ハンター世界の復讐者   作:慧春

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第3話

 

 

 

「――お前は、転生者か?」

 

 その言葉に、オレは先程から抱いていた疑問が氷解するのを感じた……ああ…やっぱり、この人も転生者なのかと納得した。

 そして、今の状況を一旦、思考の片隅に追いやり、頭を懸命に働かせる。

 考える内容は、ズバリ――『どう答えるか』……これに尽きるだろう。

 

 ここで、素直に転生者であると告白しても良いが、ある一つの『懸念』がある……

 

 それは、オレが転生する前に――オレ達を転生させた神を名乗る胡散臭い奴の言葉だ……

 

 『君達五百人の転生者達の総人数が、十人以下にまで減った時点で、その時に生き残っている転生者達の願いを何でも叶えよう――不老不死、尽きることの無い富、普通では手に入らない道具……そして――元の世界への帰還まで……『何でも』だ……』

 

 オレは、あの言葉を信用した訳じゃない。

 そもそも、転生実験とか訳わかんねぇ事宣った挙げ句にオレ達を勝手に殺して、二次元の世界に転生させるような胡散臭い奴の事なんか信用できる訳がない。

 

 だが、中にはそれを本気にしてる奴もいるだろう……目の前のコイツは『どっち』だ?

 

「悪いが転生者であるなら、始末させてもらうぞ」

 

 ――~~ッ!? くそっ! 本気にしてる奴じゃねーか!?

 せっかく助かったのに、オレの人生もう終わり!?

 一難去って一難なんてレベルじゃねーぞ!

 難易度高いなんてもんじゃないだろ、オレの二度目の人生……

 

「あ、え…と」

 

「……どうなんだ?」

 

 目の前のコイツは相変わらず、感情の読めない瞳でオレを見下ろしてる……

 正直に答えたら、オレは殺される……かといって嘘を付いたところで、それが通じる相手かどうかは疑問を持たざるを得ない。

 

 少なくとも、目の前の男は、相手が生きるに値しないような屑とは言え、オレの目の前で人間を一人、呆気なく殺してる……オレが何と言おうと、疑わしきは罰するとばかりに問答無用で殺しにかかってくる可能性も無きにしも非ずだ。なら、オレの取るべき選択肢は――

 

「な、なんの…ことか、解りません……」

 

 簡単だ…『転生者』というワードその物を知らない振りをする――落ち着け……

 今のオレは、変態に目を付けられる位に可憐な貴族の美少女だ。

 国の至宝と称され、社交界の華とまで言われ、ペンドラの才女と唱われる完璧なお嬢様――駄目だ。

 自分の評判を浮かべる度に、頭が羞恥の気持ちで一杯になる!

 何が国の至宝だよ……今時、少女漫画でもそんな恥ずかしいネーミング無いわ! 誰だよ、こんな中二病でタカビーなお嬢様が自称してそうな名前考えた奴は――あ~~恥ずかしい、許されるならこの場で頭を抱えながら、全力で転がりたい。人目憚らずに悶えたい。

 元男だからか、余計にそんなことを考えてしまう。

 

 だが、ようやく解放されたといっても、先程まで、あの変態野郎に強い力で拘束されていたせいで、手足に全然力が入らねぇし……何より、目の前にオレの正体を知ったら最後、殺しにかかるであろう危ない存在がいるのだ。

 そんな、隙は晒せない。

 最も、目の前のコイツが、オレを殺そうと思えば、オレは抵抗なんか意味をなさずに始末されて終わりだろうけど……

 

「……そうか………」

 

 そう言って、目の前の美形は何かに納得するような雰囲気で頷くと、それでは――と続けてくる。

 次はどんな質問が来るんだ?

 もう、オレの中にはこの場をどうにか切り抜けようという気概しかない。どんな質問をしてこようと、お嬢様として完璧な返答をして見せる! と気合いを入れる。

 もちろん、外見上は強姦されかけて、変態ロリコン野郎に純潔を散らされる寸前で救出された『悲運なお嬢様』としての外面を取り繕うことも忘れない。

 

「お前は――悪事を働いたことはあるか?」

 

「? す、すみません。悪事とはどの程度の……でしょうか?」

 

「ああ……そうだな。悪事というのは意味が広すぎるか――殺人や強盗なんかの、重犯罪を働いたことがあるか? と言うことだ」

 

「?? まぁ、少なくとも、世間一般で犯罪と呼ばれるようなことは今までにやったことが有りませんわ……これからも、する気はありません……」

 

 なんだ? 質問の意図が解らない……なんだ? オレが悪事を働いたか?

