ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 久々に更新! 今回は次回作の予告もあるぞ!


54.ズイの遺跡のアンノーン

 ズイタウン ズイの遺跡

 

 ズイタウンには遺跡があり、観光資源として機能している。アッシュをポケモンセンターで休ませ、イヴとヒサメ、アリスはズイの遺跡に来ていた。単なる観光目的である。一応、アッシュのポケモンであるコイルのラファール、キモリのフィリップも同行している。

 「この文字、アンノーン文字ね」

 「エルト殿がいたら読めたでござるなぁ」

 あちこちで見付かるアンノーン文字と呼ばれる古代文字は、このメンバーだと誰も読めない。エルトなら読めるだろうが、いない人間の話をしても仕方ない。

 「で、結局それ連れて来たの?」

 「懐いてしまったものは仕方ないでござる」

 ヒサメはミカルゲを抱えていた。もうクラカゲというニックネームまである。

 「あ、あっちにアンノーンがいるでござる!」

 「迷子にならないでよ」

 アリスは気ままなヒサメにヤキモキさせられていた。マイペースでノンビリかと思えば急いだり、掴み所が無いという言葉のいい例であった。

 アンノーンに導かれたヒサメを追いかけ、一行は広間に出た。そこには大量の碑文が置かれている。その影響か、アンノーン達もたくさんいた。

 「碑文ね……ここの文字はやっぱりアンノーン文字」

 イヴは碑文の文字を確認した。中央にある大きな柱に絵が書かれており、この部屋はかなり特殊なのだろう。

 中央の絵は伝説のポケモン、ギラティナと見れた。だが、イヴやアリスが本で見たギラティナとは姿が違う。この絵のギラティナには足が無いのだ。

 「これ見るでござる! どっかで見たでござる!」

 「あ、これアッシュね」

 ヒサメが見つけたのは、碑文の一つに書かれた、暴走したアッシュに似た姿をした化け物の絵だった。色と翼の形状以外はそっくり。アッシュの翼は一対かつ手の様な形で、こちらは細い複数対の翼である。

 イヴはヒサメがアホっぽいながら意外と目敏いことに気付いた。アッシュと断定しなかったのは、違いがあるからなのだ。

 アッシュみたいな絵の隣には、ガブリアスの様なヒレと牙を持つ人間の姿が描かれている。

 「この碑文気になるね。エルトに聞いてみよう」

 イヴはアッシュの暴走について手掛かりを知るため、エルトにライブキャスターで連絡した。遺跡の中でも繋がるからライブキャスターは地味に性能が高い。

 『あ、もしもーし。あ、イヴじゃん』

 「お、オリジナル? もう大丈夫なの?」

 ライブキャスターに出たのはオリジナルイヴ。イヴをそのまま大きくした様な姿で、イヴの両親の細胞データから生まれたクローンなのだ。

 不完全なクローン故に体調を崩し、クローン技術を開発したフジ博士に診てもらうため、エルトとカントーに向かった。

 『うん、一旦調整受けたからしばらくは大丈夫』

 「それより、その格好は?」

 『え? これ?』

 イヴはオリジナルの服装に言及した。何故かエプロンをしている。その下はセーターである。

 『お料理してたの。はい、ラムシチュー。エルトって私ほどじゃないけど不健康だからね』

 「な、なにこれ?」

 オリジナルは料理をしていたのだ。鍋を映すと、そこには緑色のシチューが煮えている。具は皮ごとのオレンやオボン。ベースのソースはラムの実なのだろう。お皿に盛りつけて、飾りにヒメリの葉っぱを散らせば美味しいラムシチュー。

 『もー、エルトったらおいしいおいしいって食べてくれて……』

 (生い立ちからしてエルトは馬鹿舌確定だけど黙っておこう)

 (作られた本人が満足なら何も言うまい)

 嬉しそうに惚気るオリジナルに対し、せめて今くらい寿命の短い彼女に楽しんでもらおうとイヴは黙っていた。アリスも特に口は挟まない。

 「わー、美味しそうでござる」

 ヒサメはナチュラルにフォロー。本音がフォローになるのだから気が楽だ。

 (ビビビ、正気か?)

