ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 トレーナーカード
 ナース メイディ
 天才看護師。聴診器などを使わず、自らの身体のみで患者の体調を知ることができる。しかしその検診は過激の一言。それ故、勘違いした患者に襲われることも。
 医療の基礎知識に乏しいが、道具では見抜けない病気の一歩手前、未病すら診察できる。シェンロン地方には「未病を治せる医者はいい医者」という言い伝えがあり、ジャスミンには信頼されている。


26.狙われたクロガネの石炭!

 カワナタウン ブルジョワ後宮

 

 ブルジョワ伯爵が愛人を集めた建物、ブルジョワ後宮はカワナタウンの外れにある。愛人の為の部屋ばかりではなく、伯爵が愛人と様々なシュチュエーションを愉しむ為に無駄な部屋がいくつかあったりする。

 この保健室もその一つ。しかし、今は保健室本来の機能を果たそうとしていた。

 「酷い! 誰がこんなことを!」

 「うっ、く。目付きの悪い…エーフィが……」

 ベッドに寝ているのはセイレン。水着姿はぶれないのだが、全身に包帯を巻いて痛々しい姿を晒す。ショッピングモールの戦いでセイレンはエーフィの最大威力アシストパワーを数発喰らい、サイコキネシスで全身を締め上げられていた。深いダメージを追ったため、ここで治療しているのだ。

 「応急処置は済んだわ、後は精密な検査を……」

 保健室にはいくつかベッドが並び、それはそれぞれカーテンで区切ることが出来る。カーテンを閉めたベッドの中から女性の声が聞こえた。衣擦れの音も聞こえ、カーテンには女性が服を着替えるシルエットが映る。

 「さ、診察を始めましょう。まずはそこの患者さんから」

 カーテンを開けて出て来たのは、ナース服の女性。豊かなブロンドをまとめ、清潔感さえ匂わせる。聴診器も持たずに、女性はセイレンの寝るベッドに上がる。

 この女性、メイディは触れるだけで患者の体調を掴む天才なのだ。ただ、その特性故に診察がアグレッシブ過ぎて医療界から追放されたのだ。ブルジョワ伯爵に気に入られれば戻れるだろうか。彼女もまた、伯爵を利用しているのだ。

 「ん……くすぐったい」

 メイディはセイレンの腹を摩り、胸元を撫でる。触診にしてはねちっこい。

 「どれどれ……」

 「んむっ!」

 そして、メイディはセイレンの唇を貪る。診察とは何ら関係なさそうな熱い口づけにセイレンは翻弄され、身動きが取れない。

 「んっ、んくっ、くちゅ、じゅる……」

 舌もセイレンの口に入れ、身体を強く抱いてメイディは口づけを続けた。残された両手で全身を絶え間無く摩り、メイディは自らの唾液をセイレンに飲ませる。

 「はっ、何を……!」

 ようやくセイレンはメイディから解放される。二人の唇の間は糸を引き、互いの口元が唾液で濡れていた。

 「はぁっはぁっはぁっはぁっ……」

 メイディは舌をだらし無く垂らし、ナース服の胸元を涎で汚していた。顔を赤らめ、汗だくになりながらセイレンに迫る。

 「くあっ…まだするの?」

 「んんっ、良好。はぁっ、汗の味っ、ん、唾液の味っ、んむっ、体温っ、あっ、全て良好っ! 大丈夫っ、寝てれば治る!」

 余すことなくセイレンの汗を舐め取り、メイディは検診の結果を告げる。これが彼女の検診だ。触れた時の感覚、汗の味、唾液の味、舌を口に入れた時にわかる唾液の分泌具合などから相手の体調を判断する。理論ではなく感覚で調べる、故に天才。看護師資格があるので一応の知識もあるはず。

 しかしこんな検診方法のため、勘違いした患者に襲われることもある。ブルジョワ伯爵も現在進行形で勘違いしているわけだ。

 「うむ……戦艦アルセウスが買収されたようだな。私が欲しかったのに。しょうがない。メイディ、今夜は一緒に風呂にだな……」

 「もう、そんな身体で風呂で興奮したら高血圧で死にますよ? あなた他の人と入る時も絶対行為に臨むじゃない、余計に死にます」

 伯爵はメイディを風呂にさそうが、断られた。メイディも伯爵に身体を委ねた方が気に入られるだろうとわかっていたが、看護師としての本能が伯爵の健康を守る方へ働く。伯爵のメタボ体型では、愛人相手に興奮するだけで死ぬ危険がある。高血圧だ。

