ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です。

二十五話目です。





前日

 

 

「――どうだ?」

 

「……いいと思う」

 

「それはどうも」

 

短い言葉の中にどれだけの意味が込められているのかがわかった俺は礼を言う。

 

「だけど――」

 

しかし、西木野さんはおもむろに立ち上がり、かばんの中を(あさ)る。そして、白い布のようなシートを手に持って、

 

「うっ!?」

 

いきなり俺の顔――特に目の辺りを拭き始めた。ひんやりとした感触は気持ち良いものだが、視界を塞がれた俺は焦る。

 

「ちょ、西木野さん!?」

 

頭を抑えられて動くことの出来ない俺はいい様にされてしまう。そして、視界が開いたとき、西木野さんのもの凄い不機嫌な顔が目の前にあった。

 

「え、えーっと……」

原因がわかっている俺はやはり目を逸らしてしまう。少し芸がなさ過ぎるのではないだろうか、俺。

我慢の限界といわんばかりに西木野さんは俺の両頬を引っ張る。

 

「あ・な・た・ね! 無理をしては駄目って何度言えばわかるのよ!」

 

ごへんにゃひゃい(ごめんなさい)! すひはへん(すみません)!!」

 

「だいたい、なんでまた徹夜してるわけ!? ホントに意味わかんないんだけど!!」

 

希先輩から借りたファンデーションで昨日より濃くなった隈を隠していたのだが、本当にどういうわけか、西木野さんにはバレていた。

 

ほれは(それは)はるへいどふふへたほうがいいとおほって(ある程度進めたほうがいいとおもって)!」

 

「なに言ってるのか分からないんだけど!」

 

りふひんだ(理不尽だ)!!」

 

結局、反論できないまま頬を捏ね繰りまわされる。

十数分の説教を受けてようやく西木野さんの手から解放された俺は労るようにつねられた頬を撫でる。

 

「最近、遠慮がなくなったよな。西木野さん」

 

嫌味を込めて言う俺だったが、西木野さんは気にもしないように、

 

「あなたに遠慮なんてしても意味がないもの」

 

「少しぐらいは意味あるだろう。ほら一応これでも年上なんだし」

 

「だったら、少しは話を聞いたらどうかしら。先輩より小さい子達のほうが忠告を素直に受け取ってると思うのだけれど?」

 

余裕を持って辛辣に返される。そんなこといわれるとなんだか俺が説教を受けて拗ねている子供みたいに思えてきた。だが、ここで折れるわけには行かない!

 

「子供ならいざ知らず、大人には無理してでもやらないといけないことがあるんだよ」

 

「先輩は高校生じゃない。子供よ」

 

「ごめんなさい、もう許してください」

 

俺の体力はもうゼロよ。

いまの俺では、というよりこれから先、西木野さんには永劫(えいごう)勝てないような気がする。

そんなことを思いながら西木野さんと細かい修正などを加えて曲を完成させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の放課後。誰もいない屋上に俺たちは集まって一つのパソコンを囲んでいた。

 

「――それじゃあ、いくよ」

 

緊張した表情で穂乃果がパソコンにCDをセットする。"START DASH!!"と書かれたCDの中には一つの音楽ファイル。昨日俺と西木野さんで完成させた"μ's"のための曲だ。

海未やことりも真剣な眼差しで画面を注視する。そして曲が流れ始めた。

穂乃果たちは一音一音、聞き逃すことがないように集中している。すると、曲の途中で画面に一つのポップが出てくる。それは先日俺が登録したスクールアイドルのランキングサイトだった。

そこには"μ's"の名前とランク999、それとcongratulations! の文字。

それを指すこととは――

 

「一票、入りました……」

 

そう、誰かが"μ's"を応援してくれると票を入れてくれたのだ。そして、その票を入れたのはもう誰だかわかっている。

俺は穂乃果たちに気づかれないように給水塔付近に立っている赤毛の彼女の方を見て笑みを浮べる。彼女もふっと微笑んで、

 

「(――ありがとう)」

 

「(――頑張りなさいよね)」

 

お互い視線だけの短い会話。そして彼女は屋上を後にする。

俺は歌に聞き入っている穂乃果に声をかける。

 

「ようやく始まりだな」

 

「うん……」

 

穂乃果は感慨深そうに頷いて、立ち上がった。

 

「さあ、練習しよう!」

 

「「うん!」」

 

穂乃果の言葉にことりも海未も立ち上がる。

やる気十分の三人を見て俺もふっと笑った。

 

「それじゃあ、今日から本格的な身体づくりをするぞ」

 

「「「え゛っ?」」」

 

俺の一言に三人は石像のように固まった。だが、俺はお構い無しに続ける。

 

「穂乃果もことりも体力はある程度ついた。だから今度からは歌って踊れるような身体に近づける」

 

「それって……体幹トレーニングとかじゃなかったの……?」

 

声を震わして聞いてくる穂乃果。

 

「それもあるけどあくまで基盤づくりだ。他にもまだまだやらないといけないことがある。だから言ったろ――」

 

 

――ようやく始まりだって。

 

 

笑ってそういう俺に穂乃果たちは顔を真っ青にする。

 

「安心しろ、死にはしない――いまの穂乃果たちには死ぬのほどきついと思うけど」

 

「安心できないよ、遊くん!?」

 

「そうです、無理なトレーニングは身体を壊すって遊弥自身が言っていたじゃありませんか!!」

 

「大丈夫だ。変な癖がついたり身体が壊れるような練習なんかじゃないから」

 

「そういう問題じゃないよ、ゆーくん!」

 

「ほらー、練習するんだろ? 時間は有限だぞ~」

 

「「「鬼――――!!!」」」

 

校舎全体に響いたと思うほどの穂乃果たちの絶叫が空に溶け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲ができてからというもの、踊るための身体作りや体力づくり、ボイストレーニング、振り付けを考えながらのダンス練習であっという間に三週間が過ぎ去っていった。

その間にも当然何度か問題が浮き彫りになっていた。例えば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり無理です!」

 

「大丈夫だって、海未ちゃん。練習のときだって歌やダンスできてたじゃん!」

 

「練習のときは大丈夫なんです。けど、人前だと思ったら……!!」

 

 

人前に出て歌や踊りを披露することを考えた海未が挫けそうになったり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!」

 

「っ!?」

 

「わぁ! 可愛い! 本物のアイドルみたい!! すごい、すごいよことりちゃん!!」

 

「ほんと? 本物ってわけにはいかないけど、なるべくそれに近く見えるようにしたつもりだよ」

 

「……ことり。そのスカート丈は一体……?」

 

「えっ? あ……」

 

衣装のスカート丈で海未と一悶着あったり色々と、本当に色々と、忙しい三週間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あれ? ここ最近のトラブルって海未が原因?」

 

「? どうかしましたか、遊弥?」

 

「いや……なんでもない」

 

首を傾ける海未に俺は横に振って誤魔化す。

ライブ前日の夜。俺たちは願掛けを含めて神田明神へと来ていた。

三人は一礼して拍手を二回打つ。俺はその後ろでそっと手を合わせる。

 

「どうか、ライブが成功しますように――いや、大成功しますように!!」

 

「緊張しませんように……」

 

「皆が楽しんでくれますように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――どうか、明日のライブが穂乃果たちにとって良いものとなりますように

 

三人が願う中、俺は声に出さず祈るように目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして、いよいよライブの日がやってくる。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?

ファーストライブが終わるまですごい長いですが、大丈夫!

ラノベでいえば一巻分ぐらいですから!!

ではまた次回にお会いしましょう!

ではでは~


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