ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 ポケモロイド
 昔、ポケモンに支配されると恐れた人々が設計したメカ。技術力不足で当時は完成しなかったが、エディが重機として使うべく、歩行や基礎起動に使うオートバランサーを開発した。
 その後、兵器転用を懸念したユートによって計画は凍結。オートバランサーのみ開発されたポケモロイドはエリートスクール技術部によって完成した。
 オートバランサーは優秀だが、所詮メカなのでポケモンより弱い。ニューラニンジャに勝てたのは、彼らの住む地域で捕まえられるニューラやチャーレムなどに対策したからであり、もし彼らのうち誰かが外からポケモンを連れ込んでいたらわからなかった。
 エディ曰く、同じ資金を与えたらエリートスクールよりロケット団の有名な三人組の方が強いメカを作れるとのこと。


36.轟沈! 戦艦アルセウス!

 シンオウ地方 ミオシティ

 

 「戦艦アルセウス、出港!」

 クロスケは戦艦アルセウスの司令官室で出港を命じた。パドル付きのおかしな戦艦は5年の歳月を越え、ようやく出港した。

 「これで我がリベレート団の野望を果たすのだ!」

 皆さんお忘れかもしれないが、クロスケはブルジョワ伯爵率いるリベレート団の一員。ポケモンの解放を目的としたプラズマ団支援組織だ。

 「不肖の息子がリベレート団やプラズマ団に迷惑をかけた、ならばそれは親が削がねばなるまい!」

 クロスケはまともに顔も思い出せない息子、アッシュのことを考える。名前も与えられず、死ぬだけの存在だった奴がポケモンからアッシュという名前を与えられ、自らの目的に立ち塞がる。全く想定していないことだった。

 「さて、ヒウンまでしばらくかかる。ゆっくりしよう」

 クロスケは艦長の椅子に座り、到着を待つことにした。途中から自分が用意した空母艦隊と合流する。この艦は指揮艦だ。クロスケはタタラと違い、これを攻撃に使うつもりはなかった。ある程度は考えているようだ。

 見知らぬ船員が食事を運んで来る。何故か餃子だ。

 「艦長、お食事の餃子です」

 スタミナ重視か、えらく気の利く給仕だとクロスケは思った。庶民の食べ物だが、艦長の椅子で食べれば立派な高級料理とクロスケは悦に浸る。

 だが、既に艦内に侵入者がいることなど気付く余地は無かった。というか餃子というチョイスが随分怪しいのだが。

 

 イッシュ地方 ヒウンシティ

 

 アッシュとヒュウ、キョウヘイ、メイはホミカの父親の船でヒウンシティに到着した。エルトとヴァイオラ、ヒサメも一緒だ。

 「アイエエエ!?」

 「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 「コワイ!」

 「ゴボボーッ!」

 ヒサメが町に降りた瞬間、周りの人間がニンジャリアリティショックを引き起こして倒れてしまった。ただし、アッシュと仲間達は何ともなかった。

 「なんでお前ら平気なんだ?」

 「教えてやろう。主人公だからだ」

 エルトの問いに、キョウヘイが答える。ニンジャリアリティショックはニンジャが脅威で無いことを学習するとある程度は収まる。そのため、ヒサメが味方かつ知り合いの知り合いで、性格もニンジャらしくなく、初対面では海でずぶ濡れになって風邪を引き、しばらく倒れるというザマを見せたことが原因でヒュウやアッシュ達のニンジャリアリティショックは収まっていた。

 「ニンジャって『怪傑ア・ギルダー』みたいなのかな?」

 「私が映画で見たのと違うね、ニューラニンジャ」

 「正確にはマニューラクノイチにござる。あんな真っ黒では雪山で目立つでござる」

 アッシュとメイはヒサメとそんな話をしていた。フルメタルコップに出演していたニューラニンジャは黒ずくめだったが、ヒサメの衣服はニューラカラー。薄い赤のマフラーなど、イメージが違う。

 「それより、戦艦アルセウスは来るんだろうな?」

 「でなければこんな閑散とはしてないんじゃない?」

 「戦艦ってポケモンに勝てるのかぁ?」

 ヒュウは辺りを見渡すが、まさに嵐の前の静けさといったところ。ヴァイオラは殆どの人が避難しているからいないのだという。エルトの隣にはバクフーンのカザンとバシャーモのイチローが既に待機している。

