ハクタイの森
この森の注目ポイントはなんといってもイーブイをリーフィアに進化させられるところや森の洋館だ。
森の洋館には幽霊が出るとの噂で、彼らと仲良くなったトレーナー曰く、ここで幽霊達とアニメを作ったとのこと。
ハクタイの森 森の洋館
ハクタイの森には、捨てられて随分経つ洋館があった。そこには幽霊が出るとか、主は毒殺されたとか、犯人はポケモン屋敷のウラヤマだとかの噂があった。
そこの不自然なほど綺麗に整理された寝室で寝息を立てる少女がいた。毛布を胸元で押さえる腕や布団から出る肩、組まれてスルリと毛布を滑らせる脚が素肌を晒していることから、彼女が一糸纏わずに眠っていることがわかる。
「んぅ……朝?」
人が来ないからこそその少女、オリジナルイヴはそこで夜を明かす選択をした。エルトとの戦いの後、寄り道をせずにキッサキの自宅まで向かって、今はその途中だ。まだ眠いのか、彼女は毛布に包まってモゾモゾ動く。
「んんっ、くっ、ふぐっ、エルトっ…ああっ」
そんな状況でも、オリジナルイヴはエルトを想っていた。彼こそ最高峰の組織を生み出すのに相応しい伴侶と信じて疑わなかった。
「んくっ、あぁ! はぁ、はぁ……」
興奮が絶頂に達した彼女は濡れた嬌声を上げ、しばし息をつく。白い柔肌はジットリと汗をかいて湿る。
今は空を飛ぶポケモンを所有しておらず、信号で自宅にいたリザードンを呼び寄せたのだ。その待ち合わせ場所としてここを選んだ。行きは地下通路での移動を試すため、置いてきた。
だが地下通路で目的地へ移動しようとすればかなりリサーチが必要なので、今後は空を飛ぶことにした。
「汗かいちゃった……シャワー浴びよっと」
オリジナルイヴは素肌に毛布を巻き付け、ベットから下りる。普段のレザーの服は寝苦しい上、寝巻を持ち合わせていなかったから何も着ずに寝たのだ。
目は完全に開かず、唇は唾液に濡れて艶やかに輝く。長い黒髪は寝癖でボサボサだ。先程の興奮と眠気で頭がぼやけていた。身体が熱く火照り、心臓が激しく高鳴る。
「あぅ、しまっ…た」
オリジナルイヴはある事情により、心身相関が上手く制御できず、急に興奮したりすると身体に悪影響がある。既に収まった興奮に反して心臓の鼓動が高鳴り、熱暴走に近い。フラフラと足元も覚束ずに部屋を出た。
寝室からしばらく歩けば、シャワールームに着く。スリッパを履き、そこへ向かえばまた不自然に綺麗な脱衣所に向かえられる。オリジナルイヴはスリッパを脱ぎ、ハラリと毛布を落とす。白い肌がヒンヤリとした外気に晒された。
シャワールームは豪華だが、何故かしばらく使われていないはずなのに綺麗にされていた。それに、この洋館にいると誰かに見られている様な気がしてならない。ヒタリ、とタイルに裸足で踏み込む。
「……?」
水や電気、さらにガスも通っていた。奇妙な洋館だが、時間が時間だけに泊まるしかなかった。不思議なことに、湯舟にはお湯が満たされていた。シャワーカーテンにもカビ一つ無い。
「んあ……」
シャワーの蛇口を開いてお湯を被ると、彼女は声を漏らした。興奮にぼやけた頭が冴え渡る。何らか外部から刺激があれば、この鼓動は収まる。しかし身体への負担は大きく、ふらついてタイルに座り混んでしまう。
「うぅ……」
シャワーで身体を濡らされながら、自分のか細い身体を抱いて震える。呼吸を整えようとしても、自分では無理だった。身体が整えてくれるのを待つしかない。
しばらくして体調が回復したオリジナルイヴは湯舟に浸かる。強張った身体が解れていく感覚もあったが、さらに視線を強く感じた。ジットリとした空気が素肌に張り付く。
「っ……!」
緊張が限界に達したオリジナルイヴはシャワーカーテンを剥ぎ取り、それを纏って辺りを見渡す。濡れた身体にカーテンが張り付き、肌の色が透ける。
「はぁっ、はぁっ……」
無数の視線が彼女を刺す。危険を感じたオリジナルイヴはシャワールームを飛び出る。リザードンが既に迎えに来ている。早くここから出なければならない。
十数時間後
「サイキッカーの中にはエスパータイプ以外との意思疎通を試みた人がいて、炎を操ったらしいの」
