ミニスカート ハツネ
カラクサタウン出身のトレーナー。以上。
手持ち
エイパム♂(シッポ)
ユンゲラー♂(おヒゲ)
ヤグルマの森
ミュージアムエンブレムを手に入れたアッシュとシンジは、その日のうちにシッポウシティを出発した。ヤグルマの森を抜け、ヒウンシティを目指す。
「モンスターボール、アタック!」
「待って!」
シンジは早速見つけたモンメンにモンスターボールを投げようとする。しかし、アッシュがそれを阻む。
「な、何をする!」
「厳選するんでしょ? ちょっと待って」
シンジが憤慨する中、アッシュはモンメンの傍に寄った。そして、モンメンに何か話して、きのみを与えて逃がした。するとしばらく後、さっきのモンメンだけではなく様々なポケモンが集まってきた。
「はい。これで厳選できるよ」
「確かに効率はよくなったな。モンスターボール代に頭を抱えずに済む」
集まってきたポケモンに図鑑をかざし、シンジは能力値を計る。前は野生のポケモンが大人しく計らせてくれなかったのでいちいち捕まえてたが、アッシュのおかげで捕まえず厳選が可能になった。
「あのエイパム、使える。モンスターボール、アタック!」
シンジは集まったポケモンから満足のいく能力を持ったポケモンを見つけ、モンスターボールを投げた。エイパムに狙いを付けた。
「いてっ!」
「どういうことだ?」
しかし、エイパムの頭にぶつかったボールは反応しなかった。シンジは投げたボールを拾って確認する。新品のモンスターボールで、故障してるわけではない。
「壊れてないな」
「マイン! …システムの故障でもないね」
アッシュがボールからポカブのマインを出せることを確かめる。モンスターボールを管理するシステムが故障してるわけでもないようだ。
「あ、いたいた。シッポ、勝手に走っちゃダメじゃない」
森の中から声がしたので、二人はそちらを見る。ミニスカートの少女が現れ、シンジが捕まえようとしたエイパムを抱き上げる。
「なんだ、人のか」
「すっげー悔しそうだな」
シンジは感情を出さずに呟いたつもりだったが、マインに見抜かれていた。少女はポケモンがたくさん集まってる光景を眺め、不思議に思う。
「何これ?」
「見ればわかるだろ、厳選だ」
シンジが疑問に答える。強いエイパムが手に入らず、ちょっと不機嫌だったという。モンメンがアッシュに何かを話し、それを彼がシンジに伝えた。
「森の奥にたくさん待ってるって」
「そうか。なら行こう」
シンジはエイパムを逃した憂さでも晴らす様に、森の片隅で待つポケモンの群れに走り出す。この場にはアッシュと少女だけが残された。
「あの人何なの?」
「変態」
「……さあ?」
少女の問いに、マインとアッシュが答える。アッシュにはシンジがよくわかっていないようだ。何故自分の護衛を引き受けたのかすら、彼はあまり理解していない。
とりあえず、少女は自己紹介からすることにした。
「あ、私はハツネっていうの。あなたは?」
「ボクはアッシュ。この子はマイン。あと……マチルダ!」
アッシュは自己紹介しながら、レパルダスのマチルダをボールから出す。マチルダは今日、チョロネコからレパルダスに進化したばかりだ。
「じゃあ、私も。おいで、おヒゲ!」
ハツネもボールから残るポケモンを出す。ユンゲラーだ。ニックネームの通り、ヒゲが特徴的である。この辺りではお目にかかれないポケモンでもあった。
「このポケモンは?」
『ユンゲラー。ねんりきポケモン。超能力の研究を手伝っていたエスパー少年がある時、突然ユンゲラーになったと噂されているのだ』
「……。人間だったの?」
「いや、そんなはずは……」
図鑑を開いて説明を聞いたアッシュは、ユンゲラーに聞いてみた。しかし、彼は否定した。普通にポケモンと話すアッシュを見て、ハツネは絶句した。
「あなた……ポケモンとお話できるの?」
「え…エッーと」
アッシュはハツネに追及されて言い澱む。まだ心の傷は癒えておらず、自らポケモンと話せることを明かすのはまだ無理だ。
「ま、いいや。アッシュ、私とバトルしない?」
「え? マイン、マチルダ、準備はいいかい?」
