人たる所以を証明せよ、と魔法師は言った   作:ishigami

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07 戦闘1

 

「う―――ん……」

 

 七草真由美は、悩んでいた。

 

 全一科生合同実技授業。そもそもこれは新入生が上級生と交流を持ち、彼らの実力差を知るために設けられた場である。本来であれば一年生同士の模擬戦は推奨されないのだが、提案してきた二名が問題だった。

 

 一人は風紀委員一年生――森崎駿。百家「森崎」の生まれであり、実技試験における評価基準「処理速度」「規模」「干渉力」において優れた成績を示した一科生。

 

 対するは森崎駿と同じクラスの御嵜十理(おさきしゅうり)。母方の親が魔法師の家系ではあるものの一般家庭の生まれであり、入学試験では実技理論共に秀で、総合一〇位に選ばれるほどの秀才であった。

 

 能力の高さに疑いはない。しかし「能力」を制御できるほどの実力を新入生が有しているかは別問題だ。

 

 万が一、暴走が起こるようなことがあれば――

 

「いいのではないか」

 

「十文字くん」

 

 十文字克人。巌のような巨躯を誇る部活連会頭が、並んだ二人を見下ろす。

 

「我々が下級生を最大限フォローすればいい。それが俺達の仕事だ」

 

「……そうね」

 

 そうして。

 

 二人の決闘が承認された。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ルールはこれまでと変わらない――」

 

 直接/間接攻撃を問わず、相手を死なせたり再起不能にする、また相手の肉体を損壊させる攻撃(武器を含む)は禁止であり、打撃に関しては損傷が「捻挫」以下であれば「素手」「足」での攻撃が可能である。

 

 開始されるまでCADの使用は許可されない。勝敗は審判が続行不可能と判断するか、降参を自己申告した場合に決定される。

 

 審判を務めるのは服部刑部副会長。

 

 距離を開けて対峙している、二人の態度には大きな隔たりがあった。

 

 森崎駿が特化型の拳銃型CADを両の手(・・・)に、二丁(・・)握って緊張な面持ちのまま合図を待っている一方で、御嵜十理は汎用型のスライド式携帯端末型という風変わりなCADを手にしつつ、見ていると薄ら寒くなる――まるで別人のような雰囲気の――鉱物的で近寄りがたい()笑を湛えながら佇んでいる。

 

 ――負けてたまるか。

 

 どちらが余裕あるかなど一目瞭然であり、事実森崎駿の精神状態は逼迫(ひっぱく)していた。原因は多数ある。

 

 一つは、一目惚れした司波深雪から精神的に距離を取られていると指摘され、それを意識してしまったこと。

 

 二つ目は風紀委員に選ばれはしたものの、新入生部活勧誘週間では剣道部での活躍と二科生――しかもよりにもよって司波深雪の、あの兄! ――に早くも先を越され、対する自分はそれに匹敵するだけの目立った功績を上げられずにいるということ。

 

 そして御嵜十理である。

 

 彼の態度の変化の違和感――それに、なんとなくだが、気づいてしまったのだ。

 

 ――「つまらないやつ」。

 

 ――「どうでもいいやつ」。

 

 あのときの笑顔は、要するに、そういう意味だったのだ。

 

 ――気に食わない(・・・・・・)

 

 ――なんでそんなふう(・・・・・)に僕を見る。

 

 ――ふざけるな!

 

 御嵜十理に。他ならぬ自分と同じ優等生であるこの少年に「あいつは取るに足らないやつ」と思われていることがどうしようもないくらい腹が立つ。

 

 ――見くびるなよ、僕を!