 「市民の避難誘導は管理した。全員、ライモンにいる」

 「そうか」

 「あ、アリスさん」

 市民を避難させていたアリスが港に着いた。隣にはハツネがいない。アッシュは何と無く珍しい光景に見えた。スカイアローブリッジで出会って以来、ハツネとアリスはずっと一緒にいたからだ。

 「ハツネは?」

 「ライモンにおいてきた。危ないからな。本来なら君達にも避難願いたいところだ」

 アリスとしてはアッシュは勿論、ヒュウ達一般人には避難してもらいたかった。ジムバッチを持つトレーナーとはいえ、今回ばかりは危険なのだ。アッシュに関してはジムバッチすら持っていない。

 「心おきなく暴れられるな、ほんじゃ」

 「なるべく被害は避けてほしい」

 「ニンジャらしく大将首貰うでござる!」

 「それニンジャじゃないから」

 冷静なアリスだが、エルトとヒサメには振り回される。アリスはヒサメを見てしばらくして、何かを思い出した様に喋る。

 「そのニンジャらしからぬ言動、ヒサメか?」

 「あ、アリス殿」

 「相変わらずニンジャっぽくないな」

 「そんな重そうな鎧で、海に落ちたらどうするでござる?」

 アリスとヒサメは知り合いだった。それもそのはず、アリスはフリメルダの紹介でイヴ達の旅に合流したのだ。エルトはあのままカントーからしばらく帰って来ないので、知らなかったりする。

 「さて、あちらさんがそろそろ来るでござる。イヴ殿が発信機を持っているでござるからわかるでござる」

 「ニンジャが機械……」

 「忍法、発信機の術!」

 ヒュウは機械を使うニンジャに落胆した。どうやら、かなり戦艦アルセウスは接近しているらしい。

 「さあて、そろそろ初めさせてもらいますかねぇ!」

 エルトはまだ敵が水平線の向こうに見えないうちから攻撃を開始する。カザンが背中の炎を噴き上げ、咆哮する。

 

 戦艦アルセウス 司令官室

 

 「か、海底火山の噴火により、空母1撃沈! 搭載機は一部が飛び立ったのみで大半が沈んだ模様!」

 「何ィ!」

 戦艦アルセウスの司令官室が急に騒がしくなる。合流した空母が一つ、海底火山の噴火に巻き込まれて沈んだのだ。しかしおかしい。この辺りに海底火山は無いはずだ。だからクロスケも航路に選んだ。

 『あー、あー。リベレート団の人、聞こえてる?』

 「お前は……神殺しのエルト!」

 『なんだまだそんな雑魚倒した時の異名残ってたんだ。まあ次からは「艦崩し」とでも呼んでもらいますがねぇ!』

 クロスケは戦艦の放送から聞こえる声から、犯人がわかった。エルトはどういうわけか、戦艦の放送を乗っ取っていた。タネを明かせば、内部に侵入したイヴの仕業なのだが。

 「貴様、何が目的だ!」

 『これから海底火山が噴火しまくるけど、頑張って避けてくれる? この辺りは海流の関係でポケモンも住まないから安心してぶっぱできるよ』

 「空母がまた沈みました!」

 「くっ……」

 そうこうしているうちに、空母がまた沈む。このままでは全滅だ。

 『それじゃあ頑張ってねぇ。貴様なら、出来るはずさ! ぎゃはははは!』

 「おのれ! 全艦、全速前進! 海域を抜けろ!」

 戦艦アルセウスを中心とした艦隊は高速でヒウンシティに接近した。だが、クロスケは途中で重大なミスに気付く。

 「くっ、このままでは主砲が使えん!」

 戦艦アルセウスの主砲は馬鹿みたいなサイズのため、目標を攻撃する際に接近し過ぎてはダメなのだ。自分が主砲の爆発に巻き込まれて危険である。エルトの狙いは主砲を封じることだったのか。

 「空母から全ポケモロイド、発進!」

 クロスケはポケモロイドでヒウンを攻撃することにした。このままでは、目的をミリも達成せずに沈む。

 