「革命の炎だろ? 知ってる。俺が無意識に出す炎の原因候補ナンバー1だ」
イヴ、モミとエルトはハクタイの森を抜けるべく歩いていた。タタラを追ってミオに行く為に、ハクタイ役場で交通許可が必要なのだ。許可をくれなければ潰すまで。
「なにこれ?」
「八賢老の印鑑、何かに使えると思ってジョンから盗ったの」
イヴはある印鑑を手にしていた。八賢老のメディア王、ジョンが使う印鑑だ。パルシェンの貝の尖った部分を加工したものである。
「バイアから盗み忘れたけど」
「流石に持ち歩かんだろぉ? ハクタイに家があるっていうし、そこでパクろうぜ」
とんでもないことを計画しながら、一行は森を歩く。八賢老の承認を受けた証に、この印鑑が必要なのだろう。多分。
「しっかしメッキリ暗くなったな」
「お化けでも出そう……」
ハクタイの森は日光を閉ざし、夜になれば一気に暗くなる。イヴ達はソオノで発電所を解放してから森に来たので、夜遅くなってしまった。
「や、やっぱりやめにしません?」
「もうすぐ出口ですよ」
モミはイヴに提案する。そもそも彼女がイヴ達と森を抜けようとしたのは、お化けが出るかもしれないから。モミのピンプクではゴーストタイプのポケモンを倒せない。
「あ、出た」
「きゃああっ!」
予想通りというべきか、ムウマが出現した。脱ミミロルの如く逃げるモミを追い、イヴとエルトも走ることになる。
「全く面倒な……」
「待って下さい!」
モミは非常に足が速く、小柄なイヴと体の弱いエルトでは追いつかない。そこでポケモンに頼ることにした。
「ルカ、お願い!」
「ラド! モミを追え!」
ルカリオのルカとムクバードのラドがモミを追う。この2匹が辿り着いたのは、ボロボロの屋敷だった。
「あ、お屋敷!」
「なんだこりゃ?」
モミはここに逃げたらしく、ルカとラドは入口で待機していた。イヴとエルトはそこに入ることになった。
「よっと」
エントランスホールにグッタリとしたモミがいた。この洋館は森の出口に近い。かなり走っただろう。
「明るい……」
イヴは入ったばかりの屋敷なのに、明るいことを怪しむ。モミがいたエントランスホールだけではなく、奥の食堂まで明るいのだ。
「誰かいたの?」
「まさかぁ」
モミを放置し、イヴとエルトは食堂に足を踏み入れた。カリカリと何かを書く音が聞こえ、紙が動いていた。
紙にはイラストや文章が書いてあり、エルトがそれを見るなり呟いた。
「これは、アニメの絵コンテか?」
「絵コンテ?」
「アニメの流れをイラストと共に記した紙だ。それに見ろ」
そしてエルトはイヴに、透明なシートを見せた。そこには特殊な絵の具でイラストが描かれていた。似たようなイラストが複数枚あり、それらは地味に違う。
同じ人物が描かれているが、口元だけ微妙に違う。これをパラパラ漫画の様にめくると、人が喋る映像になった。
「ここではアニメが作られているらしいな」
「えぇ?」
エルトの結論は突拍子も無いものだった。こんなボロボロの洋館でアニメを作っていたというのか。
「デボンスコープがここにある」
エルトはデボンスコープを覗き、辺りを確認する。食堂の長机では、ゴーストやゲンガーなどが作業をしていた。
「本当だ」
見つかったゲンガー達は慌てふためく。しかし、イヴ達に敵意が無いとわかると、ゆっくり近付いてくる。
『人間がこんなところに何の用だ?』
ゲンガーがメモに文字を書いて伝える。アニメを作るだけあり、人間の言葉を理解しているようだ。
「たまたま立ち寄っただけだ」
『そうか。俺は原画のゲンガー』
ゲンガーは原画を担当しているらしい。また、ゲンガーは彼一匹なので監督も勤めているようだ。
「ポケモンがアニメを?」
ポケモンがアニメを作るという状況にイヴは驚きを隠せない。エルトは彼らについて解説を始めた。
「なるほど、ここは最近ネットで噂の『ゴーストスタジオ』の製作所か。神出鬼没のアニメーターとして話題だ」
「そんなことも……」
ゴースやゴーストの中に、一際光る影をイヴは見つけた。見覚えのないポケモンであるのは確かだ。
「これまた最近噂のロトムだねぇ。機械のモーターに入り込んで悪戯するんだ」
