ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 ここまでのイヴの冒険
 こうてつ島で八賢老のタタラを倒したイヴとヒサメは、残る八賢老を倒すためシンオウ東部へ向けて旅を続ける。
 手持ち
 イヴ
 アイン(リーフィア)
 ルカ(ルカリオ)
 ガスト(フワンテ)
 フォート(タテトプス)

 ヒサメ
 エッジ(マニューラ)
 ツチカゲ(ズガイドス)
 ダクダ(ゴローニャ)


51.イヴとアッシュ、時空を越えた遭遇!

 シンオウ地方 テンガン山前

 

 イヴとヒサメは、クロガネシティからテンガン山に至る道の途中にいた。クロガネシティの博物館で、トウガンから貰った化石をポケモンに復元して新たな戦力も得た。

 「いやー、凄いでござるな。骨がポケモンになったでござる」

 「技術の進歩は恐ろしいね」

 ヒサメはズガイドスにツチカゲと名付け、イヴはタテトプスにフォートと名付けた。実に性格の出る命名であった。この2匹を外に慣れさせるため、今はボールから出して歩かせている。

 「拙者達は八賢老のバイア、ジョン、タタラを倒したでござるな」

 「残るはヨスガ市長のシンタロウ、トバリの格闘王カラブリ、自然保護団体のヌマタ、貿易王のハサンね。キッサキの神官もいるけど」

 二人は歩きながら、現在の状況を整理する。八賢老の内、3人を倒している。特に、テンガン山に入る為に必要な交通許可書を捏造するのに必要な印鑑は全て手に入れた。

 「八賢老を倒し、あの人を解放しないと……」

 「一族の仇にござる」

 二人にはそれぞれ、目的があった。イヴはエリートスクールが生み出した自分のクローン、オリジナルイヴを八賢老討伐の任務から解放すること。ヒサメは一族の仇を討つこと。

 「なんだかエルト殿がいないと、このパーティーは気が重いでござるな」

 「あんたのお陰で大分マシよ」

 以前まで、二人と旅をしていたエルトは倒れたオリジナルイヴを救うために、フジ博士というクローン技術の権威を探してカントーへ向かった。引率くらいしか目的の無かったエルトのお陰でパーティーの空気はいくらか明るかったのだ。

 「あ、待つでござるイヴ殿」

 「何よ」

 「エルト殿で思い出したでござるが、サイクリングロードでシンタロウと戦った時に焼き芋を埋めたでござる。ほれ」

 「それ腐ってない?」

 ヒサメは土を掘り起こし、焼き芋を取り出した。何故か、まだ熱々である。

 「ん? あれは?」

 ようやくテンガン山への入口に差し掛かったと思ったら、そこが何やら騒がしい。大量の武装した兵士が入口を封鎖していた。イヴが緊迫して見つめる中、ヒサメは焼き芋を食べていた。

 「見つけたぞ! 貴様らがここを通り掛かることは予想済み、印鑑を返してもらう!」

 「あ、むしゃむしゃバイアにござる!」

 「食べながら喋らない!」

 禿散らかした老人は八賢老のバイアだった。隣にナッシーがおり、イヴ達を倒す気満々である。一応大人らしく、ヒサメを注意する。

 「私もいるぞ! お茶の間で待つ視聴者の為に、何としても返り咲く!」

 脂ぎった顔のジョンもおり、パルシェンを出していた。彼らはイヴ達がここに来ることを知っていて、待ち伏せしていたのだ。

 「私もいるぞ、アーハッハッハッ!」

 上空には鳥の形をしたポケモロイド『アルバトス』に乗るタタラもいた。地上に、彼の騎士であるレイもいた。何故、この麗しく優秀な女騎士がタタラに仕えているのか、イヴにはわからなかった。

