ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 現在の状況
 エルト達はミオへ逃れたタタラを追うべく、まずはミオへの交通許可を貰うべくハクタイへ向かう。
 八賢老はテンガン山を通行止めにしており、通過には3人の許可が必要。エルト達に降りるはずもなく、印鑑の強奪という手段を謀る。


31.ハクタイ急襲! 八賢老の根城!

 ハクタイシティ

 

 イヴ達はハクタイシティに到着した。ここでの目的は役場でミオまでの交通許可をもらうことだ。そして、バイアの自宅から印鑑を持ち出すこと。

 モミと別れたイヴとエルトは、朝一で役場であるハクタイビル前にいた。役場なので朝一とはいえ9時だ。後にこのビルはギンガ団なる団体が使用することになるが、それはまた別の話。

 役場に入ると、『THE☆お役所仕事』みたいな空気が流れる。独特の空調臭さがある。人は職員以外いない。

 「すいません、ミオまでの交通許可を……」

 「番号札取ってお待ち下さい」

 人がいないのに、エルトは番号札を取る羽目に。さすがお役所。イヴが番号札を取ると、ピコーンと音がして2という番号札と同じ番号が表示される。

 「次の方どうぞ」

 「いるのかこれ?」

 コントみたいな流れでエルトとイヴはカウンターに辿り着く。目的はミオへの交通許可だ。

 「ミオまでの交通許可を……」

 「すみません、これ2階の交通課です」

 まさかのたらい回し。嫌な予感がしたが、2人は2階へ。交通課の事務所も人がいない。

 「ミオまで交通許可を……」

 「番号札取って下さい」

 お決まりなやり取りの後、イヴが番号札を取る。ピコーンと、番号札と同じ2の番号が表示された。

 「次の方」

 「いるのかこれ?」

 さすがお役所。これがお役所か、とエルトとイヴはシミジミ感じた。エルトの住んでいるキンセツシティは子供が多いため、お役所もポップな仕上がりだった。職員も真面目に働いている。

 そこの職員のお姉さんが「こっちに来てから仕事が楽しい」とか言っており、いかに普通の役場が退屈かを物語っていた。

 「それは3階の生活課です」

 「またか」

 再びたらい回し。今度は3階の生活課へ。

 「交通許可を……」

 「番号札取って」

 イヴが番号札を取ると、ピコーンと番号札と同じ2という番号が表示される。

 「次の方」

 「焼くぞ」

 「ミオの交通許可なら1階の総合課です」

 そしてまたたらい回し。ふりだしへ戻る。エルトが焼くぞと言うと、あまり冗談に聞こえない。

 

 結局、許可は八賢老しか出せないらしい。用紙だけ貰って、八賢老の下へ行く必要がある。印鑑ならジョンのものがあるが、生憎朱肉がない。

 「バイアの家に朱肉を取りに行こう」

 当初の目的通り、イヴとエルトはバイアの自宅へ向かった。朱肉の為だけに敵の根城へ行く、大胆な主人公御一行である。

 「そういえば、私の番号札って朝一に来たのに2だったの」

 「そうか。誰か来たんじゃないかな?」

 イヴは必ず2だった番号札に疑問を持ちつつ、バイアの自宅を見る。無駄に広い庭と家だ。これは面倒臭い。周りは高い塀で囲まれ、門の前にはガードマンがいる。

 「誰かいるぞ」

 「ニンジャ?」

 そのガードマンと誰かが話をしている。イヴと同い年くらいの少女みたいだが、忍者みたいな格好をしている。そう、彼女はあらかさまにニンジャなのだ!

 「すいません、バイアさんに交通許可を」

 ニンジャなのに正面から堂々と交通許可を貰いにいく少女。短い髪や衣装の色合いはニューラに似ている。ニューラの耳と同じ色のマフラーもしていて完璧にニンジャ。

 「アイエエエ!?」

 「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 「コワイ!」

 「ゴボボーッ!」

 昼間を迎えようとするバイア邸のガードマン達は恐怖のあまり容易に失禁し、嘔吐した。

 「大丈夫かこのガードマン」

 エルトが心配するほど情けないガードマンである。色合いからして、彼女は雪国の忍一族『ニューラニンジャ』の一人。とはいえまだ子供なので心配はいらなかっただろうに。しかも忍者が真正面からやって来ているのだから恐れる要素はない。

