やあ、元気かい? 燕尾だよん♪
二週間ぶりの投稿、十三話目です。
朝練を終えてから、三人の機嫌が戻ることはなかった。現に、
「なあ――」
「……海未ちゃん、ことりちゃん。いこ」
「はい」「うん」
昼休み、声をかけてもそっぽ向いてどこかへ行ってしまう穂乃果たち。
「ありゃりゃ、君の幼馴染は随分とご立腹のようだね」
一人取り残された俺に近寄る人影。
「ああ、ヒフミ達か……」
「そのまとめ方はちょっとどうかと思うんだけど……!?」
だって、そっちのほうが呼びやすいからな。
「それで、穂乃果ちゃんたちはどうしてあそこまで怒ってるの?」
「正直俺もわからん。まあ、幼馴染が不埒なことをしているって思ったんだろうなあ……」
「え、なに? 不埒なことしたの、遊弥君?」
「いや、本当にやるわけがないだろう!?」
疑いの目を向けてくるヒフミたちに俺は慌ててしまう。
「なら、話を聞かせてもらえるかな?」
尋問するような雰囲気を纏って言うヒデコ。逆らえるはずもなく俺は洗いざらい吐いた。
「あ~……なるほどねえ。それで穂乃果ちゃんたちが怒ってしまったと」
今朝のあらましを説明すること数分、三人はなるほど納得といった顔だった。そして、
「有罪だね」
「うん。ギルティだよ」
「同情の余地が一切ないね」
「なんでだよ!?」
揃って同じ判決を下すヒフミたちにさすがの俺もつっこんでしまった。
「いや、まあ、外から見たらそう捉えられても仕方がないけど、そこで穂乃果たちがすごい怒っているのがよくわからなくてな……」
そう言う俺に三人はびっくりした表情を浮かべ集まって内緒話を始める。
「分からないときましたか……」
「本当に気づいていないみたいだね、これは」
「さすがに、というか、穂乃果ちゃんたちが
ヒフミたちは呆れたような視線を俺に投げかけ、ため息をつく。そして、もういいや。という風に俺から離れていく。
「あれ? ヒデコ、フミコ、ミカ? 何でため息つきながら離れていく? おーい!?」
見捨てられた俺は一人ポツンと佇んでしまう。
「しょうがない、一人で食べるか――できれば静かなところで」
転入して数日、まだもの珍しさが抜けないのか。教室の中からも外からも視線を感じる。
「普通に話しかけてくれれば良いのになあ……」
俺は弁当を持って避難するように、教室から出て行った。
「さて、どこに行こうか――」
逃げるように教室からでたは良いものの、どこに行くかは決まっていなかった。
適当にぶらついていくなかで何か耳に入ってくる。
音のするほうへ近づくとそれが何か段々分かってくる。
発生源の教室のプレートには音楽室と書かれていた。中からはピアノの音と綺麗な歌声が聞こえてくる。
「これは、自作か?」
多少、音楽に通じているところもあるので分かる。今弾き語りしているのはあの子が一から作り出した曲だろう。
「だとしたら、あの子が穂乃果の言っていた
場から離れようとした瞬間、ギシついた音が鳴り響いた。
「誰!?」
さすがに気づいたのか、中の
もうここで逃げるよりは素直に話したほうが良いだろう。
「すまないな、音が聞こえたから気になってきたら君がいたんだ」
「あなたは……萩野先輩……ですよね?」
「あってるよ、そう言う君は一年生か」
「ええ、西木野真姫……です」
「西木野?」
彼女の苗字に聞き覚えがあった。昔、爺さんに連れて行かれたことのある病院。そこの名前が確か西木野病院。ということは彼女は――
「西木野先生の
「パパのことを知ってる――んですか?」
「ああ、昔世話になってね。あと、敬語じゃなくていいよ。喋り辛そうだし」
「そう。ならお言葉に甘えるわね」
うん、フランクのほうが本来の彼女らしい。
