2年前に壊滅したプラズマ団は様々な組織の協力で復活した。資金面をサポートしたのはブルジョワ伯爵のリベレート団。お元気になるキノコの売上などが資金となる。
戦力の拡充はエリートスクールが関わった。彼らは八賢老のバイアから買った何かを改良し、プラズマ団に売っているらしい。
また、近年暗躍するフレア団の影も噂される。
タチワキシティ 港
アッシュとヒュウは、ようやくタチワキを出ることにした。コンビナート火災の後始末に追われていたのだ。
「ブルジョアジー号も出発するよ」
「またね、ジャスミン」
ジャスミンとも別れることになる。ブルジョアジー号の停泊期間が終わり、また世界を巡る旅が始まる。
「エリートスクール……どんなところかな?」
「期待しない方がいいねぇ。だが、ジキルは自分の見抜いた才能を絶対と考える奴だ。お前に危害は加えまい」
シルフィもエリートスクールに向かうべく、連絡船に乗り込む。エルトは期待するなと声をかけておく。
「さて、俺達も行くか」
「そうだね」
港から皆を送り出し、ヒュウとアッシュも次の目的地へ向かうことにした。ヒウンシティに戻り、まずはビートルエンブレムの試練を受ける。4つ目と5つ目の間が長かった気もしなくないが、問題無い。
「アッシュちゃん! ちょっと待って!」
「ウッドウさん!」
出発しようとしたアッシュを、ウッドウが追い掛ける。ポケウッド支配人の彼がアッシュに何の用だろうか。ジリッとアッシュは後退りする。
「映画なら出ませんよ」
「イッシュラリーしてるんですって? 渡しそびれるとこだったわ。ポケウッドエンブレム!」
「エンブレム?」
「ヒュウちゃんにもあるわよ!」
ウッドウがアッシュに渡したのは、ポケウッドのロゴを象ったエンブレム。ポケウッドエンブレムだ。ヒュウもポケウッドエンブレムを貰う。イッシュラリー参加者が撮影に参加するなどそう無いので、エンブレムは忘れられていたのだろう。
「これで5つ」
「俺は3つか。ジムバッチは2つある」
アッシュはこれでトライ、ミュージアム、トキシック、ベーシック、ポケウッドのエンブレムを獲得。ヒュウはベーシック、トキシック、ポケウッドのエンブレムとベーシックバッチ、トキシックバッチを獲得した。
「さ、行こう。ホミカが親父を叩き付けて働かせるだろしな」
ヒュウとアッシュはホミカ達の待つ港に向かう。ポケウッドのオーディションに落ちて凹む親父を無理矢理働かせて、船が事故しないか心配だ。アッシュは泳げない上、あの辺りの海域はポケモンも波乗り出来ないくらい波が厳しい。
「オンバーンとヘルガーはどうしようか……」
アッシュは母親であるシラコから保護したオンバーンとヘルガーのニックネームを考えていた。オンバーンに至っては5匹いる。どのみち、博士に預ける必要がある。
「なんだあれは?」
「ザンギ牧場で見た人だ!」
港に向かうと、黒ずくめの集団がホミカ達に詰め寄っていた。プラズマ団だ。
「さあ、ポケモンを寄越すのだ!」
「やだね! ペンドラー、ハードローラー!」
「ハードローラーだッ!」
「逃げろ!」
偉そうなことを言う割に、ハードローラーで威嚇されただけで腰を抜かしている。情けないにもほどがある。
「待てい! 悪のプラズマ団は拙者が討つでござる! とう!」
そして白昼堂々とニンジャが現れた。船の営業所の屋根から飛び降りたニンジャは、マニューラクノイチのヒサメである。マニューラカラーの衣装は街中だと目立つ。腕や脚の露出が激しいのだが、海風がバサバサ吹く中寒くないのだろうか。
「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ?」
「コワイ!」
「ゴボボー!」
案の定というべきか、プラズマ団の多くはイッシュ人のためニンジャリアリティショックを引き起こした。傍目から見ればコスプレ少女にビビる情けない大人にしか見えないが、遺伝子に刻まれた恐怖に打ち勝つのは容易でない。
「ニンジャだと?」
「帰っていい?」
ホミカ親子も若干ながらニンジャリアリティショックを起こして脂汗ダラダラ。ジムリーダーさえこれなのだから、下っ端など堪らないだろう。
