どうも燕尾です。
一時期できなかったとはいえ、かれこれこうして物書きし始めて
10年近くたっているということに感慨深さを感じているこのころです。
文才は上達していない気がしますがw
それでは101話です。
「――さて、遊弥くん? 何か申し開きはあるかしら?」
「いえ、ございません」
どこから取り出したかわからないハリセンをパンッ、と手で叩いて高圧的に問いかけてくる絵里に地べたに正座している俺は首を振った。
返答を間違えれば間違いなく死が待っている。もちろん、社会的な。
「まったく……追いかけてきて正解だったわ」
「A-RISEの綺羅つばさが男の子にお尻ペンペンされてたなんて、私たち以外に見られたらとんでもないことになっとってたで」
「すみません。怒りに任せてつい……」
睨んでいる二つの目から逃れるようにちらりと、つばさの様子を見る。
「遊弥が…私のお尻をペンペン、って……恥ずかしかったのに、気持ちよくて……ああ、こんなの初めて……」
何を言っているのかはわからないけど、ちょっと、いや、大分トリップしていた。
その姿を見て、愛華も同じようになっていたのを思い出す。
俺の右手には何か秘めた力があるのかもしれない。
「遊弥くん?」
「はい、すみません」
右手をニギニギしていると、絵里に窘められる。
スマホを取り戻して件の写真を見られてないからこそ、このぐらいのお叱りで済んでいるんだけど、見られていたらこの程度では済まなかった。
下手したらみんなから何をされるのかわかったもんじゃない。
「はぁ…とりあえずUTXに戻るわよ。遊弥くん、覚悟しておいてね」
「遊弥くん。一体つばさに何をしたんだ?」
「つばさがこんなになっているなんてなかなかないわよ?」
「本人のために聞かないでおいてあげてくれ」
「それに君もなんで縛られているんだ? そのボードを見ればわかるが」
「それも聞かないでくれ……」
くそう、絵里め。俺がつばさに何をしたかみんなに全部話しやがった。
皆から絶対零度の視線を受けながら絵里に続き海未にももの凄くお説教された上、私は女の子にひどいことをしました、というホワイトボードを首にかけられている。
「ほら、つばさ。あなたもそろそろしっかりして」
「――はっ、私は一体……? ここはUTX?」
あんじゅがつばさの体を揺さぶり声をかけたことでようやく正気に戻る。しかし、UTXまでの道のりのことは全然覚えてはいなかったようだ。すげえな。
「ほらいつまで呆けているんだ。遊弥くんを通じてμ'sと会う話をしたのはつばさだろう?」
「あ、え、ええ。そうね。ちょっとだけ取り乱したわ」
「ちょっとだけ…?」
先ほどまでの様子を見て、穂乃果がそう呟いた。
誰もがそう思うけど、元凶の俺はもちろんこれ以上突っ込んだら話が進まないのは誰もがわかっていたので、スルーする。
「こほん――改めて、UTX高校へようこそ。こうして会えて嬉しいわμ'sの皆さん。初めて会ったときはいろいろとバタバタしてたから」
そう。なんだかんだでことり以外は俺の監禁事件の時に初めて顔を合わせた。あの時はお互いにゆっくり自己紹介する時間もなかったのだ。
「やっぱり映像で見るより本物の方が、ずっと魅力的だわ」
「私たちのこと、知っていたんですか?」
「ええ。高坂穂乃果さん、南ことりさん、園田海未さん、遊弥の四人で始めた時から」
「そんなときから、わたしたちのことを……」
「同じ地区にできたスクールアイドルだし気になってたし、注目していたのよ。遊弥くんはあまり教えてくれなかったし」
「まあ彼の警戒心はもっともだが、一度顔を合わせてみたかったんだよ。本当はもっと早くにコンタクト取るつもりだったが、つばさが言っていたようにタイミングが合わなくてな」
「それは悪かったよ」
「責めているわけじゃないわ、事情もちゃんと聞いたし。それにそのことがあったからこそ今ではより結束力が強まっているって感じてる。これだけのメンバーが一つにまとまるなんてそうないもの」
だからこそ、とつばさは皆を一瞥する。
「応援もしていたし――負けたくないって思ってる」
……さすがというべきか、こういうところはしっかりとプライドを持っている。
あんじゅと英玲奈も同じ想いのようで言葉にせずとも表情が物語っていた。
「前回大会優勝のグループが何を言っているんだか」
「ずいぶんと意地悪なこと言うわね遊弥」
「私たちの言いたいことわかっているでしょう、遊弥くん」
「……」
わかっているからこそ、こっちとしてはやり辛いのだ。
油断しておらず、万全の態勢を整えている敵を陥落させるのは並大抵のことではできないのだから。
「私たちは順位ではなく、ライブに来てくれた人たち、見てくれる人たちをどれだけ喜ばせることができるか"を一番重要にしている」
彼女たちにとってラブライブは二の次。その優勝は副次的なものでしかない。
決してラブライブを貶めたり、馬鹿にしているわけではない。
彼女たちが一番重きを置いていることに全力で取り組んだ結果が、A-RISEのあの人気であり、ラブライブの優勝なのだ。
「正直つばさたちのスタンスはなんだっていいんだが」
「あら、ずいぶんと素っ気ないじゃない」
「アイドルに限らず、"芸"をしている人間の目標を考えていたらキリがない」
伝統の存続、自己の表現、お金、観客を楽しませたい――各々に目標があり、その実現のためにそれぞれが自分のやりたい"芸"を始め、極めようと努力するのだ。
つばさたちも俺の言っていることがどういうことか伝わったようで、それ以上突っ込んでは来なかった。
「今日の目的はつばさたちの意図を聞くためだからな。それで、どうしてμ'sに声をかけたんだ? 普通は他校の人間に自分の学園を使わせるなんてことしないと思うけど。てか、そもそも許可が下りるのか?」
「特に理由はないわよ?」
――はい?
