プラズマ団の王であり、元チャンピオン。ポケモンと話せる能力があるが、アッシュと違って先天的なもの。
現在の行方は不明。
チャンピオンロード
「どけよテメェ!」
「くあああああん!」
「ローキックかますぞ、オラッ!」
キョウヘイはチャンピオンロードでゾロアークを見つけ、Nの予感を感じたためトウコを呼んで戻ってきた。戻ってみたら、ゾロアークが動いてくれないのだ。
どういうわけか、考えていたらNがひょっこり洞窟から顔を出した。
「なんだかいつも通りだね、トウコ」
「ようやく見つけたぜ、N! ……あれ?」
やっとNを見つけたと歓喜するトウコだったが、Nの足に縋り付く何かを見つけて戸惑う。
「何でも言うこと聞きますから、ポケモンと話す方法を教えて下さい!」
「誰だこいつ」
「さあ?」
Nの足に捕まっていたのはワインレッドの髪をした女性だった。つなぎを着て、その上をはだけて余った部分を腰に結んでいる。つなぎの下は黒いタンクトップという、オシャレとは程遠い服装ながらなかなかの美人であることが顔立ちや体つきから伺える。
「ちょうどいい。手籠めにしてけよ」
「本当ですか? 手籠めになったらポケモンと話せる方法を教えてくれるんですか?」
「変な方向に話を持っていかないでくれ」
トウコはこれからNを待ち受ける面倒を避けるべく、この女性を宛がうことに決めた。Nは確かにイケメンだが、早口だし電波ゆんゆんでなかなか言い寄る女性も少ない。
「お前贅沢いうなよ。こんな緑髪の数学フェチなポケモンと話せる電波野郎に言い寄る数少ない女かつ美人はそうそういないぞ」
「なにげにボクの存在を全否定したよね? とりあえずゾロアークを蹴ってまでボクに会いたかった用事は何!」
久しぶりにトウコのはちゃめちゃに振り回されたNは懐かしさを感じた。
「そうそう、お前に匹敵する電波女が現れてな。とにかくついて来いよ」
「それならボクの足元にいるじゃないか」
「そいつじゃなくてだな。お前の伴侶になるとかならないとか、プラズマ団になんか吹き込まれたらしい奴だ」
「プラズマ団ならほおってはおけないね。行くよ」
Nはプラズマ団の名前を聞くとそれまでの面倒臭そうな態度を改め、急に真剣になる。それより先に、足にくっつくこの人を何とかせねばならない。
「君は……とりあえず名前を」
「ロゼッタです。ロゼでもブーピックとでもお呼び下さい!」
「君はポケモンの言葉を聞けるようになって何がしたい? ボクみたいに言葉がわからなくても、ポケモンと人間は心で繋がれるじゃないか」
その女性、ロゼッタの言葉をスルーしながらNは的確に正論を叩き込む。だが、ロゼッタは臆さない。
「それは重々承知の上! 確かに人間はポケモンと心で繋がれる!」
「それがわかってるなら何故、ポケモンの言葉を?」
ロゼッタはNの言わんとすることくらい理解していた。だからこそ、ポケモンの言葉を理解したいと彼女は言う。
「それは、人類の夢だからです!」
「人類の夢……だと?」
「そうです! ドリル、ハンマー、キャノンに次ぐ人類の夢、ロマンなのです!」
「ロマンだかマロンだか知らんが、とっとこ行くぞ」
なんか変な方向に飛び火しそうな話が始まったため、トウコは切り上げて本題に向かう。ウォーグルで強制的にNとついでにロゼッタを連行した。
ライモンシティ ショッピングモール
アッシュが挑む次のエンブレムの試練は『ボルトエンブレム』。内容はファッションショー+バトルである。
そのため、一旦ハツネとアリスに合流することにした。着てる服がいくらベルのお下がりでも、彼女はアッシュに合わせて中性的なものを選んでいた。
「つまり、アッシュに合う服を探さないとね」
「なんでそれをレディースコーナーで?」
ハツネはアッシュにいろいろな服を宛がいながら、コーディネートを探った。アリスはいろいろ疑問が残っていた。そういうアリスも、普段着ている鎧ではなくハツネに選んでもらった服を着ているのだが。
「男の子向けの服ならあっちにだな……」
「え? でもアッシュにはこっちが似合うと思うなー」
