ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です。

二十四話目です。





私たちは……

 

「遊弥君、ちょっといいかしら――」

 

昼休み、穂乃果たちといつもどおり中庭で昼食をとってる俺の元に絵里先輩がやってきた。

 

「「「むっ……」」」

 

俺が指名されたことに顔をしかめる穂乃果たち。そんな幼馴染たちを置いておいて俺は尋ねる。

 

「絵里先輩? どうしたんですか?」

 

「話したいことがあるの。ついて来てくれるかしら」

 

「ここじゃ言えない事ですか?」

 

俺の問いかけに絵里先輩はコクリと頷く。そう言われたらついていくほか無い。

俺は膨れっ面の穂乃果たちに一言謝って、絵里先輩の後を追う。絵里先輩は人の気配がない校舎裏まで来たところで足を止める。

 

「それで話したいことって、なんですか?」

 

俺が聞くと絵里先輩は一息はいた後、

 

「――あの子達の活動をやめてさせてほしいの。それと、あなたもあの子達に手を貸すのはやめて」

 

いまの俺――いや、穂乃果たちには受け入れられないことを言った。もちろん冗談ではない。絵里先輩の目は真剣そのものだった。

俺と絵里先輩の間に緊張した空気が張り詰める。

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

 

「私はスクールアイドルの活動なんて逆効果だと思ってる。いまのあの子達がそのまま当日を迎えるならなおさらね」

 

「当たり前ですけど当日をいい物にするためにいまがあるんですけど」

 

「いまだにダンスの練習すらしていない今の状況からどうやって当日につなげるのかしら」

 

それを言われると耳が痛い。今日まで穂乃果たちがやっていたことといえば体力づくりだけ。曲がまだない今、歌も踊りも練習できていない。

それでも曲は今日完成する予定だからダンスの練習は明日から。

そして本番は明日から数えて三週間ぐらい。振り付けを考えるのに一週間と考えると残りの二週間で形にしなければならない。それもただ踊るのではなく、歌いながら踊るのだ。

振り付けと同時進行で踊りの練習をすれば時間短縮にはなるが、初めての試みとしては圧倒的に時間が足りないのは明白だった。

 

「私もこの音ノ木坂学院をなくしたくはない。だからこそ、軽く考えてほしくないの」

 

真剣な眼差しが俺に突き刺さる。だけどその目はどこか焦りがあった。そのことに俺は違和感を覚えてしまう。

 

「これで当日駄目でした、なんてことになったら他の子達はどう思うかしら」

 

絵里先輩はなんでこんなにも否定的なんだろうか。なぜリスクしか考えられないのだろう。どうして穂乃果たちを認めようとしないのだろう。

俺はどうしても絵里先輩が穂乃果たちを見る姿が共学を認めなかった教員たちの姿とかぶってしまう。

絵里先輩に穂乃果たちを認めない理由があるとしたら、それはおそらく個人的な理由だ。そのことに俺は少しばかり腹が立った。

 

「だから、取り返しのつかなくなる前に――」

 

「もう何やっても失うものなんてありはしませんよ。もう末期なんですよこの学校は」

 

思っていた以上に声が低くなる。その一言で絵里先輩は言いかけていた言葉を引っ込め、怪訝そうにした。

 

「……どういうことかしら」

 

「俺なんて異分子(男子生徒)を入れた時点で音ノ木坂学院はどんな結果も受け入れる覚悟を決めてるんですよ」

 

成功も失敗も受け入れる。どうなるかはわからないただの博打。雛さんは最後の賭けとして俺を試験生として招き入れたのだ。

 

「誰が何をやっても賭けるものはこの学院。失敗したってこのまま手を(こまね)いていたって結果は変わりません。なら、可能性があるものなら何でも試すしかないでしょう?」

 

「それはそうかもしれないけど、スクールアイドルなんて成功するはずないわ。失敗することをわざわざさせるわけないでしょう」

 

「どうして絵里先輩は断言できるんですか。未来予知でも出来るんですか?」

 

「そ、それは……」

 

「違いますよね。絵里先輩の物差しです。それを押し付けるのはよくないですよ」

 

苦虫を噛み潰したような顔をする絵里先輩。自覚があるからこその表情なのだろう。

やはり、絵里先輩にはそういえるだけのものがあるってことか。

まあ、それを考えるのはまた今度だ。いまの俺にはそこまでの余裕がない。

 

