騎士の一族
該当キャラ:アリス・クルセイダー
自らが「これぞ」と思った主に仕える一族。この性質は数ある分家の中、鋼タイプ専門クルセイダー家や竜騎士ペンドラゴン家などの特徴。本家のラウドナイ家は100から成る『円卓の騎士団』を有し、本名とは別の、数字に由来する騎士名を持つ。
本家最強の騎士、フリメルダ・ラウドナイは全ての騎士の憧れ。フリメルダの由来は『1』を示すエスニ地方語のカロス読み。
クロガネシティ 診療所
「思い出せた……ボンヤリだけど」
記憶復元装置でイヴは記憶を取り戻した。先程まで装置の副作用でしばらく眠っていたイヴだが、
しかし、それは非常に微かなもの。まるで、映画か何かを見てるような、自分のことでないような感覚だった。
「思い出したでござるか!」
「うん、本当に微妙だけど、自分が誰なのかわかる。お母さん」
イヴは起き上がり、母親であるエディの方を見ていた。最初は他人の様に見えたが、記憶を取り戻したおかげで、しっかり母親として見える。それでも、取り戻せた記憶は僅か。
「ただいま!」
「おかえり」
親子としてのやり取りをする2人。それをヒサメは自分の両親を思い出しながら見ていた。彼女の両親はもういない。だから、八賢老に裂かれたイヴ親子が再び巡り会えたことを素直に喜べなかった。
少し妬ましかった。例え、八賢老を倒してもヒサメには帰る場所がないのだ。今残された両親との唯一の思い出、マフラーを強く握りしめる。
「どうしたの?」
「ちょっと、外の空気吸って来る。私、薬の匂いは苦手なんだ」
「ござるが無い?」
ヒサメがござるも拙者も言わなかったことに疑問を覚えつつ、イヴは外へ行く彼女を見送る。しかし、イヴはヒサメの心情を察していた。
「ちょっと待っててね」
エルトからヒサメの事情を聞いていたエディは彼女を追う。外では雪が降っていた。シンオウの冬は厳しい。
「ヒサメちゃん」
「……」
ニューラのエッジと共に診療所の壁にもたれ、ヒサメはうずくまっていた。ニューラクノイチの衣装は薄着で手足も露出するため、寒いのは間違いない。
「風邪、ひいちゃうよ」
「……」
エディはヒサメに白衣をかける。ヒサメは俯いたまま呟いた。声は弱々しく、雪にも掻き消されそうだった。
「私……全部終わったらどうしたらいいのかな?」
ヒサメには八賢老を倒すという目標があった。しかし、それを終わらせて次に何をすればいいのか。
「里の再興なんて、私一人じゃ無理だよ……」
ヒサメの頬を涙が伝わる。復讐を果たしたところで、帰れる場所も、何も無いのだ。娘と同い年くらいの少女が、あまりにも重いものを背負っていた。エディはヒサメに一言、声をかける。
「ねぇ、この事件が全部終わったら、うち来る?」
「え……?」
「帰るところがないなら、作っちゃえばいいのよ。この旅で」
「そう……でござるか?」
「うん。ニューラニンジャならジョウトにもいるから、まずはシンオウで探そうよ」
帰る場所が無いなら作ればいい。ヒサメは少し前向きになれた気がした。どんな困難も切り開くのがニンジャ。できないことはない。
ヒサメは自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。泣くのは八賢老を倒した後。帰る場所だったニューラニンジャの里はこれから再建する。自分は一人じゃない。
「ありがとうでござる、エディ殿。拙者なら出来るでござる!」
「さぁ、寒いから中に入りましょう」
エディはヒサメの手を引いて、診療所に入る。その姿はさながら親子の様だった。
「それで作戦なんだけど、こういうのはどうかな?」
中で待っていたイヴは、戦艦アルセウスを食い止める作戦を考えていた。進水式や停泊中の写真を頼りに、戦艦アルセウスを止めるのだ。隣にはゴローニャのダクダがいた。エルトのポケモンだ。