 ヒウンシティ 港

 

 「来るでござる!」

 視力のいいヒサメが敵の接近を感知。次に目のいいアリスとアッシュが姿を捉えた。

 「鉄の鳥ポケモン?」

 「ロボットだ!」

 敵はロボットだった。驚愕の事実に、ヒュウ達は驚きを隠せない。

 「ポケモンですらないのかよ!」

 「ポケモロイド、アルバトスか。水、飛行タイプだと思って戦えば問題ないねぇ」

 『メガシンカ! メガバシャーモ!』

 エルトは腕に付けたメガリングを操作し、イチローをメガシンカさせた。

 「コルニのとこで免許皆伝してもらったから幾分か違うぜ」

 「やっぱり無許可でメガリング配ってたユートさんは問題よね」

 『メガシンカ! メガハッサム!』

 ヴァイオラもハッサムをメガシンカさせる。メガシンカにはコルニという人に認めてもらう必要があり、その人が渡すメガリングはそんなアナウンスが流れたりしない。ユートは後でコルニに怒られたとか。

 「イチロー、スカイアッパーだ!」

 イチローは大きく飛び上がり、アルバトスをアッパーで叩き落とす。効果今ひとつの攻撃だが、アルバトスは一撃で粉砕された。そしてそのまま別のアルバトスに乗り移り、翼を破壊する。

 「エンペルト、れいとうビーム!」

 アリスはエンペルトのれいとうビームで次々と落とす。所詮、人間が生み出す機械は自然の産物たるポケモンに敵わないのだ。

 「上陸してきたでござる!」

 海から港へ上がってきた巨大なポケモロイドが複数いた。ストライクの前身たる生物、蟷螂を思わせる骨格をしていた。ポケモロイド、ハビロマキリだ。

 「一族の仇にござるな」

 鎌を振り上げたハビロマキリを見て、ヒサメは昔を思い出す。一族を皆殺しにした忌むべき兵器。だが、既に彼女は5年前、これを倒して一族の仇は討った。今のヒサメには、雑魚でしかない。

 「弱点はわかっている。行くでござる、ツチカゲ!」

 ヒサメがボールから出したのは、ラムパルドのツチカゲ。ハビロマキリは対ニューラニンジャに特化したポケモロイドで、彼らが扱うニューラやチャーレムへの対策は万全だ。

 飛ぶことによって格闘技を防ぎ、鋼の身体で悪やエスパー技を半減、氷を溶かすための火炎放射機。そして互いの弱点をカバーするためのチームワーク。トリッキーな技もパワーで捩じ伏せる。

 だが、弱点がある。それはニューラ系統やチャーレム以外のポケモンにはことさら弱いことだ。ヒサメはズガイドスを手に入れ、それをラムパルドに進化させた。従来のニューラニンジャには無い戦法は対策出来ないのだ。

 「もろはのずつき!」

 ハビロマキリはもろはのずつきで無惨に破壊された。これが、5年の成果だ。

 「ハッサム、バレットパンチ!」

 残るハビロマキリも、胸部をた易くバレットパンチで貫かれて破壊される。所詮人工物か。

 「なんじゃこりゃ!」

 「兵器を使うなんて、俺は今から怒るぜ!」

 カメックスの甲羅みたいな巨大戦車が現れたが、攻略法を思い付いたヒュウ、キョウヘイ、メイはビルの上にいた。戦車は巨大だが、甲羅の頭頂部にキャノンが付いていて、つまり上の装甲はがら空きなのだ。

 「フタチマル、シェルブレード!」

 「ジャノビー、リーフブレード!」

 「チャオブー、つっぱり!」

 ヒュウのフタチマルがシェルブレードでビルの上部にある広告塔の柱を切る。メイのジャノビーもリーフブレードで援護。そして柱が斬られた広告塔をキョウヘイのチャオブーが落とす。