「ボクも服はわからないのでハツネさんに任せます」
アッシュもこの調子なので、アリスは黙っていることにした。男も女も同じ騎士として育てられる家に育ったアリスは、女の子らしい格好に憧れていたため、それを止めることがどうしても出来ない。
「おーい、お前ら! ここに保育士来なかったか?」
「エナツっていう人なんだけど」
「あ、エルトさんとあの時の保育士さん」
そこにエルトとヴァイオラが通り掛かった。ハツネは一応、ヴァイオラとも面識があった。
「初にお目にかかる。騎士のアリスです」
「?」
「なんだ、お前鎧着てないのか」
アリスが普段通り挨拶をするが、ヴァイオラはキョトンとしていた。鎧を着ていない普通の女の子が騎士だなんて言っても普通ピンと来ない。
「保育士は見てないなー」
「あらあら、女の子の服選びに付き合うなんて、アッシュくんも少し大人になったね」
「あ、これアッシュの服選んでるんです」
久しぶりに再会したアッシュが少し大きくなっていることに気付いた。これは毎日顔を合わせていると気付かない変化だ。
「へ?」
「今度、ボルトエンブレムの試練で着るんです」
「何だか似合いそうなのが凄いよね……」
ヴァイオラはこの場所でアッシュの服を選んでると言われ、まるで違和感を感じない自分に戸惑う。似合いそうなのがアッシュの怖いところだ。
「お、ブルジョワ伯爵。人を探してる、手伝ってくれ!」
エルトはブルジョワ伯爵を見つけ、人探しを手伝わせる。伯爵も嫌とは言えず、とりあえずみんなでエナツという人物を探すことになった。
エリートスクール予備学科中等部 女子寮談話室
エリートスクールは全寮制の学校である。そもそも絶海の孤島に通うなんてのも無理な話で、滅多に里帰りすらしない。
昔は理事長のジキルが選んだ才能ある生徒だけが入れたが、寄付しても裏口入学の助けにならない学校故、近年は金持ちからの寄付が減って経営難。そこで、ジキルは予備学科を設立。
今年で設立2年目になる予備学科は高い入学金でエリートスクールの授業の一端を受けられるというもの。功名心の強い金持ちの息子が大量に入学し、作戦は成功だった。
女子寮の談話室では、新入りを囲んでいろいろ話をしていた。金持ちというのはまだ考えが古いからなのか娘を手放したくないからなのか、あまり予備学科に入れたがらない。なので、ここにいる十人に満たない女子で全員となる。
「はい、こちらが新入りのシルフィちゃんです」
「よろしくお願いします」
シルフィは短く切った銀髪を揺らして自己紹介。
みんな寝る時間というだけあり、パジャマで集まっている。
エリートスクールは中等部と高等部にわかれ、シルフィの年齢である初等部は無い。ただ、エリートスクール理事長のジキルが才能を発掘したらすぐ手に入れたがるため、みんな入学時期が微妙にバラバラである。
ジキルに才能を見抜かれたとはいえシルフィはまだ10歳。予備学科の授業を受けて中等部入学まで待つ予定だ。
「感想を一言」
「エリートスクールって噂で聞くと大変なところだって話ですけど、皆さん優しくて安心しました」
「私達は仲間だからね。ただ、本学科の連中はクラスメイトすら蹴落とす修羅だからね」
「シュラ?」
シルフィは聞き慣れない単語に首を傾げる。一人の先輩が持ち込んだ『キンセツ博物館目録』を見せて説明する。
「東の国にあった仏像だね。キンセツ博物館は子供の教育の為に無料でこれ程の資料を見せてくれるんだ」
「凄いですね!」
「盛り上がってるところ悪いけどさちょっと恋バナしてもいいかな?」
話の腰を折りつつ、大半のメンバーが気にしているだろう話を他の先輩が振る。
「きっとシルフィちゃんも男から離されて過ごしてきただろうから聞くよ。男子を見た感じ、誰がよかった?」
予備学科に通う様なお嬢様は大抵、男から離されて育てられた。そのため、必ず新入りがいるとこういう会話になる。
「うーん。私はよくわかりません。でも、気になる人がいるんです」
「え? 誰々?」