「ダクダ、ご苦労様。また力貸してね」
イヴはダクダをボールに戻す。エルトからの伝言で、ケーケーのトレーナーが息を引き取ったためダクダはイヴに渡ることとなった。
「まず、このクロガネから何かの荷物が運ばれるってメイディさんが……」
「その子、信用できるの? オリジナルの手先なら信用出来るけど八賢老の手先なら……」
「そんな人に嘘教える人いないでござるよエディ殿」
メイディ情報を出すと、真っ先にエディが疑う。それは仕方ないことだ。しかしヒサメは人を疑うことを覚えた方がいい。頷いているエッジも。
「荷物が無くなれば戦艦は出港出来ないと思う。中身は食料と水だから、航海にはなくてはならない」
「なら、荷物を爆弾に変えちゃいましょう。これなら出港されても後々、ボカンと」
「一番楽そうね。ここから歩いても出港には間に合わないから」
そんな恐ろしい作戦を思い付き、迷い無く実行に移そうとするエディ親子。これは酷い。そして戦慄しているヒサメとエッジは忍者向いてない。
そんなわけで、3人はクロガネを出る荷物が置いてある場所に向かう。伝票を確認すると、確かに『ミオシティ、戦艦アルセウス』行きだ。大量のコンテナに食料や水やらの荷物が積み込まれていた。
それをそそくさと爆弾に変える。わざわざ『紛れ込ませる』ではなく『入れ替えた』のは、万が一途中で爆弾に気づかれても食料や水が無ければ結局相手は危機的状況になるからだ。
「そして爆弾のコンテナに乗り込んで運んでもらうのよ」
「危ないでござるが?」
「逆に危なそうだから相手も警戒しないんじゃないかな? お母さん、やってみようよ」
そして移動もコンテナに運んでもらうことにした。まさか爆弾と同じコンテナに乗っているとは思うまい。誤爆したら危ないし。
荷物を爆弾に入れ替えたコンテナに隠れ、移動を待つ。コンテナが閉められ、真っ暗になった。
「暗いでござる! 怖いでござる!」
「あんたらニンジャ向いてないわよ」
ニューラのエッジ共々、暗闇を怖がるヒサメはやっぱりニンジャ向いてない。しかしいくらニンジャといえ、全く光が無いと暗い場所では何も見えない。こればかりは人体の構造上仕方ない。
「トラックで運ばれているのね。ドナドナ歌いたくなってきた」
「私達は仔ミルタンクなのね……」
エディはこんな状況でも緊張感が無い。強者の優越なのか、ただの性格なのかはわからない。
「グー、でござる」
「寝た方がいいかもね、下手に騒ぐより」
ヒサメとエディは寝てしまった。潜伏中に寝る辺りニンジャは向いていない。こんなのが最後の生き残りとは、キッサキ流ニューラニンジャの未来はコンテナの中より暗い。
「着いた」
「速くない?」
そうこうしている内にトラックはミオシティに到着。3人と1匹はコンテナが積み込まれる前に脱出した。潮風香るここは港の倉庫群。目の前には、イヴがゲンの図面で見た通りの戦艦アルセウスが存在していた。
外輪を備えたパドル船という、戦艦としておかしな構造をした船だった。本気でこれを作ったなら八賢老は相当な馬鹿だろう。
「さて、どうするでござるかこれ?」
「仕事は終わったけど、タタラから印鑑奪わないと」
目的は戦艦アルセウスの破壊だが、タタラから印鑑も奪う必要がある。テンガン山の交通許可に必要なのだ。何も印鑑ごと奪わなくても、はんこがあればいいのだが面倒なので奪うことにした。
近くで作業員達が話していたので、それに聞き耳を立てる。
「すいません、タタラ様に連絡が……」
「タタラ様ならこうてつ島で暴れてる鉱夫共の鎮圧に向かわれた」
タタラはこうてつ島に行っているらしい。八賢老が自ら動くとは珍しい。だが、チャンスだ。
「ルカ! あの作業員を締め上げて情報聞いて来て!」
「我が娘ながら容赦無い」
