。突然のお縄ちょうだいである。

 「少女を連れまわしている男がいるとの通報で来ました。逮捕します!」

 「……マジか」

 「さあ、もう大丈夫ですよ。警察で保護します」

 こうして2人は警察署に行く羽目となった。エルトは逮捕、イヴは保護だ。

 

 警察署での2人の待遇は天と地ほどの開きがあった。イヴは婦警さんに付き添われ、警察署の託児所で保護されていた。

 「怖かったでしょ、もう大丈夫よ」

 「いや、あの人は……」

 「気にしなくていいのよ。少年院行きだから」

 (ダメだあいつ、早くなんとかしないと)

 イヴはエルトに保護されていたわけだが、どういうわけかエルトがイヴを誘拐したと思われているらしい。路銀もイヴのブラックカードから出ていたので、疑われてしまった。エルトの目が薬中みたいだから尚更どうしようもない。

 「エルトは私を助けてくれたの」

 「もう、そんなこと言わなくていいのよ。あなたは自由なんだから」

 (ダメか…目付きが原因なんだろうね)

 エルトは目付きが完全に薬物中毒者だ。そのせいでイヴの証言も通用しない。脅して言わせているのだと思われていたのだ。凶悪犯罪者と見た目で思われる15歳。無実とはいえ前科持ちなのが尚痛い。

 「シロナさんとアカギさんを呼んで下さい、あの人なら証人に……」

 シロナとアカギのことを思い出したイヴが2人を呼ぶように婦警さんに頼もうとした。しかしその時、爆発音が響いた。

 「大変だ! 八賢老のジョンが勝手に警察署爆破して不祥事作ろうとしてるぞ!」

 警察署が一気に慌ただしくなる。報道する不祥事が無いなら作ればいいじゃない。マリー・アントワネットもビックリな論法でジョンは警察署を襲撃したのだ。

 「放送法違反でしょっぴこうとしたらこれだ!」

 「国際警察の手まで借りたのに!」

 「翌朝にジョンは『こんな警察に放送法違反を言う資格は無い』と言う」

 「こんな警察に放送法をいう資格は無い……ハッ!」

 警察署は混乱に陥った。どうやら、法律違反でジョンを逮捕しようとしたら報復されたらしい。世論を味方に付け、法律違反すら回避しようというウルトラCだ。

 「展開がいきなり過ぎてついていけないけどチャンス!」

 イヴは即座に取り調べ室まで行き、エルトを解放しようとした。地図はさすがに無いが、逆を言えば地図に無いルートを辿れば着けるはずだ。

 偶然押収品室に着いたので、エルトのモンスターボールを回収。書類上はエルトのだったイーブイのアインも解放する。

 「アイン、おいで」

 ポケモンがいれば怖いものなどない。イヴは警察署を走る。

 

 コトブキテレビ 社長室

 

 「まったく、いつまでも元気なんだから」

 コトブキテレビの社長室にはシャワールームやベッドルームが完備されており、忙しいジョンが住む為に設計されていたりする。シャワールームには広い浴槽もあり、無駄設備っぷりを世に知らしめる。

 そのシャワールームで寝汗を流すのはピンク色の髪を伸ばした美女だ。お湯が伝う肢体は彫刻の様に均整で、水を弾く肌は艶やか、シャワーを浴びる仕草の端々まで色香が滲む。

 彼女はリリス。国際警察の諜報部員として八賢老を監視していたのだ。驚くことに彼女は一人で八賢老全員を手玉に取り、情報を警察に流していた。

 シャワールームを出たリリスは、バスタオルで身体を軽く拭いながらベッドに戻る。コトブキ警察がコトブキテレビの放送法違反に気付いたのも彼女のリークが原因だ。

 甘い甘い蜜だと思って貪ったモノは猛毒だった。彼女はそう形容するのがちょうどいい。何処にしゃぶりついても、その甘さは男達の理性を溶かすだろう。溶かしているのは猛毒の作用と気付かずに。

 バスタオルを身体に巻いたリリスは、机に置かれたパソコンからUSBメモリを引き抜く。タオルのシワがボディラインを引き立てる。あまりしっかり水気を拭わないものだから、上質なタオルが身体に張り付くのだ。お湯がリリスの鎖骨を伝う。

 「潮時かな?」

 彼女は胸元に指を引っ掛け、バスタオルをハラリと脱ぐ。そして無造作に脱ぎ捨ててあったレザーのライダースーツを素肌の上から着る。ここでの仕事は終わったのだ。

 

 コトブキ警察署 廊下

 