「改めて、萩野遊弥だ。訳あってこの学院に共学の試験生として通っている。ここで会ったのも何かの縁。よろしくな」
「ええ……よろしく」
ぎこちないながらも、ちゃんと返してくれる西木野さん。
どうやら彼女は人付き合いはあまり得意ではないが受け答えはしっかりするツンデレタイプみたいだ。
じっと西木野さんを観察していると、彼女は不機嫌そうに言った。
「なに? 私の顔をずっと見て。何かついてる?」
「いや、なんでもないよ。それにしても西木野さん。音楽、やっているのか?」
視線をピアノに向ける。最初こそ西木野さんはピアノを見ていたが、やがて気まずそうに逸らした。
どうやら訳有りのようだ。あまり詮索しないほうがいいのだろう。
「どうしてそんなこと」
「まあ、俺も趣味で色々音楽に触ってるんだよ。あと最近、作曲が出来そうな子が居ないか探しててね」
西木野さんが目を開く。どうやら当たっていたのだろう。恐る恐る、といったように西木野さんが聞いてくる。
「まさか、高坂先輩の知り合いですか?」
なかなか鋭い娘だ、うん。その通りだよ。
「幼馴染だよ。ここ数年ご無沙汰だったけど」
「まさか、あなたも――?」
俺の答えに西木野さんはわかりやすいほど警戒し始めた。
「ああ、勘違いしないでくれ。俺がここに来たのは単なる偶然。その件に関してもやってほしいとは思っても強要はしないよ。そんなことしたところで良いものなんて出来ないからね」
「ならいいわ――というか、先輩が作曲やればいいじゃない」
当然の言葉に俺は自分の情けなさに嘆息してしまう。
「そう出来たら良いんだけどな。趣味で
「出来ないとは、言わないのね?」
「時間があればできるよ。でも今回は時間がなさすぎるんだよ」
俺が作ることも考えて、歌詞が出来上がるまでの間、作曲について色々と調べて勉強はしている。
ただ歌詞ができ、曲ができても、練習の時間がなくなればアウトだ。色々加味しても時間内にできそうにない。
「だから、できる子を探していたんだよ」
「悪いけど、私はしないわ――私の音楽は終わっているもの」
納得したくないけどしなければならない。諦めのような言い方をする西木野さん。
「もし高坂先輩が私を諦めていないようだったら、先輩から言い聞かせてくれないかしら。はっきり言うと迷惑しているの」
西木野さんの完全なる拒絶。俺が言うのは簡単だが――
「悪いけどそれはできないなー」
「どうして? 強要しないんじゃなかったの?」
西木野さんは俺を睨む。おお、怖い怖い。
「いや、できないというより言ったところで聞かないんだよ」
「は?」
「いつでも自分のやりたい事に直向で、周りを巻き込んでいるのも知らずに猛ダッシュで突っ走るんだよ、
自分に素直すぎるというか、一度走り出したら止まらないというか、迷惑極まりないことこの上ないことはある。でも――
「――でも、だからこそ、輝いているんだ」
「なにそれ、意味わかんない……」
「たぶん今日穂乃果は
「私が心変わりしないで受けないって言ったらどうするの?」
「俺がなんとしてでも完成させる。穂乃果にも
それが本当のことだと感じ取った西木野さんは黙ってしまう。
「じゃあ、邪魔して悪かったね。俺はこれで失礼するよ」
これ以上話すると踏み込みすぎるだろう。でも、これだけ言っておこう。
「ああ、あと歌ってる姿、綺麗だったよ――音楽辞めるのが惜しいって思うくらいに」
「はっ!?」
「それじゃ」
俺は手をヒラヒラさせながら音楽室を出る。
中から、イミワカンナイ! という怒声が響いたらしいが、防音加工されていたため俺にはよく聞こえなかった。
いかがでしたでしょーかっ
これからもがんばって投稿します。
感想、評価など頂けたら嬉しいです。
ではまた次回に。