ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 夏に行われる大学対抗バトル大会。そのユニバーシティ代表メンバーはこちら。
 ユウヒ
 18歳 女
 出身:カントー地方マサラタウン。サトシやシゲルと面識あり。オーキド博士とも知り合い。
 学部:トレーナー学部フロンティアブレーン学科。ポケモンマスターを諦めても、バトルに勝つこだわりは無くならない。
 パートナー:ガブリアス特異個体。とある火山で卵を見付けた特別なガブリアス。
 手持ち:ヒヒダルマ、ドリュウズ、ギャラドス、モノズ、クルマユ

 ロゼッタ・ロード
 出身:シンオウ地方ロード村。苗字は『ロード村の』という意味なので村人共通。
 学部:ブリーダー学部ブリーダー学科
 パートナー:ドサイドン(モーゼル)。ロゼッタが身を呈して暴走を沈めたサイホーンが進化。
 手持ち:オノノクス(ソーコム)、モジャンボ(ベネリ)

 ヴァイオラ・バイオレット
 出身:ジョウト地方ヒワダタウン
 学部:教育学部保育学科
 パートナー:ハッサム。幼なじみで、父親のラベンダーが虫に慣れさせるために連れて来た。慣れさせた結果がご覧↓の有様。
 手持ち:フライゴン、ヤンヤンマ、ホイーガ、テッカニン

 エルト・ダナスティ
 出身:ホウエン地方キンセツシティ
 学部:ブリーダー学部ブリーダー学科
 パートナー:バシャーモ(イチロー)。ホウエン時代からの相棒。メガシンカ出来る。
 手持ち:カザン(バクフーン)、ハナコ(ゴウカザル)、ボスゴドラ(ボルックス)、ドンファン(アンタレス)、ジュペッタ(シリウス)


SP5.チーム合宿!

 イッシュ地方 リバースマウンテン周辺 リバースロイヤルホテル

 

 「今日は代表チームで合宿をします!」

 ヴァイオラは巨大なホテルを前に呆然とする面々を放置し、高らかに宣言した。サザナミのリゾートではなく、火山に目を付けたのはさすがラベンダーといったところか。このホテルは宿泊者全員が入っても余裕な大浴場とポケモンが入れる温泉が有名だ。

 ホテルを見上げるのは、紫のTシャツにデニムのホットパンツといつもながら動き易い格好のヴァイオラ、デニムのジャケットにジーパンでオレンジの短髪をデニムのキャスケットで隠したユウヒ、いつものコートを着たエルトといつものつなぎを着たロゼッタ。

 「部屋割は決めてあるよ。私とユウヒ、それからエルトとロゼ」

 そしていきなり部屋割の話をし始めるヴァイオラ。この組み合わせは前回のダブルバトル大会でチームにならなかった同士である。さらにいえば、エルトとユウヒをペアにするのは相性が悪そうだから避けたかったのだ。

 「そういえば俺だけ男だな」

 「あんた別に女の子気にしないでしょ? ロゼッタもだけど」

 この部屋割にはもう一つ意味があった。唯一の男であるエルトを処理するため、異性を気にしないだろうロゼッタをエルトと同じ部屋にした。メンバーでは数少ない常識人で、ユウヒがチームをまとめないため、ヴァイオラは苦労する。

