この企画は覇王樹さんの『霧中の真実』とのコラボ企画です。
研究員 タキナ
手持ち
イシツブテ
ユンゲラー
ポリゴン
研修生 ユウキ
手持ち
ペリッパー(トラヤ)
キノガッサ(ハドリア)
クラウド地方 リンタウン
「着いたようだな。クラウド地方」
「雲や霧が多いですね」
アロエからのお使いで、エルトとアッシュはクラウド地方に来ていた。ここのリンタウン博物館には、アッシュの力の謎を解き明かすかもしれない鍵があるのだ。
アッシュの次の目的地は4番道路を開拓した町『クラッシュタウン』だったが、その前にここへ寄ることにした。力を使い熟せればリベレート団残党は元より、プラズマ団も楽に潰滅させられる。何より、イッシュラリー本戦で役に立つかもしれない。
「先にこっちへ来たヒサメの言うことにゃ、相手が次に出すポケモンがわかるって能力を持ったトレーナーに会った侍がいるらしいな」
「それは便利ですね。ボクなんて相手の次のポケモンが出てきてから技を出すまでの間に入れ替えるしかないから。プラズマ団とか下っ端なら使えるけど、ジムリーダー相手だと厳しいかも」
不思議な能力の持ち主がいるというクラウド地方なら、アッシュの力も解き明かせるに違いない。
「あと、リンタウンは苺が名産らしいな」
「とにかく、博物館に向かいましょう」
エルトとアッシュは博物館に向かう。リンタウン博物館には『ミュウの頂』という絵画があったが、メシア団という組織に盗まれたらしい。ポケモン犯罪防止委員会にも連絡は来ており、シッポウ博物館にも警戒要請があった。
「ジムリーダー2人がいても守り切れなかったって、メシア団相当強いんですね」
「ポケモンリーグ公認のジムリーダーなら強いし、そう考えるのが自然だな」
アッシュは伯爵から渡されたクラウド地方のガイドブック『ナルブック』を見て、リンタウンを調べた。
2人は博物館に入る。あちこちが襲撃の爪痕を補修している最中だったが、展示物に傷はない。この町を開拓した時に使った道具や、当時のドタイトスの背中の木なんてものもある。
「この博物館は文化系、自然系に分類されるのか。絵画が有名だから芸術系だとばかり思ってたが、これは俺の専門だな」
エルトは化石で有名なシッポウ博物館に実習で来てるだけあり、化石など自然系が専門。ダイゴが友人のため、石にも詳しい。
「エルトさんはなんで、しぜんけい、って専門になったの?」
「昔の話、古代ポケモンのおもちゃが欲しくてね、未練があるのかもな」
エルトがアッシュに話した理由はそんな程度。実際、道を決めるのは幼い頃の小さな憧れなのだ。
2人で博物館を見ていると、白衣を着た研究員らしき人が来た。その後ろには、この博物館の制服らしきものを着た人物もいる。
「やあ、君達が見学の人かい? 僕はユウキ。研修生だ。君があの、『神殺し』のエルトさんかい? 噂は常々聞いてるよ」
「いやー、雑魚を潰しただけでそんな仰々しい異名貰っちゃって悪いね」
研修生のユウキは眼鏡をかけて、目の細い青年だ。ヒュウと同い年に見えるが、これでも18歳くらいのようだ。博物館に研修生として来られるのは18歳からだからだ。
「ユウキさん、この人達は?」
「昨日連絡があった、実習生のエルトさんに見学者のアッシュくんだよ」
「そうなんですか。俺はタキナと言います。図鑑完成のために旅をしてます」
白衣の少年、タキナは自己紹介した。図鑑完成の旅、そうなると彼は図鑑所有者なのか。
「ボクはアッシュ」
「いやこうして見ると同い年には見えんなこいつら」
エルトがアッシュとタキナを見比べる。アッシュは頭一つほどタキナより小さい。
「女の子なのかな? ボクって言ってるけど、ボクっ娘の可能性があるな」
「ボクは男の子だよ」
「また心の声が口に!」
タキナは心の声が口に出てしまう癖があるらしい。アッシュを女の子だと思っていたようだ。髪も伸び始め、徐々にアッシュを女の子と誤認する人が増えそうだ。
