ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

83 / 85
 みんな忘れていそうなこと
 ポケモンユニバーシティ
 エニシダが設立した、優秀なトレーナーを育成するための大学。エルトやヴァイオラはここの大学で勉強し、実習に来ている。
 エルトとかシッポウ博物館で実習してたのにお使いとかで旅してたし。そのお使いって、ホドモエで化石を受け取ることだったはずだし。


番外 ジャスミンのバレンタイン

 ホウエン地方 ポケモンユニバーシティ

 

 実習を終えたエルトは、研究室でレポートをまとめていた。実習のことだけではない。何よりの収穫はポケモンと話す能力を持つトレーナー、アッシュとの邂逅や彼が持つ秘宝『サザンドラの瞳』など、研究すべきことはまだ多い。

 狭い研究室で、珍しく白衣を来て眼鏡をかけたエルトが調べ物をしていた。素顔を見せられるのも大学とはいえ研究室と部室くらいなものだ。顔に火傷と刺青があるので仕方ない。

 「学芸員の実習に行ったつもりが、こんな研究材料を手に入れるとはな」

 「休みのつもりが、休めませんね」

 ユニバーシティは優秀な生徒に多額の奨学金が支払われるため、大学院に進む道もある。この研究が論文に纏まれば、エルトの実績もあり確実に大学院進学が可能だ。

 「研究材料がこれ以上集まらないのが難点ですが、少なくとも言語分野だけは……」

 「秘宝は難しいかもしれんが、ポケモンの言葉が解析できればいいな」

 秘宝はともかく、アッシュのポケモンと話す能力が解析出来れば、いつかポケモンと人間が普通に話すことが当たり前になるかもしれない。それはエルトにとっても夢なのだ。

 「ん? ライブキャスター?」

 エルトのライブキャスターに着信があった。着信はジャスミンからだ。珍しくテキストのみのメールだ。

 「今日はバレンタインだ。呼び出しと思ってウキウキ行くと騙して悪いが……となるかもね」

 「まさか、ジャスミンに限って……」

 メールの内容は珍しく短文で、ただ校門前で待っているというだけの文章だ。

 『今項目の前にいる。すぐ凝れる?』

 「誤字多いな、こりゃ当たりだな」

 エルトのある予想は当たっていた。いつ会うかはわからないが、次会った時の為に準備していたのだ。

 エルトが怪しみつつ校門に行くと、ジャスミンが待っていた。年齢のせいか、チャイナドレスをやめると大学にしか見えない。白いコートがよく似合っている。

 「お、ジャスミン」

 「エルト……」

 ジャスミンは妙に緊張した面持ちでエルトに何かを渡す。長方形の薄い箱だ。

 「受け取って」

 「な、なんだ? ま、ちょうどお前に渡すもんがあったな」

 エルトは疑問に思いつつ箱を受け取る。それをしまい、エルトはあるものを取り出す。

 筒に入ったそれは、眼鏡だった。

 「大学で、目測で眼鏡の度を合わせる技術を開発してるらしくてな。ジャスミン、捕まった時の怪我で目が悪くなっただろ? それでな」

 「なってないわよ、っと……」

 ジャスミンがエルトに詰め寄ろうとして、距離感を誤ってぶつかってしまう。

 「ほら、顔赤いぞ。鼻ぶったか?」

 エルトは無神経に顔を近づけてジャスミンの無事を確認する。

 「とりあえずかけろよ。確認しにいこうぜ」

 ジャスミンに眼鏡をかけて、手を引いて研究室へ案内する。これを開発したのはポケモン科学学科なので、エルトと研究室は違う。ジャスミンは黙ってエルトの腕に抱き着く。

 「……」

 「ジャスミンさん、近いです、あと当たってます」

 「当ててんのよ」

 大学内を歩くと、ジャスミンが美人なのもあってざわめきが起きる。

 「誰だあの美女……」

 「俺の美人メモにはいないぞ?」

 エルトの知り合いらしき人物も、動揺を隠せなかった。エルトが加入しているポケモンクッキングサークルの仲間だ。ポケモンフーズを作るサークルなのだ。

 「エルト……お前『血のバレンタイン作戦』に参加して献血行くんじゃ……」

 「俺去年服薬で断られたじゃん」

 エルトは服薬の関係で献血を断られる。結構内臓ガッタガタな人なのである。

 サークルの女子達にも動揺が走る。

 「エルトが女連れ……?」

 「あのエルト先輩が?」

 「ポケモン(オス)と添い遂げそうなエルトが?」

 「聞こえてるぞチミら」

 エルトはイチローやカザン辺りとの絡みが多く、ポケモンと人間でのBL枠みたいな扱いだった模様。顔の火傷や悪そうな表情で隠れているが、エルトは顔立ちだけなら悪くない。さすが、エリートスクールで首席かつ彼女持ちのギンの兄だけある。

 「どなた?」

 「エルトと付き合うから、相当な物好きなんだろうな。四六時中ポケモンフーズ食ってる奴だし」

 とりあえず紹介をせがむ仲間がいるので、自己紹介くらいはしておく。

 「初見、ジャスミンです。イッシュでエルトと知り合いました」

 「お前実習に行ってたんじゃ……」

 「いろいろあってな」

 ワイワイと同世代の友人と話すのも、ジャスミンにとってはなかなかしなかった経験だ。

 アッシュの旅は予想もしない場所に爪痕を残していた。




 忘れていそうなこと
 ジャスミン
 ジャスミンの本職は豪華客船ブルジョワジー号のオーナーである。18歳でこの地位を掴んだのはジャスミンのルックスもさることながら、多くの金持ちを誘惑して味方に付けるスキル、そして経営手腕があったためである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。