 そんなこと聞いてどうすんだ?

 

 ――駄目だ。解らない。そう思ったから、とりあえずは事実を言ったけど……どうなるんだ?

 

「……嘘ではない……か……」

 

 オレの耳に、そいつのそんな言葉が聞こえてきた……そして、それを最後にオレの意識は徐々に微睡みに落ちていった――

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

「落ちた……か」

 

 目の前で、意識を無くした少女の無事を確かめながら、青年は少女が肉体的には(・・・・・・・・・・)何も問題がないことを確信する。

 

「だが、精神的には……どうだろうな……」

 

 青年は、少女の体を壊れ物を扱うかのように、優しく両腕で抱え上げる――

 

「最も『転生者』がどうなろうと、オレの知ったことではないが――」

 

 気分が悪い――彼の胸中にある思いはそれに尽きた。

 別に体調から来るものではない…言ってしまえば『それ』は、その『中身』は兎も角、年端もいかない少女をその欲望で蹂躙しようとした下種な人間に対しての胸糞悪さ……それは、彼でなくとも一般的な人間の感性からすれば十分嫌悪に値する所業だろう。

 

 彼は、壁に叩きつけられ、血をぶちまけている汚物(したい)に近付き、その右手首を切断し、袋に入れてその場を立ち去る――

 

 そして、彼は手元にいる少女に当たらないように気を付けながら、自身の【オーラ】を薄く円形に拡げた――【円】、【念能力】と呼ばれる、生命力の具現である【オーラ】を操る技術の応用のひとつ。

 念能力とは、オーラを操る技能の総称であるが、それは【纏】【練】【絶】【発】の基本の四体行とそれはを応用した技術が存在する。

 円はそれのひとつであり、本来は体に纏うオーラを、薄く引き延ばし、そのオーラに触れた物をオーラを介して感じ取ることが出来る――探知に長けた技能だ。

 

 彼は、眼を瞑り【円】によって広げられた索敵範囲の中に意識を集中する――そうすると、彼の手の中にいる少女の蹂躙劇の行われかけた現在位置より、程近い場所に複数の(・・・・・・)人間の気配を確認し、それが自分の目的の人物であると確信した。

 

地下(した)……か」

 

 そして、胸ポケットから黒い携帯を取り出して、外で待っている協力者を呼び出す――

 

「こちら、氷上だ……例の少女は保護した――その際に対象の内一人『ロリム・コンドラ』は始末した。ああ、やむを得ない事態だったんで、仕方無く…だ。安心しろ、奴のやって来た悪事の証拠はバッチリだ。この少女が証言してくれる――」

 

 そして――と、続ける。

 

「もう一人の対象者と、恐らくは今までの被害者達も(・・・・・・・・・・・・・・)この屋敷にいる――」

 

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 そこは、薄暗い部屋だった……広さは床から天井までが五メートル程度であるが、兎に角『広い』――だが、部屋の所々に設置されている『ある物(・・・・・・)』が、その部屋の広大さを損なわせていた。

 

「ハァ……っ!」

 

 そして、その部屋の中央に設置された五人以上は優に寝られるであろう巨大なベッドでは、一人の男が恍惚の声を挙げながら、自らの『欲望』を吐き出していた――

 

「ふぅ~、よし! これで『十七発目』――ノルマは『一日三十発』だからな!」

 

 まだまだ可愛がってやるぞ! と彼はその逞しい体躯を快感に震わせながら、たった今、己の欲望を『中に吐き出した少女(・・・・)』に、爽快な笑みと共に語り掛ける……

 その様子は、好青年が寝所で恋人に語り掛ける様な声音であり、或いは見方が違えば恋人同士の下半身事情の一幕に見えないこともない――彼が語りかけた相手が、明らかに子供と呼べる幼い年齢の少女(・・・・・・・・・・・・)で、絶望以外の感情が全てが消え失せた表情と光の消えた無機質な瞳をしていなければ…だが――

 