サイズの都合から女の子向けの服を着ているので、ズボンでも誤認率は上昇。
「では見学しよう。まずはここだ」
ユウキが先導し、一行はある部屋に着いた。『前室』と呼ばれる、展示室と倉庫の間にある部屋だ。
「ほう、前室だな。ここは保存に適した倉庫と来場者に快適な展示室の環境差に展示物を慣れさせる『ならし』作業のための部屋だ」
「その通り、前室の温度は20度から22度、湿度は55%から60%で安定させてあるんだ。資料にとっては低温低湿が最適だけど、見る人には辛いからね。ショーケースで展示して、ケース内の温度を調整する方法もある」
エルトとユウキの話に、アッシュとタキナは着いていけなかった。こればかりは専門的な内容なので仕方ない。
「ミナモシティの美術館は潮風から美術品を守るために入口から長い廊下で曲がり、そこにもう一つ入口があるんだろ?」
「そうそう。海の傍だもんな。カイナは科学館だから大丈夫だけどな」
エルトの地元では、そんな博物館があるらしい。カントーやジョウトでは無産産業は軽蔑されがちであまり重視されていないが、ホウエン、クラウド、そしてイッシュではしっかり力を入れていた。
「あ、タキナくん。僕はこの人とリリーラ系列やアノプス系列のポケモンについて話してるから外で遊んで来ていいよ」
「アッシュ、俺はこいつとメガプテラがプテラの本来の姿である確証について話してるからタキナと遊んでこいよ」
「ダメだついてけん」
タキナは負けじと話についていこうとしたが、諦めてギブアップ。大学で習う様な内容だ、アッシュもコイルのラファールから解説されてもわからない。
「さて、俺達子供は外にいますか」
「うん」
アッシュとタキナは博物館の外に出た。特にすることもないので、互いにポケモンを見せ合うことにした。
「行け、イシツブテ、ユンゲラー、ポリゴン!」
「マイン、マチルダ、シャルル、ソミュア、ラファール!」
タキナのポケモンはイシツブテ、ユンゲラー、ポリゴン。アッシュはいつものメンバーである。エンブオーのマイン、レパルダスのマチルダ、マリルのシャルル、ヨーテリーのソミュア、コイルのラファールだ。
「それがイッシュのポケモンかぁ……。エンブオーなんて始めて見るな」
タキナの図鑑に、アッシュのポケモン達が記録されていく。アッシュの図鑑もタキナの図鑑に反応したことで、『クラウド図鑑』が追加された。
「そっちじゃ図鑑は珍しくないのか?」
「エルトさんが言ってたけど、ボク達が身分証明とかに使う図鑑は『図鑑所有者』が記録した情報を受け取るだけの図鑑なんだ。だから、タキナのマスターの図鑑に反応して機能が増えたんだね」
アッシュが図鑑を確認すると、クラウド地方の図鑑説明が増えていた。
とりあえず、適当にケムッソの図鑑を見た。
「鳥ポケモンによく狙われるがお尻のトゲから毒を出し必死になって抵抗する」
これがアッシュの図鑑の説明。
「木の枝にくっついて葉っぱを食べる。口から出す糸は空気に触れるとネバネバになり敵の動きを鈍らせる」
これがタキナの図鑑の説明。クラウド地方図鑑の説明をアッシュの図鑑でも見られるようになった。さらにアッシュの図鑑がアップデートされ、バトルビデオの機能まで付いた。図鑑のパワーアップも所有者の特権なのだろうか。
何気なくアッシュの図鑑はアップデートされたが、これを交渉材料にすることも可能なのだ。
「俺のイシツブテ、かみなりパンチが出せるんだ!」
「イシツブテがかみなりパンチ? 水タイプ返り討ちだね」
そんな話をしていると、振動が町を揺らす。アッシュは振動の大元を見つけ、そちらを向く。
「な、なんじゃこりゃー!」
「ポケモロイド? どうしてこんなところに?」
タキナは驚きのあまり叫んだが、アッシュは慣れていた。複数の大型ロボットが博物館に迫っていた。
