ひとりひとりと、女神と人と。 作:sigma
この辺難しかったです。
モンストのパチモンにハマっています。
劉備ちゃん可愛ぇぇ~
人は何時だって、人生必ず一度、「女神」と呼べる人間に相見えることが出来る。
そう、彼は信じ、そしてそう主張してきた。
当然、それは個々人によって様々に変わる。ある人には自分の思う理想像であり、ある人には
全部ひっくるめて「可愛い」って言えるヤツなんていないに決まってる。
こればかりはどうしようもない、好みの問題、なのだから。
「―――ぉ…おぉ…」
―――だが、実はひとつだけ。
その「好み」には共通点があるのだ。
「…
―――女神と出会ったとき、人は必ず一度、硬直する。
人は真の女神と出会ったとき、まるで某ポケ○ンのような、状態異常に陥ってしまう。有無を言わせぬ「可愛さ」の暴力に呑み込まれるのがサガ。さらに抜け出すすべは想像以上に少ない。何故なら可愛いは、世界
そして。
「―――あーうん、大丈夫だよ。うん、俺、大丈夫、DAIJOUBU。あは、あはは」
「あれ、なんか前の時より酷くなってない!?ここまで危ない人じゃなかったよね!?」
まさに現在進行形で、女神大天使ゴッデスμ’sメンバーに出会った「彼」―――
「あっはは~、ぼくお花畑~。21世紀を生きる美少女ハンターさ~」
「ドラ○もんのような口調ですごく最低なプロフィール暴露しましたね…」
「何故だ、俺の目の前には女神が見える…俺は何か…またやらかしたのか…」
「やらかした前提なんだね、その女神という人たちに出会ったこと…」
「っていうか、きみって、なんで私たちを見るとちょっとおかしくなるの~?」
「うわぁやめろ純真無垢は俺の大敵だっ!目が、目がぁぁぁぁぁぁぁ」
「いちいちリアクションが
とはいえ、流石に
「…話が進まないわ。そろそろまともになってもらえるかしら」
「っだらっしゃあぁいっこちらに俺氏いらっしゃいまあぁすっ!!」
何よりも怖い「理事長のオーラ」に臆された柊哉は全力返事。そしてようやく我に返り、自分の行動が美少女に迷惑を与えていることに気づいた。苦笑まじりに、失望したようにため息をつく彼女ら。それを見ていられなくなった柊哉は、静かに
「…すみませんね理事長。俺いろいろと
「貴方の場合ご乱心どころかご乱
「ほい、了解ですー」
すると柊哉はくるりと向き直る。不自然なまでに完璧なアルカイックスマイルで。ただしそれは彼女らを騙そうとしているわけではない。純粋に、心から、彼女らに会えた嬉しさからの笑顔。μ’sファンとしての神城柊哉と、音ノ木坂学院「共学化試験生」としての神城柊哉の笑顔。
「どーも皆さん!音ノ木坂学院共学化試験生第1号、
至って軽く。至って自然に。さもそんな風に見えるように。本心ではバクバクの緊張と、極度の不安を抱えながら。隠して。
それが一番短い、自分に出来ることだから。
と、言外に「いったん仕切り直し」を選択した柊哉に、彼女らも意図を汲んだのだろう。
くるりと表情を変えて、柊哉のほうへと笑顔を向けた。
「こちらこそよろしくね!…私、
「ここはお饅頭紹介の場じゃありませんよ、穂乃果。―――私は、
「海未ちゃんはしっかりしすぎだよ~…ごめんね、神城くん?私、
「おぉ、皆よろしくね~…さぁて、ちと整理するか」
μ’s2年生メンバーが一通り自己紹介を済ませた。どれもかれもが可愛い。本当にこれはヤバいかもしれない。可愛さではじけ飛びそうな意識を、理性の鎖で辛うじて繋ぎとめる。
そして柊哉は、いくつか質問することにした。
「まず一つ。みんな2年1組なんだな。俺と同じクラスの人が一人くらいいてもよかったのになぁ…残念」
「そうですね。今年も何故か3人とも同じクラスだったんです」
海未が心なし嬉しそうにそう言っているのには、理事長を横目で睨むだけに留める。