情報を聞くべく、イヴはルカリオのルカを出した。だが、ルカは車酔いしていて動けなかった。
「乗り物、弱いんだ……。ならアイン!」
仕方なく、リーフィアのアインを出して役割交代。チョロチョロとアインが出て行くと、作業員達はアインを呼ぶ。
「あ、リーフィアだ。ルールルルぎゃあああ!」
隙をついてはっぱカッターで作業員を倒し、ヒサメが尋問の準備をする。何故か机とデスクライトがすぐに用意出来た。作業員にライトを当て、取り調べが始まる。
「吐け、吐くでござる!」
「それニンジャの尋問じゃない」
明らかに刑事のそれである取り調べを、今ここで展開するニンジャ。もう何が何やら。それにエディも乗るものだからタチが悪い。イヴは疲れていた。
「まあまあニンジャさん」
「エディ刑事……」
エディが机にカツ丼を置く。これは所謂飴と鞭作戦なのか。いやそれにしては鞭が弱い。
「話しちまえよ。楽になるぜ」
「タタラさんはこうてつ島に建てられたリゾートホテルにいます」
「了解、行くわよ」
情報を聞いた3人はとっとと先に行くことにした。カツ丼を開けた作業員が爆音に巻き込まれた音など、聴いていないとイヴは自分に言い聞かせる。オリジナルイヴの残虐さは母親譲りなのだろうか。飴が思わぬ猛毒だ。
こうてつ島へは船を使う必要がある。先程の作業員から船のキーを奪っていたエディは、そのキーが使える船を見つけて出港した。狭い港を出る時、あちこちにガンガン船をぶつけていたのでイヴは不安になる。冬の海に落ちたくはない。
「これ大丈夫でしょうね?」
「大丈夫でござるよ。はい、水蜘蛛。しかし水蜘蛛の蜘蛛ってなんでござろうな?」
「なんて不安な救命アイテム……。蜘蛛ってたしか、旧世紀にいたアリアドスやイトマルみたいな生き物じゃない?」
ヒサメは落ちた時の為に、丸い板の様なものをキッチリ人数分用意していた。しかしこれは扱いが難しく、救命には向かない。実際、ヒサメにも使えない。
幸い、沈むこと無く船はこうてつ島に到着。鉄の匂いを嗅ぎ、ルカは酔いから醒めた。ルカリオやリオルは少数ながら、このこうてつ島に棲息している。しかし普段は厳しい岩山にいるので、なかなか姿を見ることは出来ない。イッシュ地方のザンギ牧場の方が見つけ易いとの話だ。
「あれがホテルね……」
「凄い建物でござる! 新手のお城にござるか?」
「確かに、これだけ守りが硬いと城と言っても問題無いわね」
田舎者全開なヒサメに、イヴは突っ込むどころか納得してしまう。どこから切り崩すか。中は罠だらけと見ていい。
「波導!」
イヴが目を伏せ、波導でビルを見ると、中には不自然なほど人がいないとわかる。ホテルなのに人がいないとは。特に3階から8階の5フロアには全くといっていいほどいない。ポケモンの気配はあった。
「明らかに罠ね……」
「じゃあ、ビルごと破壊しましょう」
「いやお母さん流石にそれは無理よ」
「このビルはこうてつ島の上、つまり炭鉱の中にあるわ。つまりちょちょいと計算して岩盤を爆破すれば……」
エディは岩盤を爆破してビルごと破壊する作戦を立てた。いくらなんでも無茶苦茶だとイヴは思ったが、面倒はなさそうだ。この人は科学者ではなくボマーなんじゃないかとイヴは考えた。
だがエリートスクールがお得意様というから、実は兵器開発者ではないかとイヴは思い始める。
「まずはこうてつ島の人に協力を仰がないとね」
そんなわけで無茶苦茶な作戦がスタートした。ヒサメは一人、これから戦うタタラの運命を悟って合掌した。いくらなんでも相手が悪い、と彼女にもわかったのだ。
リゾートこうてつ 最上階VIPルーム
こうてつ島に建築されたホテルの名前は『リゾートこうてつ』。人々の反対を押し切り、タタラが建設したのだ。
「他の八賢老がガキに負けた? フン、これだから頭でっかちのあいつらは情けないのだ!」