 「部屋に荷物置いて、もう一度ここに集合してね。リバースマウンテンでトレーニングするから」

 「わかった」

 部屋が分かれるため、エルトに段取りを伝える。少なくとも、ロゼッタより確実だ。カウンターで鍵を受け取る。

 「最近、この辺りで妙なポケモンが目撃されたのです。お気をつけてを」

 「妙なポケモンだとぉ?」

 「ドラゴンみたいですね。ヌメヌメしていまして、すぐ抱き着こうとするんです」

 カウンターの人から妙なポケモンの話を聞き、エルトは目を輝かせた。どうやら被害続出らしく、さっきからヌメヌメの人が駆け込んで来る。

 「じゃ、部屋に行きましょう」

 「どんな部屋なの?」

 エルトとロゼッタ組と一旦別れ、ヴァイオラとユウヒは部屋へ向かう。エレベーターに乗って上階に着くと、なんだか廊下からロイヤルな雰囲気がした。

 「こっちよ」

 ヴァイオラが部屋の扉を開けると、ユウヒは絶句した。テレビでしか見たことのない、所謂『ロイヤルスイートルーム』であった。

 ベッドだけで手一杯な部屋などではない。ベッドルームとリビングが別れており、大浴場もある。共用の浴場に行く必要が無くなりそうだ。

 ユウヒは気絶しそうになっていた。

 「あばばばば……」

 「どうしたの?」

 「ここ、高くない?」

 「確かに最上階付近だから高いかもね」

 「物理的な高さじゃなくて経済的に!」

 ヴァイオラはエルトやロゼッタより常識人だから忘れていたが、社長令嬢。金銭感覚ならエルトやロゼッタの方が常識的だ。

 「大丈夫よ。オフシーズンだと誰も使わないし、人が入らないと建物って悪くなるじゃない?」

 「そういう問題かなぁ……」

 やはり常識人は自分だけか、ユウヒはガックリうなだれる。そしてもう一度、窓から空を見上げた。

 

 マサラタウンを去ってから8年。毎年ポケモンリーグに参加するが、予選すらなかなか越えられない。メキメキと新人達が頭角を現し、焦りもある。

 知識に秀でた研究者の孫シゲル、コンテストとリーグの両道を極めるナオシ、役割理論により知的な試合展開を図るシンジ、イーブイとその進化系のチームワークで勝ち抜くバージル、そしてポケモンから圧倒的な信頼を受けるサトシ。

 ポケモン犯罪防止委員会の『神殺し』と言われてはいるが、リーグでは無名のエルトに負ける程度では到底敵わない。犯罪制圧と試合では違うはずなのに、どうして敵わないのか。

 

 「私は……」

 「ユウヒ、行くよ」

 「うん」

 ヴァイオラに呼ばれたユウヒは空から目を離す。今の目標はリーグを越えるフロンティアブレーンだ。ここで立ち止まるわけにはいかない。

 部屋を出ると、エレベーターの前でエルトとロゼッタが待っていた。既に準備万端といったところ。部屋より修業の方が大事みたいだ。

 

 リバースマウンテン

 

 修業の場所はリバースマウンテン。早速ポケモンを出して開始する。

 「出て来て! ガブリアス、ギャラドス、ヒヒダルマ、ドリュウズ、モノズ、クルマユ!」

 ユウヒのポケモンはこちらの通り。まだ育成中と見られるポケモンがいる。

 「クロバットとローブシンがいたんだけど、入れ替えたの」

 「ニックネームは?」

 「え?」

 ロゼッタは素直にニックネームが無いことを疑問に思う。ユウヒにしたら、非常に意外なことだ。

 「わざわざ付けるの?」

 「そりゃ付けるだろ……うちはクロバットたくさん居るからな」

 エルトも付ける派だった。特に複数いるクロバットを呼び分ける必要があるのだ。元々、ポケモンが後のカザンであるヒノアラシしかいなかった時はそんな発想生まれなかった。クロバットの呼び分けがきっかけでニックネームをつけるようになった。