 戦車はキャノンごと押し潰された。初心者トレーナーでも協力して弱点を突けば勝てる程度の力しかポケモロイドは持ち合わせていなかった。

 「行こう、オンバーン!」

 「どうするんだアッシュ?」

 「戦艦アルセウスに乗り込んで、お父さんを倒す!」

 「お、おい!」

 アッシュはオンバーンに乗り、戦艦アルセウスまで飛ぶ。ヒュウは止めようとしたが、オンバーンは既に飛び去った後。

 「まあまあヒュウくん。親との決着は付けるべきじゃないの?」

 「だがよ!」

 「中には相手に逃げられてモヤモヤしてる奴もいるんだ、やらせてやんなぁ」

 エルトは自分なりにヒュウをなだめた。彼は自分の両親が何処にいるかわからず、決着を付けられていない。なのでアッシュにはケリを付けてスッキリしてもらいたいのだ。

 

 アッシュは空を飛びながら、両親のことを思い出す。ぶたれた記憶しかなかった。結局自分の親はレントラーにハハコモリ、そして彼らの友人であるポケモン達だった。アブソルに、ガブリアスのストラート。ビレッジブリッジに住むラプラス。彼らはどうしているのか。

 仲間達が出来、両親のことなど忘れかけていた。だが、仲間に仇なすというなら、アッシュは戦うことにした。彼らの平穏な暮らしだけは守る。かつて、助けてもらった恩を返したい。

 