イヴがロトムに触れようとすると、バチッと静電気みたいに痺れた。ゴーストだけではなく、電気タイプも含んでいるらしい。
『始めまして。ロトムです』
ロトムはパソコンに文字を打ち込んで挨拶。名前は人間であるイヴ達に伝わりやすいように、自分が人間に呼ばれている名前を使っていた。
『このスタジオでは機械操作担当です』
『こいつのおかげで貴重な資料を手に入れられたのよ! 見ろよ!』
ゲンガーがデジカメをエルトとイヴに見せた。そこには、いくつか少女の姿が写っていた。動画や、入浴している写真もある。
「オリジナルイヴ……」
その少女はオリジナルイヴ。エルトはここにオリジナルイヴがいたことを知り、辺りを見渡す。今はいないのか。
「アイン、シャドーボール」
イヴはいきなり、ゲンガー達をイーブイのアインが出すシャドーボールでぶっ飛ばした。
「おいおい、こいつらに悪気は無いんだ。許してやれ」
「これで許すわ」
「お前らも怖いトレーナーには気をつけろよ」
とりあえず因果応報。ゲンガー達が純粋に資料を求めていたとしても、盗撮はダメ、ゼッタイ。
『少しアニメ作りを手伝ってほしいんだ。締め切りまで時間がない』
「締め切り?」
『この前サイトに掲載した投稿予定日までに仕上げたいんだ。だがポケモンの資料が無くてな』
ゲンガーはエルト達にアニメ作りを手伝ってほしいようだ。彼らは森の洋館に篭っているせいで、資料がなかなか手に入らない。インターネットでも限界がある。
「なら手伝おう。いいよな、イヴ」
「仕方ないわね……」
エルトはイヴに了解を取る。モミはこの場にいないのでスルーだ。イヴも渋々了解し、アニメの資料集めがスタートした。
『まず、なるべく技の資料がほしいんだ』
「なら、アイン!」
ゲンガー監督は技の資料を欲しがった。撮影は洋館の裏庭で行われた。ロトムがカメラとライトを操作し、夜にも関わらず昼の様な明るさで作業が始まる。
「まずは、たいあたり!」
一つずつ、イヴはアインの技を見せる。たいあたりでクッションの的を攻撃。
「続いてシャドーボール!」
アインはシャドーボールで空き缶の的を射撃。当初は不要と思われたが、ゲンガー達はシャドーボールをレベル不足から覚えておらず、ロトムは自力で覚えられない。
「続いてかみつく!」
今度はクッションにかみつく。これを喰らっていたらとゲンガー達はゾッとした。アインは物理に強い傾向がある。
「とっしん!」
即座にクッションへとっしん。これがアインの技だ。次に出て来たのはルカリオのルカ。
「はっけい!」
手先から波導を出すはっけいで空き缶を吹き飛ばす。
「メタルクロー!」
はっけいで浮かせた空き缶をメタルクローで切り裂いた。切り裂いた破片に向け、ルカは波導を放つ。
「あくのはどう!」
黒い波導が空き缶の破片を飲み込み、完全に消滅させた。
「ボーンラッシュ!」
そして、骨の様な長い棒をルカは出した。それを振り回し、見事な演舞を演じた。
「次は、ガスト!」
次にイヴが出したのはフワンテのガスト。新たな仲間の技をお披露目だ。
「シャドーボール!」
ここはアインと同じ、ゴーストの代表技。わざマシンが出回っているので、多くのトレーナーがゴーストやエスパー対策に使う。
「かぜおこし!」
ベットのシーツで出来た帆を風ではためかせる。飛行タイプも持つフワンテならではの技だ。ただ、フワンテの飛行技は充実していないのが難点だが。
「おどろかす!」
「ひゃあああっ!」
今度はシャドーボールに次ぐゴースト基本技のおどろかす。騒ぎを聞き付けたモミを驚かせた。
「小さくなる!」
今度は自ら空気を抜いて小さくなった。これは回避を高める技である。これでイヴの手持ちの技は全て出し終えた。
「今度は俺か。見てろよ、ケーケー。頼むぞ、ハナコ!」
エルトはケーシィのケーケーに見学させ、モウカザルのハナコを出して技を見せる。
「マッハパンチ!」
まずは代表技、マッハパンチ。先制を取る技であり、かなり速い。
「かえんほうしゃ!」
お次は炎の代名詞、かえんほうしゃ。わざマシンはだいもんじほどでないが流通しているので、よく使われる。
