はこびやポケモン
1日ずっと餌を運んでる。遭難した人がデリバードの餌で助かった話もある。
町はクリスマス一色。ヒウンシティもイルミネーションで輝いていた。街中ではカップルらしき男女がイチャイチャしており、寂しいクリスマスの人は「爆発しろ」とツイッターするしかなかった。
「爆発しろって、ビリリダマじゃあるまいし」
「サンタは死んだ! もういない!」
アッシュは町行く人を眺め、クリスマスな雰囲気を楽しんでいた。一方、エルトはサンタを勝手に殺害。この差は一体。
「クリスマスなんざいい思い出ありませんよーだ!」
「ボクはサンタさん来なかったけど、ポケモン達が祝ってくれたね」
こういう差だった。エルトがクリスマスを祝ってもらえたのは育て屋夫妻に引き取られてから。幼少期の経験ですっかり性格が歪んでしまった。
「さあ皆さんお待ちかね、クリスマスプレゼントの時間だよ!」
「ハツネ?」
そんな中、サンタ衣装のハツネが袋を担いで現れる。アルバイトなのだろうか。そして隣にはブルジョワ伯爵が。
「私も昔は売れ残りのクリスマスケーキを社員に買わせたりしたが、そういうことはしちゃいかん! 私はこれから社員の幸せの為に頑張るぞ!」
「なんか変なもんでも食ったか?」
「私は戦艦アルセウスの惨状を目の当たりにし、目が覚めたのだ」
いいことを言ってもエルトからはおかしくなった扱い。普段の行いが悪かったと伯爵は甘んじて受け入れる。
「というわけで読者の良い子にクリスマスプレゼント! ポケモンを厳選して逃がす悪い子にはミミのとくこう6積みアシストパワーをプレゼント!」
「本編中それで怪我人出たから笑えない」
「まずはA賞! 好評発売中のゲーム、ポケットモンスターXYのソフトをダウンロードした3DSLLの限定カラー、アッシュブラックとアクセサリーセット!」
エルトのツッコミをスルーし、ハツネサンタはプレゼントを並べる。アクセサリーセットはポーチにカバー、画面保護フィルムとイヤホンにSDカード、タッチペンなど痒いところに手が届く仕様。カバーは透明なので柄も見える。
「さらに、こちらダウンロード済みの両ソフトにはバシャーモナイトを持った隠れとくせいのアチャモと、アッシュのトモダチ6匹の進化前がボックスに! 原作再現のため、ルリリのとくせいはちからもち、ヨーテリーはすなかき、チョロネコはじゅうなん固定!」
「豪華だ!」
「そのうちなんとポカブやバルチャイといったカロスに出現しないポケモンも! このプレゼントは2名様に!」
凄く豪華なプレゼントだった。これはブルジョワ伯爵が用意したのだろうか。これがまだA賞である。
「B賞はポケモンカードゲーム、拡張パック『コレクショングレー』を3箱にエネルギーカード付きカードファイル、そして構築済みハーフデッキW『アッシュ』とハーフデッキ『イヴ』と『エルト』がセット! これは3名様!」
「誰だよそんなに作ったの」
エルトは豪華なプレゼントを作ったのが誰か気になったが、黙っておくことにした。
「C賞! 一番くじ『灰色の疾風』全景品セット! アッシュを中心とした景品構成だよ! こちらは4名様!」
「誰だろう、フィギュア作ったの」
アッシュはポケモンならともかく、自分のフィギュアが作られていることを疑問に感じた。いつ誰が作ったのやら。
「D賞! 先日クレーンゲームの景品になって話題をさらったイーブイフレンズぬいぐるみセットを10名様! E賞はアニメ『ポケットモンスター灰色の疾風』1期オープニング『Great Storm』とエンディング『灰色ファンタジア』、2期オープニング『波導の嵐』とエンディング『海底の歌』、3期オープニング『ナイトバースト』とエンディング『幻影』のシングルの初回限定盤をセットにして10名様にプレゼント!」
「誰が歌った! あと何処から何処までが1クールだよこれ!」