 アッシュは海を越え、戦艦アルセウスの甲板に降り立つ。直感に任せてアッシュは父親を探した。

 探している途中、シンジとイヴを見つけた。どうやら邪魔物は彼らが倒しておいてくれたらしい。おかげでアッシュは一度も戦わずに済んだ。

 「あ、シンジにイヴさん」

 「久しぶりね」

 「ここの下っ端が使えなくてよかったな。お前の親父は司令官にいる。飯を渡しに行ったら、実際いたからな」

 シンジによると、司令官にクロスケはいるらしい。実際に行って確かめるとはなんとも大胆だ。ただ、シンジはバレたら蹴散らすつもりだっただろう。

 「俺が倒したかったが、言ってこい」

 「うん。ありがとう」

 シンジはアッシュを送り出す。やはり自分の因縁には自分で決着を付けるに限る。アッシュは司令官室の前で、チャオブーのマインを出した。

 「ついに来たんさね、この時が!」

 「行こう、マイン」

 次々とボールからポケモンが出て来る。今まで、仲間にしたポケモン達だ。

 「ワタクシもいましてよ」

 「俺が全て薙ぎ倒してやる!」

 レパルダスのマチルダ、ゴーゴートのゴートは早い段階で仲間になり、付き合いも長い。マチルダは友達を助けるため、ゴーゴートは保護のため仲間になった。

 「ボクらも戦うさ!」

 「私も!」

 「ビビビ、計算は大事ダ」

 マリルのシャルル、ヨーテリーのソミュア、コイルのラファールは旅の途中で出会った。ソミュアはザンギ牧場の夫婦から託されたのだ。

 「いやほら俺達はまだ敵だしさ」

 「情けないこと言ってないで前出ろよ。ここまで飛んでおいて」

 オンバーンとヘルガーはシラコから保護したのだが、まだ馴染んでいなかった。ニックネームを付けようと、アッシュはしばらく考える。

 「オンバーン、君はこれからオンサ。ヘルガーはルガー。よろしくね」

 ニックネームが決定し、アッシュは改めて扉を見る。そして、全員で一斉に扉をブチ破る。

 「覚悟しろクロスケ! ポケモンを傷付けるなら、ボクが相手だ!」

 「来よったか!」

 司令官室にはクロスケしかいなかった。他の人達はあまりに不利な戦況で逃げ出したのだ。クロスケに人徳があれば、不利でも士気を下げずに済んだのだが。

 「ならばバトルで決着だ。貴様の聞くポケモンの声が妄想に過ぎないことを教えてやる!」

 クロスケはボールを投げ、プテラを出す。そして指輪に仕込んだメガストーンを使い、メガシンカさせた。メガプテラ、これが化石になる前のプテラ本来の姿とする学者もいる。

 「スピードなら落とせばいいのね。芸達者なノーマルタイプを侮らない方がいいよ!」

 戦端を切ったのはソミュア。メガプテラにでんじはを使い、マヒさせた。しかしいつ、でんじはなど覚えたのか。

 「ビビビ、計算以上に上達が早いナ。流石ダ」

 「ラファールが教えたんだね!」

 「電気さえ作れれば簡単ダ。ソミュアは毛の静電気を使ったナ」

 ラファール仕込みのでんじはで動きが鈍ったメガプテラに攻撃を仕掛けたのはシャルル。尻尾をハンマー投げの様に振り回して、メガプテラへ飛んでいく。

 「必殺! アクアテール!」

 「金をかけたポケモンがッ!」

 アクアテールでメガプテラは倒れた。やはりトレーナーが弱いと強いポケモンも活きない。

 「おのれ、ならこれだ! キノガッサ!」

 次にクロスケが出したのはキノガッサ。早速みがわりを張り、長期戦に持ち込もうとする。

 「なんだ、では俺の出番か」

 オンバーンのオンサがばくおんぱでみがわりを貫通し、キノガッサにダメージを与える。音技はみがわりをすり抜けるのだ。

 「前に『しんぶん』っての読んでもらった時のこと、覚えてたんだ!」

 「シラコのポケモンを……ここまで強く……」

 アッシュはオンサに新聞を読んでもらっていた。その時の知識はオンサの役に立った。

 「へっ、あんなアホトレーナーに従わなくて済むから清々するね!」

 キノガッサをかえんほうしゃで焼き、ヘルガーのルガーは吐き捨てる。オンサとルガーはシラコに懐いてなかったのだ。何年も前、トレーナーのアホさが原因でレベルが下のワカシャモに負けた屈辱を、ルガーは思い出す。

 「行け、ランクルス!」

 「マチルダ!」

 「はいですわ!」

 次はランクルスが現れた。素早さに劣るこのポケモンはトリックルームを仕掛けるだろう。アッシュにはシンジから教わった戦術、そして彼自身のポケモンへの理解力がある。

 アッシュがトレーナー歴の短さに反して強いのはこういう原因があるからだ。

 「ねこだまし!」

 「はいっ、と」

 まずはねこだましでランクルスを怯ませ、確実にダメージを稼ぐ。

 「つじぎり!」

 「斬りますわ」

 そしてつじぎりで仕留める。最近はふいうちを練習中なのでアッシュは習得が楽しみだが、確実に仕留めるならこれでもいい気がする。様子見てから帰れるとんぼがえりも捨て難い。

 「ぐぬぬ、金をかけたポケモン達が何も出来ずに……。仕留めろ、ロトム!」

 「当たり前だよ! ポケモンはお金で強くなるんじゃない! トーゴ!」

 洗濯機に乗り移ったロトムとトーゴが対面する。トーゴはウッドホーンでロトムを突き飛ばし、大地を鳴らす。浮遊してても、叩き落とすなり地震で崩れるものを当てるなり、やりようはある。