 

 ともすれば司波達也への対抗心と同じようにも捉えられてしまうが、この感情は別種のものである。

 

 司波達也への反発には自分よりも格下の存在(・・・・・)である彼が自分より活躍して評価されていることへの嫉妬心を起点としている部分があるが、十理は自分と同じ一科生であるためそこには一定の敬意が存在している。

 

 だからこの行動は「嫉妬」によるものではない――いつの間にか自分よりも「司波深雪」と親しげにしていることへの嫉妬を原理とした行動では、ない。

 

 それは、意地(・・)だ。一科生の誇りという学校内部でのみ通用する理屈ではなく、森崎家の魔法師としての――(いいや)それ以前に森崎駿個人(・・)としての意地だ。CADを二つ同時に扱って挑むという、つい最近ある男によって見せつけられた魔法技術をわざわざ採用した理由が、そうだった。

 

「お前を倒す、御嵜十理」

 

 どうして倒したいのか。なぜ倒さなくてはならないと感じているのか。

 

 ――壁だから。

 

 こいつは森崎駿にとって乗り越えなくてはならない壁だから。

 

 乗り越える(・・・・・)。つまり彼は御嵜十理という少年を自分よりも優れた人間であると認めているのだ。そして、だからこそ彼は御嵜十理の態度が気に食わないのだ。

 

 森崎駿は御嵜十理を認めているのに(・・・・・・・・・・・・・・・・)御嵜十理は森崎駿を認めていないから(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 今回の決闘騒動の原因はすべてそこに起因する。

 

 認めている相手に認められたい(・・・・・・・・・・・・・・)男の(・・)意地(・・)

 

 だからこそ、十理は今回はその熱に煽られてやることにしたのだ。

 

 よって。二人の対峙する光景を見ただけで、どちらが挑戦者(・・・)であるかというのは明白であった。

 

 ――余裕のつもりか。

 

 意気込む森崎駿と比べて、十理は自然体だ。リラックスしているようにすら見受けられる。位置につく前、彼が北山雫たちに話しかけられていたのを見ていた。そのときも、緊張している様子はなかった。今も、そうだ。

 

 ――自信があるのか。あるのだろうな。

 

 ――だけど。

 

 

 合図が熾る。

 

 

「始め――!」

 

 開始。

 

 ――見せてやるよ、そして驚嘆しろ。

 

 ――早打ち(クイックドロウ)の真髄に!

 

 森崎駿はCADを介し、起動式を読み込む。〈圧縮空気弾(エア・ブリット)〉を選択。

 

 引き金。さながら西部劇(ウェスタン)のように。

 

 射出された弾丸が、十理を貫く――

 

 ただの圧縮空気弾と侮ることはできない。当たり所によっては、容易く昏倒させることもできる。

 

 だが。

 

無粋だ(・・・)

 

 固く結ばれたはずの弾丸は、なぜか、十理の長い髪を揺らしただけであった。

 

「―――」

 

 目を剥き、しかし内心のどこかではこれ(・・)予感していた(・・・・・・)森崎駿を相手に、芝居じみたそぶり、芝居じみた語り口で十理は首を振った。

 

「やはり、そう来たか。誘ったのはお前だろうに……、ただの一撃、まさか一瞬で幕を引こうなど、無粋極まる。逸りすぎだよ」

 

「何を、したんだ」

 

 再び引き金。しかし。

 

 今度は、発動すらしなかった。

 

 

「息を呑むような体験をしたことはあるか?」

 

 

 手汗が、べっとりと気持ち悪い。

 

 一瞬だが、森崎駿は十理の指がCADを叩いたのを見ていた。重たい予感が、鳩尾に押し付けられる。

 

 即ち、この現象は――

 

「ッ……!」

 

 銃口を向け、弾かれるようにして、収束/加速系統の魔法式がインストールされたほうではない、もう一つのCADの引き金を引いていた。自分が御し得るなかでも最難度の魔法を発動する。

 

 聞こえたのは、空撃ちの空虚な音だけであった。発動しない(・・・・・)。真っ白になった森崎駿の思考に、穏やかな口調ながらおそろしい響きを伴った十理の声が響く。

 

天使(・・)を喚んでやった。この〈沈黙の園(サイレンス)〉の領域内では、あらゆる雑音は生じえない。いいだろう、とても静かで……」

 

「領域干渉か」

 

 三年生の誰かが唸るように言った。まさしく、森崎駿のたどり着いた答えと同じだった。

 

 ――この距離で届くのか!?