「シャドーボールにしてもかえんほうしゃにしても、技マシンって貴重じゃない?」
「俺にはコネがあるんでねぇ」
アインのシャドーボールなど自力で覚えられない技、ハナコのかえんほうしゃなど習得レベルに満たない技をエルトのポケモン達はホイホイ使っていた。わざマシンは貴重であるとモミが疑問を持つも、エルトにはコネがあったのだ。
わざマシンの入手はポケモンリーグに参戦するトレーナーの中でも課題とされ、その大半が高価格による取引やコネによる入手のため、ポケモンリーグが金持ちの道楽となる現象に拍車をかけた。
未だわざマシンは貴重で、こればかりはリーグ本部も解決できない問題だった。5年後にひでんマシンの技術を転用した使い捨てない新型わざマシンが開発されるまでの話ではあったが。
「かえんぐるま!」
今度は炎を纏った回転攻撃。
「フェイント!」
そして守りを破るフェイント。エルトが育てただけあり、一通りの技が揃う。
「次! ラド!」
次はムクバードのラド。エルトは銃みたいなものを取り出し、それを撃つ。それが膨らみ、正体を現した。鳥ポケモンを模った風船が浮かぶ。
「ラド、つばめがえし!」
つばめがえしで正確に風船を破壊し、ラドは急降下する。
「かげぶんしん! こうそくいどう!」
かげぶんしんとこうそくいどうを同時に行い、ラド自身がスピードで捉え難いのに、さらに分身で本物がわからない。
「でんこうせっか!」
高速で地上の的を切り裂く。スピードに重きを置いた育成の成果が出ていた。
「次はディアドラ!」
最後にブイゼルのディアドラ。捕まえたばかりなのであまり鍛えていないが、エルトはなかなか見込みがあると思っていた。
「アクアジェット!」
まずはアクアジェットで小手調べ。ブイゼルを代表する技だけに、野生の個体でもなかなかの完成度だ。
「続いてみずてっぽう!」
今度はみずてっぽうで空き缶の的を撃ち抜く。が、百発百中とはいかない。
「なら、おいうち!」
今度は自走するラジコンの的においうちをかます。これは見事命中。
「ソニックブームだ!」
そしてソニックブーム。これもみずてっぽうと同じくらい外れた。エルトはノートにディアドラの癖を記録する。徐々にディアドラのことがわかってきた。
「なるほど、やっぱり物理の方が得意か」
「あ、雨」
中庭で資料収集をしていると、雨が降り始めた。急いで全員が洋館のエントランスに撤収する頃にはザンザン降り。バケツをひっくり返した様な雨になった。
「雨風だけには強いのね。機材があるから?」
一見するとボロい洋館だが、雨や風にはびくともしない。機材を保管する為に、ゲンガー達が修復したのだ。イヴは洋館の頑丈さに感嘆するばかり。
「これは凄いですね!」
「デボンコーポレーションの試作品だ。ダイゴがくれるんだよなぁ」
モミはエルトの使った道具に興味があった。ポケモンを訓練する道具のようだが、鳥ポケモンのバルーンを発射する銃に自走するラジコンの的である。
「これはデボンコーポレーションが開発した訓練アイテムでさぁ。あと、俺の着てるブリーダーコートとか!」
エルトは自慢のアイテムを見せびらかす。彼が着ている黒いコートはブリーダー用の物なんだとか。
「高きはオーバーヒートから低きはぜったいれいどまで耐える対高温低温素材! ザングースの爪も防ぐ防刃性能とハブネークの牙をも毒すら通さない堅牢性! ライボルトの電気を吸収し、マルノームの胃液にも、海底の水圧にも耐える! 内部の特殊素材によってボスゴドラの激突の衝撃も吸収! フードはバクオングの群れに囲まれても平気な対騒音機能付き! ポケット多数でアイテムの持ち運びが便利! 収納時はモンスターボール縮小拡大の技術を応用したカプセルで中のアイテムごと縮小!」
「な、なんだか凄い……」
「ただし! 素材の加工が物凄く大変だから商品化は不可能!」
「でしょうね」
イヴは途中まで凄いと思った自分に腹が立った。よく考えれば、その素材をコートに仕立てて内部に特殊素材や対騒音機能を入れたり縮小機能を積まないといけないから、とんでもない代物だ。自分を生み出したクローン技術がかわいく見える。
「むっ!」
「どうしたの?」