タタラは他の八賢老に比べると筋肉隆々で健康そうだ。屋上のVIPルームはフロア1つを使用した豪華な部屋。『全室ロイヤルルーム』をうたうリゾートこうてつでも最上級の部屋だ。しかしあまりに値段が高すぎて、八賢老の他にはブルジョワ伯爵しか使ったことが無いほどなのだ。
ガウンを着てブランデーグラスを傾けるタタラの隣には、美しい女性がいた。彼女は心配そうにタタラに聞く。
「ねぇ貴方、鉱夫達はあのままで大丈夫なの?」
「心配するな。このホテルのフロアの一部は『王宮』化してある。そもそも王宮を成したのはお前だ。自信を持て」
ホテルの王宮化。要人をや主を守るために騎士の一族が編み出した術だ。その概要を妻に語る様に、タタラは述べていく。
「ホテルの一部を貸し切った完璧な王宮だ。入口からスタートではないから罠は無いと安心し切った奴らの不意を打てる。ひかりのかべ240枚、サイコパワー動力30基、猟犬代わりのゴーストポケモン数十匹、無数のトラップ、廊下の一部はルーム化させている空間もある。突破は不能だ」
「確かに、そうですが戦いに絶対はありません」
「同じ力の者同士ならな。我々が圧倒的に強いのだ。『亡霊の騎士』レイともあろう者が、自信を無くしてどうするのだ」
タタラの妻は『亡霊の騎士』の異名を持つレイ。何処かはかなげな印象のある美女だ。騎士の一族、5年後にエルトが出会うアリスの様な人達なのだろうか。
「私が船長となる戦艦アルセウス。見事反乱を抑えて出港に勢いをつけるのだ」
「嫌な予感がします。ご準備を」
「お前の予感は当たるからな。なら準備だ」
レイが何かを察知し、タタラもそれに合わせて準備する。部屋を出て、エレベーターで屋上に向かった。屋上はヘリポートになっている。
そのヘリポートには巨大な鳥を模したロボットがあった。タタラとレイは頭のコックピットに乗り込み、敵襲に備えた。
「なんだ?」
「まさか!」
ホテルが振動に包まれる。そして、ホテルは徐々に下へ下がっていく。遂には傾き、倒れてしまった。
「ホテルの地盤を破壊したのか!」
「なんて無茶な!」
ホテルは地盤ごと破壊されていた。このロボットに乗っていなければ、命が危なかった。王宮をホテルごと破壊する暴挙に敵は出たのだ。
ロボットは空を飛び、陸地に着陸する。敵をここで待つのだ。このような恐ろしい作戦を思い付く敵とは一体だれなのか。
イヴ達は岩盤の破壊を終えて、坑道から出て来た。鉱夫達に協力を仰ぎ、見事にトラップを突破した。
「いやー、これでようやく帰れるな。久しぶりにヒョウタにも会える」
「他の人達も帰れますね」
「そうか建物ごと破壊すればよかったのか」
ミオシティジムを取り仕切るトウガンも駆り出されており、ジムの仕事に手が着かなかった。なので八賢老を倒すイヴ達に手を貸してくれたのだ。
「貴様らか!」
「ろ、ロボにござる! 里を襲ったのとは違うけど」
「なにあれ?」
ロボを見て、即座にエディの後ろへ隠れるヒサメ。里はロボットに襲撃されたらしい。鳥の様なロボットだが、ポケモンではなく旧世紀の生物がモデルらしい。
「あれがいたな。非常に厄介だ」
「なんですか?」
「あれは水飛行タイプの『ポケモロイド』、アルバトス。俺達のポケモンに不利なタイプのやつをわざわざ持ってきていたんだ」
トウガンはロボットことポケモロイドのアルバトスを見て苦々しく呟く。鉱夫のポケモンは大半が地面、岩、格闘タイプ。確かに相性は悪い。
「ポケモロイド……完成していたの?」
「知ってるでござるかエディ殿!」
「ポケモロイド、それは『ポケモンが一種類増えると既存の生物が一種類絶滅する』という仮説を真に受けた昔の人々がポケモンを駆逐するために生み出したマシーン……。設計図は出来たけど当時の科学力では製造不能でね。私が昔、プロジェクトリーダーとして重機に設計を転用すべくポケモロイドの基礎技術を作ったけど……」