 「じならしだ! 凄いや!」

 「我が歩みは大地を揺るがす! 俺の主の一挙手一投足が天変地異を引き起こす!」

 ロトムはノリノリのトーゴに敗北。ポケモンリーグでは強いと噂のロトムもトレーナーがクロスケでは弱い。

 「くっ、こうなれば守りに徹して、ドータクン!」

 「ビビビ、ソニックブームの前には無駄だ」

 守りの固いドータクンを出すも、ラファールのソニックブームに崩れ去る。ソニックブームは自分のレベル分ダメージを与える技。安定している。

 「ならば私の本気を見せよう、ゆけいオノノクス!」

 「黒い、オノノクス……!」

 ついにクロスケは本気を出すことにした。黒い色違いのオノノクスを出し、勝負を付けにくる。

 黒いオノノクスがいる自然保護区には選ばれたトレーナーしか行けないはずだ。だがクロスケはここに不法侵入し、無理矢理オノノクスを捕まえたのだ。

 他のポケモンと異なり、オノノクスの首には機械が付いている。洗脳するしかオノノクスを扱うことができなかったのだ。

 「オノノクスを助けよう、マイン!」

 「あたしに任せとけ!」

 アッシュはオノノクスを一度倒して機械を外すことにした。相手は強敵、倒せるかが問題だ。

 「ビビビ、でんじは!」

 ラファールがでんじはでマヒさせる。だが、あまり効いていない。ソミュアがサポートし、何回かのでんじはでようやくマヒさせられた。

 「マイン、ニトロチャージ!」

 「オラァッ!」

 ニトロチャージしながらつっぱりを繰り出し、足りないパワーを補う。しかしオノノクスはびくともしない。逆にオノノクスはダブルチョップを仕掛けた。

 「この!」

 「マイン!」

 オノノクスのパワーは強く、マインはチョップを防いでも押し切られそうだった。幸い、洗脳のおかげで本来のパワーが出ていない。

 「マズイ、げきりんだ!」

 「何!」

 オノノクスはげきりんでパワーアップを図る。それに負けないよう、マインもニトロチャージで踏み込みを強くする。炎と青いオーラが弾け、司令官室の物が壊れる。

 「これでもくらえ!」

 シャルルがアクアテールでオノノクスの腕を一本弾く。マインはその勢いを利用してオノノクスを突き飛ばした。

 「援護するぞ!」

 「おうよ!」

 立ち上がる前にオンサがりゅうのはどう、ルガーがあくのはどうを撃って攻撃。立ち上がると同時にトーゴがウッドホーンで倒す。

 だが、オノノクスが咆哮するだけで全員が吹き飛ばされた。このオノノクスはレベルが違う。

 「なっ! みんな!」

 「無駄無駄! このオノノクスの前には全てが無力!」

 「ここで引くか!」

 クロスケは高笑いするが、マインは引かない。もうかを発動し、パワーを貯める。

 「一思いに捻り潰せ! げきりん!」

 クロスケはオノノクスにげきりんを指示。全力で突撃してくるオノノクスをマインは受け止めようとする。

 「マイン! あの光は……」

 オノノクスがマインにぶつかる直前、光り輝く。アッシュはこれと同じものを何度か見たことがある。

 1回目はエルトとの戦いで、マチルダが。マインの時は見逃したため、先日のシャルルで2度目。今回は3回目だ。

 「進化が始まった!」

 「馬鹿な、このタイミングで進化だとぶっ!」

 アッシュは進化であると確信した。クロスケが驚いていると、オノノクスが飛んで来て押し潰された。マインがアームハンマーで殴り飛ばしたのだ。

 「マインがエンブオーに進化した!」

 マインはエンブオーに進化。オノノクスに対抗しうるパワーを得た。

 それでもオノノクスは立ち上がる。だが、マインが吹き出したかえんほうしゃで目を眩ませられる。

 「あち! あち!」

 クロスケが黒焦げになったが気にしない。炎の影からマチルダが現れ、洗脳する機械をつじぎりで破壊した。

 オノノクスは我に帰り、尻尾でクロスケを潰す。全力のドラゴンテールだ。戦艦そのものに亀裂が入る。そして、辺りを見渡した。

 「お前が我を戒めより解いたのか?」

 「うん。ボクが元の住家に戻してあげるよ」

 「そうか。ここは不安定だ、脱出するぞ」

 すぐに状況を知ったオノノクスは自分が入っていたボールをアッシュに渡す。アッシュのことは信用したらしい。アッシュは全員をボールに戻し、司令官室を出た。ついでにクロスケが使ってたポケモンも持っていく。

 「船が沈む!」

 「さっきのバトルで深刻なダメージを受けたらしいな」

 イヴとシンジに連れられ、アッシュは戦艦から脱出することに。深刻なダメージとはオノノクスのドラゴンテールだろう。ブリッジを出て甲板まで来たが、急に船が傾いたため軽いアッシュは海に投げだされてしまう。

 「わああっ!」

 「アッシュ!」

 シンジが手を伸ばしても届かない。アッシュが海に落ちかけた時、海にアッシュが見知ったポケモンがいた。

 「プロト!」

 「初めましてだな!」

 アーシェのアバゴーラ、プロトだ。この辺りの海を抜けるために、アッシュが乗った船に。アッシュを受け止めたプロトは、船を引いていた。簡単なゴムボートに乗っていたのは一人の少女。