「プラズマ団を捕まえて、明日の朝刊に載るでござる! 映画で植え付けられたマヌケなイメージを変えるでござる」
「ニンジャが新聞載っていいのかよ」
マニューラクノイチとしては間違った発想にヒュウはツッコミざるを得ない。ニンジャが有名になってどうする。
「それよりプラズマ団に潜入して捕まって薄い本のネタになった方がいいぞ? それならクノイチのイメージも壊れんからなぁ!」
「何を言うでござるかエルト殿!」
「じいちゃんの時代からクノイチはそういうもんだからなぁ。あと、ニューラニンジャと毒忍者に分裂する前の本家忍者におけるクノイチは『あれやこれや』して情報を集める活動が中心だ」
騒ぎを聞き付けたエルトが合流する。サラッととんでもないことを言いつつ、プラズマ団ににじり寄る。
「それより、仲間外れはよくないなぁ、俺も入れてよぉ~」
「ぎゃああああっ!」
一番危険な男の登場にプラズマ団は絶望した。このままでは焼き殺されてしまう。
「逃げろ!」
「待てよ」
逃亡を謀るも、ヒュウに止められてしまう。プラズマ団はヒュウから流れるヤバいオーラに気付き、脚を止めた。
「5年前、お前達がヒオウギで奪ったチョロネコの居場所を教えて貰おう」
「ガキのくせに交渉だと?」
効果音でいうと『ドドド』とか『ゴゴゴ』とかいった空気が流れている。無理に突破しようとすれば強制的に自分達を捻り潰せるレベルまで自らを成長させそうな気配すらあった。
「このガキまずい……二度とどくばりを撃てなくなる覚悟でメガハリーセンにメガシンカするぞ!」
「誰がハリーセンだ! 俺は今から怒るぜ!」
ハリーセン呼ばわりにヒュウは怒る。しかし、その髪型はどう見てもハリーセンだ。
「なんかヤバくなったから逃げるぞ! プラーズマー!」
「待て!」
旗色が悪くなったプラズマ団達は逃走した。ジムリーダーにポケモン犯罪防止委員会で有名なエルトまでいては堪らない。
「そもそも船に爆弾仕掛ける予定はどうなった!」
「あいつはどこ行った!」
予定と違い、仲間が爆弾を仕掛けてくれなかったための敗走だ。どう見ても、爆弾を仕掛ける係だった女性団員がいない。
その女性団員はというと、ポケウッドのシアターにいた。自分の映画の出来を確かめていたメイの出待ちである。
「これ受け取って……アタイだと思って」
「あ、ちからのねっこだ。いいの?」
映画によって一つの悪が滅んだ。いやー、映画っていいものですね。
「ちょっとゴミ虫共が向こう逃げちゃってぇ。手伝ってくれる?」
「子供達に危険が及ぶから手伝うけどさ」
エルトはヴァイオラを誘って残党狩りを始めた。アッシュとヒュウも残るプラズマ団を探しに行く。向かったのは19番道路。
「あ! ヘリで逃げようとしてる!」
「ヘリじゃねぇオスプレイだ!」
2人が見つけた残党はリベレート団が用意したオスプレイで逃げようとしていた。リベレート団、ブルジョワ伯爵の組織だ。
「逃がさない! ラファール!」
アッシュが出したのはコイルのラファール。既に飛んでいるオスプレイを眺め、ラファールは何かを計算する。オスプレイの真下には道路があり、そこをプラズマ団を乗せた車とリベレート団のバスが通ろうとする。
車はタチワキを出て、バスはタチワキに入ろうとしていた。
「ビビビ、これくらいかナ?」
そして電撃。直撃を受けたオスプレイは墜落。後から来た残党の乗る車にぶつかる。まとめて2組を始末出来た。
「計算通りダ」
「凄いやラファール!」
ラファールの計算能力は高かった。オマケに道も封鎖出来たので、タチワキに向かおうとしていたリベレート団のバスを止めることが出来た。
「欲を言えばバスも仕留めたかっタ」
「いや、一気にあれだけ仕留めれば上出来だ!」
リベレート団のバスにはプラズマ団が20人ほど乗っていた。リベレート団はプラズマ団のサポーターなので自然なことだ。
「相手は2人だ! やっちまえ!」
「助太刀する!」
さすがに多勢に無勢。と思ったら都合よくルリリの群れと戯れていたアリスとハツネが合流した。
「アリスさん! ハツネ!」
「なぜ私だけさん付け……」
「ほら、年上だから」
久々の再会にアッシュも嬉しくなった。すっかりアリスとハツネは仲良くなったみたいである。