 「いやー、なんだか知らんが助かった」

 「八賢老のジョンが警察を襲ってるらしいの」

 エルトはイヴによって解放された。現在、警察署はジョンのけしかけたビリリダマによって混乱に陥っていた。被害は甚大で、とてもエルトの脱走に構ってる暇は無かった。

 「そういえばよ、お前警察署のどこにいたよ?」

 「託児所」

 「そうか、廊下でお前を見掛けたんだが見間違いかな? 服装違ったし」

 エルトの発言にイヴは首を傾げる。誰か似た人物を見掛けたのだろう。イヴは託児所から離れていなかった。

 「ビリリダマはヌオー部隊に鎮圧されているな。ヌオーのとくせい『しめりけ』で爆発はしないだろう」

 ヌオーがいるだけで爆発できなくなる。ジョンの野望は一先ず停止した。イヴとエルトは警察署を出て、コトブキテレビに向かった。ジョンはそこにいるはずだ。

 「いたな」

 コトブキテレビには警察車両が多数駆け付けていた。さすがに警察署を爆破されては黙っていなかった。

 「皆さん! これが警察の現状です! 無実の私を捕まえようとしている!」

 警察に連行されていくジョンがカメラに向かって喚いていた。警察の誤認逮捕を実況しようという策略らしいが、これは誤認でも何でも無く普通の逮捕だ。イヴとエルトもジョンが世の中に氾濫させた偽物の情報を嫌というほど見た。

 中継を見たのか、コトブキの市民達が警察に石を投げ始めた。犯罪者を決死で守る姿は滑稽であった。ジョンの人気を示す光景ではあるが、人気者だからと犯罪を許しては法治国家の名が泣く。

 「帰れ税金泥棒!」

 「チッ、テレビに洗脳された愚民共が邪魔を……。イヴ、ジョンは任せた。これ持ってけ」

 エルトはイヴにヒメリのみを渡しながらジョンを任せ、市民を始末しにかかる。警察は市民を攻撃出来ないので、エルトがやるしかない。

 「ハナコ、オーバーヒート!」

 「ぎゃあああ!」

 モウカザルのハナコがオーバーヒートで市民を焼き払う。ハナコは曲がったことが嫌いなのか、非常に怒っていた。

 「ラド、ブレイブバード! ダクダ、マグニチュード!」

 ムクバードのラドとゴローンのダクダまで登場し、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。これい以上市民が犠牲にならないように、イヴはアインと共にジョンの捕縛を急ぐ。

 「待て!」

 テレビ局に逃げるジョンを追うイヴ。地下駐車場にジョンが逃げるため、イヴもそれを追う。地下駐車場に入ろうとしたその時、バイクと擦れ違った。大型で、サイドカーが付いている。

 運転手はピンク色の髪の女性。タイトなライダースーツがグラマラスなボディラインを浮き彫りにする。

 「エルトくんに会ったらよろしく」

 その女性は擦れ違い様、イヴに一枚の封筒を投げる。そしてサイドカーに乗っていたのは、イヴそっくりな少女だった。ゴシックな衣服に身を包む少女は、紅い瞳でイヴを見つめる。

 「っ……!」

 その少女がリモコンの様な機械を取り出し、イヴに向ける。イヴは激しい頭痛を感じたが、ジョンを追うために無視した。

 「アイン、シャドーボール!」

 ジョンは車に乗って逃げるだろう。イヴはシャドーボールで片っ端から車を破壊した。

 「ひぃぃ! リリス、助けてくれ!」

 ジョンは逃げる手段を失い、エレベーターで上へ逃れた。イヴはエスカレーターで追い、2階のエレベーターに着くとシャドーボールで破壊した。

 「クソが!」

 まだ1階にいたジョンはエレベーターが壊れたため、走って逃げる羽目になる。2階ではイヴが待ち伏せしており、エレベーターに近いエスカレーターを駆け上がったジョンを狙う。

 「でんこうせっか!」

 「ガキが!」

 アインのでんこうせっかをギリギリで避けながら、ジョンはエスカレーターを上る。

 「シャドーボール!」

 エスカレーターは吹き抜けを貫通する様に並んでいたため、シャドーボールで事前に破壊出来た。エスカレーターは全て壊され、これでジョンは階段を使うしかない。

 「よいしょっと」

 イヴはオマケに防火シャッターを下ろして逃げ場を封じる。これでジョンは必死に逃げるが、イヴは悠々と追跡出来る。アインにかぎ分けてもらいながら、ジョンの痕跡を追う。頭が割れる様に痛むので、少し休みたかった。シャドーボールを使い過ぎたので、アインにヒメリをあげて回復させる。

 「あっ」

 巨大な窓ガラスから下の様子が見れた。コトブキシティのあちこちで爆発が起きており、エルトの暴れっぷりがよくわかる。

 「南無南無」

 イヴは市民の皆さんの冥福を祈りながら、ジョンを追った。一方、エルトは市民を一方的に虐殺していたという。

 

 「リリス!」

 ジョンは社長室に着いた。しかし、そのベッドにはリリスがいない。シャワールームを覗いても彼女の姿は無かった。ついでに、金庫に入れた書類も消えていた。

 「どういうことだこれは!」

 リリスは機密情報だけを持ち逃げしたのだ。こうなれば自分の身は自分で守るしかない。デスクの引き出しにあるモンスターボールを取り出す。

 「私とてカントーの本部至上主義者と戦った身! 10歳にも満たないガキなど恐れるに足らん!」

 ボールから出したのはパルシェン。このパルシェンでありとあらゆる敵を凍り付けにしてきた。あの小娘でさえ例外ではないと、ジョンはイヴを待ち構える。

 しかし、社長室に投げ込まれたのは消火器。脊髄反射したジョンのパルシェンはそれにれいとうビームを叩き込み、爆発させてしまう。

 「み、見えん!」

 「シャドーボール!」

 消火器が爆ぜ、辺りが煙で満たされる。消火器の中身が舞い上がったのだ。その中からひたすらシャドーボールを連発して、数撃ちゃ当たる戦法でイヴはジョンを追い詰める。しかし、シャドーボールにも限度があった。ヒメリも使ったので弾切れだ。