つばさの答えに俺は面食らってしまった。
「強いて言えば遊弥が困っていたから提案してみたぐらいかしら?」
「高校としての許可は?」
「たぶん大丈夫よ。μ'sがUTXでライブしてくれることへの話題性を考えれば頷くと思うわ」
「抜け目ないからねぇ、あの学校長も」
「まず問題ないだろう」
本当にさすがというか、ここまで大きくなったのもこういう強かさがあったからなのだろう。見習うところだ。
「あとはμ'sのみんなの意思次第――どんなことがあろうと、私たちは負けないから」
『――っ!』
つばさは視線をみんなに移す。
「まだ数日ほど猶予はあるわ。だからゆっくりと考えてみて――」
「――やります!!」
『えぇーーー!!?』
彼女の言葉をさえぎって即答した穂乃果に、他のみんなが声を上げた。
俺は口元を上げて、穂乃果に問いかける。
「いいのか穂乃果、そんな即答して?」
「だって、UTX高校の屋上でライブなんてそうそうできないと思うから」
それに、と穂乃果は付け加えた上でつばさたちに言い放った。
「私たちも負けませんから!」
穂乃果の宣言を受けたつばさたちは一瞬呆けていたが、好戦的な笑みを浮かべた。
「ふふっ、ライブ楽しみにしているわ。今日はお話できてよかった」
立ち上がり、その場を後にしようとするつばさたち。
するとつばさは何かを思い出したように立ち止まり振り向いた。
「遊弥」
「? どうした?」
そう返すも、
「このライブが終わった後のデートも、楽しみにしているわ」
「「「「「「「「はぁーー!!?」」」」」」」」
「つばささんと、デート……? 遊弥くんが……?」
「ちょ、おま――」
「約束したじゃない。それとも、また忘れたのかしら?」
「いや、そうじゃないけど! 場所をこの場にいる人間を考えてから言えよ!」
そんな話をしたら、当然――
「遊弥?」
「ゆーくん?」
「ゆうくん?」
「この後どうなるかぐらい、わかるだろ……」
「さあ、なんのことかしら? 私にはわからないわ」
こいつ、小悪魔じゃない。悪魔のような顔をしてやがる。
「そろそろお暇しよっか、ゆうくん。話聞かせてね?」
「そうですね。いつまでも他校に居座っては迷惑が掛かりますから」
「ことりも。おやつの時間があるから」
だらだらと冷や汗と悪寒が止まらない。この場にいることで命の危険を感じる。
「――さらば!!」
「「「逃がさない!!」」」
「遊くんを捕まえるにゃ!」
「今回ばかりは許せません! ゆうやくん!!」
「その通りよ花陽! 綺羅つばさとデートだなんて、そんなうらやまけしからんわ!!」
「はぁ、くだらない」
「と言いつつ不満げやね、真姫ちゃん?」
「あら。そういう希こそいつもの笑みができてないわよ――とりあえず、遊弥を捕まえないとね」
「そうやね。えりちも――えりち?」
「えっ? あ、ええ。追いかけましょう。それじゃあ、お邪魔しました」
「ええ。また」
「ばいばーい」
「ライブ、楽しみにしている」
挨拶をして一礼する絵里に手を振るつばさたち。
9対1の秋葉原での鬼ごっこが始まるのだった。結果とどうなったかは、言うまでもないだろう。
いかがでしたでしょうか?
ではまた次回をお楽しみに。