気を取り直し、ハツネはアッシュとバトルすることにした。アッシュはマインとマチルダに了承を得てからバトルに入る。ハツネの1番手はおヒゲだ。
「エスパータイプ、スリーパーと同じならマチルダ!」
「やってやりますわ!」
マチルダが戦闘に出る。相性はマチルダが有利だ。だが、アッシュには気掛かりがあった。確かにマチルダはおヒゲに有利。しかし、スリーパーの様にきあいだまを持ってる可能性がある。
「気をつけて! きあいだまが……」
「進化したわたくしなら余裕!」
アッシュの忠告を聞かず、マチルダはおヒゲに特攻する。しかし、予想通りなのかおヒゲはきあいだまを撃ってきた。至近距離だったので、マチルダは回避出来なかった。
「やはりわたくしはバトル苦手……バタリ」
「もー、調子に乗るから」
倒れたマチルダを、アッシュはボールに戻した。いくら進化したとはいえ、バトルが苦手なのには変わりがない。
「頼んだよ、マイン!」
「じゃあこっちは、シッポ!」
次の勝負に二人は移る。マインとシッポのバトルだ。進化してない2匹の勝負は、互いに力押しするパワーもない。
「マイン、ニトロチャージ!」
「かわしながらわるだくみ!」
マインがニトロチャージでシッポに突撃するが、シッポは回避してわるだくみした。エイパムならではの、スピードを活かした戦いである。
「スピードスター!」
シッポはそのまま、スピードスターを放つ。幾つもの星がマインに迫る。
「ひのこ!」
アッシュはマインにひのこで相殺させた。ここまでは互角だ。
「やるね!」
「そっちも!」
ハツネとアッシュは互いを認める。バトルを積極的にしないアッシュも、今までにない手応えを感じていた。おそらく、アッシュにとって始めて、対等に競い合えるライバルなのだろう。
「うわっ!」
「何なに?」
しかし、2人の間を倒れてきた木が寸断する。咄嗟に避けたため、アッシュの側にシッポが、ハツネの側にマインがいる状況になった。
「木が倒れてる……。腐ってたわけじゃないのね」
「まだ生木だな」
ハツネとマインは倒れた木を調べる。非常に太く、ちょっとやそっとじゃ動かない。木の根本は森の奥深くにあり、倒れた原因はわからない。しかし、木の状態から腐ったわけではないとわかる。
「なにこの匂い? 排気ガス?」
「おいアッシュ! 大丈夫なら返事しろ!」
ハツネは排気ガスらしき匂いを感じた。重機が発する独特の異臭だ。マインは向こう側にいるアッシュに叫んだ。
「マインか? シッポだ! アッシュは叫ぼうとしたらなんか苦しんで倒れちまったんだ! 早く来てくれ!」
「な、何だってー!」
返事をしたのはシッポだった。オマケにアッシュは倒れたのだという。マインがハツネにそれを伝えようとするが、ハツネはアッシュと違ってポケモンの言葉はわからない。オマケにベテランでもないので、自分のポケモンの言葉もわかるか微妙だ。
「とにかくアッシュのところへ行かないと……」
マインが回り道を探すも、目の前にあるのは木の真ん中部分。相当な回り道になる。木をよじ登ろうにも、木の皮には掴むべき部分がない。
ハツネにも、この木をどうにかする方法がない。早くしないとアッシュが危ないのだが、どうにもできない。
「ど、どういうことなのこれ?」
「森に来たらこれか……」
そこへ、偶然ヴァイオラとエルトが通りかかった。偶然にしては出来過ぎだ。
「あ、向こうに人が取り残されて……倒れてるみたいなんです!」
ハツネは最後の希望に縋り、二人に助けを求める。エルトはマインに注目した。
「お前はマインか。つまり、向こうにいるのはアッシュか」
「えぇ? アッシュ君が?」
二人は即座に状況を理解する。木の向こうに取り残されたのはアッシュ。彼は栄養失調で弱く育った。辺りに漂う排気ガスが、アッシュの弱い肺にダメージを与えているのだ。
「ヴァイオラ先生ー。どうしたの?」
園児の一人がヴァイオラに近寄る。エルトは露骨に嫌な顔をする。ヴァイオラは保育園の子供達と森で遊んでいたのだ。
「そうだ! イチロー呼んで来て! このお兄ちゃんのバシャーモよ」