「災害レーダーが災害をキャッチした!」
エルトはコートから妙な機械を取り出す。安そうなアンテナがクルクル回る、悲しい機械だ。イヴはそのモニターの情報を見る。
「洋館の近くで土砂崩れ、巻き込まれる恐れあり?」
「あ、知ってますよ! デボンの災害レーダー!」
今まで空気だったモミが話に割り込む。デボンの商品はシンオウでも有名なのだ。
「あらゆる土地の災害危険箇所のデータを内蔵、現在地と天候から所有者が巻き込まれる可能性のある災害を知らせる探知器ですよね?」
「こいつが反応したら避難推奨レベルだが……」
イヴ達は洋館の西端まで移動。そこの客室の窓から外を確認した。すると、岩が大量に崩れて洋館に迫ってくるではないか。崖の上にあった岩が土砂崩れで流れてきたのだ。
土砂なら森の木に防がれ、元々木の根のお陰でさほど土砂が崩れなかったのもあり、そこまで来ない。しかし岩は木々を薙ぎ倒す。
「岩雪崩!」
「止めるぞお前らぁ! イヴとモミは別の場所を警戒だぁ!」
エルトが手持ちやゴーストポケモン達に呼び掛け、岩を破壊しにいく。ディアドラはとくせいの『すいすい』が発動し、アクアジェットも合わせて獅子奮迅の活躍を見せる。岩より早く動き、あっという間に破壊する。
ゴーストポケモン達の助けがあるとはいえ、ディアドラ無しでは戦線を支え切れなかっただろう。
イヴとモミは別の方向から迫る岩の迎撃を開始すべく、東の客室の窓に走った。ゲンガー、ロトムも彼女達のアシストにまわる。
「来る! ルカ!」
ルカのパンチと自分の波導弾で岩を破壊するイヴ。しかし彼女の波導弾はエネルギーばかり大きくて制御が聞かない。ルカへの危険を考えれ、アインやガストのシャドーボールによる迎撃に切り替える。
「私にだって!」
イヴはなんとしてもここを支えたかった。いつもエルトに頼り切りだ。自分の真実を突き付けられた時、それが可能性の話でしかないのにふさぎ込んでしまった。そんな時もエルトに支えられた。だから、今度くらいは支える。
ゲンガーのシャドーパンチやロトムの電撃がルカをフォローする。しかし、他のゴーストポケモンがアシストしても岩に押され気味だった。そんな中、全員の段幕を抜けて岩がイヴ達に迫る。
「アイン!」
踊り出たのはアイン。何か石の様なものを投げ捨て、彼の体が輝き、驚くべき変化が起こる。岩が十字に切り裂かれ、勢いを失う。そこをシャドーボールの段幕が襲い、岩を破壊した。岩が砕けた砂埃が雨で静まる時、それが姿を現す。
「アインが……!」
イーブイだったアインのシルエットは一回り以上も大きくなり、周りには澄んだ空気が流れる。砂埃に汚れた空気を綺麗にしている様にも思えた。
『リーフィア。しんりょくポケモン。植物のように光合成をするため、リーフィアの周りは澄んだ空気に包まれている』
アインはリーフィアに進化していた。にほんばれで洋館一帯を晴れにして雨を止める。はっぱカッターの乱射で岩を次々に砕く。
「もしかして、この岩にはイーブイを進化させる電磁波があるのでしょうか?」
砕けた岩の破片を拾い、モミは月明かりに照らす。緑の岩はヒンヤリと気持ちいい。
アインの活躍もあり、森の洋館は守られた。全員が食堂に集まり、防衛戦の打ち上げをした。
「ハクタイの森の岩にはイーブイを進化させる力があるんだ。エーフィやブラッキーへの進化もあるから『かわらずのいし』を持たせてあったが、どうやらアインはそれを自ら捨てて進化を望んだようだな」
話題はアインの進化に集中する。エルトによると、アインは自ら進化を望んだらしい。進化を拒むポケモンも多くいるため、進化に対する考え方はポケモン次第だ。
「明日にはハクタイにつくわね」
「許可出なきゃ潰すまでよぉ!」
イヴとエルトは遂にハクタイへ辿り着く。既にイヴは記憶を取り戻すことより、八賢老を倒すことが目的になっていた。
シンオウ暗黒時代は徐々に終わりへ向かっていた。
オーバーヒート症候群
心身相関において、興奮と身体の変化を制御出来なくなる病気。主に心臓の病気で、鼓動を上手く納められない。
早期なら治療法もあるが、末期は治せない。原因もハッキリわかっているのだが……?