 「ふう、とにかくこれで無駄な爆発四散は避けれたでござる」

 「おいニンジャさんよぉ」

 「ひぃ!」

 エルトの殺気に、ニューラニンジャもといニューラクノイチの少女は飛び上がる。

 「なんでござるか!」

 「殺気を感じられるなら半人前ということもあるまいよぉ。あんた、ニューラクノイチだろ? フスベ流か? キッサキ流か?」

 エルトは自分の興味が先行し、そんなことを聞く。イヴと違い、エルトはマニアックな方面に知識があった。

 「キッサキ流でござるが……?」

 「そうか、しかしまあ大の大人がニンジャリアリティショック引き起こしていたら世話ねぇな」

 そしてガードマン達の引き起こしたショック症状にも名前があるらしい。面倒臭くなったのでイヴは考えるのをやめた。

 一応イヴにもニンジャリアリティショック、イッシュやカロス人がカントーなどを侵略しようとした際にニンジャに返り討ちとされ、遺伝子にニンジャの恐怖が刻まれた遺伝病であるという知識はある。

 「紹介が遅れ申した。拙者、ニューラクノイチのヒサメでござる」

 「ニンジャが自己紹介しますか? おかしいと思いませんか? あなた」

 「正体がバレたなら自己紹介せねば凄い失礼に当たるでござる」

 だんだん、イヴもついていけなくなる。衣装の本格さから忍者ごっこでないのは確かだが、どうも怪しい。

 「で、こちらが相棒のエッジにござる」

 ヒサメはボールからニューラを出すと、エルト達に紹介した。

 「でも、目的は一緒みたいね」

 「お主達もミオへの交通許可を?」

 「そう。もしかして、役場で1番の番号札を取っていたのはあなた?」

 「そうにござる。しかしバイア殿は傷心故に外へ出られないとか……なんで目を背けるでござるか?」

 2人は目を背けた。言うまでもなく、その傷心の理由がエルトとイヴだからだ。冷やかしがてらフルボッコにしてしまったのが原因である。

 「バイア殿も今は苦しかろう、また今度に……」

 「おいおい、ニンジャがそんなに礼儀正しくてどうすんだ。」

 ヒサメはバイアの傷心を感じ取り、撤退を考えていた。ニンジャらしからぬ気遣いだ。さすがにエルトも止める。

 「そうだ、お前はなんでミオへ行こうなんて……」

 「八賢老に我らニューラニンジャの里が滅ぼされたのでござる! その仇討ちを!」

 「敵だよぉ! バイア敵ぃ!」

 ヒサメは悔しそうに地面に手を付き、拳を握りしめる。しかしバイアは八賢老。敵を気遣っていたわけだ。

 「なら今チャンスだろぉ? あいつは今、非常におセンチな気持ちで万全じゃねぇ。やりたい放題だ」

 「なっ! そんな悪いこと思いつかなかったでござる!」

 「お前本当にニンジャかよ」

 ヒサメは性格的にニンジャには向いていないらしい。しかし生まれた場所故にニンジャにならざるをえないのだ。

 「例えニンジャに向かない性格だとしても、拙者は唯一生き残った里の末裔。再びニューラの里を再興する使命がござる!」

 「割と重いな、お前。さて、とにかくバイアの家へ行かないとな」

 どちらにせよ、バイア邸は目前。ガードマンも幸い、ヒサメを見ただけでニンジャリアリティショックを引き起こしたため、楽に着けた。こういうことがあるため、ガードマンはイッシュ及びカロス人で固めることは推奨されない。

 「さて、ここが奴の家だな」

 「再興の費用にするでござる」

 「宝石にしとけ。それは重い」

 早速、ヒサメが高そうな壺を盗もうとする。だがデカイ。

 「あっちから物音が聞こえたでござる。水音にござる!」

 「行ってみましょう」

 そのヒサメだが流石ニンジャ。物音を聞き付けて全員でそちらへ向かう。寝室らしき部屋まで来たところで、エルトとイヴはポケモンを出した。

 「ハナコ」

 「ルカ」

 出したのはモウカザルのハナコとルカリオのルカ。突入の準備が完了したところで、扉をぶち破る!

 「オラぁ! 観念しろバイアぁッ!」

 「一族の仇でござる!」

 意気揚々と寝室に入ったエルトとヒサメ。しかし、そこでは妙な光景が広がっていた。

 ガウンを着てベットに座るバイアと、シャワーから出てきたらしくバスタオルを巻いただけの、ピンクの髪を伸ばした女性がいた。バスタオルに手をかけ、今まさに取る直前だった。