「それより、手を洗わないと雑巾臭くなるよ」
「ルリリはまだ臭くない!」
「進化前だから似たようなものよ」
ハツネはさっきまでルリリと遊んでいたアリスにウェットティッシュを箱で渡す。普段の姿が信じられなくなるくらい無邪気に遊んでいたのだ。
「シャルルは……まだ大丈夫だね」
アッシュはマリルのシャルルをボールから出し、臭いを嗅ぐ。まだ大丈夫そうだ。ただ、流浪の性格から小まめに洗ったりしなさそうだ。そのうち雑巾臭くなるだろう。いずれ洗わないといけない。
「さて、一人頭5人か。やれるな?」
アリスは敵を数え、均等に割り振る。所詮は下っ端、5人相手でも余裕がある。
「相手は子供だ! やっちまえ!」
プラズマ団も相手を子供と思い、ボールを出して戦おうとする。完全な判断ミスであろう。
「いけ! フタチマル!」
「オンバーン!」
「我が主の敵を払う剣となれ、エンペルト!」
「頼んだよ、おヒゲ!」
ヒュウがフタチマル、アッシュがオンバーン、アリスがエンペルト、ハツネがユンゲラーのおヒゲを出す。相手はミルホッグやドラピオンなど。
ハツネが相手にする下っ端はドラピオンとズルック達。一見すると相性が悪く見える。
「おヒゲ! ミラクルアイ!」
ドラピオンに対抗するため、ハツネはミラクルアイを発動。これで悪タイプにもエスパー技が当たる。
「サイコキネシス!」
そしてサイコキネシス。ドラピオンを念力で浮かせて振り回し、ズルック達を弾き飛ばした。
ヒュウとアリスが戦う5人は6体の手持ちをそれぞれフルに出してくる。つまり、一人で30体のポケモンを相手にせねばならない。相手がミネズミといえ、圧倒的物量戦法は厳しい。
「エンペルト! れいとうビーム!」
アリスはれいとうビーム掃射でミネズミを全滅させた。圧倒的に力が違う。
「フタチマル! シェルブレード!」
ヒュウのフタチマルはシェルブレード二刀流で応戦。素早く動きながらミネズミを捌く。時代劇さながらの殺陣を見せた。
前から来るミネズミ達を斬り、返す刀で後ろのミネズミを斬る。
「インペリアルクロス!」
5匹のミネズミが十字のフォーメーションを組む。どんな作戦か、全員が息を呑む。
「よいかジェラール。我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。防御力の高いベアが後衛、両脇をジェイムズとテレーズが固める。お前は私の前に立つ。お前のポジションが一番危険だ。覚悟して戦え」
「やだよ!」
先頭のミネズミと中央のミネズミが言い争いをしている。その隙に突撃したフタチマルに全滅させられたから問題はなかった。
「ばくおんぱ!」
アッシュはオンバーンのばくおんぱで相手を一気に仕留めた。プラズマ団のポケモンはこれで打ち止めだろう。
「ならばあれを使うしかない! プラーズマー!」
一気にピンチとなったプラズマ団はバスからあるポケモンを2匹呼び出した。元はブーバーなんだろうが、アメフト選手みたいなアーマーを付けている。両手には片手で持てるサイズの斧があった。どれも機械である。
「ヒオウギで見たやつだ!」
「エリートスクールのだ!」
ヒュウとアッシュはヒオウギでエリートスクールが武装したポケモンを使用した事件を思い出す。
「やりますわ!」
出て来たのはレパルダスのマチルダ。プラズマ団と聞いては黙っていられない。
「エリートスクールから買ったこの兵器! 試す機会だ!」
ブーバーは斧を振りかぶり、マチルダに切り掛かる。しかし全て回避され、つばめがえしでの反撃を喰らう。この機械はポケモンの動きを疎外してる様にしか見えない。
「バークアウト!」
そしてバークアウトでの攻撃も受けてしまう。ただの音波とはいえ、武装の重さで体勢を崩して大きな隙となった。
「つじぎり!」
その隙につじぎりを喰らい、ブーバーの付けてた機械は破壊された。機械が爆発したが、ブーバーに大きなダメージはないようだ。
「暴れ足りないからやらせてな!」
もう1匹のブーバーが残る。それを倒しに出て来たのはチャオブーのマチルダ。つっぱりであっという間に機械を壊してしまう。