「それでも、私は……」

 

「話は終わりですか? それなら俺はこれで失礼します」

 

「あ……」

 

絵里先輩の寂しそうな声と共に彼女が手を伸ばした気配がする。だけど、俺がその手を掴むことはできない。いまの俺と絵里先輩は立ち位置が違う。

 

「一つ忠告しておきます。認めないのは勝手ですけど、生徒会長の立場を使って穂乃果たちの活動を妨げるようなら、俺は絵里先輩のことを許せなくなるでしょうね。それだけは忘れないでください」

 

それだけを言い残して俺は穂乃果たちへの元へと戻る。

 

「あなたはまた……私から離れていくのね……」

 

絵里先輩が小さな声で呟いていたが、俺にはどういう意味かはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊くん、海未ちゃん、ことりちゃん!!」

 

放課後、ホームルームが終わった直後ダッシュで教室から出て行った穂乃果が一つの紙折を持って戻ってくる。

 

「あったよ! 一枚だけだけど!!」

 

主語やらなにやら抜けていて最初何のことだかわからなかったが、すぐに理解した。昨日設置したグループ名募集の紙だろう。

 

「昨日の今日で、早いな」

 

「早速見てみましょう!」

 

俺たちは紙を持っている穂乃果の周りに集まる。

穂乃果は真剣な面持ちで、ゆっくりと折られた紙を開いていく。

 

「えーっと、これは……ユーズ?」

 

穂乃果は首をかしげながら読み上げる。だが、その読み方は間違いだ。

 

 

「違うぞ穂乃果、これはμ(ミュー)っていうギリシャ文字だ。だから読み方としてはμ's(ミューズ)だな」

 

「ミューズ? それって薬用石鹸の?」

 

「ちがいます。確かミューズはギリシャ神話で芸術や文芸を司る九人の女神たちのことだったはずです」

 

「その通り。ちなみにミューズっていうのはイギリスやフランスの言い方でギリシャではムーサっていうんだ」

 

「μ's……ミューズかあ……うん! いいと思う!!」

 

穂乃果は噛み締めるようにそして元気よく頷いた。

 

「わたしも良いと思う。好きだな、そのフレーズ」

 

「ええ、今までの中で一番良いのではないでしょうか」

 

ことりも海未も賛成のようだ。俺も別に反対する理由はない。俺たちが考えたものよりしっくり来る。

 

「うん、今日から私たちは"μ's"だ!」

 

気合を入れるような穂乃果の言葉にことりや海未は頷く。

しかし、俺には気になることがあった。

 

「九人、ね……」

 

ギリシャ神話ででてくる芸術や文芸を司るミューズは全部で九柱。女神という部分だけを強調したいなら他にも名前は色々とあったはず。

だけど、もしすべてに意味があるのだとしたら――

 

「考えすぎだな」

 

偶然だ。たまたまその人がしっくり来たのがミューズだっただけなのだろう。そもそも、グループ名だけでそこまで考えている人はいない。

 

「? どうしたの、遊くん?」

 

「なんでもない、それじゃあ、練習頑張ってくれ」

 

「ええっ? 今日もなの!?」

 

ぷくーっと頬を膨らませて文句を言う穂乃果に俺はプラプラと手を振って教室を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西木野さんのところへ向かう道中、穂乃果が貼ったポスターを眺める女の子の姿が見えた。俺はポスターを見ているその女の子に声をかける。

 

「興味あるのかい?」

 

「うひゃあっ!?」

 

しまった。声のかけ方を間違えた……後ろから突然だったら、そりゃ驚くよな。

眼鏡をかけた女の子は何事かと俺のほうを見て、あっ、と声を洩らす。

 

「あなたは……は、萩野遊弥……先輩?」

 

「ああ、あってるよ。ごめんな、いきなり声かけて。真剣にポスターを見てたもんだから、つい」

 

「い、いえ、大丈夫です。私も驚きすぎました……あ、すみません。私は、こ、小泉、花陽です……」

 

小泉さんは緊張しているのか声が震えていた。

 

「小泉さんね、よろしく――それで、熱心にポスターを見ていたみたいだけど興味あるのかい?」

 

「あ……それは……はい、好きなんです、アイドル……」

 