 「ヨスガに入られる前にやってしまうぞ!」

 シンタロウも前線に現れ、完全にイヴ達を迎撃する準備をしていた。さすがに、敵の数が多過ぎる。イヴとヒサメは一歩引いて、戦況を確かめた。

 「逃げた方がいいかな?」

 「うむ、焼き芋が最後の晩餐なんてちょっと勘弁でござる」

 「私はさっき、クロガネで食べた炭火焼きだから構わないけど。最後の晩餐を上書きしたあなたに非がある」

 「と、とにかくマズイでござるな」

 ようやく緊張感を取り戻したヒサメは、イヴと作戦を練る。いつの間にか、後方も敵がビッシリだ。

 「あ、あれは何でござるか?」

 「そうやって気を引く作戦は通じな……何あれ?」

 冷や汗をかくイヴに、ヒサメがあらぬ方向を指差した。イヴがそちらを見ると、突然得体の知れない何かが空から降ってくるではないか。

 それはイヴ達の後ろに着地し、咆哮を上げた。それだけで、後ろにいた兵士が吹き飛ばされて行く。

 黒い毛に覆われた、ドラゴンタイプみたいな何かだ。紫色の瞳はぎらつき、人のシルエットをしているがその姿は人などではない。赤い翼を広げ、奇妙な唸り声を上げる。

 「紫色で暴走……さてはプトティラコンボの仮面ラ〇ダーオーズでござるか? サインサイン……」

 「危ないから離れなさい。どっちかというとあれ恐竜グリードよ。あとどこから色紙とペン出したの?」

 迂闊にヒサメが近づこうとしたので、イヴが必死に止める。とにかく、ヒサメはニンジャなのに基本がアホの子なので目が離せない。

 「あれは危険な感じ……離れた方がよさそうかも」

 イヴは岩陰に隠れて、成り行きを見守ることにした。八賢老達も、謎の化け物相手に戸惑っていた。

 「な、何なんだこいつは?」

 「グルァアッ!」

 「ぎゃああ!」

 化け物は近くにいた兵士の首を右手で掴み、持ち上げた。兵士はみるみる干からびていき、付けていた手袋やヘルメットがポロポロ落ちてしまう。

 「ウゥゥ……」

 化け物が兵士の首を捻り、ミイラとなった兵士を投げ捨てる。空いた右手には、光の玉が握られていた。それを握り潰すと、口を開けてアルバトスの方を向く。

 「な、何だ?」

 タタラは驚愕した。化け物の口から激しい波導が放たれ、アルバトスは一撃で粉々に粉砕された。イヴ達も、あれだけ殴って最後はトウガンのトリデプスに押し倒してもらったアルバトスが一瞬で粉みじんにされたため、声が出なくなっていた。

 「我が主よ!」

 「おお……」

 レイがタタラを受け止め、事なきを得た。細身な体にも関わらず、筋肉隆々のタタラを軽々受け止める。着ているのがスリムなデザインの鎧だから、尚更細く見えた。

 だが、今度はタタラとレイをターゲットにして化け物が走って来る。

 「何者なの? 後でシロナさんやアカギさんに聞く為に写真を撮っておこう」

 イヴは正体不明の化け物に関して情報を集めるべく、図鑑のカメラ機能を使うことにした。

 兵士達はタタラとレイを守るため、立ち塞がって銃を乱射する。そのダメージに構わず、化け物は翼から黒いビームみたいなものを撃ち出した。それを薙ぎ払い、兵士を一掃する。