 「うーん。私はいい名前が思い付かないから逆にかわいそうかなって。私もハッサムにストライクの頃『ハリガネムシ』って付けようとしたり……」

 「ストライクにそれはやめてあげような」

 ヴァイオラはネーミングセンスの無さからニックネームを付けていなかった。ハリガネムシはストライク特有の感染症を引き起こすウイルスだ。

 「へい、お手」

 ロゼッタはモノズに手を差し出す。そして噛まれる。

 「ちょっとモノズ! 人噛んじゃダメって言ったでしょ!」

 ユウヒは叱ったが、ロゼッタは笑っていた。ゴリゴリと本気で噛んでいたのが何時しか甘噛みになっていた。

 「ううん。むしろOK。モノズはいろんなものを噛んだりぶつかったりして大きくなるから」

 モノズは前髪で前が見えない。だからぶつかったり噛み付いたりしてものを認識するのだ。ポケモンの生態をロゼッタは理解している。

 「じゃあ、みんな出て来て!」

 ヴァイオラはボールを投げ、ハッサム、フライゴン、ホイーガ、ヤンヤンマ、テッカニンを出した。ほぼ虫である。だからこそ、フライゴンが目立つ。

 「虫になると思ったけどね。気に入ってるからいいけど」

 「あのシグナルビームはよかったよ! ヤンヤンマ進化したら教えてね!」

 ロゼッタらしい評価だとヴァイオラは思ったのだが、メガヤンマの図鑑説明を思い出して止めることにした。

 『メガヤンマ。オニトンボポケモン。羽ばたいた時の衝撃波で相手の身体の内側に致命的なダメージを与える』

 「死ぬからやめとこうか……」

 「何故私が衝撃波を受けてみたいとわかったの? もしかして、エスパー?」

 「だいたい予想出来るから」

 相変わらずなロゼッタである。そしてそんなロゼッタのポケモンがこちらとなる。

 「出て来て、モーゼル、ソーコム、ベネリ!」

 ロゼッタのポケモンはドサイドンのモーゼル、オノノクスのソーコム、モジャンボのベネリだ。

 「みんな強そうでしょ? コンディションチェック!」

 「嫌な予感が」

 「するわね」

 「ロゼッタらしいがなぁ」

 ロゼッタは手持ちにコンディションチェックを命じる。モーゼルはアームハンマーでロゼッタを殴り飛ばし、近くの岩に叩き付ける。ソーコムがげきりんを発動しながらそれに激突すると、ロゼッタごと岩を砕く。

 ロゼッタは砕けた岩の上に、グッタリ横たわる。普通なら死んでる。

 「げほっ、絶好調ね……がっ、うああ……」

 フラフラ立ち上がる彼女を最後にベネリが蔦で締め上げる。

 「はあっ! あれ? 今日疲れてる? 長旅で疲れちゃったかもね。ゆっくり休んで」

 しかしロゼッタはちゃんとポケモン達の体調を把握していた。たしかに、体調が悪いと攻撃が弱くなるだろう。バトルに直結したコンディションチェックだ。これを毎日して持つロゼッタもなかなか丈夫。

 「よし、みんな出てこい!」

 エルトの手持ちはバシャーモのイチロー、ボスゴドラのボルックス、バクフーンのカザン、ドンファンのアンタレス、ジュペッタのシリウス。

 「付き合いの長い奴チョイスしてきた。ホウエンはフエンに温泉があるからな。割と温泉施設があるから、温泉に興味がある奴少ないんだ」

 「そういう規準で連れてきたのね、エルトらしいけど」

 エルトはポケモンの希望を重視して手持ちを選択。ヴァイオラもエルトのことがわかってきた。

 「トレーニングの方法を決めようか。先に噂のポケモンを見つけて捕まえた方が勝ちってので」

 「そうね。そのポケモンがいると、ホテルも商売あがったりだからね。ここに棲んでたポケモンじゃなさそうだから保護しないと」

 エルトとヴァイオラでトレーニングの内容を決める。トレーニングは噂のポケモンを捕まえること。プラズマ団に唆されたトレーナーが逃がしたのだろうが、自由にするのもポケモンの生態を考えてしないといけない。