彼女がミステリアスに笑うのを確認した柊哉は、予防線のように二つ目の質問。
「次に。南、っていう苗字だし、なんかすっげぇ似てるなー、とは出合い頭から常々思っていたが…もしかして―――」
「うん。この学校の理事長は、私のお母さんだよ」
「…あー…うん。なんだろうなぁ、こう…あれ?…モヤって来るんだよなぁ…」
「?どうして?」
「んにゃ、なんでもないよん。―――悪いのは母親だよな絶対…」
「何か言いましたか?神城くん?」
「いえいえ何でもないです本当にええはい」
すると今度は理事長のほうから睨まれてしまった。柊哉は軽く笑って誤魔化しておく。だがその表情すらも綺麗なのだから、本当に美人というのはズルい、と柊哉は胸中で愚痴った。どこまでも柊哉を惑わせるのは美少女らしい。けしからん、とは一言も言えないが。
そして母親が美人ならば、十中八九目の前でにっこり微笑む
「はぁ、はぁ…んでラストの質問。高坂さん、なんで俺の名前知ってたん?」
「え?…えっと、どういうこと?」
「やー、2年1組で会ったときにさ。高坂さん初対面で、俺のこと『神城くん』って呼んだじゃん?」
「あー、あれは…その…えっと…」
だがこの質問に対する回答はどうも煮え切らないものだ。オレンジの女神・高坂穂乃果様はまるで何かを隠すように―――というか実際隠しているのだろう、視点をあらぬ方向に持っている。不審に思った柊哉は、とりあえず「自分関連の出来事に確実にかかわっている」であろう御仁のほうを向いた。
「―――何故そこで私のほうを向くのかしら。私は別に何もしていませんよ?」
「うそん。このタイミングでの俺関連イヴェントって確実に理事長が関わっていると思ってましたが…どうやらアテが外れたようです…」
しかし、あまりにきょとん、と。なんにも知らない、とこちらを振り向いた理事長に、柊哉は自分の予測が外れたことを即座に悟った。流れるように頭を下げる。プライドなんてもとよりない。美女に迷惑をかければまず謝る。
理事長は頭を下げた柊哉を、どこか含みのある目線で見つめている。と、その視線は唐突に、柊哉ではなく、その真後ろへと向かっていった。
「…確かに、『私は』何もしていない
「は、はいっ!」
「どうして知っていたのですか。ちゃんと、神城くんに、説明してくださいね」
「はい…すみませんでした…」
―――見る限り、何かしでかしちゃったのは理事長でなくてこの女神様らしい。
それならば、と柊哉は
「…ごめんなさい、神城くん。実は…私、その…『共学化試験』?だっけ。その試験のこと、最初から知ってたんだ」
「………そっか」
「
「そうか…―――そりゃ、まぁ、ねぇ。仕方ないことだよな…」
彼女はおそるおそる、理事長を横目でちらりと窺いながら、自らのやらかしたことを白状した。様子は大変いじらしくて可愛らしかったが、柊哉は流石に空気を読んで、沈痛に目を伏せる。
とはいえ仕方ないことなのだ。彼女がそれを聞いたのは必然でなく偶然。聞こうと思って、あるいは―――害意を持って盗み聞いたわけではない、と柊哉は判断したのだから。むしろ問題があるのはそちらではなく…。
「―――あのー、理事長さん?」
「…えぇ、分かっていますよ。私にも、『プライバシー』という言葉には覚えがありますから」
「まぁ、もとはホイホイ
「一応説明と説得はしたのよ…。―――でも、最近の老人って、何故か総じて物分かりが悪いのよね…はぁ…」
「なるほど。そのお気持ちはマジでよくわかります」
―――あの
という言葉を凄まじい精神力でこらえた柊哉は、ようやく状況の全体像を把握する。
つまりなんだ、悪いのは基本ハゲと老人だということか、と、偏見でしかないが事実でもある結論に行き着いた。しかし女神を信奉する集団…言葉を変えるなら『μ’sのファン』と呼ばれる