 

 なんという展開速度か。そして最も恐るべきは、干渉下で森崎駿の魔法が発動しない事実すなわち干渉力で負けているということだった。

 

 領域干渉を破る方法は、干渉力で上回るか対抗魔法で吹き飛ばすしかない。

 

 いずれも、今の森崎駿には可能な手段ではなかった。だとすれば。足元が揺らぐような感覚に襲われた。森崎駿(じぶん)は、この戦いに総力を懸けると決めていたはずなのに。このまま戦いにすらならないまま、あっけなく、無様を、恥をさらして終わるのみなのか――

 

「そんな不安そうな顔をするな」

 

 十理は。まるで養豚場で出荷間近の家畜に向けるような、慈悲の込もった眼差しをして言った。

 

安心しろ(・・・・)撃たせてやるさ(・・・・・・・)。よく聞け。私の望みは派手な戦いだ、せっかくの決闘なのだからせいぜい思い切りやりたいじゃないか。思い切り、存分にだ」

 

 ――なんだ。

 

 ――なんだよ、それは。

 

 十理は、わらっていた。

 

「理解したか森崎駿? さあ、(おもて)を上げろ。そして銃を構えろ。改めて盛大にやろう。私の要求は伝えた、お前はそれを聞いた。あとは力いっぱい、振り上げたその拳でぶん殴るだけだろう、これは決闘なのだから! 敵はここだ、ほうら、来いよ。来いったら。殴り方も知らない赤子じゃあるまい……来ないのなら、地虫のように踏み躙ってしまうぞ。踏み潰されるのがお望みか?」

 

「な、」

 

「な?」

 

「舐めるなぁぁぁぁ――――――――――――――!!」

 

 それは雷鳴にも、悲鳴にも似て。

 

 震える銃口。引き金。今度は発動した。

 

 放出系魔法――〈スパーク〉。

 

 基礎的な術式ではあるものの、術者の力量によって威力や範囲に変化を加えられる特徴を持つこの魔法は一年生には難易度が高く、だからこそ森崎駿の距離から威力を損なわずに届かせているのは驚くべき光景であり、研鑽を重ねてきた彼の努力のほどが窺える。

 

 迫る電撃を前に、少年は。

 

 わらいながら、口にした。

 

 

「〈斥けるもの(アンブレラ)〉」

 

 

 刹那。

 

 御嵜十理の「影」が、揺らめく。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 殺到する雷撃。常人であれば腰を抜かすような光景だ。雷の力が、激しい音と指向性を伴って迫ってくるのだから。

 

 しかし届かない。間断なく放たれ続ける雷撃と十理の間には――明確な「壁」があった。

 

 障壁魔法ではない。妨げたモノのカタチに見覚えのある人間は、大勢いた。

 

 (Umbrella).

 

 丸みを帯びた深張りの傘。淡い紫の帆の八面には白い四角い渦模様が描かれており、(なか)には同心円状の丸が描かれている。それを雨に向けるようにして、降り注ぐ電撃のすべてを(しりぞ)けていた。

 

 どこ(・・)から現れた。いつ(・・)現れた。あれ(・・)は、なんだ?

 

 疑問の答えを知る者は応えない。自らの()から。一瞬(・・)の何一〇〇分の一の速度で()り出したことに気づいた者は誰もいない――この「傘」が異世界の日傘の勇者(・・・・・・・・・)が愛用した防具と同じ霊格を()ろされた魔法道具であることを知る者が一人としていなかったのと同じように。

 

「っ――!」

 

「そうだ! やればできるじゃないか森崎駿! なんで最初からそれをやらない! 今しばらくは殴られてやろう、今がチャンスだぞ、攻め時だ! さあもっと(・・・)見せてくれ……だが、ただ殴られるだけというのも面白みに欠けるな。こちらも、相応しいものを見せてやろう――〈爆雷顎(スターマイン)〉!」