 「乗って! 脱出するよ!」

 その少女のボートに乗り、シンジとイヴは戦艦のいた海域から脱出する。戦艦アルセウスはみるみる海の底へ沈んでいく。

 「終わったね」

 「ああ」

 イヴとシンジは沈む戦艦を眺め、一息着く。シンジはアッシュに対するケジメを付けたのだ。イヴも5年前からの因縁に終止符を打った。

 「ねぇ、ボク覚えてない? アッシュだよ」

 「いや初めて会うし……」

 「ポケモンに忘れられたの、初めてだよ」

 アッシュはプロトと話していた。プロトはアッシュを知らないと言うが、どう考えても面識がある。

 「あなた、ポケモンの喋れるの?」

 「そうだけど、君は?」

 「ボクの名前なんてどうでもいいでしょ? まだ名前無いし、N様に会って付けてもらうんだ」

 少女にはまだ名前が無いらしい。アッシュはすっかり困ってしまう。どう呼んでいいかわからないのだ。

 「とりあえず岸へ行きましょう。みんな待ってる」

 「うん。終わったんだね、これで」

 イヴの言葉で、プロトはヒウンへ船を引く。アッシュは戦艦が沈んだ海を眺め、終わりを感じ取る。だが、まだイッシュラリーはこれからだ。

 新たな目標に向け、アッシュの旅はまだまだ続く。




 アッシュの道程
 初日 『プロローグ』アッシュ、サブウェイで発見される。
 2日目 『1.シッポウ博物館の激闘』ブルジョワ伯爵、シッポウ博物館を襲撃。
 3日~4日 アッシュ、安静にしてる。
 5日目 『2.ポケモンの子、アッシュ』ポカブのマインがアッシュの手持ちに。アッシュがヴァイオラと出会う。
 6日目 『3.催眠のスリーパー』スリーパーが子供達をさらう。リベレート団がサンヨウシティを陥没させる。チョロネコのマチルダがアッシュの手持ちに。
 7日目 『4.エンブレムの試練』アッシュ、トライエンブレムの試練を受ける。
 8日目 『5.駆け抜けろ廃人ロード、逆襲のムックル!』アッシュとシンジが出会う。
 9日目 『6.新たなる進化、ニンフィア!』アッシュ、ミュージアムエンブレムの試練を受ける。マチルダがレパルダスに進化。
 昼『7.ヤグルマの森、ライバル登場!』アッシュとハツネが出会う。ヤグルマの開発が阻止される。
 夕方~夜『8.スカイアローブリッジの騎士』アリス達によってお元気になるキノコの取引が阻止される。アッシュが倒れる。
 深夜『9.ポケモンドクター、タケシ』シラコがポケモンセンターを襲撃。
 10日~12日 アッシュ、しばし入院。
 13日目 『10.再会、ハハコモリ!』アッシュがハハコモリと再会。カタリンナがルッコの事務所を襲撃して返り討ち。リベレート団のヒウンビルが壊滅。アッシュの手持ちにゴーゴートのトーゴが加わる。
 14日目 『11.ヤンチャムの挑戦状!』ティナ、アッシュと出会う。シラコ、指名手配される。
 15日目 『12.海峡の海賊団』お元気になるキノコの海上輸送がヒカリに阻止される。
 16日目 『13.開幕、魂のコンテスト!』アッシュとヒカリ、コンテストで優秀。
 17日目 朝『14.流浪のルリリ!』ルリリのシャルルがアッシュの手持ちに。
 昼『15.チェレン先生のとくせい講座』アッシュがベーシックエンブレムの試練を受ける。
 昼『16.戦場になる町、ヒュウの決意!』謎の集団(エリートスクール)がヒオウギを襲う。
 18日目 朝『17.ザンギ牧場、プラズマ団再び!』
 夕方『18.激闘、トリプルバトル!』
 夜『19.船上の再会、レントラー!』レントラーと再会。
 19日目 朝『23.大集合、イーブイフレンズ!』
 昼『25.ポケウッドのスター達!』
 20日目 夜『30.タチワキ危機! コンビナート火災を鎮火せよ!』タチワキコンビナートをシラコが放火。アッシュ、コイルのラファールをゲット。
 21日目『34.対決! プラズマ団!』プラズマ団をアッシュが撃退する。
 22日目『36.轟沈! 戦艦アルセウス!』クロスケが持ち出した戦艦アルセウスがヒウンを襲撃。後にクロスケ共々轟沈。
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