ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 言葉は不要か……(ネタ切れ)



45.終焉の戦い、アッシュの声!

 ライモンシティはブレイブハートに覆われた。アッシュ、ヒュウ、ハツネ、エルトはその様子をただ見ていることしか出来なかった。

 主犯のキャサリンはギアステーションにある大型結晶体の内部へ逃走した。

 「どうしたんだ?」

 「これは何?」

 Nとアーシェがアッシュ達に合流した。トウコも一緒にいる。

 「ああ、キャサリンがやらかしたんだ」

 「リベレート団の現リーダーか。無茶苦茶やらかすなーオイ」

 エルトがサックリ事情を説明する。ブレイブハートの結晶は成長を続け、このままではどうなるかわからない。

 「人探しどころじゃないわねこれ」

 「ポケモン以外にやられる趣味は無いのに……」

 ヴァイオラとロゼッタがアッシュ達のいるところへ来た。アリスも市民の避難を終えて合流。これで仲間は一通り揃った。

 「とにかく、キャサリンのところまで行って、ぶっ飛ばせば解決なんじゃないか? 行くぞ」

 「うん!」

 ヒュウの提案で、とにかくキャサリンを倒すことにした。一行は出せるだけのポケモンを出して、残るリベレート団員やポケモロイドを殲滅しながらギアステーションへ突撃する。

 ギアステーションは丸い結晶体に囲まれており、あれを破壊しないと入れそうにない。

 「なんだ?」

 進軍するアッシュ達の前に、ブレイブハートで出来たモンスター達が立ちはだかる。どうやら、ブレイブハートに封印されていたポケモンの力を使い、そのポケモンの姿をとらせているようだ。

 「ここは俺達が食い止める! お前はギアステーションへ!」

 「わ、わかった! トーゴ!」

 エルト達が敵の大群を押し止める。アッシュはトーゴに乗り、ギアステーションまで向かう。

 「エルト!」

 「来たでござる!」

 「よし、援軍だ」

 残るエルト達にイヴとヒサメが駆け付け、援護する。二人は走り去るアッシュを見て、何かを考えていた。

 「あの子……」

 「どこかで見覚えあるでござるか?」

 「5年前に、俺達はアッシュって奴に会ってるんだがな。でもあいつはそのアッシュじゃないだろ。5年前に10歳だった奴が5年後も10歳なんて、それこそ時渡りが必要だ」

 疑問を持つイヴとヒサメだが、エルトはハッキリ結論を出していた。

 「とにかくここを抑えないと。頼むよ、アイン!」

 「行くでござる、エッジ!」

 リーフィアのアインとマニューラのエッジが戦線に加わる。エルトはイヴに提案した。

 アッシュは走りながら、結晶を攻撃してギアステーションへの入口を開こうとする。

 「トーゴ、はっぱカッター!」

 だが、結晶は固くてびくともしない。やはり近づいて直接叩くしかないのか。

 「アッシュがギアステーションに入るには、あの結晶を壊す必要がある。手伝ってくれ」

 「わかった、出番よルカ!」

 イヴはルカリオのルカを出して、エルトに協力する。エルトもバシャーモのイチローを出している。

 「「メガシンカ!」」

 そして、二人はルカとイチローをメガシンカさせた。メガルカリオとなったルカがイヴと波導で渦の様な円形のものを生み出す。まるで波導の皿だ。

 「オーバーヒート!」

 エルトからパワーを送信されたイチローは、全力のオーバーヒートをそこに叩き込む。すると、オーバーヒートに波導が誘導され、波導でオーバーヒートがコーティングされた。

 「な、何?」

 一番驚いたのはアッシュだった。ギアステーションを囲む結晶にオーバーヒートが直撃、穴が空いた。

 「突入だ!」

 「うん!」

 アッシュはトーゴと穴からギアステーションへ突入した。結晶内部のギアステーションはすでに無く、ただ結晶のドームでしかなかった。ギアステーションはどこへ行ったというのか。