 「よし、私が見つける!」

 全員が散りじりになり、そのポケモンを探す。ユウヒも今回ばかりは負けてられない。前回、エルトとヴァイオラペアに飲まされた苦汁をお返しするのだ。

 「ぬめぬめしたポケモンか、強そうならゲットしよう」

 そんなことを考えながら、リバースマウンテンのあちこちを探す。おそらく、歩いていれば見つかるはずだ。

 「あれは!」

 そして何かを見つけた。見たことのないポケモンだった。ドラゴンの様にも見えるが、何かヌメヌメしている。強そうには見えない。

 「なにこれ?」

 そろそろと近づいてみると、そのポケモンはユウヒに抱き着いてきた。見た目通りのヌメヌメだ。

 「ひぃ! なにこいつ!」

 「なにかいたの?」

 「ヌメルゴンだ!」

 「ヌメルゴンじゃねーか!」

 ユウヒの悲鳴を聞き付けたヴァイオラ達がやってきた。ロゼッタとエルトはポケモンの名前を知っていた。

 「知ってるの2人共?」

 「ええ、ヌメルゴンは人懐っこくて、トレーナーに抱き着いてヌメヌメにしちゃうの」

 「一応、ガブリアスやカイリューにもヒケを取らないドラゴンだ。あんなんだが」

 2人曰く、強力なドラゴンらしい。しかしガブリアスやカイリューほど危険はヌメヌメ以外無いようだ。

 「あっちいけ!」

 「おいおい、こいつに悪気は無いんだぞ」

 「それでも嫌なの!」

 ユウヒはヌメルゴンを突き飛ばす。モノズの件といい、彼女はあまりポケモンの生態を知らないみたいだ。

 突き飛ばされたヌメルゴンはメソメソと泣き始めた。あれだけ被害が出ているということは、人懐っこい彼は誰かに抱き着いては突き飛ばされたということ。

 ヌメルゴンはイッシュに棲息していないから、おそらくプラズマ団に唆されたトレーナーに逃がされたのだろう。雨も降らない場所はヌメルゴンの棲息に適さない。

 「おい、ヌメルゴンに謝れよ」

 「なんでよ」

 「てんめぇ……じっくりコトコト煮込まれてぇか!」

 ヴァイオラとロゼッタにはエルトが怒っている理由を察することが出来たが、ユウヒは気付かない。エルトの辺りが熱されて陽炎が出来る。

 「まあまあ、エルトも落ち着いて。何かに引火する前にさ」

 「これが落ち着いてられるか!」

 「はあ……全くポケモンに関して本当に沸点低いのね。ハイドさんの言う通り」

 エルトはポケモンのことになるとムキになる。ヴァイオラはハイドが言っていたことを思い出す。別にユウヒも悪意があったわけではない。当然、いきなりヌメヌメにされたら怒るだろう。

 「はいはい、悪かったわよ」

 ユウヒも一応形だけ謝る。エルトとユウヒは決定的に相性が悪い。それだけは確かだ。

 「よしよし、いい子いい子」

 ヌメヌメも気にせず、ロゼッタはヌメルゴンを慰めていた。最初はまた怒られるかもと怯えていたヌメルゴンだが、先にロゼッタが抱き着くことで心を開いた。

 「はい、ゲット」

 そしてモンスターボールでいともたやすくゲットした。そこはさすがロゼッタ。だが、ヌルヌルだ。

 「シャワー浴びてくる?」

 「んっ、このままでいいや」

 ヴァイオラがシャワーを浴びてくるように言っても、本人はヌルヌルを気にする気配は無い。それどころか指に付いた粘液を舐める始末。

 「ヌメルゴン。かなり疲れてるみたい」

 「粘液からそんなことわかるのか。なら、ドラゴン向け疲労回復メニューが必要だなぁ」

 エルトも負けてられないと闘志を燃やす。ブリーダー同士、負けられないものがあるのか。エルトは自家製のポケモンフーズを出して自慢する。

 「これだ。ドラゴンが好む味付けにしたポケモンフーズ」

 「ポケモンフーズに味なんてあるの?」

 「あるだろ、食い物だからなぁ。ヴァイオラは虫向けとドラゴン向け使ってるし」

 ユウヒにはポケモンフーズのことがよくわからなった。ポケモンフーズはトレーナーに支給され、荷物を増やしたくない人に向けた全タイプ向けやこだわる人の各タイプ向けがある。