 「がぼべ!」

 ビームを浴びた兵士達は一瞬で干上がり、バタバタと倒れた。兵士の体から光の玉が浮かび、それが化け物に吸収される。

 「あれは……ポケモンなの?」

 「モノノケの類にござるか?」

 イヴとヒサメは目の前の光景に戦慄を覚えた。危険を感じたため、ポケモン達をボールに戻す。

 「主、下がって下さい! 危険です!」

 「な、何なんだあいつは!」

 レイがタタラを守るため、前に出た。タタラを地面へ下ろした後、ボールを手にし、化け物へ向き直る。

 「あぁっ!」

 ボールを投げようとした時、化け物な瞬時にレイへ接近して、ボールを持つ右手を殴る。鎧の篭手が砕け、鈍い音が響いた。

 「グガァッ!」

 「あぐっ! がっ、げ!」

 ボールを取り落としたレイの腹部に、化け物は容赦無く膝蹴りを加える。そして、砕いた鎧を剥がしたあと、無防備な彼女を鋭い爪で切り裂いていく。

 「うわぁっ!」

 トドメとばかりに、化け物はレイを殴り飛ばした。レイは崖に激突し、クレーターを作り地面に落ちた。

 「げほっ……がぁ……」

 レイは吐瀉物混じりの赤黒い血を口から吐き、呼吸を乱していた。立ち上がろうにも身体に力が入らず、唇を震わせているのが精一杯だ。

 「や、やめてくれ!」

 タタラがレイに覆いかぶさり、化け物から庇おうとする。バイアとジョンもポケモンを出すことすら忘れ、化け物を取り押さえようとする。

 「ウガァッ!」

 その二人も跳ね飛ばし、化け物は暴走を続ける。レイを庇うタタラを蹴り飛ばし、レイの首を掴んで持ち上げる。彼女を掴んだまま、化け物はテンガン山に向けて走り出す。その化け物はあろうことか、レイの身体でテンガン山の洞窟を破壊しながら進むではないか。

 バイアとジョンが全員で化け物にしがみつき、止めようとするが、化け物はその状態でも構わず走る。

 「本当に死んでしまうでござる!」

 「あ、ちょっと! 仇じゃないの?」

 「それとこれとは話が違うでござる!」

 ヒサメが慌てて、助けに入ろうと化け物を追い掛ける。八賢老はヒサメの家族の仇だが、やはり仇とはいえ死にそうな人間を見捨てられるほどヒサメは割り切れるタイプではない。

 「があっ……」

 洞窟を抜けた化け物は、近くを流れる川へ水を供給する滝にレイを投げ付けた。川に落ちたレイは、何とか岸に上がって力尽きる。

 「グォォオオォッ!」

 レイの何がそんなに気にくわないのか、化け物はトドメを刺すべく、レイの髪を掴んで無理矢理起こす。既に意識が無いレイに対し、何度も腹部を殴り付ける化け物は、理性などないのか。

 ヒサメとイヴは洞窟を抜ける途中、砕かれた岩盤にレイのものと思われる血が付着しているのを見つけた。さらに、八賢老も引きはがされてボコボコにやられていた。この際、敵味方は関係無しだ。

 「全く、仲間がやられてるのにあいつは……」

 イヴは化け物より、まるで助けに入らないシンタロウに苦言を呈した。仇でも助けようとするヒサメが、馬鹿だけど立派に見えてしまう。

 「やめるでござる!」

 「アイン、あいつを止めて! ルカ、レイを助けて!」

 ヒサメが慌てて、ポケモンも出さずに化け物へ飛び掛かろうとする。イヴはリーフィアのアインを出して、化け物を止めておくことにした。

 「ググ……」

 ポケモンを見た途端、化け物の動きが止まる。ルカリオのルカとヒサメがレイを救出する時間を稼ぐため、イヴはフワンテのガストも出して化け物に向き合う。

 「イヴ……さん?」

 「え?」

 化け物に自分の名前を呼ばれ、イヴは困惑する。そして、化け物は動きを止めて倒れた。

 「な、何?」

 化け物の周りが闇で包まれ、それが消えた時には化け物がいなくなっていた。代わりに倒れていたのは、黒髪を肩まで伸ばした少女だった。脂汗をかき、口元は火傷していた。両手も、爪が剥がれてボロボロだった。