 「めざめるパワー!」

 しかし、まだめざめるパワーがあった。どうやらパルシェンには効果抜群なタイプだったらしく、先程のシャドーボールのダメージもあってパルシェンは倒れた。

 「く、クソが!」

 「はぁ、はぁ……」

 頭痛が悪化したイヴは頭を抱えながらフラフラと社長室に入る。パルシェンはジョンと共に戦い抜いたベテラン、それがただの子供に倒されてしまった。バイアが倒されたと聞いた時はバイアが衰えたからだと思っていた。しかし、自分まで衰えているとは全く想像の範囲外だった。

 「このっ! 手持ちが無い!」

 「終わりだ……っ!」

 ついにジョンは追い詰められた。エルトが市民をボコボコにしているため、警察も妨害無くジョンのいる社長室へ向かえた。

 「これまでだ! 放送法違反で逮捕する!」

 警察が到着し、ジョンは逮捕された。イヴは安心したのか、頭痛に耐え切れず倒れてしまう。脳裏に浮かぶのは、自宅と思わしい豪邸での光景。

 自分が欲しいものは全て手に入った。だが、何故か寝室のベッドからの風景しか記憶に無い。全てここからの光景だ。両親が来ても医者が来ても、ここで迎えることしかできない。

 朝も夜も、夏も冬も、晴れの日も雨の日も、何も変わらない部屋で過ごすだけだ。ポケモンと旅に出たかったが、それだけは叶わなかった。自分はここで終わるのか、そう考えたらヒシヒシと不満が沸き上がる。

 「私は……」

 イヴは床に倒れ、記憶を辿る。だが、激しい頭痛でまともに頭を動かせない。流れて来る記憶を受け止めるだけだ。

 

 「あれ?」

 イヴは気が付くとポケモンセンターにいた。シロナに膝枕され、頭を撫でられながらソファで寝ていたのだ。

 「っ……!」

 いつもなら何とも思わないだろうが、急に恥ずかしくなって飛び起きる。顔が熱い。

 「もう大丈夫なの?」

 「大丈夫、何でもない!」

 「本当に?」

 「ああ」

 口調も何と無く変わっている気がする。イヴが意図的に変えたわけではない。記憶がクリアになり、知識も蘇ってくる。その瞬間、彼女の頬に冷たい感触があった。

 「冷たっ!」

 「よ、起きたか」

 「何をする! ビックリしたではないか!」

 その正体はエルトの持って来た缶ジュースだった。ちゃっかりシロナの分だろう缶コーヒーもあるのだが、イヴの豹変にエルトが肝を冷やしていた。

 「キャラ変わってる!」

 「む? そうか? 私はいつも通りのはず」

 彼女に自覚は無いようだ。果たして、イヴそっくりな少女は彼女に何をしたのか。まだまだ謎は深まるばかりであった。

 

 現在 コトブキシティ

 

 「ヒカリ、ついでにあれ潰して行こう。後が楽だ」

 「キャラ変わった!」

 いきなりキャラが変貌したイヴにヒカリが驚く。今まではイッシュやホウエンとの時差ボケで頭がボンヤリしていたのだ。

 「頼む、ルカ!」

 目の前にあるクロスケの営業所がターゲットにされた。ルカリオのルカをボールから出し、スカートのポケットからある石を取り出して掲げる。

 「ゲイリーの兄貴が試せと言ってたな、それは今!」

 ルカの姿がたちまち変わる。これが近年発見されたメガシンカである。そのままメガルカリオへ変貌したルカははどうだんを営業所に叩き込む。一撃で壊滅だ。

 「だ、だいじょばないでしょアレ……」

 メガシンカの力を目の当たりにしたヒカリは絶句する。

 「行こう、同胞が待っている!」

 「いきなり凛々しくなったなあ」

 クロスケからシンオウを救う旅は、まだまだ続く!




 メガシンカとは?
 近年発掘された鉱石には、ポケモンのさらなる力を引き出す効果がある。鉱石自体はポケモン出現と同時に存在したが、何せポケモンの種類が多過ぎて、どの鉱石がどのポケモンをメガシンカ出来るかわからなかったのだ。
 メガシンカを昔から使用する人間もおり、最古のメガシンカは第一回ポケモンリーグにおいて優勝者がガルーラのメガシンカを披露したことである。
 現在、石とポケモンの対応が明らかにされているのはガルーラ、ミュウツー、デンリュウ、バシャーモ、クチート、アブソル、ルカリオである。
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