 一方の伯爵は身体を赦さないメイディを、嫌うかと思えばむしろ気に入っていた。金持ちの息子として生きてきた伯爵は自分を本気で心配して止めてくれる人間に飢えていた。生まれ持った権力が原因で、そんな人は一向に現れなかった。

 「わかったわい、大人しく寝よう」

 伯爵は渋々と自分の部屋に戻る。しかしそこで大人しく引き下がる伯爵ではなかった。水音を聞き付け、シャワールームに向かう。

 「この鼻歌……リリスか?」

 伯爵はシャワールームの曇りガラス越しに見えた影に、生唾を呑んだ。

 

 5年前 クロガネシティ ポケモンセンター

 

 「大変よエルト。私のキャラが定まらないの」

 「記憶喪失なら仕方ないやい」

 イヴとエルトはクロガネシティに到着した。イヴは記憶喪失が原因で、キャラがおかしくなり始めた。キャラとはすなわち自らの足跡。それを失ったり取り戻したりを短期間の内にすれば、混乱も発生するだろう。

 「ここには天才看護師がいるって話だし、診てもらうしかないな」

 エルトはネット掲示板を印刷したプリントを手に、看護師のいる診療所を探す。八賢老のタタラを倒すという目的もあったが、天才看護師にイヴを見てもらうという目的もあった。

 「天才看護師?」

 「何でも触れただけで他の医者が気付かない病気に気付くらしい」

 ポケモンセンターにいると思ったらいないため、クロガネ唯一の診療所を探すことになった。エルトとイヴはその診療所まで向かう。旅慣れないイヴと体力の無いエルトではちょうどペースが同じになる。

 診療所はトタン張りの粗末な建物であった。2人はカロス地方に『クリミアの天使』と呼ばれた看護師が現れる前の、劣悪な戦場の病院を思い浮かべていた。年上かつ博識なエルトと同じ光景を思える辺り、イヴの教養はかなり高い。

 「たのもー!」

 「病院に入る挨拶じゃない」

 2人が診療所に入ると、中は大忙しだった。ポケモンセンターの人間用医院も満杯だったとイヴは思い出す。病人より怪我人、それも鉱夫の数が多い。

 「ベット数も足りないし、どうやら医療器具や消耗品が足りないみたいだな。少なくとも包帯を変えられないくらいに」

 「どうして……?」

 この診療所には何もかも不足していた。これは記憶喪失者の診察どころではない。イヴのキャラ崩壊は命に別状などない。

 「そこのあんたァ! 手伝えることねェかァ? これでも国際基準の看護講習は受けてんだ!」

 「私も何かするわ」

 エルトは近くの看護師に声をかけた。豊かなブロンドを纏めた、清潔感のある少女だ。

 「た、助かります! 看護師長に指示を受けて!」

 「了解ィ! これも原因は八賢老だろうし、イヴ! やってこい!」

 「わかった!」

 こうしてイヴは八賢老討伐、エルトは診療所の手伝いをすることに。エルトは診療所の奥へ行き、看護師長を探す。幼少期、まともに働けない身体であると診断されたエルトはせめて育て屋夫妻を助けられる様にと、キンセツの博物館や図書館で知識を蓄えた。それが今、役に立つ。

 「看護師長ォ!」

 「外部のトレーナーさん? ちょうどよかった。あなたゴローニャ持ってない?」

 壮年の女性である看護師長はエルトを見るなり、奇妙な質問をした。エルトの手持ちにゴローンのダクダがいたが、ゴローニャではない。

 「いや、ゴローンなら」

 「そう、なら通信交換で進化を! こっち来て」

 エルトは看護師長に連れられ、ある部屋に移動する。そこはさすがに普通の建物であった。中にはベッドがあり、そこに少女が寝ていた。彼女は多数の機器に繋がれており、命が危ないとよくわかる。