ストライクの前身である生物、カマキリを象ったフォルムのハビロマキリが群れを成しており、それを率いるのは別のポケモロイド2機。
大きなブースターを背負った、直立する白い虎型のポケモロイドだ。虎というのは、カエンジシの前身であるライオンに近い生物らしい。機体に刻印された名称は、『バスタイガー』。
「ポケモロイド? なにそれ?」
「エリートスクールが開発した兵器だ。ポケモンを使わずにポケモンを倒すという目的の、馬鹿デカイおもちゃだよ」
異変に気付いて出て来たエルトがタキナに説明した。要するただのロボット兵器なので、人間には滅法強いがポケモンには鎧袖一触されるおもちゃに過ぎない。
『アッシュにエルトか、ポケモロイドをメシア団に売るためのセールスで意外な収穫だ。ギンさんの兄とはいえ我らの思想を解さない愚か者。貴様には水底がお似合いだ』
やけに偉そうで、倒す前から収穫扱いな取らぬジグザグマのものひろい算用をする、実にエリートスクールの生徒らしい男が隊長機に乗っている。
「エリートスクール?」
「まあ、雑魚だ」
またまたタキナの聞き覚えが無い単語が出て来たため、エルトが軽く説明。間違ってはいないが、雑過ぎる説明でタキナは理解出来たのだろうか。
『二手に別れて博物館を破壊する。やれるな、フラジール』
『フフフ、このポケモロイドを私の先見の明で購入したとあればメシア団も私を幹部に……』
もう片方の隊長機にはフラジールというメシア団の下っ端が乗っている。二手に別れるつもりだ。
「メシア団? ロ〇クマンゼロ?」
「メシア団。正体不明の集団だ、気をつけて」
エルトは放送コードギリギリの内容を連想したが、ユウキが訂正する。博物館にいた人を避難させて、エルトに追い付いたのだ。
「こちらも二手に別れよう。僕とアッシュくんでフラジールを倒す。エルトさんとタキナくんでもう片方を頼むよ」
「わかりました!」
「任された!」
ユウキの判断で戦力を均等に割り、アッシュ達も二手に別れる。単純に現在所有してるポケモンの数を均等にしただけだが、アッシュとエルトがほぼ6匹フルで持ってるのに対し、ユウキとタキナは半分もいない。
攻戦なら数は関係無いが、防戦では数がかなり重要だ。数がいないと防衛ラインに穴が空く。
リンタウン博物館防衛戦 タキナ&エルトパート
タキナとエルトが戦うのは、エリートスクールの生徒が率いるポケモロイドの集団。ポケモンが相手ですらないことにタキナはかなりの戸惑いがあった。
「ポケモンバトルなら何とかなりそうなのに……」
「そうか? 相性関係無くボコせばいいから楽だと思うけど」
こんなバトルに慣れ切ったエルトとはやはり反応が違う。
「ユウキから聞いたよ、タキナくんは優秀なトレーナーらしいね。だが、君には足りないものがある」
「なんだよ?」
エルトはユウキから教えられたタキナの戦績を思い返す。かなりの高成績ではあるが、足りないものを感じたのだ。安定性はあるが、爆発力が足りないとエルトは分析した。
同格のトレーナーには安定した戦いが可能だが、高い実力のトレーナーには苦戦を強いられるだろう。
「それは必殺技だ! 行け、イチロー!」
「必殺技?」
エルトはバシャーモのイチローを繰り出した。持ち物はなんと『くろいてっきゅう』。タキナはくろいてっきゅうに嫌な思い出がある。
「右手にかみなりパンチのエネルギーを溜めるんだ!」
イチローは右手に鉄球を掴み、かみなりパンチのエネルギーをチャージする。
すると、鉄球が敵に向かって吹き飛んでいく。かみなりパンチの電力で磁力が発生し、その反発で鉄球を飛ばしたのだ。
「ハイレールガン!」
『ぎゃあああ!』
鉄球が敵のポケモロイドを撃ち抜き、爆散させる。ハビロマキリ程度なら一撃なのか。
「さ、イシツブテの岩技とかみなりパンチを組み合わせるんだ。タイプが一つ一致してるからメガレールガンだな」
「わかりました、やるぞイシツブテ!」