 「子供は見ちゃいけません」

 エルトはヒサメの目を塞ぎ、一旦部屋を出る。まさか敵陣に突入したらアダルティな光景を見せられるとは思わず、とりあえず体勢を立て直すことに。

 「何してたでござるか?」

 「激しく前後する、殆ど違法行為の直前」

 エルトはヒサメの質問に人生の先輩としてサラリと答える。まさかそのままを答えるわけにいかない。

 しばらくすると、先程の女性が部屋から出て来た。服は着替え、レザーのライダースーツを着ていた。

 「はい、あなた達はこれが欲しいんでしょ?」

 その女性はライダースーツの胸元から印鑑を取り出してエルトに渡す。

 「私はリリス。国際警察のエージェントよ。以後、お見知りおきを」

 女性、リリスはそのまま去る。バイアの印鑑はナッシーの木の部分で出来たものだった。

 「拙者、いつか胸元に大事なものをしまえるセクシーなクノイチになるでござる!」

 「方向性が間違ってる気もするな。欲を言えば、朱肉が欲しかった」

 印鑑は手に入ったが、朱肉がまだだ。つまり、バイアから奪う必要がある。

 「そろそろ帰りましょう。朱肉なら文房具屋で……」

 「朱肉寄越せぇッ!」

 イヴの制止も聞かずに、エルトは朱肉の為に再突撃。そこにはガックリうなだれるバイアがいた。

 「バイア……気を、落とすなよ」

 「うるさい!」

 エルトが励ますものだからますますバイアは傷付く。確かにリリスはパッと見ただけでもわかるくらいスタイルや顔立ちのいい美女だ。それを目前で逃したとなると、ショックは計り知れない。

 「逃がしたギャラドスはデカイわね」

 「生きていたらいいことあるでござる!」

 「もう、黙れ……」

 子供であるイヴとヒサメにまで励まされ、立ち直れないくらいにバイアは凹む。

 「まあ、俺が明日を生きれなくしますがねぇ!」

 そしてこのエルトである。まさに外道。

 「やれるもんならやってみろ! ナッシーが貴様を倒す!」

 バイアはヤケクソになりつつ、ナッシーを繰り出した。エルトはムクバードのラドを出し、前と同じ戦法で倒す気満々である。

 「待ってくだされ! こやつは拙者がっ!」

 「よし、なら俺はサポートに徹する!」

 「いえ、拙者一人で十分でござる!」

 ヒサメは断固として、一人でバイアを倒すことを希望した。エルトにとって雑魚とはいえ、なかなか面倒なバイアである。ヒサメはどう倒すのか。

 「ふん、貴様などかけぶんしんが無くとも倒せる! やれナッシー、サイコキネシス!」

 バイアはヒサメのニューラ、エッジにサイコキネシス。しかし効果が無いようだ……。

 「あいつ、まさか悪タイプを知らんのかぁ?」

 「そのようね」

 バイアは悪タイプを知らないことが発覚。エッジはゆったりとつるぎのまいを使えた。

 「サイコキネシス!」

 「れいとうパンチ!」

 バイアが馬鹿みたいにサイコキネシスを撃つので、エッジは余裕でれいとうパンチを当てられた。するどいつめを持っていたおかげで、急所に当たる。

 「つじぎり!」

 トドメのつじぎり。子供のニューラに瞬殺されたバイアは呆然としていた。

 「さて、朱肉貰ったし帰るか」

 エルト達は朱肉と貴金属品を貰うだけ貰って帰ったのであった。広い庭を突っ切り、そのままバイア邸を出る。

 「う……」

 「ヒサメ?」

 しかし、その道中でヒサメが倒れてしまう。脂汗をかき、顔を赤らめている。熱があるようだ。

 「早くポケモンセンターへ!」

 イヴとエルトは彼女をポケモンセンターへ運ぶことにした。

 

 5年後 ホウエン地方 キンセツシティ 警察署

 

 キンセツシティの警察署は子供が安心して入れるように、地球防衛軍みたいなデザインになっている。

 「ぐぬぬ……、この映画けしからんでござる! 我らニューラニンジャが笑い者に!」

 そこに映画の内容に怒りを表す人間がいた。無論、成長したヒサメである。メイが主演を勤めたフルメタルコップを見て、この感想。ここは警察署の事務所である。

 成長して15歳になった彼女はクノイチらしくスレンダーな身体付きの美少女になった。残念ながらセクシーとは違う。ニンジャコスも良く似合う。短かった髪は背中まで伸ばし、随分印象が変わった。