「ここの人じゃないんです。ここに来るまでに会った。アッシュって男の子です。年下なのかな? ポケモンと話せるらしいんですよ」
シルフィは以前出会ったアッシュのことを思い出す。ポケモンと話せるという、不思議な男の子だった。
「ここには確かにいないでしょうね」
「特に本学科はね。トップの人間は部屋に変なデザインのロボットのプラモデル飾ってネスカフェフラジールを飲みながら『フラジールな関係』って小説を読んでるフラジール先輩とか変なのしかいないから」
「フラジール先輩、クラウド地方行ったまま帰ってこないんだってね」
変な先輩が消息不明との噂を聞き、シルフィは少し心配になった。本学科の精鋭チーム『エレメント17』が全員重傷を負い、精神に深刻なダメージを抱えて再起不能とも聞いた。
エリートスクールとはいえ、その活動を阻止出来るだけの人間が外部にいることには間違いない。
新入り、シルフィの夜は少しずつ更けていった。
カワナタウン ブルジョワ邸
ブルジョワ邸にはブルジョワ伯爵の特殊な性癖を満たすため、様々な施設がある。この牢獄もその一つで、今回はキャサリンが都合よく使えた。
「うっ……」
「全く強情なんだから。殺せないこちらの身にもなってほしいもんだ」
牢獄の中には電気椅子が置かれ、そこにジャスミンは座らされていた。拘束衣を着せられ、身動きが取れぬまま電流で肉体を蹂躙され続けた。
「アッシュを呼ぶだけなのに、何故出来ない!」
「ぐっ、ああっ!」
バースト状態を保ったキャサリンは、スイッチでジャスミンに電気を流す。アッシュの名前が出た途端、ジャスミンは喘ぎすら漏らそうとしなくなった。
「すでに遺産は私に相続させるよう遺書は書かせた。あとはアッシュもろとも殺すだけなのに!」
「アッシュは……殺させない……」
アッシュを弟に重ねているジャスミンは、何がなんでもアッシュを守りたかった。そのため、自分や伯爵に何があってもアッシュだけは呼ぶわけにいかなかった。
「仲間がどうなってもいいの?」
ただ、キャサリンもここ一日指をくわえて見ていただけではない。向かいの牢獄にはセイレンとメイディがいた。
「セイレン、メイディ! どうして……関係無いのに!」
「伯爵を呼ぶ餌のつもりだったけどね。ついでに死んでもらう!」
なんとキャサリンは、ついで程度でかつての仲間を殺そうとしていた。セイレンとメイディは牢獄に入れられているだけで、特に拘束されているわけではない。服装もいつも通り、セイレンが水着、メイディはナース服だ。
「キャサリン! あんたただじゃおかないよ!」
「早く出して下さい!」
セイレンは強気だが、メイディは怯えていた。ここは単純に性格の差なのだろうか。反抗的なセイレンに、キャサリンはサイコキネシスを浴びせる。
「んあっ! ぐっ……」
「セイレン!」
セイレンは牢獄の壁にぶつけられて、冷たい床に落ちる。それでも、彼女はキャサリンを睨みつける。セイレンには負けられない理由があった。
「あんたみたいなトンチキがいるから……真面目に生きると馬鹿を見る世界になるんだっ! 私の両親は真面目にカントーのきのみ農園で働いていたけど、同じカントー地方であった農薬の問題でカントー産の消費が冷え込んで農園が潰れたんだ。おかげで私は真面目でいるのを馬鹿らしく感じて、やさぐれてこのザマよ」
「そんなことが……?」
セイレンは自分が今ここにいる理由を明かす。ジャスミンは今まで知らなかった彼女の真意を知り、少し驚いた。
「だけど、賢く生きたつもりなのに、私も馬鹿だったみたいね。ジャスミン! この喧嘩買った! 私もとことん付き合わせてもらう!」
「小癪な!」
「うぐっ……」
立ち上がったセイレンに、再びキャサリンがサイコキネシスをぶつける。また倒れたセイレンだが、意志はぶれない。
「へっ、こんなの、あのエーフィの方が数倍ヤバいっての。ここであんたみたいに楽して生きようなんてしてる奴に負けたら、天国の両親に今以上に顔向けできないからね!」