 

 第一の宣誓と共に。十理の足元に、文字にして文字ならざる「何か」が描かれた蒼い魔法陣が現れた。

 

 

「――〈回路固定・伝導開始(コール・セット)〉――」

 

 

「なに? 別の――古式魔法か!?」

 

 次いで魔法陣のうえに小さな円盤が二つ、対極の位置から現れ、円の外と内の枠線を車輪のようになぞりながらそれぞれ右方向へゆっくりと、旋回行動を開始する。

 

「くそ―――!」

 

 十理に慌てた様子はない。あらゆる沈黙を引き裂く雷撃は、しかしたかが(・・・)傘の薄膜すらも打ち破れず、触れる手前で消滅している。

 

 続いて彼の正面に、傘の外枠よりも巨大な次なる魔法陣が現れた。描かれているのは無数の数字であり、それらは見えない法則に従って絶えず変化をし続けている。

 

「なんで――」

 

 雷撃が淡紫の傘により(ことごと)く消し去られてゆく景色は、いっそ幻想的であり、そして無情でさえあった。

 

 十理の足元の二つの円盤はさながら時計の針のように、片方の移動速度が上がったことで確実に近づいている。

 

「なんで――!」

 

「おいおい。まだ(・・)あるだろう。まだまだ(・・・・)あるだろう。もっと(・・・)だ。もっと(・・・)もっと(・・・)だ」

 

 危機感が膨れ上がる。魔法陣の術式が何であるのかは分からない、だが早くなんとかしなければ(・・・・・・・・・)まずい事態になることだけは理解できた。

 

 〈スパーク〉。

 

 〈エアブリット〉。

 

 〈スパーク〉。

 〈振動系魔法〉。

 〈スパーク〉。

 〈スパーク〉。

 〈スパーク〉。

 

 〈スパーク〉―――

 

 怒涛の攻撃。

 

 歓声や賞賛が湧いたが、森崎駿には聞く余裕などありはしなかった。

 

「マルチ・キャスト……」

 

 七草真由美は。高度な魔法技術を確かに運用できている少年の姿を見て、その努力の程を知り、彼がどれだけの想いを懸けてこの戦いに挑んでいるのかを察せられた。

 

 十文字克人も。入学したばかりの一年生でありながらここまで戦えている森崎駿という男子生徒の姿勢を評価し、服部刑部もまた、その意気込みには感心していた。

 

 だが、だからこそ。

 

 むしろ、それ以上に――

 

「一辺倒に過ぎる。それはもう見飽きたぞ」

 

 森崎駿は。当初の計画が破綻しきっているなかで、それでも舞台から降りようとは考えもしていなかった。

 

 自らの攻撃を微塵の疲れも見せずに防ぎ続ける御嵜十理に対し、怒り、恐怖、嫉妬、それらがぐちゃぐちゃにせめぎ合い混合された感情を剥き出しにしながらも、しかし魔法操作を誤ることはなかった。

 

 ――このままではだめだ。

 

 すでに何十と内心で繰り返している言葉が、浮かんだ。

 

 ――このまま撃ち続けていても、あの〈魔法〉を貫くことはできない。

 

 ならば、どうするのか。

 

 舌打ちしていた。CADを操作する指は休めない。ただ、身体がこれから臨む行為に対して恐怖に震えていた。(いいや)、武者震いさ。出した結論は一つだった。

 

 ――遠くでだめなら、近づくしかない!