 「来てしまったみたいね。ギアステーションみたいな無機物でも養分に出来るのは、岩タイプの力かしら?」

 「キャサリン!」

 ドームの中にはキャサリンがいた。彼女は今、岩の鎧を纏っている。アッシュはトーゴから降りてキャサリンと対峙した。

 「さあ、あなたを倒して私が王となる世界への手向けにするわ!」

 「来るなら来い!」

 キャサリンが岩を浮かべて、それをアッシュにぶつけようとする。げんしのちからだ。トーゴがはっぱカッターで撃ち落とし、岩が砕けた砂埃に向かって走る。

 「ウッドホーンだ!」

 「ぐっ……が!」

 岩タイプのキャサリンには効果抜群だった。そのまま吹き飛ばされた彼女は、ドームの壁にぶつかって止まる。

 「こ、この……!」

 尖った岩を飛ばして反撃するが、ストーンエッジの命中率は低い。難無くかわしたトーゴは追撃を仕掛ける。

 「シャルル!」

 アッシュはあることを予想し、マリルのシャルルを出した。そして、それは見事に的中した。

 「調子に乗るな!」

 「あち! あちち!」

 露出が激しい紅いドレスに着替えたキャサリンが炎を出してトーゴを追い払う。そこへ、シャルルのアクアテールが直撃した。

 「こんの阿婆擦れがぁっ!」

 「うくぅっ! ……ああっ!」

 勢いを付けたアクアテールで、キャサリンは床を跳ねながら飛ばされる。

 「くっ……この力があるのに、こんな……」

 彼女はポケモンでないため、ダメージにさほど耐えられない。

 「今だ! やるぞトーゴ!」

 「おう!」

 「気をつけてよ!」

 シャルルはトーゴに乗り、倒れるキャサリンに追い撃ちをかけにいく。アッシュは警戒していたが、この二匹は戦勝ムードだ。

 「なんちゃって!」

 「うわあ!」

 だが、キャサリンは紫のボディスーツに着替え、毒を放って反撃した。シャルルとトーゴは共通の弱点である毒技を受け、一撃で戦闘不能だ。バーストの力は伊達じゃない。

 「戻って! 毒ならサンドがいいけど、すぐタイプ変えて来るかな? サンド、ラファール!」

 アッシュは毒タイプの弱点を突ける地面タイプのサンドと、そのサンドの弱点を突ける水タイプに有利なコイルのラファールを出した。

 「じならし!」

 「くっ、う……。こいつめ!」

 じならしで相手の素早さを下げながら攻撃したサンドに攻撃すべく、キャサリンは透明感のある青いドレスに着替えた。そこにラファールのほうでんが飛んだ。

 「うぐっ? 体が……痺れ……はぁっ!」

 キャサリンは麻痺状態になったが、地面タイプに姿を変えてダメージを抑える。麻痺や下がった能力はタイプを変えても戻らないらしい。

 地面タイプのキャサリンは、カウガールに近い服装だった。じならしを仕返し、ラファールにダメージを与える。だが、とくせい『がんじょう』があったので持ちこたえた。

 「ビビビ、ソニックブーム!」

 「くぁっ! クソ!」

 最後にラファールはソニックブームでキャサリンの肩を切り裂き、一矢報いた。

 「ラファール戻って! ソミュア!」

 タイプがコロコロ変わるキャサリンに対し、アッシュは安定のノーマルタイプであるヨーテリーのソミュアを繰り出した。

 「とっしん!」

 「グッ、ならばこれで!」

 とっしんに思わぬダメージを受けたキャサリンは鋼タイプに変更。鎧を纏った姿になる。それを見逃さなかったのがサンドだ。

 「じならしー! じならしー!」

 「しまった!」

 まだサンドがいることを忘れていたキャサリンはそこでダメージを受ける。逆上し、草タイプに姿を変えてサンドを攻撃する。

 草タイプはフンワリとしたデザインの緑のドレスだ。

 「うへぇ!」

 「戻ってサンド! ネーベル!」

 アッシュが今度はネーベルを出した。ネーベルはエアスラッシュの材料にねっぷうを使う独自の方法で、ダメージ効率を引き上げる。

 「ぐあぁぁぁっ! 貴様!」

 「そんな単調な攻撃が当たるものか!」

 即座に氷タイプに姿を変えたキャサリンの攻撃も、ネーベルには当たらない。氷タイプの姿は、白と水色のドレスだ。