「少々荒くて悪いけど、なかなか取れないんだよね」
アッシュがこの前エルトから聞いた話によると、この機械はトレーナーにしか外せないらしい。こちらが助けるには破壊しかない。
「ぷ、プラーズマー!」
「逃げ……」
「れいとうビーム!」
ブーバーはつっぱりで飛ばされ、バスに激突。バスが横転したり爆発したりで使えなくなった。逃げようとしたらアリスのエンペルトにれいとうビームで凍らされてしまった。
「これで終わりだな。チョロネコは知らないみたいだし」
「見つからなければ全滅させるまでですわ」
「おー、わかってるじゃないさ」
ヒュウとマチルダの探しているチョロネコは見つからなかった。それにしてもマチルダの思考がマイン寄りになりつつあるのは心配だ。破壊バンザイみたいになったらどうしようとアッシュは思う。
「この機械でポケモンを操るなんて……」
「人間の風上にも置けん奴らだ。成敗するか」
「プラズマ団とリベレート団は悪い人だからね。あと、この機械を作ったのはエリートスクールって場所だよ。ボクも詳しく知らないんだ」
恐らくプラズマ団やエリートスクールと初遭遇だろうハツネとアリスにアッシュは説明しておく。2人ともプラズマ団支援組織のリベレート団ならスカイアローブリッジなどで戦ったはずだ。
「リベレート団がお元気になるキノコの収入で支えてるのはこやつらか? 一度事件に首を突っ込んだ身、騎士なら最後までケジメを付けねばな」
アッシュとアリスが会ったのが、スカイアローブリッジでのお元気になるキノコ入荷阻止。アリスもこのキノコが持ち込まれなければスカイアローブリッジに行かなかっただろう。自らの行いで敵対勢力を拡大してしまうとは、リベレート団もついていない。
アッシュとハツネはアリスとヒュウを見張りに残し、警察を呼ぶことになった。途中、洞窟に篭ったプラズマ団員と対面するエルトに出会う。メガホンまで使っている。
プラズマ団はポケモンを奪われて手も足も出なくなっていた。ちゃんとポケモンは助けてあるのがエルトらしい。洞窟にバクフーンのカザンが睨みを効かせる。
「あー、プラズマ団の人聞こえる?」
「助けてくれー!」
「ほらそんなことしてたら故郷のおっかさんが悲しむからさ、早いとこ骨になった方がいいよ」
「もしかして、ブラストバーンですかーッ?」
「正解者には安らかな死を」
カザンが洞窟に炎を吹き込む。ハツネは戦慄していたが、アッシュやヴァイオラは半ばエルトなら仕方ないと諦めていた。ポケモンを傷付ける人間への仕打ちの残虐さには、もう慣れた。というか感覚が麻痺した。
「ぎゃあああ!」
「グツグツのシチューにしてやる!」
プラズマ団が窯焼きになる光景を横目に見つつ、アッシュとハツネはタチワキに戻った。警察に差し出される頃には、プラズマ団は『窯出し悪意たっぷりプラズマ団』とかそんな料理になっているだろう。
アッシュとハツネがタチワキに戻ると、新聞の号外があちこちで配られていた。アッシュも貰ったが、何が書いてあるかわからなかった。ハツネに読んでもらうしかない。
「これは、何々、『クロスケ氏、戦艦アルセウスを起動』ですって?」
「え?」
「戦艦アルセウスを動かしたクロスケは手始めにヒウンシティを攻撃する模様、だって」
アッシュの父親、クロスケが遂に戦艦アルセウスを動かしたとのことだ。シンジの追撃をやり過ごしたのか、それとも見切り発車なのかはわからないが、戦艦アルセウスが動いてしまったのは事実。
「結局、ボクが決着をつけるしかないんだね」
アッシュは海を見た。戦艦アルセウスが立てる波はどれほどなのか。それでも、アッシュには仲間とポケモンがいる。決戦の時は近い。
号外の内容
クロスケ氏、戦艦アルセウスを起動
リベレート団副代表のクロスケ氏は先日、以前のオークションで落札した戦艦アルセウスの起動を発表した。
「これはプラズマ団の崇高な理念を妨害したイッシュへの報復である」として、まずヒウンシティの制圧を宣言。国際警察は戦艦が出港するシンオウやイッシュとの連携を取りながらこれの撃沈を図る。
注目されるのはポケモン犯罪防止委員会の働きだ。委員会創設以来最大の事件となった今回、彼らがどう動くか注目が集まる。