「わかったー。イチローお兄ちゃん呼んでくる」
ヴァイオラは園児にイチローというバシャーモも呼んでくる様に頼む。エルトのポケモンらしいが、園児と遊んでるとこからトレーナーと違って子供が好きなのだろう。
「呼んで来たー」
「ありがとう。イチロー、あの木を飛び越えて、向こうにいる人を連れてきて!」
園児が戻ってくると、バシャーモを連れていた。バシャーモのイチローはヴァイオラの指示で、軽々と木を飛び越える。
「あれがバシャーモ……」
『バシャーモ。もうかポケモン。強靭な足腰を持ち、30階建てのビルも楽々跳び越すことができる。炎のパンチで相手を黒焦げにする』
ハツネは図鑑でバシャーモの情報を確認する。確かに目の前の木は巨大だが、30階建てのビルほどじゃない。イチローは軽々と木を跳び越した。
そして、直ぐにアッシュとシッポを連れて来る。アッシュは終始咳込み、苦しそうだった。
「げほっ、げほっ!」
「おいアッシュ、大丈夫か!」
マインが心配そうに駆け寄る。イチローは木の根本がある方向を睨んでいた。そちらに何かあるのだろう。全員が嗅いでる排気ガスみたいな匂いも、その方向から流れてる。
「私、あっちを見てくる」
「イチロー、お前もついてけ」
「お願いね、ハッサム!」
ハツネがそこへ行こうとするので、エルトはイチローを一緒に行かせる。ヴァイオラはハッサムをボールから出してハツネに同行させた。
「よし、あたしも行くよ!」
マインもそれに加わり、ハツネ達は木が倒れた原因を探りに行く。木は長いが、走ってるうちに開けた場所に出る。木の根本もそこにあった。
「何あれ? 木が伐採されてる?」
「あのマーク…リベレート団か!」
ハツネはヤグルマの森が伐採されている現状に唖然とする。マインは重機に書かれた『L』のマークを見逃さなかった。現場監督の指揮のもと、木の伐採が行われていた。
重機は排気ガスを大量に出しており、叫ぼうとしたアッシュがそれを吸い込んで肺にダメージを受けたのだ。ハツネやポケモン達は平気だが、アッシュは一際身体が弱いので重大なダメージを負ってしまった。
「何してるの!」
「何だ、子供か」
ハツネが現場監督に食ってかかる。だが、監督は彼女の後ろでバシャーモとハッサムが睨みを利かしてるのも気に留めなかった。
「貴様にはわかるまい。このヤグルマの森が……」
「イチロー! かえんほうしゃ!」
「覚えてないからオーバーヒートで代用だ!」
監督が何かを言おうとしたら、ハツネがイチローに指示を出す。かえんほうしゃ、ではなくオーバーヒートで重機を攻撃した。燃料に引火した重機は大爆発。重機の残骸が空高く舞う。
「話を聞けー!」
「リベレート団ならどうせロクなことしてないんでしょ! ニュースで流れてなくても、サンヨウの一件は知ってるのよ! おヒゲ、出てきて!」
ハツネは監督の抗議を完全に無視して、おヒゲをボールから出す。完全に臨戦体制。監督もボールからミルホッグを出して対抗する。
「なあなあ、さっきのどうやったんだ?」
マインはイチローにオーバーヒートの撃ち方を聞いていた。ハツネと監督の戦いはそっちのけだ。
「じゃあ、あの重機を狙ってみようか。敢えて狙いはアバウトに、全ての力を出し切るんだ!」
「オーバーヒート!」
マインはイチローのレクチャー通りにオーバーヒートを撃つ。狙いは逸れて、重機の近くにいた作業員達を直撃する。大惨事だ。
「思いのほか疲れるな……」
「威力はまずまずだな。後は練習だ」
マインのオーバーヒート練習により、次々と重機や作業員が吹き飛ぶ。イチローがたまに見本で撃ってるので、監督はハツネとのバトルよりそちらが気掛かりになっていた。
「おヒゲ! サイコキネシス!」
監督が目を離すと、ミルホッグが倒されていた。重機はボロボロ、作業員は全滅。監督の敗北が決まった。
「お、覚えてろ!」
監督は脱兎の如く逃げ出した。何故リベレート団が木を切っていたかも解らずじまいだった。
ハツネ達はリベレート団を片付け、ヴァイオラ達の下に帰った。通路を塞いでいた木は撤去されていた。
「おかえり、どうだった?」