 「行け! マイン!」

 「おうよ!」

 氷タイプならとエンブオーのマインが勇んで突撃する。アームハンマーでキャサリンを吹き飛ばし、オーバーヒートをぶつける。

 「がぁっ!」

 「さすがにちとキツイか」

 連戦の影響で疲れが溜まり、技のパワーは落ちていた。弱点を喰らわせてもキャサリンは倒れない。

 「これでどう?」

 今度はキャサリンがエスパータイプに変化。黒のゴシックな服装で、スプーンを利用して超能力を操るようだ。

 「マチルダ!」

 レパルダスのマチルダがじこさいせいを試みるキャサリンにバークアウトを使う。

 「う……あっ!」

 キャサリンは耳を塞いで悶えた、すぐ格闘タイプらしき紅いチャイナドレスに姿を変えてダメージを抑える。そこにネーベルと、相性も構わずマチルダが突撃する。

 「つばめがえしですの!」

 「効くか! うあぁっ!」

 つばめがえしを使おうとしたマチルダを蹴り飛ばしたキャサリンだが、それが隙となってネーベルのエアスラッシュで身体を切り裂かれてしまう。

 「やっぱりかー」

 「マチルダ、戻って!」

 戦いが苦手なことを自覚していたマチルダにとっては狙い通り。キャサリンもこれで致命傷を追った。

 「ぐっ……残るはその2匹だけみたいね……。ところで、私はその2匹に勝てるタイプを思い付いたのだけど」

 キャサリンはピンク色をした、リボンで彩られたドレスに着替えていた。おそらくはフェアリータイプ。悪、飛行タイプのバルジーナであるネーベル、炎、格闘タイプのエンブオーであるマイン。確かに、フェアリーで弱点を突ける。

 「アッシュ!」

 「残念だけど、ボクにはまだトモダチがいるんだ」

 そこに飛んで来たのは、ティナがシルフィから預かっていたヤヤコマのヤコ。モンスターボールをアッシュに落とし、そのまま去っていった。

 「お願い! ベトベトン!」

 「ば、馬鹿な……そんな……」

 いきなり現れた弱点に、キャサリンは絶望した。倒されたリベレート団の情報には無かったポケモンだったからだ。それもそのはず、アッシュはベトベトンを捕まえてすぐ研究所に送ったため、リベレート団との戦いで一度も出していないのだ。

 「ヘドロ爆弾!」

 「ああぁぁっ!」

 ヘドロ爆弾で攻撃し、キャサリンにダメージを与えていく。毒タイプを防ぐため、思わず彼女は鋼タイプの姿になってしまう。

 「これで……」

 「今だ!」

 「あっ!」

 ネーベルがねっぷうを、ベトベトンがかえんほうしゃを放ったのでキャサリンの過ちに気付いた。だが遅い。防御も回避も間に合わず、直撃を受けてしまう。

 「やぁぁっ!」

 「これで、終わりだ!」

 最後にマインがほのおのパンチで突撃していく。それをボディに受けたキャサリンは、遂に倒れた。

 「ぐ……はぁっ……?」

 「終わったようでありんすな」

 ネーベルが決着を確信する。マインとネーベルはさすがに疲れていた。それはアッシュも同じようで、座り込んでしまった。

 「ふふっ……甘いわね?」

 「まだやるの?」

 倒れたままキャサリンが笑う。アッシュはそのしつこさにウンザリしていた。キャサリンは立ち上がり、背中によくわからないリングみたいなものを出現させた。

 「さあ、死になさい!」

 そして、そこから極太のビームを放つ。あまりに唐突なので、アッシュは避けることが出来なかった。

 「な、なにこれ?」

 ビームが直撃、辺りは煙に包まれた。

 「やったか?」

 「甘いのはそっちみたいだな」

 キャサリンは勝ち誇ったが、煙の中からポケモンの声が聞こえたため、少し止まる。何を言っているかはキャサリンにはわからない。

 「ストラートと……コドラ達?」

 「待たせたな!」

 極太ビームはストラートやコドラ達のまもるで防がれていた。

 「ヤーコンロードを通る時に連れて来た。お前、結構有名人だな」

 「そうだったんだ」

 どうやら、アッシュはポケモン達の間でかなり有名らしい。なのでストラートがコドラ達を連れて来られたのだ。それはまあ、ポケモンと話せる人間などそういるものではないのだから当然だ。