「は…い…ご、しゅじん、さ…ま」

 

 消え入るような声で、口内に溜まった白濁液を口から微かに溢しながら、少女はそう言った。

 少女は、麗しい外見をしていた――町を歩けば、多くの人間が振り向くであろう整った容姿…未成熟ながらも、その輝かんばかりの将来性がハッキリと分かる美しい造形……そうであるがゆえに『この男達』に目を付けられた――付けられてしまった。

 彼女を拐った二人の男たちは、片やこの国では有数の大貴族であり、同時に人格者として知られ、その保有する領土内の領民達からも多大な信頼が寄せられている。

 だが、それはあくまでも表向きな顔――その本性は、幼い少女や少年に欲情し、自らの欲望の毒牙に掛ける悪党であった。そして、その協力者であり、懐刀である『この男』もまた、彼と似た性癖を持った異常者であった。

 表では、多くの人から慕われる人格者とその片腕――しかし、夜になればこの男が拐った幼い少年少女達の肉体を、心を強姦する毎日……なんと狂ったことだろう……

 

 もはや、その身は二人の男に幾度も貪られ、蹂躙され尽くされた……拐われたその日、さも当然のように笑いながら『初めて』を奪われたその日から一週間――少女は、名前を呼ばれることなく、決められた時間になるやいなや、ただ二人の男に欲望のままに、膣を、尻を、口内を――あらゆる場所を汚され尽くす毎日……それは、幼い少女が、自我を手放すには十分過ぎる『地獄』だった。

 

「む? 反応が悪いな……壊してしまったか?」

 

 そして、男は『久しぶりに気に入った子なのだが……壊れたなら『廃棄』するしかないか……』と残念そうに呟く……本当に残念に思っているのか、その表情は恋人に別れる前の好青年のような悲壮感が漂っていた。

 見方が違えば、彼女の方に問題があって、悲壮感と共に別れを告げなければいけない立場の青年のように見えたかもしれない――ただし、現在も腰を激しく動かしながら、少女の膣内を犯していなければだが……

 

『ん、ふぅ~~! まぁ、流石に毎日は無理をさせ過ぎたか……既に二百回は出してるしな! しょうがないな、少し休ませるか……休ませたら戻るかもしれないし――安心しろよ! そうなったら、またたっぷり可愛がってやるからな!』

 

 はっはっは! と豪快に笑いながら、男は事が終わると同時に、少女の腕を掴んで持ち上げ――普段彼女の居る『檻の中』に(・・・・・・・・・・・・・・・・・)戻すと、今度は『あの子の感度と膣内のキツさは本当に気に入ってたんだが…しょうがない。口直しに三、四人ほど抱いて、今日は寝るとするか――』と漏らした。

 

「ん、そう言えば『ロリム』が、上で『ペンドラ家の令嬢』と愛し合っているんだったか……そっちに混ざるのも良いかもしれんな――」

 

「なら、俺なんてどうだ?」

 

 む? と、唐突に聞こえてきた声に反応する前に、膨大な量の【オーラ】が籠められた、蹴りが男の後頭部に炸裂する――

 

「――屑が……すまない」

 

 部屋の主であった男の後頭部に、強烈な一撃を叩き込んだ氷上炎下は、凄まじい勢いで吹き飛び、部屋の壁に穴を開けて、外側にまで飛んだ男に、嫌悪感を込めて罵倒し、そして、この部屋にある檻の中に居る被害者達に謝罪した――間に合わなくてすまない――と。

 

 そこは、正に正常な人間ならば、誰もが正気を失う狂気に満たされた空間だった。

 広い部屋の中に無数にある檻……その中には、鎖に繋がれた幼い少年少女達が、生まれたままの姿で、その未成熟な肢体を晒していた。

 氷上が、男を殺す気で蹴り飛ばした時に、かなりの音が響いた筈なのに、誰も氷上の方を向かない。誰もが光の消えた目で微動だにしない……それは、その者達が既に人として死んでいる(・・・・・・・・・・・・・・・・)事を明確に氷上に解らせた。

 その中には、その小さな体に激しい拷問を受けたような後がくっきりと残っている者も居た。

 

 