出来るだけ柔らかい声で聞いたのだけれど、小泉さんの緊張は解けない。軽く口篭(くちごも)らせた後、小さく頷くだけだった。

 

「へえ、やってみたいとか、そういうのはあるのか?」

 

「ええ!? そんな、私みたいなのが恐れ多いです!!」

 

一転して声を荒げる小泉さん。俺は思わず仰け反ってしまう。

 

「おおう……別にそんな卑下するようなこと言わなくてもいいと思うけど。小泉さん見たいにアイドルが好きな気持ちがあればステージでも映えると思うよ」

 

「ふえぇ!? そ、そんなこと絶対ないです!」

 

小泉さんは慌てたように首をと手をぶんぶんと振る。やっぱり奥手な子のようだ。

 

「まあ、興味があるなら当日ぜひ見に来てくれ。きっとあいつらも喜ぶだろうし」

 

「えっと……はい……」

 

何か聞きたそうな間があったが、小泉さんが聞いてこないので踏み込むようなことはしない。

 

「それじゃあ、また」

 

手を挙げ、小泉さんに背を向けて歩き始める。

 

「あ、あの!」

 

すると、今までとは違ったはっきりとした声が俺を呼び止める。

俺が振り返るとまたもや緊張したような面持ちになる小泉さんだったが、

 

「その……頑張ってください!」

 

真っ直ぐな言葉をかけてくる小泉さんに俺は笑顔を向けた。

 

「ありがとう、穂乃果たちに伝えておくよ」

 

そして、今度こそ俺と小泉さんは別れた。

紆余曲折経て西木野さんのところに着いたらまたしても彼女に遅いと怒られたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Hanayo side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萩野先輩の姿が見えなくなるまで私は先輩の背中を見つめていた。

この学校唯一の男子学生にして、先日スクールアイドルを結成した人達と親しげに話していた人。

 

「どんな関係なんだろう……名前で呼んでいたし……」

 

私は少し勘繰(かんぐ)ってしまう。余程、仲が良いんだろうとは思う。でないと名前でなんか呼びはしない。

 

「聞いた? うちの学校でもスクールアイドルが出来たんだって!」

 

「知ってる! あの萩野君も手伝ってるらしいよ?」

 

「最近は屋上で練習してるみたいだよ? 頑張ってほしいね」

 

廊下を歩くほかの生徒からはそんな声が聞こえる。

 

「いいなぁ……」

 

つい、そんな言葉を洩らしてしまう。控えめな性格の自分にはアイドルが好きでも一歩踏み出して、やろう、という勇気がない。

だからこそ羨ましかった。やる勇気を出した彼女たちに。そして自分たちの活動を支えてくれる人がいるということに。

 

「ふっふっふっ……かーよちーん……」

 

「どっひゃあ!?」

 

にゅるり、と後ろから肩を抑えてきた人物に私は声を上げてしまう。振り向けばそこには私の幼馴染がいた。

 

「り、凛ちゃん……」

 

「一緒に帰ろー、かよちん」

 

「う、うん……というか、それだけだったら普通に声かけてよぉ~」

 

恨めしそうな私の声に凛ちゃんはニヤリと不適に笑い、

 

「いや~、だってかよちん、珍しく男の人と仲良く話してたから、邪魔するのも悪いと思ったんだにゃ~」

 

もしかして好きなのかにゃ? と聞いてくる凛ちゃんにわたしは全力で首を横に振った。

 

「そそそそそんなことないよ!? だって、今日初めて会ったんだし!」

 

「焦ってるのが余計に怪しいにゃ~、それにあの、萩野先輩? と話してるときのかよちんなんか楽しそうだったし」

 

「違うから! 恥ずかしかっただけだよぉ~!」

 

そうは言いつつ最後に見た萩野先輩の笑顔を思い出すと顔が焼けたように熱かった。

昔から男の人は怖くていつも凛ちゃんの後ろに隠れていたのに先輩とは緊張はしても怖いとはまったく思わなかった。どうしてか、安心感があった。

 

「むっふっふ……ついにかよちんにも春が来たのかにゃー?」

 

「もう、凛ちゃん!!」

 

しばらく凛ちゃんにからかわれながら一緒に帰り道を歩むのだった。

 

 

 

 





いかがでしたでしょうか。

後数話、あと数話でファーストライブにつなげます!!


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