ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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お久しぶりです。
なかなか更新できずすみません

第三話目です。楽しんでもらえたらなと思います。


いったい何をされるのか……

 

 

 

 

 

 

 

――side Eri――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私こっちだから、次は学校でね」

 

「はい、今日は本当にありがとうございました、また学校で」

 

遊弥君はぺこりと一礼して自分の家へと歩みを進める。私はその背中が消えるまでずっと眺めていた。

 

「遊弥君――」

 

私は彼の名をそっと呟く。

 

共学化のテスト生の資料を理事長から渡されたときは驚いた。まさかあの子が来るとは夢にも思わなかった。

 

音乃木坂学院に来たのは、萩野遊弥君。

 

日本で初めてできた、気の置けない私の友人――

 

「私のことを忘れちゃってたみたいだけど……」

 

顔を合わせたときの彼の反応にはちょっと、いや、かなりショックだった。

 

見ず知らずの、赤の他人に使うような言葉遣いや態度。

 

彼にとって私は数年経てば忘れられる、そのような存在だったのか。

 

そう思ったら、怒りよりも悲しみが溢れてきた。

 

でもそれは仕方の無いことだった。

 

彼は記憶を失っていたのだ。

 

遊弥君から話を聞いたときは言葉が出なかった。

 

私が卒業した直後、遊弥君は虐めの被害に遭い始めた。

 

最初は物を隠されたり、机に落書きされる程度のものだったらしいが、無視を決め込んだ彼に周りがヒートアップし、殴る、蹴るなどの暴力に発展していったという。

 

そして階段から突き落とされ、打ち所が悪く、記憶を失った。

 

だが、そのせいというべきか、そのおかげというべきか、それを境に遊弥君に対する虐めは終息した。

 

遊弥君を虐めていた人達は恐れたのだ。彼が記憶を取り戻し、すべてが白日の下に晒されることを。当たり前だ、これが事実ならば間違いなく警察沙汰だ。

 

だから黙っていたのだろう。自分たちが口を割らなければ決して真実が明るみに出ることはない――

 

そしてその人達のように学校側も同じことをした。

 

"虐めによる生徒の記憶喪失"――そんなことが広まれば世間が黙っていない。今後の学校運営にも影響を及ぼす。そんな事態に陥りたくない学校側は"事故による記憶喪失"として片を付けた。

 

こうして学校は本来大切にしなければならない生徒を犠牲にして、安寧を手に入れたのだ。信じられない話である。

 

遊弥君がそんな話の内容を知っているのも、彼に懇意的だった友人たちが知っていることを話してくれたからだという。

 

それに加え、遊弥君も少しずつではあるが記憶が戻ってきているらしい。そう遠くない未来に全部思い出すときが来るのではないかというのが本人の弁である。

 

「……それにしても、変わってなかったわね」

 

本当に変わっていない。顔や体格の話ではなく、性格――中身のことである。

 

記憶を失っても、遊弥君は昔のままだった。

 

明るく、どんなことがあっても前を向いて歩いていた。いじめの原因である私のことを一切恨むこともなく、優しさもあのときのままだった。

 

そんな彼が、あのまま大人になったらどうなるのだろうか、そんなことをふと考える。

 

「きっと魅力的な男性になること間違いないわね」

 

――って、こんな道端で何を口走っているのかしら私!? 落ち着きなさい、落ち着くのよ私……!

 

気持ちを落ち着けていると別れ際の彼の笑顔が脳裏を横切る。そのせいで、顔がまた熱くなる。

 

「~~~ッ!!」

 

だめ、もうだめだわ、早く家に帰って来週の予習をしよう。

 

それが最善の選択、と煩悩を振り払うがごとく、私は駆け足で家へと帰った。

 

しかし、気を紛らわそうとして始めた予習復習もぜんぜん集中できず、身につくことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――side Yuya――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

俺の声に誰かが反応するわけもなく家に寂しく響く。靴を脱ぎ、廊下を渡り、リビングへと入る。もちろんそこには人一人もいない。

 

バッグを置き、途中にあったコンビニで買った唐揚げ弁当を温めること約三分。ちょうどいい温度になった唐揚げを口に運ぶ。

 

普段は自炊するのだが、今日は思いのほか時間が遅かったため、コンビに弁当という手段をとった。それにたまにはこういうのも悪くはない。

 

「ご馳走様」

 

一人の無言の食事を済ました後、脱衣所へ向かう。

 

衣類を脱ぎ、洗濯機に洗濯洗剤と共に放り込んで作動させて風呂に入る。

 

男のサービスシーンは誰も望まないのでカット。

 

「ふぅ、さっぱりした――っんく、んっ」

 

風呂上り、冷えた麦茶が体内を潤す。

 

やっぱり風呂上りは麦茶だよね!