エディはポケモロイドの開発に携わっていた。だが、最後までは付き合っていない。イヴはエディが兵器製作に良心が咎めてやめたと仮定したが、それはすぐに崩れ去ることとなる。
「ベースの技術だけ作って寿退社しゃったのよね」
「そうなの……」
「武装開発担当のユートに一目惚れしちゃって。あの人がドリルとかハンマーとかキャノンとか付けまくったから運用が難しくなって凍結しちゃったの。その後、ポケモンに装備する『ライディングツール』を開発したんだけどね」
「お父さん……」
父親も結局おかしな人だった。だが、ヒサメの言葉や今の現状から八賢老はポケモロイドを運用している。とにかく両親の技術を悪用することは許せない。イヴはポケモロイドの破壊を決めた。
「飛行なら岩が効くね。ダクダ、ストーンエッジ!」
イヴはエルトから託されたダクダを出し、ストーンエッジで攻撃を仕掛ける。直撃コースを行くストーンエッジだが、何故か腹部にある、装甲の固い部分に吸い寄せられてしまう。これだからエッジは……。
「フハハハハ! 岩鋼技対策のマグネットシールドだ! 鋼はもちろん、岩に含まれる砂鉄を磁石で引き寄せてガードする!」
「ぐぬぬ……」
マグネットシールドにより、隙に見えた岩鋼技は完全防御。攻撃しても固い盾に吸い寄せられるのではどうしようもない。例え等倍の鋼技も、鉱夫が仕掛ける攻撃として予想されたため対策してあったのだ
「そうだ。氷技なら効くんじゃない?」
「やってみるでござる! エッジ!」
エディの提案で、ヒサメはエッジを呼んで氷技を仕掛けることにした。水飛行に対して氷は等倍だ。
「れいとうパンチ!」
「貧弱貧弱ゥ!」
「このっ!」
「あれ?」
とにかくマグネットシールドを破るべくれいとうパンチを撃つエッジ。始めは効き目がなかったが、偶然シールドにくっついたストーンエッジにれいとうパンチが当たり、シールドに食い込む。
「アイン! はっぱカッター!」
イヴもアインのはっぱカッターでストーンエッジを狙う。ストーンエッジがシールドに食い込み、シールド内部に仕込まれた回線を断ち切っているようだ。
「マグネットシールドは強力な電磁石。回線を切れば効果は無くなる! やっちゃいなさい2人とも!」
エディはマグネットシールドの仕組みを見抜いた。さすが開発者。固い装甲を突破せずとも、電磁石を機能停止させればいいのだ。
「消し飛べ!」
「ダクダ! ふいうち!」
胸部かられいとうビームを出そうとするアルバトス。しかし、ダクダがふいうちを決めて阻止する。
「馬鹿な! ゴローニャに先制技が!」
「サイドンとの数少ない差別化ポイントのふいうち……エルトなら覚えさせている!」
ダクダの技構成を知らないイヴだが、エルトのことだから覚えさせているだろうと思っていたのだ。
「飛んで離脱だ!」
アルバトスは飛行して逃げようとする。だがあちこちから岩が飛んできて、翼が破損した。マグネットシールドがあったから、飛行タイプを持っていても岩タイプに対して強気に出られたのだ。それが無ければご覧の有様。
「これで、終わりにござる! メタルクロー!」
エッジはボロボロになった装甲の下、露出する配線を切断して機能を止める。ロボットの弱点はこれだ。
「ゆけい! トリデプス!」
それでも予備配線を利用して動こうとするアルバトスを、トウガンのトリデプスが突進で破壊する。たった一撃でぐちゃぐちゃに粉砕されたアルバトスは海に転落し、沈んだ。
「我が主よ……無事ですか?」
「や、野郎め! よくも男の夢、ロボットを!」