 「他の奴らも来てる。さあ、観念するんだな」

 イッシュ中から野生のポケモンが集まり、アッシュに味方していた。再びキャサリンは極太ビームを使おうとするが、リングを何者かに破壊されて暴発する。

 「きゃあああぁぁっ!」

 「俺達が力を合わせれば!」

 「敵はいないぜい!」

 アクアジェットでリングを破壊したのは、アッシュが旅立つ前に仲裁したバスラオ達だった。筋の色が違うことで喧嘩していたバスラオが、アッシュのために協力していた。

 アッシュの声を聞き、ポケモン達が集まっていたのだ。ポケモンと話せる能力は人間とポケモンだけではない、ポケモンとポケモンを繋げることも可能なのだ。

 「あくぅ……まだよ! カタリンナ!」

 キャサリンは辛うじて立ち、最後に取っておいたブレイブハートをカタリンナに運ばせる。幾度もアッシュの前に現れた、あの大根女優だ。

 「キャサリン様が世界を統べればリベレート団の天下! そして私はポケウッドデビュー! さらに歌手デビューして武道館ライブにオリコンナンバー1で紅白出場! 私の半生を書いた本が世界的ベストセラーを記録して、私の記念館が堂々と建つのよ!」

 「マズイ! 回復するつもりだ!」

 変なうわごとを言いながら、カタリンナは台車に載せた箱いっぱいにブレイブハートを詰め、ブレイブハートを満載した風呂敷包みまで持っていた。アッシュは焦りを隠せない。

 「邪魔をするなぁああッ!」

 だが、そこにエルトのメガバシャーモ、イチローが飛んで来てカタリンナの顔面を本気で殴り飛ばす。骨が折れる嫌な音がアッシュにも聞こえた。

 後からイヴのメガルカリオ、ルカが追い付き、はどうだんを連発してトドメを刺しつつブレイブハートを壊した。

 「やったか?」

 「やり過ぎ」

 アッシュもこれには苦笑い。ポケモン達は一斉に自慢の技をキャサリンに叩き込んだ。

 「わ、私は……」

 キャサリンは四方八方から飛ぶ様々なタイプの技に対応出来ず、爆発の中に消えた。煙が晴れた時、ボロ布を身体に巻いたキャサリンが力無く横たわる姿が見えた。

 「ブレイブハートが消えていく……」

 ライモンを覆ったブレイブハートは粒子になって消えていった。だが、一つの塊は消えずにアッシュの手元に飛んで来た。

 「何だろう? ブレイブハート?」

 それをアッシュはキャッチした。ブレイブハートと同じ結晶に近い物質だが、虹色をしており違うものに見えた。

 「エルトさんに見せたらわかるかな?」

 アッシュはそのまま結晶を持って帰ることにした。

 

 ヒュウ達とアッシュは合流した。リベレート団員は警察が連行し、あらかた事件は片付いた。全員、まだ辛うじて機能するポケモンセンターでポケモンを回復させていた。

 「アッシュ!」

 「無事だったか!」

 ハツネとヒュウがアッシュに気付いた。こちらもあちらも全員無事でめでたしめでたしだ。

 「そうか、やったか」

 「無事でよかった」

 ブルジョワ伯爵とジャスミンもライモンまで来ていた。アッシュはすぐにポケモンを回復させる。その間、彼はエルトに先程拾った石を見せた。

 「エルトさん。こんな石拾ったんですけど」

 「なんだ? これは……キーストーン? どこで拾ったんだ?」

 「さっき。なんか落ちてた。キーストーンって何?」

 エルトは石を見るなり、正体を掴んだ。キーストーン。エルトやイヴのメガリングにはめ込まれた、メガシンカを引き起こす鍵だ。

 「メガシンカに必要な石だ」

 「人工ブレイブハートは本物のブレイブハートに加えてカロスのヒャッコクある日時計を解析して作ったらしいけど、関係あるの?」

 シラコもちゃっかり合流して、人工ブレイブハートの情報を出す。エルトはだいたい、キーストーンが現れたわけを悟った。

 「なるほど。ヒャッコクの日時計は『最終兵器』と呼ばれている火山災害で噴出した巨大な石で出来ている。そして、キーストーンも同じ噴出した物質が変化したもの。さっきの戦いで何かに反応してこれが形成されたと見ていいだろう」

 「最終兵器? 火山の噴火なの?」

 ハツネは火山噴火が災害にも関わらず、兵器と呼ばれていることに疑問があった。カロスは確かに火山が少ないため、噴火自体が珍しい。滅多に起こらない災害というものは対策が練られておらず、思わぬ被害を産むのだ。