 唯一、ラムシチューに苦言を呈したラファールだが、誰も彼の言葉を聞かない。

 

 一方、ポケモンセンターでテレビを見ていたアッシュは料理番組でラムシチューの作り方がやっているのを見ることになった。

 「体に良さそうだねー」

 月並みな感想しか無かったという。アッシュもエルトも食うのに困った時期があるタイプの馬鹿舌なのだ。

 

 『その昔、秘宝「ガブリアスの牙」に選ばれた勇者が異国の地、海の向こうから現れた怪物を追い払ったんだ。この碑文にはそう書かれている』

 「ガブリアスの牙?」

 エルトは碑文を解読した。本来は鉱物や化石を中心とする、自然系が専門の彼だが、アンノーン文字くらい難易度が低いと普通に読める。

 『伝説の大盗賊、「灰色の疾風」ことブレイドが最後に盗んだ、イッシュ地方の竜の里にある「サザンドラの瞳」と同系の秘宝だ。手にした者に竜の力を与える秘宝、どうやら文章を見る限り普通には所有出来ないらしい』

 「どういうこと?」

 『手に入れた来世で、体の一部になって発現する。文章によると、ズイでガブリアスの牙を手に入れた奴がいたんだが、そいつが遺跡を管理する巫女だったらしい』

 エルトが碑文を読むと、秘宝の特殊性が明らかになる。手に入れた来世で秘宝は効果を持つ。生まれ変わってからが本番なのだ。エルトはイヴに碑文を次々ライブキャスターで撮影させ、意味を解く。

 『その巫女は世襲ではなく、アンノーンの形をした痣を持つ少女が巫女の生まれ変わりとして次代の巫女になる。輪廻転生に基づく引き継ぎ方だ。ガブリアスの牙を手に入れた巫女には人間とは思えない牙があり、砂を操る力があった。この碑文にそう書かれている』

 エルトによると、そういうことらしい。だが、アッシュにとって重要なのは怪物の正体。エルトはその部分も読んでいく。

 「倒された怪物は人間に戻ったらしい。その時、紫色の丸い宝石を持っていた。始めはみんな戦利品だと喜んだが、エスパータイプのポケモンの技が不発なるという、怪物の能力が発動したりした。サイコパワーを打ち消すその石を不気味に感じた人々は、所有権を後に主張したイッシュの竜の里に返したって話らしいな」

 イッシュから来た不思議な石は、再びイッシュに帰る。怪物の源であるだろうその石が何であるかわかれば、アッシュの暴走も止められるかもしれない。

 『お風呂沸いたよ、一緒に入ろう』

 『平然と男を風呂に誘うんじゃあない!』

 イヴが考え方をしていると、ライブキャスターからオリジナルとエルトの新婚夫婦みたいなやり取りが聞こえてきた。

 『お前らからも言ってやってくれ!』

 「騎士なら主を守るため、湯浴みに同行するくらい当たり前だ」

 『え? お前だ……』

 アリスはライブキャスターを切った。エルトはまだアリスと面識が無かった。彼女がエルトと出会うのは5年後の話である。

 「さぁさぁ! 今日も特訓だ! 今日はこの岩をとにかく壊すぞ!」

 会話が途絶えたことで辺りの騒がしさがわかる様になったイヴはカラブリの弟子達が遺跡で暴れているのを見つけた。弟子が破壊しようとしているのは、遺跡の碑文だ。

 「行け! ファイアロー、力を見せてやれ!」

 「させないでござる! ツチカゲ!」

 見たこともない赤い鳥ポケモンが碑文に向かって炎を纏いながら突撃する。そこに横からズガイドスのツチカゲが体当たりして止めた。

 「しねんのずつき!」

 強い突進ほど横からの力に弱い。横転したところを、しねんのずつきでトドメを刺す。

 「あなた意外と強いのね」

 「えっへん」

 ヒサメが行った、一連の流れる様な動作にアリスは感心していた。ヒサメだって、ただのアホではない。

 「お、おのれ……。ユンゲラー、サイコキネシス!」

 「まもる!」

 ユンゲラーのサイコキネシスはイヴのタテトプス、フォートでガードした。その後ろからツチカゲが飛び出し、ユンゲラーを頭で殴る。ふらついたユンゲラーにフォートがトドメの体当たり。