 「これは?」

 「ハッシーさん! あなたのお父さんのゴローニャが見つかりましたよ!」

 「ハァ?」

 困惑するエルトもこの状況を見て、話を合わせざるをえない。

 「お父さん……のゴローニャ……?」

 人工呼吸機越しの声は掠れていた。必死に声を出すたび、人工呼吸機は曇る。

 「そうですよ! ほら、このトレーナーさんが見付けてくれたんです!」

 「トレーナーさん? お願い……私のケーケー、外に…こんな場所じゃ……」

 ハッシーはエルトに向かって訴える。力を振り絞り、一つのモンスターボールを差し出した。

 「よし、じゃあ交換だ」

 エルトはそのボールを手に取り、代わりにダクダのボールを渡す。2人は同時に、ボールからポケモンを出した。

 「ダクダ、お前の力が必要だ。愛あるトレーナーに勇気を」

 交換を経て、ゴローニャに進化したダクダにエルトは語りかける。自分が死の際に立ちながらポケモンのことを思う。エルトはその愛に答えた。ハッシーはケーケーに世界を見てもらいたかったが、自分ではそれは不可能と悟り、エルトに託した。

 「ケーケー、行こう」

 ケーシィのケーケーがダクダの代わりにエルトの手持ちになった。ハッシーが死ねば再びダクダを迎えに行くことになる。それを理解した上でエルトはハッシー言った。

 「ダクダを返してもらわずに済むことを祈る」

 エルトは部屋を出た。そして看護師長に全てを聞いた。

 「ハッシーさんのお父さんは鉱夫だったんです。ですが、タタラが労働者を減らしてかつ不満が出ない様にしようと、事故を装って多数の鉱夫と共に生き埋めに……」

 「うわ、リストラ(物理)と笑えん」

 タタラは労働者を減らしたかったが、ただクビにすると不満が出る。そこで事故のフリをして生き埋めにしたのだ。

 「ハッシーさんもその時お父さんの忘れ物を届けに炭鉱にいまして……全身を押し潰されながらなんとか一命だけは。ですが、いつまでもつか……」

 「チッ。死んでも尚忘れ物を後悔せにゃならんとはなァ。さて、イヴがタタラを無惨に殺してくれることを祈るか」

 エルトは全てをイヴに託し、診療所の手伝いに回った。タタラを潰さねば、罪無き忘れ物をしたハッシーの父は報われないだろう。

 

 クロガネ炭鉱

 

 イヴはクロガネ炭鉱を歩いていた。粉塵まみれの環境故、マスクをしながらゆっくり進む。前に読んだ本では炭鉱の社長であるヤーコンなる人物が地下の奥深くにいると書いてあり、同じ様な立場のタタラもそこにいるだろうと思ったのだ。

 「いない」

 しかし、期待は外れた。タタラは地下にいなかった。無駄足になった。それもそのはず、ヤーコンはどん底を忘れないために地下にいるのであって、タタラにそんな高尚な精神は無かった。

 「仕方ないわね。他を当たりましょう あれ、リオル?」

 引き返そうとイヴが後ろを向くとリオルがいた。確かリオルはここに棲息していないはずだ。

 「おーい、ルカ! 待ってくれ!」

 そのリオルを追って、エルトと同い年くらいの少年が現れた。鉱夫の格好をしており、ここで働いている様に見えた。

 「あなたのリオル?」

 「そうなんだ。私はゲン。わけあってここで働いている」

 「私はイヴ。タタラって人、知らない?」

 少年はゲンと名乗る。リオルのルカは終始ゲンにツンケンした態度を取る。

 「ルカがなかなか懐かなくてね。私もタタラを探している。奴はある戦艦を動かすために石炭を欲しがっている」

 「戦艦?」

 「現在、建造中の戦艦アルセウス。これを動かすためさ。それを私は止めたいんだが、タタラが見当たらないんだ」

 ゲンはタタラの野望を止める為に炭鉱に潜入していた。しばらくイヴとゲンは話をした。ルカは何と無くイヴを気に入っている様なそぶりを見せた。

 「タタラは戦艦アルセウスでとにかくいろいろなとこに攻め込みたいみたいだ」

 「まるで戦争ごっこね。戦艦の仕様も埋葬状態。でもタタラの居場所なら予想できる」

 「え?」

 「下にいないなら、上よ」

 「単純だが、ありそうだ」

 馬鹿と煙は高いところが好き、ゲンが持っていた資料にあった戦艦のスペックを見たらタタラが馬鹿なのはわかるのでそういう理論になった。図を見るとパドルが付いているが、重量級戦艦にまでしたのに動力剥き出しとか馬鹿だ。エンジンもマフラーごと剥き出し。