タキナはイシツブテに指示を出す。イシツブテは岩を持ち、かみなりパンチのパワーを腕に溜める。
「片腕でやると狙いやすい。両腕の方が当然パワーは上だがな。岩なら磁力ではなく力で飛ばす。フレミングの法則を思い出すんだ。電力を下に向けると真っすぐ岩が飛ぶ」
エルトの指示通り、イシツブテは電力を下に向けた。イチローは磁力を使ったため、右に電力を向けたのだ。
「メガレールガン!」
イシツブテの手から、高速で岩が打ち出される。1機のハビロマキリが貫かれ、また爆散。
「おお! 強い!」
「弾と電気の2つにタイプ一致なら、ギガレールガンになるぞ。出来るのはジバコイルくらいだが」
イチローはくろいてっきゅうもかみなりパンチもタイプ不一致だが、イシツブテは岩にタイプが一致した。技のタイプとしては岩、電気タイプ扱いらしい。
「行け、ケーケー! 見せてやれ、シャドーファンネル!」
次にエルトが出したのは、フーディンのケーケー。シャドーボールを15発ほど発射するが、ポケモロイド達は回避する。すると、シャドーボールが曲がって追尾する。
「サイコキネシスでシャドーボールを動かしてるのか」
「それだけじゃないぜ!」
そのシャドーボールからサイコエネルギーとシャドーボールのパワーがレーザーの様に発射される。
『ぐわあああ!』
次々とポケモロイドは破壊された。高い予算を注ぎ込みながら、ポケモンには勝てないのだ。メンテナンスにも維持費が掛かる。
『私がやるしかないようだ。エリートスクールのナンバー2、ギンさんに最も近い男が私、ステイシスだ』
「ナンバー2か、強いのかな?」
「期待すると損だぞ」
タキナはステイシスの実力に興味を持ったが、エルトは雑魚と断定する。
『神殺しのエルト、その大袈裟な伝説も今日で終わりだ』
「周りが囃し立てるだけだ、大袈裟なのは事実だな」
ステイシスはバスタイガーの腹部コクピットを開き、ボールを投げる。
『これでも私はトレーナーだ。自分が見抜いて育てたポケモンの実力の方がこんなおもちゃより高いと知っている』
ボールから出て来たのはファイアロー。こいつを見れば、ステイシスがなかなかの実力者であるとわかる。
「これ、ギンより強いんじゃ……」
『だが、私はナンバー2だ。あの人には隠された潜在能力があるのだろうな』
エルトはステイシスの方が実力は上だと見た。今までのエリートスクール生徒の中では一番だ。
『ポケモンを何匹出してもいい、かかって来い』
「行け! ポリゴン、ユンゲラー! 俺達の必殺技を見せてやる!」
タキナはポリゴンを繰り出し、ステイシスに戦いを挑む。
「必殺技は必中の状況を作り出してから撃つんだ」
「れいとうビーム!」
タキナはれいとうビームをファイアローに撃つ。既にブレイブバードの体勢に入っていたファイアローは回避せず、受ける。とくせいは『はやてのつばさ』か。炎タイプがあるなら受けれる。
『何?』
「これが必殺、インペイリアル!」
が、ファイアローは麻痺して動かなくなる。れいとうビームに10まんボルトを混ぜて、受ける様に仕向けたのだ。
「必殺! サイコレールガン!」
イシツブテがかみなりパンチの力を手に持った岩に溜め、ポリゴンも10まんボルトでサポート。そして、ユンゲラーがサイコパワーで撃ち出した。
『何だと?』
電気を纏った岩がファイアローにぶつかる。サイコパワーで岩が粉砕して破片や電気が飛び、2回に分けてダメージが入った。
『くっ、時間の無駄だ』
ステイシスは倒れたファイアローをボールに戻し、バスタイガーのブースターを蒸して飛んだ。しかし、リンタウンにある小さな湖の上で異変が起きる。
『メインブースターがイカれただと! 狙ったか、エルト!』
背中のブースターが壊れ、堕ちて行く。さっきのサイコレールガンの余波が原因らしいが、この程度で壊れるとは、信頼性の低い兵器だ。