 「どういうことなの?」

 「とにかく、全員病院に連れていくでござる!」

 イヴが戸惑っていると、ヒサメが救急車を呼ぼうと四苦八苦していた。とりあえず負傷者を並べることだけはした。

 「救急車ぁー!」

 「叫んでも来ないわよ。電話しなさい」

 ヒサメは大声で救急車を呼ぼうとする。てんやわんやで救急車を呼び、とりあえずその場は収まった。

 

 マサゴタウン ポケモン研究所

 

 「そう、そんなことが……」

 ヨスガからイヴの連絡と画像データを受け取ったシロナは、その画像をアカギとナナカマド博士に見せる。新種のポケモンなのか、アカギが出した答えは違った。

 「これはバーストか?」

 「バースト? ブレイブハートにポケモンを封印する禁断の技術?」

 バーストと聞き、シロナが驚愕した。そんな禁断の力を、年端も行かぬ子供が使ったというのか。

 『いえ、バーストの話は父から聞いていまして、ブレイブハートが無いか持ち物を探ったんですが、出て来たのはモンスターボールが4つだけでした』

 「そう。ボールの中身は?」

 イヴもバーストの線を考えていたが、違う様だ。シロナは、そのボールの中身を聞いた。ポケモントレーナーであることは確かだ。

 『この子達です』

 イヴがテレビ電話の画面に映したのは、エンブオー、コイル、バルジーナ、キモリ。これがモンスターボールに入っていたポケモンだ。

 「これは、イッシュ地方のポケモン?」

 「そのようだな。キモリはホウエン地方か」

 シロナやアカギがポケモン達を分析していると、コイルがフワフワ浮いて来て、何かをホワイトボードに書いてイヴ達に見せる。ホワイトボードはエンブオーに持って貰う。

 《我々のトレーナー、アッシュに何があったかはルカリオから聞かせてもらった。ここはどこだ?》

 『シンオウ地方のヨスガシティよ』

 《なるほど、では今年は何年かな?》

 『×××年よ、それが何か?』

 コイルは奇妙な質問をして来た。しばらく考え、コイルは意を決した様に何かをホワイトボードに書き始めた。

 《どうやら我々は5年後からタイムスリップしてしまったらしい。ボールに入ってる間に、何かが我々のトレーナー、アッシュの身に起きたのだ。私の知るイヴとヒサメが》

 『え?』

 「タイムスリップですって?」

 その話を聞き、イヴとシロナは驚愕する。アカギだけは、何故か妙に納得した様な顔をしていた。

 「時渡りの事例はいくつかある。信じられん話ではないさ。もし、その話が本当だとすればディアルガの力を借りるといい。テンガン山にいる」

 『わかった。私も頭の片隅においておく。だけど、ヒサメには言わない方がいい。あの子ニンジャだけど口が軽いから、うっかり未来のこと話したら何処かで口を滑らせるかも。私にも未来の話はしないで。何が原因でタイムパラドックスが起きるかわからないから』

 《君達の追ってる八賢老の情報は殆ど無いから安心してほしい》

 イヴは歴史改変の恐れから、コイルに忠告する。彼らも八賢老の末路は知らないらしい。

 《では自己紹介をしよう。私はコイルのラファール、エンブオーがマイン、バルジーナがネーベル、キモリがフィリップだ》

 『私はイヴ、よろしく』

 コイルのラファールはわざわざ自己紹介までしてくれた。なかなか丁寧なコイルである。

 『そうなると、私達の目的は同じね』

 《そうだな》

 イヴは目的が同じため、アッシュと協力することを決意した。ここに、時空を越えた同盟関係が結ばれた。




 次回予告
 ヨスガシティはシンタロウの政治によって、5年後に『シンオウ一住みたい町』になるとは思えないくらい悲惨な状況にあった。
 そして、シンタロウにより愛を引き裂かれそうになっている兄妹がいた……。
 次回、『暴走! 秘められた力と崩壊するヨスガシティ!』
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