 馬鹿設計に嫌気が差したので、チャッチャとタタラを倒すことにした。2人が立ち上がって外に出ようとした時、爆発の音が響いた。

 「これは?」

 「天井が崩れる!」

 炭鉱の天井が崩れようとしていた。イヴの上に岩盤が落下して来る。ルカは走り、イヴを助けに行く。その時、ルカに変化が起きた。

 「進化した!」

 リオルだったルカはルカリオに進化した。バレットパンチで岩盤を破壊し、イヴを助けた。

 「ルカ!」

 「なるほど、イヴの高い波導に共鳴したのか」

 ゲンは目をつぶり、イヴの波導を確かめる。波導使いは波導を見ることが出来るのだが、イヴの波導は強いということがわかる。波導は強弱あれ、物質全てが持つものだ。

 「はどうだん!」

 ゲンもはどうだんを撃ちながら脱出を図る。鉱夫達を救出し、イヴ達は上を目指した。

 「私の言う様にやるんだ。生き埋めになってる人を探そう」

 「ええ。波導は我にあり!」

 イヴは初心者が波導を操る方法をゲンから学び、生き埋めの人がいないか探した。この言葉が初心者波導使いに必須だったりする。原理は未だ不明なのだが。

 「はどうだん! なんか出た!」

 はどうだんをイヴも撃てた。これはなかなか難しいのだが、いきなり撃てるイヴは波導の量、才能共に高いと見られる。ただ、まだコントロールは出来ていないみたいで上手く当たらない。

 「初心者はまずこれだ。はっけい!」

 ゲンが見せたのは手先だけに波導を出すはっけい。リオルも最初に覚える、波導より扱い易い波紋の技だ。手をかざすだけで岩が割れた。

 「はっけい! い、威力が!」

 イヴもはっけいを試すが、威力が高すぎて救助活動には危険だった。岩が砕け、下の地面にもダメージが入った。ルカはバレットパンチで岩を壊している。

 鉱夫を多数救助しながらイヴ達は出口に着いた。そこでは、石炭を積んだ列車が出発しようとしていた。タタラは石炭を取り終えた鉱山を鉱夫ごと始末しようとしたのだ。

 「間に合わない! あ!」

 ルカが全力で走っても、機関部を破壊して列車を止めることは出来なさそうだ。イヴはあることを思い付いたので試してみる。

 「波導って物を伝わるかな?」

 線路を掴み、イヴは波導を流してみる。すると、列車は線路に接してる部分から破壊されていき、バラバラになった。

 「そうか、ルカリオが鋼タイプを得たのも波導が金属を伝わり易いからなのか!」

 ゲンは波導とははどうだんで飛ばすものとばかり思っていたため、そこに気が付かなかった。操縦席が爆発し、運転手が投げ出された。どうやら、この列車にタタラは乗っていないようだ。

 「ぐっ、だがタタラ様は既にミオシティ! そこを通るにはハクタイにある役場の許可が……ぐふっ!」

 何か貴重な情報を漏らしながら運転手は気絶した。

 

 イヴはルカに気に入られたため、ゲンはイヴにルカを譲った。新たな仲間を手にしたイヴは、エルトと合流する為に診療所ふ戻った。

 「やれやれ、ゲイリーの采配もなかなかだ」

 そこには、『ポケモン医療旅団』の乗り物が止まっていた。イヴも存在は新聞で聞いたことがある。ホウエン刑務所に投獄されたゲイリーという人物が、釈放と同時に刑務所内で形成したグループ『ゲイリー一派』の犯罪知識を活かして産んだ犯罪防止グループの一つだ。

 「『ポケモン犯罪防止委員会』もいるな。八賢老は犯罪者扱いか」

 ポケモン犯罪防止委員会もゲイリーが作った組織。エルトも刑務所でゲイリーと面識があり、一応組織に籍は置いてある。

 「すげー! 神殺しのエルトだ!」

 「本物だー!」

 エルトは犯罪防止委員会の少年少女に囲まれていた。イヴはエルトの2つ名を初めて聞いたので首を捻る羽目となる。

 「神殺し?」

 「いやな、5年前に神を名乗る中二病を拗らした奴を倒したって話だよ。その時、俺はそいつから神殺しと名指しで警戒されていたからそれが由来だ」

 エルトは神を殺したつもりは無いのだが、組織の士気とかその他もろもろの都合で神殺しの名を甘受している。組織にはフラッグシップが必要だ。

 「さあさあ、あんたら警備に戻んな」

 「マツリカ姉さん! 久しぶり!」

 集まるメンバーを一人の女性が散らす。妖艶な美女であり、艶やかな黒髪を纏めている。黒いブラウスに赤いネクタイ、黒い革のパンツといった服装はスタイルの良さを際立てる。エルトが言うに、マツリカという名前らしい。