 「まあまあ、おかげでニューラニンジャがみんなに知れ渡ったじゃろ」

 彼女に声をかけたのはキンセツのジムリーダー、テッセン。八賢老事件の後、ヒサメは修業も兼ねてキンセツ警察に入ることとなったのだ。仕事は夜中のパトロールである。

 「こんなのなら知られていない方がマシでござる! いろいろ間違いがあるでござる!」

 具体的な間違いを上げ始めるヒサメ。随分と細かいが大事です。

 「まず衣装! 雪で真っ黒は逆に目立つでござる! 何故我らの衣装がニューラ色か、それは複雑な雪景色でニューラに溶け込むためでござる!」

 雪景色には雪のみならず、木などもある。故に雪だけに紛れるわけにもいかないため、こうすることになったのだ。一目だと『なんだニューラか』となればいいのだ。

 「このニューラクノイチは間違ってる! イッシュへ文句言いにいくでござる!」

 ヒサメはイッシュへ行く準備をした。直接ポケウッドへ乗り込むつもりだ。なんともはた迷惑なクレーマーだ。

 「イッシュ行くなら、頼まれてくれる?」

 「なんでござるか?」

 そこにマツリカが口を挟む。彼女が広げたのはイッシュの地図。そこには『戦艦アルセウス予想侵攻ルート』と書かれていた。

 「クロスケが戦艦アルセウスでイッシュに攻めるかもしれない。だからこの情報をイッシュまで。予想としては地形や施設からヒウン、タチワキ、そのあとホドモエね」

 「了解したでござる! 拙者にお任せあれ!」

 その地図を受け取り、ヒサメは敬礼のポーズ。早速準備を始める。

 「エーッと、パスポートにポケモン図鑑、英和辞典も持っていこう」

 「イッシュはカントー語通じるよ」

 イッシュやカロスは昔、それぞれ独自の言語を持っていた。しかしカントーの占領政策で失われ、今や訛りとして残っている程度だ。そもそも英和辞典の存在がかなりレアで、これは古文書の解読辞典みたいなものだ。

 「さて、では行くとするでござる」

 「お土産よろしくねー」

 呑気な職員達の声を背中に受け止め、ヒサメはイッシュへ旅立つ。そこにはエルトがいるので、困ったから彼に頼るつもりだ。大丈夫かニンジャ。

 「ニンジャは公共の交通機関を使わないのでござる」

 キンセツの近くにある海辺から、ヒサメはガラクタを集めて直した水上バイクに乗って出発した。これはゴミ捨て場から拾ってきたもので、水上バイクには『氷忍』と水色のペンキで書いてあった。

 「冷たっ! 意外と水温が低いでござる」

 そのまま海を駆け抜け、イッシュへ向かう。ホウエンからイッシュはそこそこ距離があるはず。何十時間かかけて、ヒサメはイッシュが見えるところまできた。もうすっかり夜だ。オマケに水しぶきでずぶ濡れ。だが薄着とはいえ、雪国のニンジャには寒くない。。

 「あれはっ! コンビナートが燃えてるでござる!」

 そこで彼女が見たのは、驚愕の光景。タチワキコンビナートが燃えていたのだ。急いで上陸し、コンビナートの前にいる人に話を聞いた。紫の髪をした女性だ。

 「何があったでござるか!」

 「その格好……エルトの言ってたニューラクノイチ? コンビナートは放火されたけど、今みんなで消火してるの。私は水タイプいないからあんまり手伝えないけど」

 コンビナートは放火された模様。消火中なら、活躍してニューラクノイチの名を広めるチャンスだ。

 「行くでござる! ディアドラ!」

 万が一水上バイクが止まった時に備え、ヒサメはエルトのフローゼル、ディアドラを持ち出していた。エルトのいる育て屋にはポケモンが多数いるため、ヒサメはたまに力を借りる。

 「なんか水を吐くでござる!」

 ディアドラの技構成を知らないヒサメは適当な指示を出した。技構成はアクアジェット、たきのぼり、れいとうパンチ、かみくだくなので水は吐けない。

 「うおらぁッ!」

 ヒサメは聞き覚えのある声を聞いた。フーディンのケーケーにサイコキネシスで海水を持ち上げて貰い、消火するエルトの声だった。

 「エルト殿?」

 「あれ? なんでニンジャ?」

 エルトが大学へ行って以来の再会となった。5年前に戦艦アルセウスに関わった人間が再び、事件の渦中へ引き込まれた。




 トレーナーカード
 ニューラクノイチ ヒサメ(5年前)
 マニューラクノイチ ヒサメ(現在)
 キッサキ流ニューラニンジャの里で唯一生き残った少女。八賢老の攻撃で里は壊滅した。ニューラクノイチと呼ばれるのは半人前で、一人前となるとマニューラクノイチと呼ばれる。ヒサメはチョウジ流でマニューラクノイチとなる試練を受けた。
 性格としては真面目で丁寧。ニンジャに向かない性格だが、里の再興を目指している。
 手持ち(現在)
 マニューラ♂(エッジ)
 以下はエルトから頻繁に貸借
 ユキノオー♂(ガネーシャ)
 フローゼル♀(ディアドラ)
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