 例えば、ホウエンによく直撃する台風がある。それと同規模のものが台風と無縁のイッシュに直撃すると、ホウエンの10倍近い被害が出るとされる。ホウエンの家屋は台風に強い作りだが、イッシュはそうではないからだ。特に、高層ビルの存在が顕著である。それを踏まえてエルトが解説する。

 「文献には噴火の災害ながら『最終兵器』と記されている。恐らく、火山災害に慣れていないカロスでは一回の小規模な噴火でも意外と被害が出てしまうから、まるでとんでもない兵器を使ったかのように例えられたからだ」

 「一説によると、カロスにいる『円卓の騎士』の一族がカロスの国威を増すため、噴火を人為的なものであるとするために文献を捏造したという話もある。『本家』のことだ、やりかねん」

 「大方、そうなんだろうけどさ」

 アリスはカロスの事情を少し知っていた。エルトもそれを否定しない。ハツネが聞いたので、アリスも答えた。

 「本家?」

 「ああ、私達イッシュの騎士の一族はカロス付近の国、ブリテン地方にそのルーツを持つ。己が認めた主に仕える性質上、私達の先祖は様々な土地に行った。私の先祖は、開拓者だった主に従いイッシュに赴いたのだ」

 「ちなみにアリスの先祖が仕えていたのは開拓者、コロンブス博士だ。彼は先住民との摩擦を起こさないように移民を成功させ、書籍も出しているぞ」

 エルトが補足解説する。忘れられがちだが、エルトは学芸員見習い。知識なら豊富だ。

 「それゆえ、本来一族単位で集まることなど有り得んが、カロスに向かった先祖の子孫『円卓の騎士』は一族で集い、体面ばかり気にして末裔はまともに剣を振れないものも多い」

 アリスが言うに、カロスの騎士はろくでなしばかりなのだという。

 「ああ、そうだ。これ、家の鍵だから」

 「え? うん」

 シラコはアッシュに鍵を渡して、そのまま去ってしまう。彼女はリベレート団と戦う警察に協力したため、一時的に釈放されていただけだ。また刑務所に戻る必要がある。なんでそんなことする気になったかは、シラコ自身にもわからない。

 「所詮、親は親のままか。俺の親よりはいくらかマシだな」

 そのまま去りゆくシラコを見て、エルトは呟いた。辺りには事態の解決に動く警察がいた。警察が知らせたのは、辛うじて機能するサブウェイによってライモンに来ていた人が帰れるのだとか。

 「あ、じゃあボク、一度お家帰るね。ちょっと、ゆっくりしたいんだ」

 「そうか、そういえば元々ポケモン探すのが旅の目的だったな」

 アッシュはその知らせを聞いて、あることを決める。一度、家に帰ることだ。

 「また会おうね!」

 「ソウリュウに着いたら連絡するよ!」

 アッシュはそのまま、走ってサブウェイまで向かった。ハツネやヒュウの声を聞き、アッシュは手を振りながら姿を消していく。

 「ねぇ、ヒサメ」

 「なんでござるか?」

 「私達が5年前に会ったアッシュ、やっぱりあの子だと思う」

 事後処理を終えてエルトの隣まで歩いてきたイヴとヒサメは、走り去るアッシュを見て確信した。エルトも頷く。

 「ああ、そうだろうな。今ならわかる気がする。あいつなら時渡りくらいしそうだ」

 彼らの語る意味が解らず、他の人間は首を傾げたという。

 

 サブウェイに乗り込んだアッシュは、隅の座席に座る。ギアステーションは消滅したが、ライモンのあちこちに残る駅は機能している。

 だが、あれだけの混乱だった故、第一便に乗れたのはアッシュだけだった。少なくとも、この車両にはアッシュしかいない。町に人が残っていないのだろう。

 「貸し切りみたいだね」

 アッシュはかつて、ソウリュウシティを出発した時のことを思い出す。あの時は深夜だったため、貸し切りみたいになっていたのだ。

 だが、アッシュの心持ちは出発した時とは違い、晴れやかになっていた。

 

 アッシュの旅はこれで一旦区切り。だが、彼の目の前には茫漠たる人生がまだそびえている。

 『サブウェイ、ソウリュウシティ行き、間もなく発車します』

 そのアナウンスは、新しい旅立ちのアナウンスに聞こえた。




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