『よりによって湖で……クッ、ダメだ、飛べん! ……浸水だと! 馬鹿な、これが私の最後と言うか! 認めん、認められるか、こんなこと』
「いや死なないだろアレ」
湖に落ちたバスタイガーを見て、タキナは呆れていた。湖は浅いので、バスタイガーは壊れたがステイシスは無事である。
「なるほど、パイロットの安全性は確からしい。だが死ね」
エルトはイチローに必殺技を撃たせる。かみなりパンチを右手で発動、それを天に突き上げ、周りの砂鉄を舞い上げる。それを炎で焼き、巨大な炎の剣を作る。
「砂鉄を軸にすることで安定性が増したんだ。喰らえ、ジャッジメントオブヘル!」
『うぎゃあああ!』
バスタイガーが爆発。タキナもこれにはドン引きである。エリートスクールに容赦が無い男、それがエルト。
「悪の組織に情けはいらん。残党がいると面倒だ」
「いやー、確かにそうだけどさ」
逮捕とかいろいろ無視して何でもかんでも必殺技でぶっ飛ばすのは如何なものかとタキナは考えたのであった。
リンタウン博物館防衛戦 アッシュ&ユウキパート
アッシュとユウキが戦うことになったのはメシア団の幹部になりたい下っ端、フラジールだ。
「地味に速いなぁ……」
ハビロマキリが素早く、エンブオーのマインの攻撃がヒットしない。マチルダは追い付けるが、致命的ダメージにはならない。
「アッシュくん、せっかくだから作戦を試してみないかい?」
「作戦?」
ユウキからそんな提案があった。今まで、アッシュが立てた作戦はシンプルなものばかり。本格的な作戦は立てたことは無い。
「エンブオーの弱点を埋めるんだ。素早さが低いエンブオーをフォローする。レパルダスの技でね」
アッシュがボールから出しているのはマインとマチルダ。
「弱点をフォローする作戦はこんな感じ、行け、トラヤ、ハドリア!」
ユウキはペリッパーのトラヤとキノガッサのハドリアを繰り出した。ハドリアが何かを溜めている最中、トラヤがまもるや水技でハビロマキリを牽制する。
「きあいパンチかな?」
「きあいパンチなら『きのこのほうし』を使うけどね。相手がロボットなせいもあるけど。ハドリア、しんくうぎり!」
しばらくトラヤが防御していたが、ハドリアが攻撃を開始する。突然、多数のハビロマキリが切り裂かれで爆発した。
「これがしんくうぎりだよ。これだけ多くの敵に対して使うには、風の刃がたくさん必要だからそれを作る時間が必要だったのさ」
「他のポケモンの弱点を、他のポケモンで?」
実はキノガッサとペリッパーは大きく弱点が異なる。本丸のキノガッサを落とそうと氷技や炎技を使うとペリッパーに防がれ、ペリッパーを倒そうとして電気技を使えばキノガッサに防がれる。共通する弱点が無いのだ。
「ならば! マチルダ、ねこだまし! マイン、怯んだ隙に攻撃!」
マチルダに牽制させ、動けなくしてからマインで破壊する作戦となった。ねこだましで怯んだハビロマキリは、次々とマインのヒートスタンプで破壊された。
「よし!」
『ちょ……冗談じゃ……』
次々とポケモロイドを破壊され、フラジールは青ざめる。組織の資金を勝手に持ち出して購入したのだ。戦果無しでは組織から粛清されかねない。
『ならこのバスタイガーで……う、動かん!』
フラジールがバスタイガーを動かそうとしたら、ハドリアのしんくうぎりで重要なコード類を切断されて動けなくなっていた。
『バスタイガー、動け。バスタイガー、何故動かん? だが、こいつにはまだサイコフィールドが!』
「ここからいなくなれっー!」
ニトロチャージしながら、マインがヒートスタンプを放つ。バスタイガーは紫の膜みたいなものを展開、緊急用のサイコフィールドだ。だが、アッシュの瞳が強く光り、バスタイガーの切り札であるサイコフィールドを消し去る。
『話が違うッスよ……こんな!』
マインの拳でボディを貫かれ、バスタイガーは爆発した。アッシュはサイコパワーを打ち消す力を持つ。