「―――んじゃま、高坂さんは俺の名前をさっきの経緯で知ってたってことで。園田さんや南さんも高坂さん経由オア高坂さんと同じような理由で知ってましたーっと、そゆことやね?」
「うん、そうだね。私は穂乃果ちゃんから神城くんの名前を聞いたよ~」
「私はそのことりから神城さんの名前を聞きましたね」
「うぃ、なるほどでーす。ようやく解決しましたー」
以上3つ。
質問という名前の「プロフィール把握」は終わった。さて、と柊哉は思考する。
―――どうやら、まったく冗談ではないらしい。
(…冗談もリアルもあるもんかよ…まさか今日だけで、2回も奇跡に出会えるとはなぁ。ま、でも、『二度あることは三度ある』って言うし?夢のような境遇、が2回連チャンで起こったら、この後3回目も起こるんじゃねぇの~?なーんて)
なんとなく思った一言だが、直後柊哉はこの言葉を痛感することとなる。
―――きっかけは、何気なく放たれた理事長の一言。
「…とはいえ、他の人に、転入が知られてしまっていたのは事実です。神城くんには、何かお詫びをしないといけませんね…」
「お詫びなんて!別にいいですよ。高坂さんも反省してますし、俺なんてハナからんなこと気にしてないですし!」
「私が気にするんですよ…困りましたね…どうしましょうか…」
「ねぇねぇ、神城くん」
「ん?なんだい南さん?」
「見てて思ったんだけど…神城くんって、
「ん、そーよー。俺ぁμ’sの、心からのファンさぁ~」
「やっぱりそうなんだ!いつも応援ありがとう、神城くん♪」
「―――…あれ?貴女は…そうですか。俺を迎えに来ましたか…貴女様…いえ、天使様」
「も~、また神城くんがトリップした~…あ、そうだ!お母さん、お母さん!」
と、純白の天使はぽん、と手を叩いた。何やら思いついたようだ。ナチュラルに天に召されようとしている柊哉は、彼女が
―――だが上には”上”がある。柊哉の
「ねぇ、お母さん!神城くんって、
「ええ、いやが応にも分かったわ。…それで?」
「それでね、その『お詫び』に、神城くんにね…」
「?」
「―――μ’sのほかのメンバーに会わせてみたら、どうかな~?って♪」
「こふ」
「それはいいわね。ちゃんと『お詫び』として成り立っていると思うわ。だけど…」
「大丈夫だよ?
「そう?ならお願いしてもいいかしら。…ほら、神城くん。吐血なんかしてないで」
「…やっぱり理事長さん心配するポイント違いますって…」
―――果たして。
意識が大気圏を盛大に飛び出した柊哉は、天使の放った思わぬ幸福によって、くらくらと酸欠状態に陥っていた。ゼハゼハと、時折血を吐きながら、しばしのたうち回る。…ひとしきり暴れた柊哉は、落ち着いて一度考えてみることにした。
「…え、ちょ。ホ、ホンマですかそれ…俺いいんですか…」
「うんうん、私は別にだいじょーぶっ!むしろ大歓迎!」
「私としても別に異論はありません。神城さんもそれでいいでしょう?」
「―――ではそうしましょう。神城くんには、μ’sの手伝いにも行ってもらう、ということで」
それは美少女たちの甘いお誘い。
自分を救い、自分に意味を魅せてくれた、文字通りの「救世主」。
―――大好きなスクールアイドル、μ’sに、会えるという、失神卒倒ものの、要望。
夢見心地で聞いたあの言葉はまったく冗談ではなかったのだ。「二度あることは三度ある」。
そんな甘味の暴風に臨んで、神城柊哉は、いま。
「…えぇっと。はい、了解です…」
麻薬を刺されたかのように靄のかかった脳で、ただ言われたことを
―――そう。
時は2015年、7月1日水曜日。
のちに天性のスクールアイドル・μ’sの10人目となるこの男、神城柊哉は。
この日遭遇した、奇跡の連続によって、マネージャーへの歩みを進めることとなった。
極めて…まれで。極めて…奇跡的な。そんな道を。
その道に見ゆる面影を見つめ、己が見ることの能わない視界を夢見て。
―――それは、たった一枚の扉だった。