 ヒサメはアホな分、やることがシンプルでわかりやすい。そのため、出会って日の浅いイヴでも即興で連携が取れる。ただ、ヒサメのシンプルさは読まれ易い類のものではない。

 よくある、『先読みできるけど対応が追い付かない』タイプのパターンだ。

 「何ィ!」

 進化していないポケモンでもトレーナーの実力があれば勝てるのだ。

 「フィリップとラファールも順当に倒しているみたいね」

 フィリップが叩いて敵のファイアローを止め、そこにラファールが電撃を放つ。フィリップが隙を作り、ラファールがトドメ。トレーナーがいなくても戦っていた。

 

 ノモセシティ ノモセの湿原

 

 ノモセシティの湿原は八賢老、ヌマタによって管理されている。彼は自分の自己満足の為に湿原を独占しているため、湿原の調査が滞っていた。

 それに業を煮やした研究者達は、あるトレーナーを派遣した。

 ノモセとホテルが並ぶ海辺を繋ぐゲートが爆発を起こし、町の人々は目を剥いた。あのゲートと封鎖された湿原により、人々は町を出るにも不便を強いられた。

 「やれやれ、非合理的な手続きが相変わらず多いな、ここは」

 そんな理由で、ある少女がゲートを粉砕したのだ。ゲートを爆破した白衣の少女はホウエンにある天気研究所の新人研究員、レインだ。白衣の下はジーンズにタンクトップ、靴はサンダルと活動的な服装である。褐色の肌もその印象を強める。

 これはフィールドワークを主体に研究するオダマキ博士の影響で、レインもメインはフィールドワークだ。

 銀の長髪が風に流れて太陽を受けて輝く。美少女という意味でも注目の新人なのだ。

 効率や合理的なものが好きな彼女からすれば、町に入るだけで審査に数日かかるゲートは苦痛でしかない。

 たまには非効率も悪くないと思うのだが、審査はそういう場面じゃない。

 「出会え出会え! ヌマタ様に敵対する研究者だ!」

 ぞろぞろと足軽スタイルの人間とヌオーがレインを取り囲む。だが、レインはポワルンに命令をするだけだった。

 「ソーラービーム!」

 晴れの姿になったポワルンがソーラービームを薙ぎ払い、足軽ヌオーを全滅させた。ずんずんとレインはヌマタが居を構える湿原に向かう。

 沼地に入る前に、彼女は服を脱ぎ出した。服の下は水着である。それも脱ぎ着しやすいという理由だけで青いビキニを選んでいる。

 泥の付いた服の洗濯は大変だが、自分なら風呂に入るだけでいいという合理的選択、いや合理的洗濯の結果がこれなのだ。

 「マッスグマ! いわくだき!」

 わざと道を塞ぐ様に放置された岩を破壊しながら、レインはヌマタの豪邸に接近した。

 

 ヌマタの邸宅では、ヌマタが雇ったポケモンマフィアが彼から報酬を受け取っていた。所謂前払いというやつだ。ヌマタは河童みたいに禿げた痩せている老人だ。

 スーツを着てグラサンをかけた若いマフィアに、ヌマタが評価を下す。研究者による調査を追い払うため、用心棒を雇うことにしたのだ。

 「5年前に起きた『ホウエンの勢力再編』、それさえなければ君は今頃、ホウエンだけではなく世界中の裏社会を統べる人間になっていたはずだ。古臭いヤクザがそれを邪魔した。当時ですら、カントー中のギャングや暴走族をバトルで打ち負かしては束ね、一代で名だたるロケット団に肩を並べる組織を作った父親を越える才能の持ち主と言われた君ならな」

 「ご安心を、我々がいる限りここは安全です」

 マフィアは自信満々に答えた。この若いマフィアはホウエンをかつて牛耳った暴力団『グッチ組』のボス、グッチの息子であるギラなのだ。

 父親のグッチは国際警察ですら手を焼くカントーの暴走族や裏組織をバトルで叩きのめすことで従え、ホウエンに渡った。ギラはその父親を越える素質を子供の時から持っていたのだ。