セイレンの両親は借金に苦しみ、体を壊し、ついに彼女と共に無理心中を謀る。チャッチャと自己破産すればいいのに、真面目に生きたが故の悲劇だった。そこから偶然生還したセイレンは今に至る。生きる苦しみを知るからこそ、ここで負けられないのだ。
ライモンシティ
アッシュ一行のエナツ捜索は難航した。
「みんな、エナツっていう男の人知らない?」
アッシュはポケモン達から話を聞き、エナツを探した。話によると男の人らしい。
「奴の行動範囲は限定不能だ。だが、専攻がポケモン教育ならこれは逃しはしまい」
エルトは書店のサイン会に張り込みをしていた。あんパンとモーモーミルクで刑事みたいに物陰に隠れ、エナツの到来を待つ。ポケモン教育の権威たるこの著者のサイン会は逃さないはずと見込んだのだ。。
「エナツって人見ませんでした?」
「探しているんです」
「捜索願いは出てないみたいだね」
ヒュウとハツネは真っ当な方法で捜索。警察に聞いて回った。
「見てませんか」
ヴァイオラは保育園を回った。それもポケモンの保育園を。
「見当たらないな。この服は身軽だからこの方法が一番か」
アリスはあちこちを駆けずり回り、ビルから外を見て探す。アリスの視力ならある程度高いところからでも人を判別出来る。
ただ、この男の方法は一味違った。ブルジョワ伯爵だ。
「またよろしくね」
「ああ、また来るよ」
「何テメェは一人でいやらしい店入ってんだ!」
サイン会が終わってしまったため他の場所を当たってたエルトにブルジョワ伯爵はぶん殴られた。ここはライモン随一の盛り場である。
「なにをするだー! 私は独自のルートで探してただけだ! 第一お前だってサイン会行ってきたじゃないか!」
「これは張り込みついでだよぉ! 天下のポケモン二次創作でそういうことやっていいと思ってんのか絶倫野郎!」
以降、とても子供に見せられない罵り合いが続くので割愛。
ともかく、各々個性的な捜索を行ったが発見には至らなかった。すると、店員が何かを思い出したかの様に情報を出した。伯爵がサービスを受けた女性だ。
「あ、そういえば」
「第一、ここは嫌らしい店じゃない! ただ女の子とお風呂入るだけだ!」
「十分いやらしいわ! この作品でそれやっていやらしくないのはアッシュくらいなもんだ!」
「シーンさえなければCEROも動かん!」
「発言が問題だよ!」
「そうそう、エナツって人探してるんでしょ?」
「ああん?」
その発言に伯爵とエルトは喧嘩を辞める。さすがにメタ発言まで連発する罵り合いは彼女も初めてだったのか、少し困惑していた。
「この人じゃない? うちの店長がスカウトしようとして声をかけたら男だったって」
店長は二人に写真を見せた。ぱっと見、女性に見えるが男なのだという。
「嘘言ったんじゃないか?」
「いや、さすがに骨格とか微妙な違いは隠せないよ。いくら中性的でもね」
「店長も同じこと言ってたわ。名前も聞いたから間違いないよ」
伯爵はその人がその場しのぎで嘘を言ったと思っていたが、エルトには写真の人物が男性だとハッキリわかった。全身写真の至る所にヒントがある。
「この辺りは女性向けの店なんて無いから、女性人口が少ない。ここにいる時点で男性の可能性が高い。手持ちの買い物袋も男性向けブランドのもので……まあ確証は出来んが可能性は高い」
「なるほど、我々は探す人物をよくも知らずに探していたということか」
新たな情報を得たアッシュ一行は、再び捜索を開始した。
遊園地 観覧車
ライモンシティの観覧車は二人乗りであり、一人では乗れない。そこが特殊な点であり、連れのいないボッチは観覧車の前で同じくボッチを探すしかないのだ。
「ああ、君でいいや、観覧車乗らげふぉ!」
「オラッ!」
観覧車の前である人物を待っていたトウコは言い寄る山男をとびひざげりで処理した。キョウヘイは保育士に誘われ、ホイホイ観覧車に乗ったため今はトウコ一人だ。
「全く、ロゼッタくらいいればナンパ避けになったもんを……」
ロゼッタはロゼッタで、カロスの『マンムーコスメ』からイメージキャラクターのマンムー様が来てると聞いてイベントへ直行した。
トウコはただ、観覧車を見上げてNとアーシェの会話を想像することしか出来なかった。