まともなプレゼントが出た矢先に登場人物が知らないアニメソングの話題。エルトは突っ込まずにいられない。ハツネはカンペを読みながら解答する。
「エッーと、1話から19話が1期、20話から36話が2期、37話から3期です。SPの4話は2期に入ります」
「しかし普通さ、クリスマス回はプレゼント交換でキャラを掘り下げるチャンスだろ。なんで作者は視聴者プレゼントの方をネタにしたのか」
エルトがネタにする部分が間違っていると指摘したが、実はエルトの見ていないところでポケモン達のクリスマス会が行われていたのであった。
ヒウンシティ 裏路地
「メリークリスマス!」
普段はティナ達が集まる裏路地で、アッシュのポケモン達がクリスマス会を開いていた。そう、この機会をチャンスにポケモン達のキャラを掘り下げるのだ。
「特製チャンコ鍋だよ」
「何故チャンコですか……」
クリスマス会なのにチャンコ鍋。これはエンブオーのマインが用意した。レパルダスのマチルダは猫舌なので、チャンコ鍋より並べられたオードブルに目が行っていた。
「いやー、悪い奴らから金ふんだくって豪勢なクリスマスですな」
「直前がプラズマ団回でよかったね」
マリルのシャルルとヨーテリーのソミュアは下水道でプラズマ団を倒したことを思い出す。奴らから金を奪って、こうしてクリスマスしているのだ。
「ビビビ、誰か来たナ」
「サンタさんだ!」
コイルのラファールが気配を察知した。ソミュアが気配の下を探ると、なんとデリバード。ポケモン界のサンタさんである。
「メリークリスマス! 爆発しろ!」
「うわああ!」
デリバードはいきなり、袋から技の『プレゼント』を発動した。
「ビビビ」
「ぎゃあああ!」
「ほいよ」
が、ラファールのでんきショックで阻止される。取り出したプレゼントもマインが遠くへ投げて安全に処理。
「まさか初っ端から計画を歪められるとは……殺せ!」
「何を言ってるの?」
「こういう奴とは関わらない方がいいんじゃない?」
デリバードを倒したはいいが、意味不明な供述をしている。ソミュアは気になった様子だが、シャルルは危険を感じていた。旅先でこういう奴と関わるとろくなことにならない。
「我々はクリスマスを中止する会のデリバード! 浮かれたカップルに神の鉄槌を!」
「おーい、みんなー!」
「アッシュ!」
意味不明な供述を繰り返すデリバードに悩んでいると、アッシュがやって来た。やはり何かあったのだ。
「デリバードが町で暴れてるんだ! 試しにボール投げたら入ったから、野生だろうし……ボクの言葉を聞かないんだ!」
「アッシュの言葉に耳を貸さないとは、珍しいな」
アッシュは相当慌てた様子で状況を説明するが、既に周りはデリバード達に囲まれていた。対話が通じないポケモンなど初めてだ。
合計25匹。1匹頭5匹倒す必要がある。正に群れバトル。
「ビビビ! ひこうタイプは電気に弱い!」
「氷複合が仇になったな!」
ラファールとマインは相性のおかげで難無く倒す。そして、ラファールの電気とマインの炎が多方面に拡散し、苦戦していた他のメンバーを助ける。
「一体何が君達を変えてしまったんだ!」
「変わったのではない、目覚めたのだ!」
相変わらず、デリバードの話は要領を得ない。アッシュに向かって大量のプレゼントが投げつけられるが、何者かがそれを防ぐ。
「よぉ、アッシュ。とんだサンタさんだな」
「エルトさん!」
プレゼントを防いだのは、エルトのメガボスゴドラ、ボルックス。
「メタルバースト!」
デリバード達はエルトの反撃に遭い、全滅した。珍しくポケモンに容赦が無い。
「エルトさん、デリバード達がボクの言葉を聞かないんです!」
「だろうなぁ。ポケモンだって生き物、人間に抵抗する奴もいる。そん時は正々堂々と向かってぶつかるのが愛ッ! ボルックス、かえんほうしゃ!」