 ユウヒは荷物になるし面倒だから常に全タイプ向けを使っていた。

 「炎タイプ向けは辛口、格闘タイプ向けは濃いめの味付け、虫タイプは樹液が配合されている」

 「さすがに私も味はわからないなー」

 「俺みたいに小さい頃から刑務所で食わされてなきゃ無理だなぁ」

 ロゼッタにもポケモンフーズの味は正確にわからないようだ。エルトは過去の特殊な体験が原因で、ポケモンフーズに対して味覚が働くようになった。

 エルトは昔、ホウエン監獄という更正不能な凶悪犯罪者を収監する刑務所にいた。そこでの食事はなんとポケモンフーズ。大量生産で安く作る分、廃棄も大量。賞味期限を過ぎてもドライフーズなのである程度は問題無い。廃棄となったポケモンフーズは、刑務所ではポピュラーな食事として扱われる。

 ユウヒが自分の知らない世界に愕然としていた。ヴァイオラも原因を思い浮かべる。

 「刑務所ってポケモンフーズ食べるんだ……」

 「カントー辺りだとしょっちゅう市民団体が騒ぐからね」

 というのもロケット団のせいで治安が悪いカントーやジョウトに限られた話。刑務所の経費は市民団体様から五月蝿く削減を求められるため、こうなっていく。なんでも、『犯罪者を屋根の下で食事付きで養うのか』だとか。

 「見つけたぞ、ヌメルゴンだ!」

 「あ、不審者」

 ポケモンフーズの話をしていた一行の前に、警察みたいな格好をした男達が現れた。ヴァイオラは独自のセンサーで不審者と判断。少し距離を取る。社長令嬢は誘拐の危険があるため、身についたスキルだった。