 

 やってやるさ。それしかないんだからな。あいつに勝つためには、それぐらいしかもうないんだからさ。

 

 隙を見て、自己加速術式で突撃する。隙など、ありはしない。だが、〈スパーク〉で視界は妨げられているはずだ。意表はつける。部の悪い賭けだが。

 

 森崎駿は。

 

「そうか」

 

 術式を展開――

 

 しようとしたところで、身体が動かなくなっていることに気づいた。

 

「あっ……?」

 

「ここまで、ということだな」

 

 質量のある闇(・・・・・・)が、重く圧し掛かっている。それは、正しくは「影」であった。十理の「()」から音もなく忍ぶように伸ばされていた「影」は、森崎駿の影と結合すると平面状態を立体状態へ移行させて、触手のように彼の全身を拘束していた。

 

「なんだ――これッ!?」

 

 

「――〈全弾装填(トリガーオフ)〉――〈凍結門開放(コールドパージ)〉――」

 

 

「まさか、パラレル・キャスト……?」

 

 十理の、足元の魔法陣。二つの円盤がついに合致すると、一つになったそれが、魔法陣の中心へと吸い込まれ――

 

 一方で身動きを封じられ、また皮膚に絡みついた「影」の様子は想像を絶する恐怖であり、完全に恐慌状態に陥りかけた森崎駿の双眸は、変化する数字の魔法陣が唐突に砕け散り、代わりに洞穴の如き蒼い砲口(・・)が現れたのを目撃した。

 

「仕方ない。まあ、仕方ないなあ。そんなに、悪くもなかったしな」

 

「御、嵜……!」

 

 十理は。

 

 傘を手放し(・・・・・)

 

「【告げる】。……準備は整い、舞台は相成った。覚悟(・・)はいいな、森崎駿。私はお前に敬意を表し、私の持てる最大の一撃を以て、お前の勝利を粉砕(・・)しよう」

 

 戦慄を、誰もが抱いた。

 

 少年の口元は、あたかも捕虜を処刑する指揮官の如き害意に歪んでいた。

 

「だめ、いけない――!?」

 

 今や森崎駿の思考を占めていたのは、恐怖、だった。気が付くと片方のCADは取り落としており、もう一方は、引き金にかろうじて利き指が引っ掛かっているだけだった。

 

 ――負ける。

 

 しくじった。どこでしくじったのか。初めから、どだい無理なことだったのか。恐怖のなかで、不思議と冷静に事態を俯瞰している自分がいた。感情は切り離されている。もしかすると、死の間際に見るとされる走馬灯の感覚がこれなのかもしれない。

 

 ――負けるのか、僕は。

 

 

「――〈天より墜つる蒼き彗星(ディープインパクト)〉――〈完全収束・射出展開(パーフェクト・テン)〉――」

 

 

 わらっているのが見えた。あいつ(・・・)

 

 わらっているのか(・・・・・・・・)

 

 ――あいつにわらわれたまま、このまま。

 

 恐怖が、あった。もしかしたら、泣いていたかもしれない。

 

 ――ああ無様だ。恥だ。惨めだ。悲惨だ。

 

 だが。

 

 だからこそ、ああ。それでも――

 

 張りつめていたものが、引きちぎれてしまう刹那の抵抗。あるいは風前の灯の輝きか。

 

 ――せめて。

 

 恐怖と、しかし。森崎駿には、それでも捨てきれぬ意地(・・)があった。たとえそれが恐怖にこびりついていたものだとしても。

 

 ――この距離では、今から発動しても間に合わない。

 

 ならば一つしかないだろう(・・・・・・・・・・・・)たった一つの冴えた方法(・・・・・・・・・・・)。消し飛ぶ前に。

 

 命令が下される、間際に。

 

 森崎駿は、御嵜十理を見て――引き金を、絞った。

 

 鋭い風(・・・)が吹き、少年の背後数メートルの空間(・・・・・・・・・・)をさらい、そのまま消えた。

 

 それだけだった。

 

 

「―――――――――――ハ、」

 

 

 十理は。

 

 

「【放て(ファイア)】」

 

 

 

 ――あいつは、最後どういう意味で、わらったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――蒼が、貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 【降霊物紹介】

 傘(umbrella) … かつて「魔王」を倒した「勇者」が愛用し続けた日傘と同等の霊格(伝承)を獲得した降霊物。
 色がピンクでない理由は、いわゆる2pカラーのようなもの。

 なお出典作品においては、そもそも防具ですらないという扱い。単にどこまでも丈夫な日傘。















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