 

「――ふう」

 

俺は溜息をつく。

 

誰の反応もないのに一人でブツブツいうのも虚しいものである。

 

つい最近までは話しをする家族がいたから退屈しなかったが、一人暮らしをしてからは少しの物寂しさを感じる。これがホームシックというやつなのだろうか。

 

prrrrrr――――

 

すると、タイミングを見計らったように電話が鳴った。ディスプレイを見ると義姉の名前が表示されていた。

 

「もしもし?」

 

『もしもし、遊ちゃん? 元気してる――?』

 

「変わりはないよ、咲姉(さくねえ)。どうしたんだ?」

 

『どうしたって、別に用はなにも? ただ、弟の声が聞きたいなーって思っただけだよん』

 

明るい声で言う姉。本当に特別な用があって掛けてきたわけじゃなさそうだ。

 

「そっか。そっちの調子はどう? 咲姉は大丈夫だと思うけど、愛華(まなか)と爺さんは――」

 

『ん? あの二人は――『咲姉様(さくねえさま)! まさかその声兄様!? 兄様なのですか!?』『なぬ、遊弥じゃと!? 咲夜! わしに代わってくれ!!』――ああもう、二人ともうるさいよ。遊ちゃんと話がしたいなら自分で電話をかけなさい』

 

向こう側でギャアギャアと騒いでいる。義妹の愛華と爺さんだった。

 

ごめん咲姉、その二人の電話は来ないんだ。なぜなら――

 

『『兄様(遊弥)、私(わし)からの着信を拒否してるんですよ(じゃ)!』』

 

『…………はぁ、遊ちゃん?』

 

電話口で姉さんに窘められる。

 

仕方が無いんです。こちらに来てからというもの分刻みで二人から電話が来るものでしたから――

 

「だから咲姉、よろしく」

 

『いや、なにが「だから」なのかよくわからないんだけど……まぁ、いいよ』

 

流石我が義姉! 言葉が無くてもわかってくれるのは有り難い。

 

だがしかし、まだ続きがあった。

 

『その代わり、この借りは高くつくから覚悟しておいてよん♪』

 

「…………」

 

姉のひとことに冷や汗が止まらない。彼女の言うことはとんでもない形でいつか必ず実行されるのだ。

 

『へ・ん・じ・は?』

 

「わ、わかった……」

 

俺は震える声で返すことしか出来なかった。だが、姉は満足そうに頷いた。

 

『よろしい。それじゃあ、また今度連絡するね『さくねえ! 代わって、わたし兄様と話さないと』『咲夜! わしに、わしに代わるのじゃ!!』――二人ともいい加減にしなさい!!』

 

姉の怒号が響いた後、ぶつりと通話が切れる。俺は心の中で合掌した。これから数時間説教される義妹と養父に、そしてこれから苦労しそうな義姉に。

 

そんなことを考えていると次はポーンとLune(ルーン)通知が飛んできた。送り主は義姉。先ほど伝え忘れたことでもあるだろうか?

 

 

咲夜

そういえば穂乃果ちゃんたちに挨拶した? していないなら、ちゃんとしておきなさいね。

 

遊弥

学校で会ってから挨拶しに行くよ。サプライズってやつ(・ω・)b

 

咲夜

まったく遊ちゃんってばまたそんな悪戯を……

 

遊弥

悪戯じゃない、サプライズだ(`・ω・´)

それに、ここに来ることはちゃんと伝えてある。

 

遊弥

一週間程度遊びに行くって。

 

咲夜

……ほどほどにね、遊ちゃん。

 

遊弥

あれ、呆れてない? 咲姉呆れてる?

 

咲夜

おやすみ、遊ちゃん。

 

遊弥

咲姉? おーい、咲姉?

 

 

呼びかけても咲姉から返信がくることは無かった。

 

まあ、ふざけただけだからべつにいい。それよりもだ。

 

「会うのは2年ぶりくらいになるのか……」

 

小学生の頃に俺を救ってくれた幼馴染たち。彼女たちに会わなかったら、俺は今こうしていられなかった。恩人ともいえる子達。

 

「楽しみだ」

 

再開に思いを馳せて夜は更けていく。

 

 




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