そのNとアーシェは、観覧車に乗っている。アーシェは何を言っていいかわからず、黙っていた。
「君を作ったのはプラズマ団か。今度は究極のトレーナーを、ね」
アーシェは一応、自分の生い立ちを話しておいた。Nは以前、究極のポケモンを生み出す計画を差し止めたことを思い出す。それを計画した人と同じ人が発案したのだろうか。
「君はどうしたいんだい?」
「私は……N様の伴侶に……」
「焦るのはよくない。君にはまだ未来がある。見てご覧」
Nはアーシェに観覧車の外を見る様に言う。外には人々が行き交うライモンが見えた。
「ポケモンと人、人と人、ポケモンとポケモン。その世界が混ざりあって織り成す世界は果たして灰色なのだろうか。灰色と一言で言っても種類が結構ある。それに、灰色だから美しくないということは無い」
以前、Nはポケモンと人が混ざり合って作る灰色の世界に否定的な感情を持っていた。それから旅をして世界を見るといろいろなことがわかった。
灰色といえど様々な種類があり、灰色も美しいということ。何より、色が混ざって灰色になるとは限らないということ。
「君も世界を見るといい。プラズマ団はボク達が止めるからさ」
「世界を?」
「そう、世界だ」
Nはアーシェにも、世界を見て欲しかった。彼女は見た目より経験が少ない。だからこそ、尚更にだ。
「それを見ると、何かわかるの?」
「ボクもわかったからね」
「私にも、わかるかな?」
アーシェはNの伴侶となるためだけに生み出された、究極のトレーナー。だが、Nはそう生きるのをよしとしなかった。
アーシェが何を見て、どう変わるのか、答えは既に出ていた。
「なんだ、心配いらないじゃん」
Nとアーシェが観覧車に乗っている時、もう一人のアーシェが観覧車の下にいた。アッシュがヒウンからタチワキへ向かう際、偶然出会ったアーシェという女性だ。シンジの危機を知ると、シンオウへ救援に向かったが今はイッシュにいる。
「私の時はなんかマナフィの神殿とかいろいろ一悶着あったはずなんだけど……何かが原因で未来が変わったのかな? ボクは何もしてないよ?」
黒いコートを着込み、アーシェは観覧車に背を向ける。彼女は未来のアーシェである。
「ま、頑張れよ、ボク」
アーシェはモンスターボールからセレビィを出し、その場から消えた。
「ライブキャスター?」
「何事だ? ジャスミン?」
その時、アッシュとブルジョワ伯爵のライブキャスターが鳴り響いた。彼らはエナツの情報を得て遊園地まで来た。だが、エナツを見つける前にライブキャスターが鳴ったのだ。
「こんにちは、伯爵」
「キャサリン?」
「今すぐ会いたいの。来れる?」
ムウマージのような奇抜な格好をしているキャサリンに面食らい、伯爵は戸惑う。いつもなら即決であるのだが、答えに間が開いてしまった。
「あら? 来ないの? この人達がどうなってもいいの?」
「ジャスミン? セイレンにメイディも?」
伯爵のライブキャスターには捕まっているジャスミン達が映し出されていた。
「どういうこと?」
アッシュの方には音声だけ。これはライブキャスターの調子なのだろうか?
「さあ、待ってるわ」
「ぐ……キャサリン!」
ブルジョワ伯爵は切れたライブキャスターを見る。画面は暗く、キャサリンは見えない。
「伯爵! これは……?」
「ジャスミンが捕まった、キャサリンは私の手を離れて暴走しておる!」
「え?」
アッシュは混乱していた。ジャスミンとキャサリンは曲がりにも仲間だったはずだ。それがどうしてこんなことに。
「とにかく、行かなければ!」
「うん!」
アッシュと伯爵は走り出す。何が起きてるかは知らないが、ただならぬ事態だ。
リベレート団は伯爵から離れ、キャサリンをリーダーに戦いを続けていた。その先にある暴走、もはや彼らの目的は、ポケモンの解放ですらないのか。
次回予告
カワナタウンを戦火が包む。リベレート団の新たな目的は、プラズマ団の支援などではない。
次回、『イッシュの業火』。イッシュ地方を、戦いの火が焼き尽くす。