「リベレート団の仕業でしたよ」
ヴァイオラがハッサムをボールに戻しながら、ハツネに聞く。リベレート団がまた悪事を働いた。少なくともそれが事実だ。
「アッシュは?」
「向こうで綺麗な空気吸ってるよ。あなたのエイパムも一緒よ」
アッシュはシッポと新鮮な空気を吸いに行ったとか。ハツネはヴァイオラから場所を聞き、その場所へ行く。小川のせせらぎが聞こえるところにアッシュはいた。
「大丈夫?」
「うん。シッポもいてくれたから」
アッシュの側にはハツネのシッポもいた。彼の顔色も大分よくなった。
「これからどうするの?」
「ヒウンシティに行くけど」
「私もヒウンに行くんだ。じゃあ一緒にいきましょ?」
「うん」
ハツネはアッシュを旅に誘う。仲間は多い方がいい。アッシュはすんなり承諾した。そこへ、ポケモンを厳選し終えたシンジが現れる。無表情を装ってはいるが、どこか満足げだ。
「使えるポケモンが手に入った。行くぞ」
新たにライバルとなったハツネを加え、アッシュ達の旅はまだまだ続く。
サザナミタウン カトレアの別荘
サザナミタウンにあるカトレアの別荘には、イッシュリーグのジムリーダーや四天王が遊びに来ることも多い。今日は所有者であるカトレアとシンオウのチャンピオン、シロナがいる。
「夢を見ました。赤いYのシルエットをしたポケモンです」
カトレアは超能力者である。故に、シッポウシティ上空に現れたイゼルタルに反応して夢を見たのだ。そもそもシルエットがイゼルタルそのものなのか、それともイゼルタルの力が具現化しただけなのかもわからない状況である。
「最近、リベレート団の活動を阻止して回ってる少年がいるらしいわね。シッポウシティにイゼルタルを呼び寄せたのも彼らしいの」
「どういうことです?」
シロナはサザナミ湾にある海底遺跡の調査に来ていた。そこで偶然、アッシュの話を聞いたのだ。リベレート団がブルジョワ伯爵の率いる巨大組織ということもあり、各地のジムリーダーや四天王、チャンピオンは警戒していた。
アッシュは実際、リベレート団を潰して回ってるわけではなくて旅の途中にたまたまリベレート団がいただけの話だ。しかし、潰された側からは潰して回ってるようにしか見えないだろう。
「イゼルタルの羽を少年が受け取ったら、上空にシルエットが現れたって話よ。私は少年のDNA中にある力をイゼルタルの羽が呼び覚ましたとみてる」
「ポケモンと話せるって噂ですよ」
シロナは冷静に現象の理由を解いていく。イゼルタルの能力が『DNAに関わる何か』としかわからない限り、そう考えるのが妥当だ。
「まるでNね。海底遺跡にある『王』の記述と関係ありそう」
「シキミさんは『灰色の疾風』って呼んでましたね、彼を」
「灰色の疾風……」
シロナはカトレアが告げた言葉に聞き覚えがあった。シキミも全くの創作でこの言葉を生み出したわけではないと見られる。
「ハジヅゲ、ヤマジを初めとする、火山地帯に伝わる災害を指す言葉ね。火山灰が突風に乗って凶器になるの。火山灰はガラス質で細かい粒子だから、肺や目に入ったりすると危険よ」
語源は火山地帯の災害からだった。灰色の疾風。確かに、リベレート団からすれば災害クラスの被害かもしれない。
アッシュという少年に、シロナは若干ながら興味が沸いていた。
原作プレイバック ハツネ
ハツネはポケットモンスターブラック2、ホワイト2に登場する一般トレーナーである。タイガの様にプレイヤーをフルボッコにする強さがあるわけでもなく、ノドカの様に外見で騒がれるキャラでもない。
彼女はクリア後、カラクサタウンでドリュウズをエテポースと交換する内部交換の対象として登場する。ただそれだけでなく、プレイヤーが渡したドリュウズを育ててバトルを挑んでくる。その後、カバルドンとフーディンを交換することができる。そしてまた、カバルドンを育ててバトルを挑んでくる。
ただ物拾い要員だからいいけど物理アタッカーのエテポースにわるだくみ、特殊アタッカーのフーディンに物理技サイコカッターなど『何故覚えさせた』という合わない技を自慢してる辺りバトルは苦手なのかもしれない。