 「まずこの豪邸の周り、塀に爆弾を埋め込みました。塀を乗り越えようものならドカンです。庭には部下が約100名、いずれも精鋭です。そして極めつけはこの邸宅の罠。ひかりのかべ、リフレクター各24層、エネルギー炉3基、猟犬代わりのポケモン数十体、無数のトラップ、廊下の一部はルーム化させている空間もあります。その邸宅の周囲を複雑にルーム化し、常人には入口が違う所にある様に見えます。その偽入口から入るエリアはまさに処刑場。入ったら二度と出られない不可逆の扉が50層ほどあり、扉と扉の間には即死級のトラップがあります」

 「さすが、エリートスクールと並ぶ名門トレーナーズスクール『ヤマブキ大学』を去年、若干15歳の飛び級で僅か2年の就学で卒業した大天才だ」

 ヌマタはギラを褒めたたえた。その瞬間、大地が揺れて邸宅が吹き飛んだ。

 「ヌマァアアアァァァアァバァアアアアアァッ!」

 ヌマタは変な断末魔を上げ、邸宅は一瞬で粉々になる。何とか避けたギラは、気絶したヌマタを放置して敵を見据えた。

 「まさか……私の罠があんな奴に?」

 それをしたのが水着のブロンド美少女なのだから驚きだ。ついギラも目のやり場に困る。何せ、天才とはいえギラはこの少女、レインと同い年くらいなのだから。思春期真っ只中である。

 「いやー、効率がいい」

 レインは右手に青いメガリングを付けていた。そして、彼女の後ろに邸宅を破壊した主犯がいた。普段と様子の違うジュカインだ。

 そう、ジュカインは今、メガシンカしているのだ。だが、ギラはメガシンカを知らなかった。

 「特異個体のジュカインか? ならば来い、ゴウカザル!」

 ギラはゴウカザルを繰り出した。この選択は順当だ。他に無事だった部下も炎タイプや飛行タイプのポケモンを出している。

 「一気に効率よく決めるよ!」

 ただ、ジュカインの姿が消えると同時に部下のポケモンの目の前に、タネマシンガンの弾丸みたいなものが現れた。

 「なんだ?」

 「うわぁ!」

 「ぎゃあ!」

 その弾丸は次々と部下とポケモンを撃ち抜く。遠くで逃げる部下にも直撃している。メガジュカインの実力とはいかに。

 ジュカインが停止した時、ゴウカザルが仕掛けた。

 「マッハパンチ!」

 だが、ジュカインはマッハパンチをかわした。そして、ジュカインがゴウカザルを蹴り飛ばす。

 ゴウカザルが飛ばされた瞬間、ジュカインはスピードを上げて、飛ぶゴウカザルの着地点にゴウカザルが落ちるより先に移動する。

 「リーフブレード!」

 切られて吹っ飛んで来たゴウカザルに潰され、ギラは伸びた。

 「アバーッ!」

 「うーん、やっぱこれが効率いい」

 ヌマタが目を覚ますと、そこには大金を払って雇ったマフィアの情けない姿があった。泥に嵌まって動けなくなっていた。

 「私がやるしかないようだな……行けいニョロボン!」

 ヌマタはニョロボンを繰り出し、レインに対抗する。この水着の女が研究者かどうかなどヌマタは知らないが、状況からしてギラを倒したということは敵に違いないからだ。

 「ニョロボン、ばくれつパンチ!」

 「ジュカイン!」

 ニョロボンのばくれつパンチはハイスピードで移動するジュカインには当たらない。ジュカインが逆にリーフブレードで切り付けニョロボン、勝負は一瞬で着いた。

 「終わりの様だな」

 敵を片付けたレインはヌマタやギラに目もくれず、そのまま湿地の調査を始めた。




 トレーナーカード
 研究員 レイン
 効率を重視する性格の、期待の新人研究員。スタイル抜群、容姿端麗な美少女でもある。長い黒髪に褐色の肌であるため、南国チックな格好をすればさぞ似合うだろうにしてくれない。
 エルトと共にホウエン独立のため戦った。
 手持ち
 ジュカイン
 マッスグマ
 ポワルン
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