 氷上は、それらの子供達から目を逸らした――彼は、自分が正義の味方ではない事を理解している。

 自分が物語の英雄(ヒーロー)の様な存在であるならば、間違いなくこの子達を救ったのだろう……しかし、彼が救ったのは依頼されたペンドラ家の令嬢だけだ。

 他は『間に合わなかった』――救うことができなかった。

 

 その現実に氷上は歯軋りした。

 彼は、この現実を見て――ああ、やはり自分は『復讐者』に過ぎないのだな――と再度理解した。

 

「どうした――さっさと起き上がって来いッ!」

 

 氷上炎下は、左右の掌を開いた状態で、その両手を顔の前で掲げながら、たった今壁に突っ込んで行った男に対して呼び掛ける。

 『双羽の型』――彼の武術における絶対防御の構え。彼が実戦において最も多く使用する基本の構えだ。

 自身の最も、使いなれた構えと共に、氷上は渾身のオーラを体に纏う――

 

「ほう、大したオーラではないか……」

 

 氷上の視線の先から、全裸の巨漢がゆっくりとこちらに歩いてくる……先程、氷上から後頭部に攻撃を受けたからか、首を限界まで左右に曲げ、音を鳴らしながらこちらに歩いてくるその姿には、大した傷は見受けられない。

 

 そして、その身に纏う強大な【オーラ】を見て、氷上は内心で舌を打つ――オーラによる防御が間に合っていたのは手応えで解ってはいたが……まさか完璧に近い不意打ちを仕掛けておきながら、無傷で凌がれるとは予想外だった。

 そして、氷上は確信する。目の前に立つ転生者(おとこ)鍛えている(・・・・・・・・・・・・・・)――と。

 

「ふん……ハンターか、それとも別の……? だが、その程度で私の楽しみを邪魔した罪は重いぞ」

 

 男は静かに憤怒していた……目の前に居る青年が地下室(ここ)に辿り着いているということは、既に上では、男の共犯者であり、同士であり、表向きの主人でもある『ロリム』は捕まったか、始末されたのであろう。

 そうであるならば、彼等の今までの所業が然るべき場所にまで知れ渡るのは時間の問題だろう。

 そうなったら、賞金首(ブラックリスト)ハンター達や世界中の警察機関から追われる。当然捕まる気など毛頭無い男は逃亡生活を選択する――そうなると、今までのように好き勝手はまず出来ない。

 

 もしも、目の前の青年が単独でこの襲撃を仕掛けてきたのであれば、青年を殺せばそれで終わる話ではあるが……その可能性はほとんど無いと男は考えた。

 

 故に男は、その様な状況を招いた『青年(ガキ)』を――生かしておくものか……と。

 

「ただでは殺さんぞ……糞餓鬼が……!!」

 

 その怒りに呼応する様に、更に高まるオーラ……その『質』『量』共に氷上を完全に越えている――だが、氷上はそれを見ても焦りを見せない。

 その様子を見て、訝しげに男は氷上を見やるが、たんに恐怖で動けないだけだと推測し、これから起こる惨劇の様子を想像し、悦に浸る。

 

「転生者は、基本的に自分勝手な奴が多いが――貴様のような屑も珍しい……反省も後悔もいらん――ただ苦しんで死ね」

 

「餓鬼がぁ"あ"!!」

 

 氷上の言葉が終わるやすぐに咆哮と共に、確かな殺意と大量のオーラが乗せられた一撃が氷上に襲い掛かる――その攻撃は、洗練さとは欠け離れた無造作な一撃……しかし、籠められたオーラは、一級を飛び越えた特級の物だ。

 

「フン」

 

 しかし、その食らえば一撃で体が持っていかれるであろう攻撃を前に、氷上は一切動じることなく鼻を鳴らす――そして、肉体に纏ったオーラを高速で移動させる【流】とオーラを肉体の一部に集めて留める【凝】で右腕を強化し、その圧倒的な攻撃を捌く――

 

 捌く、捌く、捌く――強大なオーラの籠められた拳打を、蹴りを、当たれば並みの念能力者ならば即死するであろう暴力の嵐を氷上は、半分を見切りで回避し、もう半分も掌で、側刀で、肘で、膝で――全身のあらゆる場所に瞬時にオーラを移動させながて、攻撃を逸らす。

 

 氷上の修めた武術の名は『神田流日本拳法』――日本拳法には、多くの流派が存在している…。

 

「」「」「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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