エルトが言うに、ポケモンの中には人間とわかり合おうとする気の無いものもいる。そういう時に言葉として機能するのがバトルだ。
ボルックスは炎を吐きながら、重戦車の様にデリバードを蹴散らす。デリバードは整列しつフォーメーションを組んだが、圧倒的力に粉砕された。遠隔からプレゼントを投げつける作戦も、かえんほうしゃに崩される。
「ならば接近だ、やれ!」
「10まんボルト!」
ボルックスの左右後ろに近付いて攻撃する作戦に出るも、10まんボルトで敢え無く玉砕。隙の無い戦車である。
「フォーメーションアタックだ! トリプルアタック!」
「おー!」
デリバードが3匹縦一列に並び、先頭のデリバードがごみ箱の蓋を持って突撃する。
「バブルこうせん!」
「効くか!」
シャルルのバブルこうせんはごみ箱の蓋で防ぐ。後ろにいる2匹のデリバードが飛び上がり、プレゼントを投げつける。
「ボルックス、まもる!」
攻撃はボルックスに防がれたが、アッシュ達だけなら大ダメージを受けていた。
「よーし、私達もフォーメーションアタックだ!」
「密かに特訓した成果を見せますわ!」
「よしきた!」
そこでソミュア、マチルダ、マインがフォーメーションアタックを開始する。させるかとばかりにもう一陣のトリプルアタックが突撃して来た。
それを受け止めるはマイン達のフォーメーション。マインが立ち、その前にマチルダとソミュアが横一列に並ぶ。三角形の形だ。
「アッシュとアニメ見てるあたしら舐めるなよ! それはアニメで敵が使ったフォーメーション、攻略法ならアニメにある! デルタクロス!」
マインの号令で、陣形が発動。彼女が全身し、ごみ箱蓋の盾を持ったデリバードを受け止めて投げる。
「ぎゃあ!」
飛んだ2匹のデリバードにそれをぶつけ、マチルダとソミュアが団子になったデリバード達に飛び掛かり、攻撃。
「トリプルアタックを攻略ですわ!」
「タウリナーの技だ!」
戦法のヒントは意外なところに転がっている。マイン達はアッシュと見たアニメからヒントを得た。
「デリバードが裏路地に集まってるみたいだな。いくぞ、カザン、イチロー、ハナコ!」
エルトも自慢のフォーメーションを使うことにした。バクフーンのカザン、バシャーモのイチロー、ゴウカザルのハナコが順番に肩車して重なる。ただし口の方向はバラバラだ。
「ブレーメンストライク!」
そのままかえんほうしゃしながら回転した。ブレーメンの音楽隊をヒントにした必殺技だ。火災旋風を巻き起こし、デリバードを一掃する。
「ま、負けた……」
「来年こそ勝ってやる!」
「帰ってフォーメーションを研究だ!」
全滅したデリバード達はそのまま撤退した。どうやら、彼らは鍛えた技を試したかっただけらしい。
「また来年、俺達の挑戦を受けてくれ!」
「うん、待ってるよ!」
「ほらな、わかり合えただろぉ?」
どうにかデリバード達と話が着き、アッシュも安心する。ポケモンと言葉がなまじ通じるせいで、バトルもポケモンにとっての会話であることを忘れていたのだ。
「デリバード達も収まったし、これからブルジョワ財閥主催のクリスマスパーティーがあるんだ。皆で行かない?」
「おう、行く行く」
「あ、帰るならこれあげるよ」
アッシュにパーティーに誘われ、マイン達はそっちへ行くことにした。帰るらしいデリバードには、ポケモンだけのパーティーが中断したため手を付けてなかった料理をお土産に渡した。これはシャルルの采配。
「あ、雪だ」
「ホワイトクリスマスですわね」
雪も降り初め、アッシュ達のクリスマスはまだまだ続く。
次回予告
(ナレーター:アッシュ)
クリスマスの次はお正月! 旅する前はイベントとか意識したことなかったから、一年が濃密に感じるね。
え? お正月の前におおみそか? なにそれ、味噌?
次回、『新年直前! 馬年対決、ギャロップ対ゼブライカ!』
あ、君達はあの時の!