 「不審者ではない! 我らはポケモンセイバー! 迷惑なポケモンを討伐する正義の味方だ!」

 「不審者ね、行こう」

 やはり不審者だったポケモンセイバー。ヴァイオラ達はその場を去ろうとする。しかし、帰り道もポケモンセイバーに塞がれた。

 「ネットの噂で、この辺りにヌメルゴンがいて人をぬめぬめにすると聞いた。そのヌメルゴンで間違いないな?」

 「ヌメルゴンはそういう習性のポケモン。この子は悪くない」

 にじり寄るポケモンセイバーから、ヌメルゴンを庇うようにロゼッタは立つ。

 「ならやってしまえ! カイリュー!」

 ポケモンセイバーがカイリューを出してロゼッタに襲い掛かる。だが、横からドンファンのアンタレスが転がって突撃した。

 「アンタレス、新技見せてやれぇ! じゃれつく!」

 アンタレスはエルトの指示で、カイリューにじゃれついた。じゃれつくはフェアリータイプの技。効果は抜群だ。マルチスケイルも最初の一撃で無効化されている。

 「馬鹿な、カイリューが一撃で!」

 「鍛え方が足りんな」

 ポケモンセイバーはカイリューを倒されて狼狽する。だが、対ヌメルゴンを目的に他にもポケモンを持ち込んでいた。

 「行け、フリージオ!」

 「やっちゃいなさい、ヒヒダルマ!」

 フリージオを出したポケモンセイバーに対し、ユウヒはヒヒダルマを繰り出す。タイプ相性は完璧だ。だが、フリージオの数が多い。

 「フレアドライブ!」

 「あべし!」

 フレアドライブでフリージオを飛ばし、それをぶつけてポケモンセイバーも叩く。だが、ヒヒダルマは徐々に息切れを起こしていた。

 「ヒヒダルマ?」

 「フレアドライブは反動がある。連発は禁物よ! ハッサム!」

 囲まれたヒヒダルマの救援にヴァイオラのハッサムが動く。バレットパンチにより、安定してフリージオを倒していく。

 「ソーコム、ダブルチョップ!」

 ロゼッタのポケモン、オノノクスのソーコムも戦い、あっという間にポケモンセイバーのフリージオやドラゴンは全滅。

 「くっ、退却だ、退却!」

 「うわーん!」

 「愛が足りない、愛が!」

 「何故そこで愛?」

 ポケモンセイバーは泣いて逃げ出す。エルトは愛が足りないと言うが、ユウヒには意味がわからなかったという。

 「さて、トレーニングもしたし、温泉入りましょ。ロゼッタのヌルヌルだし」

 「え?」

 ヴァイオラの提案で、温泉に入ることとなった。ロゼッタは戦闘そっちのけでヌメルゴンに抱き着き、すっかりヌルヌル。

 「んむ……少し元気になってきたね……ああ、私、ヌメルゴンの愛で満たされ……」

 「ほら行くよ」

 粘液塗れになった身体を抱きしめ、顔を赤らめて息を荒げるロゼッタを、ヴァイオラが引きずっていく。徐々にロゼッタの扱いにも慣れていった。

 

 夜 温泉前

 

 「ふー、温泉気持ちよかった」

 「ご飯も美味しかったね」

 深夜になり、温泉に入ったヴァイオラとユウヒは月並みな会話をしてマッサージチェアに座る。浴衣がある辺り、このホテルは温泉宿なのだろう。

 「温泉といえばコーヒー牛乳だ!」

 「キンっキンに冷えてやがる……!」

 エルトとロゼッタはいつも通り。ロゼッタが飲む量は通常の倍近くであり、彼女の頑丈さの秘密が伺えた。

 「私は……まだまだ弱いかな?」

 「へ?」

 ユウヒはそんなことをポツリと呟く。先程の戦いも、タイプ相性が有利なはずのヒヒダルマで苦戦してしまった。癖の強いトレーナー達に囲まれていると、自分に自信が持てなくなる。

 「今から強くなればいいじゃん」

 「私はずっと強くなろうとしてるけど……みんなに追い付けない。何が足りないの?」

 ヴァイオラの言葉にも、ふさぎ込んだまま。足りないものなら、彼らと比較すればすぐにわかる。エルトの様な無限の愛も、ロゼッタみたいな限りない想いも、ヴァイオラの持つ力への無欲さも無い。

 特別なポケモン、特異個体の黒いガブリアスの卵を見つけた時、自分は選ばれた人間だと感じた。しかし、これまでの旅を通して自分がいかに凡人であるかを思い知らされた。

 「あなたのガブリアス、エルトが言うには『デルタ種』ってポケモンらしいの」

 「デルタ種?」

 ヴァイオラの言葉に、ユウヒは強く反応した。やはり、ガブリアスはただ者ではなかった。それが嬉しかったのだ。

 「通常とタイプが異なるポケモンよ。エルトが言うには『俺の「革命の炎」ってサイキッカー能力が反応しているから、炎タイプのデルタ種だなぁ』だって」

 「そういえばあいつ、そんなこと……」

 ヴァイオラはエルトの物真似をしながら説明した。ユウヒもエルトが以前のダブルバトルで何かを感じているような発言をしていたのを思い出す。

 「私のガブリアス、じしんとか覚えられない。ドラゴン技は使えるのに」

 「それじゃ、デルタ種決定ね。デルタの力を引き出すのは茨の道だけどね」

 デルタ種の話を聞き、ユウヒはガブリアスの力を引き出す覚悟を決めた。この力を引き出せるか否かが、自分の価値を決める。




 デルタ種
 通常とタイプの異なるポケモン。技も変わるらしい。見た目の変化が少ないため、初見殺しに等しい力を持つ。
 ホロンにある研究塔の科学者が見つけたとされる。
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