 イヴは同性ながら、彼女の美しさに見取れてしまった。細い指で華麗にパイプを絡め、潤んだ唇に運んで一服する。

 「しかし酷いもんだね。若者を使い捨てれば未来は無いよ?」

 「それが八賢老さ。ジョンだってこの前、テレビで就活中の大学生に自分は大手入社したくせに『3K職場行け』っていうくらいだし」

 エルトとマツリカは久しぶりだからか積もる話をしていた。マツリカの仕草一つ一つが美しいと、イヴやメンバーは見つめていた。

 「今、診療所の人達は休んでる。イヴを診てくれるってさ」

 「え?」

 そして、どうやら当初の目的を果たせそうだ。元々、ここにはイヴの診察で来ていたのだ。

 イヴはエルトを置いて診療所の診察室に入る。そこでは、先程エルトが事情を聞いていた少女がいた。

 「あらあら、あなたが今日の患者さん? 私はメイディ。ここの看護師なの」

 イヴは黙って頷く。診察室の椅子に2人は向かい合って座る。イヴは聴診器を当ててもらうためにコートの前を開けようとするが、メイディはそれを止める。

 「脱がなくていいわ。寒いでしょ?」

 「?」

 戸惑うイヴに近寄り、メイディは一瞬で唇を奪う。効果音は『ズキュウウン!』一択だろう。

 「んっ?!」

 「んん……柔らかい、最高っ……!」

 メイディは舌を入れてイヴの唇を貪る。ようやく口を離すと、2人の唇の間には唾液が糸を引いていた。

 「う、噂通り……ひゃっ!」

 「うーん、一応、間違いなく健康そのものなんだけど……言いにくいね。聞きたい?」

 ようやく一息付いたイヴの、タイツに包まれた内股を撫でながらメイディが診察の結果を話す。

 「な、何?」

 「あなた……」

 メイディの言葉に、イヴは絶句した。

 

 現在 ブルジョワ後宮

 

 「まったく! 何考えてるんですか!」

 「どうも、すいませんでした」

 リリスのシャワーを覗こうとしたブルジョワ伯爵は即効でバレた。しかし、リリスが「一緒に入る?」と誘い、そのまま共に入浴することとなった。

 ここでメイディの恐れていた事態が発生する。興奮の絶頂に達した伯爵が風呂の温度もあり、脳の血管を切ってしまったのだ。

 何とか生きてたので、風呂場で説教をするだけで済んでいる。リリスは身体にバスタオルを巻き、メイディが伯爵に説教する様子を見ていた。

 「ふーん、まあいいじゃない。生きてたんだし」

 「今回は本っ当にたまたまです。普通死んでます」

 伯爵はそそくさと逃げ出す。どうしようも無い奴だ。

 メイディは伯爵がいないことを確認してナース服を脱ぎ始めた。いろいろ忙しくて、汗だくになっていたのだ。風呂場に来たついでに汗を流そうと考える。看護師は衛生に気を使うため、メイディは可能な限り日に2回ほど入浴する。

 診療所時代は忙しくてとても無理だったが、働く場所が無くてここに来てからは皮肉なことに時間が取れる。

 「戦艦アルセウス、イヴって元気かな?」

 メイディは戦艦アルセウスとの繋がりで、一番忘れられない患者を思い出していた。




 ブルジョワ後宮の秘密

 ブルジョワ後宮には愛人のための部屋だけではなく、様々なシュチュエーションを楽しみたい伯爵の願望からいろいろなプレイルーム(意味深)がある。
 部屋の構成は愛人の待機部屋が各1つ。そして生活スペースも各1つ。その手の漫画読みすぎな伯爵が作ったプレイルーム(意味深)は学校の教室や特別教室を模したものなど枚挙に暇が無い。『牢獄』や『トイレ』みたいなアブノーマルな部屋もあり、これに付き合ってるのはリリス、セイレン、キャサリンくらい。
 浴場は大浴場、シャワールーム、普通の風呂場、ユニットバスとちょっとした水回りのショールームみたいな品揃え。
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