『システムから光が逆流する! ギャアアア!』
「えー、何々? ポケモロイドは人類が誰しも持つサイコパワーで制御し、複雑な操縦を簡易化? 胡散臭いロボットだね」
近くに落ちていた説明書を読んだユウキは、幸運の壷レベルのオカルト商品とバスタイガーを切り捨てた。腕に搭載されたバスターキャノンは結局使われず、格闘・鋼の複合タイプを謳いながら地面技対策のブースターも使用出来ず、炎技対策のアクアシールドも不具合。
ペーパープランなら完璧といったところだ。作戦もガチガチに固めて流動性を無くすとこうなり兼ねないため、注意が必要だ。
カフェ
戦いを終えた一行は、カフェで休憩した。リンタウン名物のイチゴは甘くて美味しいのだ。
「これを君に?」
「作戦カードとわざマシン?」
「作戦を立てる時に使うといいよ」
アッシュはユウキから作戦カードを貰っていた。作戦を立てるためのカードで、フローチャートなども付いている。わざマシンは『しんくうぎり』と『すいへいぎり』のものだ
「ありがとうございます」
「後輩を導くのは先輩の役目だからね」
アッシュも新人とは言えないまでもまだユウキから見ればルーキー。イッシュラリーでの健闘を祈るばかりだ。
「これがダクダ用とケーケー用の必殺技を纏めたプリントだ。存分に活用したまえ」
「こ、こんなに?」
エルトはタキナに必殺技を伝授していた。どの技も実用に向かないロマン技が多いが、全ては使うトレーナー次第。バトルに使えなくても、先程みたいな戦闘には便利だ。
「エリートスクールにメシア団。世界にはまだまだ悪の組織がいるんですね」
「アッシュくんの力……前に博物館にあった『竜秘宝全集』に載ってた様な気もするけど……」
タキナはメシア団以外に悪の組織がいると知り、何と無く何処へ行っても人間の本質は変わらないんだなとか思った。ユウキもアッシュの力に心当たりがあるのだが、その本は今無い。
「『竜秘宝全集』? カントーの文化財回収制作で、リンタウン博物館の学芸員がカントーの博物館で昔捨てられかけたのを見たから買ったのに、タダ同然で持ってかれたあれか?」
「カントーの文化財流出は自分達が原因なのにね。捨てられそうなところを他の博物館が回収しただけなのに」
せっかく力の秘密に迫るチャンスだったのに、その本はここに無い。
「カントーに行けばあるかな?」
「いや、あれにはポケモンリーグの本部至上主義者に不都合な記載があるから、もう焼かれてしまって、現存してないかもね」
ようやく掴んだ手掛かりも、既に紛失。アッシュが力を使い熟すヒントになりそうなものだが。
「竜ってなら、ソウリュウシティの近くにある竜の里のオババ様に聞くのがいいかもな。ちょうど、オババ様が知ってるお話の記録作業をしてたんだ」
「里のオババ様か。それなら何か知ってるかも」
「ソウリュウシティ……ボクのお家があるとこだね」
エルトとユウキは、最後の手掛かりとなる人物まで辿り着く。竜の里のオババ様なら、竜秘宝全集に書かれていただろう内容も知っているはずだ。
「不思議なことか……俺も最近あったような……」
タキナは先日、博物館で不思議な出来事を目の当たりにした。それがアッシュみたいな能力絡みならよかったのにと思ったりしたが、彼みたいにサイコパワーを打ち消したら自分のユンゲラーと相性が悪いかもしれないと考えて、やっぱりいいやと思い直す。
疾風が霧中を駆け抜け、一つの事件が終わった。だが、それは互いに始まりに過ぎなかった。
お知らせ
級長「『あること』をするからさ、しばらく更新出来ん。代わりに……」
アッシュ「代わりに?」
級長「ピクシブで灰色の疾風再会編連載開始!」
アッシュ「ボクの冒険がまた始まるんだね」
級長「アッシュがハハコモリとレントラーに再会するまでの話を纏め、伏線を整理した。イラストも募集中だぞ」
ピクシブで『灰色の疾風1再会編』連載中!