タタラはレイに救出されており、無事だった。レイは鎧に着替えており、騎士として戦う準備は整っていた。鎧はまさに騎士のそれといった、よく城に飾ってありそうな甲冑だった。兜を被れば、声が無いと女性とは思うまい。
「このままでは引っ込みが着かん! いけカイリキー!」
タタラは怒りに任せてカイリキーを出す。だが、突然飛んで来たソーラービームになすすべもなく呑まれる。
「ぬわーっ!」
「我が主!」
エディのキマワリが放ったソーラービームでタタラとカイリキーは戦闘不能になる。レイは急いで逃走を図る。主を守ることが先決だ。
「行きなさい、ギルガルド」
レイがボールから出したのは、剣と盾のポケモン。何処となく色合いも彼女の鎧に似ている。
「亡霊の騎士……こんなところに」
「今は主を守るため、引きます。追わないで」
レイはギルガルドでイヴ達を牽制しながら、タタラを連れて撤退する。エディはレイを知っていたのか、攻撃の機会を伺うが隙は無い。
「お母さん、知ってるの?」
「ええ、己が選んだ主に仕える騎士の一族。その精鋭よ。知り合いに一族の人がいるから知ってたの」
「騎士の一族でござるか。戦う理由は様々にござるなぁ」
レイはタタラと水上スキーでこうてつ島を去る。とにかく、こうてつ島の平和は守られた。
イヴ達はミオシティに戻り、鉱夫と家族の感動の再会を見届けた。ヒサメは満面の笑みでそれを見つめる。悲しみからは立ち直りつつあるようだ。
戦艦アルセウスは船長のタタラを失い、出港不能になった。
「これ以上切り裂かれる家族が無いのはいいことでござる」
「そうねぇ」
「拙者が一族の仇を討てば、皆が救われるでござるな」
エディもイヴと一時的に引き裂かれ、肝心のイヴは親子の時間の記憶を大半忘れてしまった。これ以上、悲惨な思いをする家族がいなくなるなら、ヒサメの仇討ちもただの復讐ではなくなる。
「これでテンガン山も通行可能だよ」
イヴはタタラが落とした鉄製の印鑑を手に取る。この印鑑で許可を捏造することが可能だ。
「そうだ、渡したいものがある」
「なんでござるか?」
「化石?」
トウガンはヒサメとイヴにあるものを渡した。『ずがいのかせき』と『たてのかせき』だ。イヴがたて、ヒサメがずがいである。
「これをクロガネ博物館に持っていけ。そこで復元してもらうんだ」
「ありがとうございます。助かります」
「かたじけないでござる。エッジだけでは戦力に不安があったでござる」
化石からポケモンを復元させることで、新たな戦力を手に入れられる。手に入るポケモンはズガイドスにタテトプス。イヴはともかくエッジしかいないヒサメには貴重な戦力になる。
「私はここですることがあるから、あとは2人で行ける? ヨスガシティに私の知り合いがいるから、その人に会ってね」
「うん」
「わかったでござる」
エディとはここでお別れ。知り合いがヨスガにいるというので、会いに行くことになる。
「残る八賢老は、テンガン山の向こう!」
「やるでござる!」
イヴとヒサメの旅はまだまだ続くけど、ここで一区切り。
5年後 シンオウ地方 ミオシティ
「これが、戦艦アルセウスの事件」
「なるほど、わかった」
出港を直前に控えた戦艦アルセウスの前で、イヴはシンジに5年前の事件を語り終えた。イヴは成長し、黒いブラウスと赤いプリーツスカートの制服が似合う美少女になっていた。赤いネクタイを直し、戦艦アルセウスを見上げる。
「あの時、沈めておけばよかった」
「今更だな」
いよいよ、戦艦アルセウスとの最後の戦いが始まる。イヴとシンジは互いに因縁の決着をつけるべく、挑む。
5年前の因縁に挑むイヴとヒサメ。かつて幼かった2人は、成長を示すことが出来るのか。
両親と決別をするため、アッシュは仲間達と立ち上がる。彼は一人で無いのだから。
多くの因果に足を取られ、戦艦アルセウスは海へ……。
次回、『轟沈! 戦艦アルセウス!』