ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です。
第三十三話目です。





一年生

 

 

 

 

 

――Maki side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――未練がある癖に何を言ってる

 

 

夜、自分の部屋でパソコンを開いていた私は夕方に先輩に言われたことを思い出す。

 

 

――何が決まっているだ、何が終わってるだ。物分りのいい風にして自分を誤魔化しているだけだろ

 

 

なによ……

 

 

――抗って、やり切って、それからだろ。諦めるのは

 

 

私のこと何も知らないくせに

 

 

――最初から逃げるなよ

 

 

私は逃げてなんか、いない……最初からそうするつもりだったわよ。この道も、音楽も……

 

 

暗闇の中光るディスプレイは彼女たちのライブを映し出していた。

泣きそうになって赤くなった目は痛々しさを感じる。だが、それでも笑顔を絶やさず、楽しそうに歌って踊る彼女たちに私は羨ましいと思っていた。

 

「私は――」

 

そして気づかぬうちに、私の意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、寝て休んだら少しは気分も晴れるだろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。

そして、もやもやを抱えて悩んでいる私を時間は待ってはくれず、学校での一日が終わろうとしている。

 

「それじゃあ、この一文を――小泉さん。読んでくれる?」

 

午後の最後の授業、国語の朗読に小泉さんが当てられる。

緊張した面持ちで教科書を持ち読み上げていく小泉さん。

 

「遠い山から――」

 

この前に当てられたときとは変わって周りにしっかり聞こえる声。透き通るような綺麗な声だった。

 

「――この一文が示す芳郎の気持ちは、一体なんだっ、っ!!」

 

台詞のところで気持ちが入り込んだのか、小泉さんは自分でも思ってもいなかっただろう大きな声が出た。

周りからクスクスと笑い声が上がる。先生に促されて、小泉さんは席に着く。

下らない。何がおかしかったのか、私には理解ができない。

 

「それじゃあ次は、佐藤さん。続きを読んで――」

 

「はい」

 

次に当てられた佐藤さんはスラスラと読み上げていく。

ちらりと小泉さんを見ると、彼女は落ち込んだように俯いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、いつもだと音楽室でピアノを弾いて帰るのだが、そんな気にもなれず私はフラフラと校舎を歩いている。

考えるのは昨日のことばかり。おかげで今日一日集中しできず、学校に来てもいないようなものだった。

やり場のない気持ちを持て余す。

 

「そうよ、これもあんなこと言ってきた先輩が――」

 

悪い、なんて言えなかった。私はため息を吐く。

 

「そんなの、お門違いよね」

 

先輩の言っていたことは正しい。私はただ怖くて逃げているだけ。そんな私を見抜いていて先輩はあえて厳しい言葉を投げつけてきたのだろう。

頭では理解できている。だけどあのときそれを認められずに怒りをぶつけた私はまだまだ子供だったということだろう。自己嫌悪でまたため息が出る。

目的もなくただ校舎を歩き回っているのも、何かを見つけられるかもしれないと思っているのかもしれない。

しかし、特別何か新しいことが見つかるわけもなく、ただただ時間が過ぎていくだけだった。

 

「はぁ……もう帰ろ……」

 

踵を返し教室へと戻る。気づかないうちに教室から結構離れたところまできていたようだ。

来た道を戻り、渡り廊下に差し掛かったとき、中庭で一人思いつめた顔をした見覚えのある顔を見かける。

 

「あれは――小泉さん? どうしてあんなところに……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Hanayo side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

私はひとり、溜息を付いていた。

 

「どうしてああなっちゃうのかな……」

 

思い出すのは最後の授業。このままじゃいけないと思って頑張ってみたのだけど、途中で噛んで、うまくすることができなかった。結果、クラスのみんなに笑われてしまった。

恥ずかしいと思うより、情けなかった。自分自身でできないことに。それと同時に、私はずっと凛ちゃんに引っ張ってもらっていたんだと改めて実感する。

 

「きっかけを他人に求めちゃいけない……」

 

昨日萩野先輩に言われたことを思い出す。

思えば今までの私はほかの人にきっかけをもらってばかりいた。そんな人間が急に自分から動いてもいきなり上手くいくわけがなかった。

 

「はぁ……」

 

「こんなところでなに落ち込んでいるのよ」

 

「あ……西木野さん」

 

悩んでいる様子でも見られてしまったのか、西木野さんが声をかけてきた。

 

「あなた、声は綺麗なんだから後はちゃんと大きな声を出す練習をすればいいだけでしょう?」

 

「でも……」

 

それでも私はその一歩が踏み出せない。煮え切らない私に西木野さんが溜息をついた。すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーアーアーアーア―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西木野さんは音程を取りながら声を出す。それが終わると西木野さんは私に向いて、

 

「ほら、やってみて」

 

と促してくる。私は戸惑いながらも、声を絞る。

 

 

「あ……あーあーあーあーあ―――」

 

 

「もっと大きく! はい、立って!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

「「アーアーアーアーア―――」」

 

 

 

 

 

「「アーアーアーアーア―――」」

 

 

 

 

 

外なのに私の声が響き渡ったような気がするほど、大きな声が出る。

 

 

「ね、気持ち良いでしょう?」

 

優しい笑顔を浮かべて聞いてくる西木野さんに私は頷く。

こうして歌の練習をするのは気持ちがいいし、なにより――

 

「うん、楽しい」

 

なにより、楽しかった。ずっと前からわかっていたことだけど、やっぱり私は歌が好き。アイドルが好きなんだ。

 

「それじゃあ、もう一回……」

 

「かーよちーん。こんな所にいたんだ――って」

 

もう一度しようとしたところで遠くから凛ちゃんがやってくる。

すると普段誰かと一緒にいるところがない西木野さんに凛ちゃんは不思議な顔をする。

 

「西木野さん、どうしてここに?」

 

「励ましてもらってたんだ」

 

「わ、私は別に……」

 

素直になれない西木野さんは腕を組んであさっての方向を向く。

 

「ふーん……それより、今日こそ先輩のところに行ってアイドルやりますって言わなきゃ!」

 

「……っ、ちょっと待って! そんな急かさない方が良いわ。もう少し自信をつけてからでも――」

 

凛ちゃんの言葉に、西木野さんの態度が変わる。私としてはそっちのほうが有り難いのだけど、

 

「何で西木野さんが凛とかよちんの話にはいってくるの!」

 

凛ちゃんは猫のように威嚇した。そんな凛ちゃんに西木野さんもムッと顔を顰めた。

だんだんと二人の間の空気が変わっていく。

 

「別に、歌うならそうしたほうが良いっていっただけ!」

 

「かよちんはいっつも迷ってばっかりだから、パッと決めたほうがいいの!!」

 

う……そ、その通りです。流石というか、凛ちゃんは私のことをよく知っている。

 

「そう? 昨日話した感じじゃそうは思えないのだけれど?」

 

「……っ!」

 

「むっ……」

 

「あ、あの……喧嘩は――」

 

控え目に仲裁しようとしたが、お互い睨んでいる間に割り込む勇気はなかった。

すると、凛ちゃんが急に私の腕を引っ張り出す。

 

「ほら、いこっ! 早くしないと先輩たち返っちゃうよ!!」

 

「えっ!? でも……」

 

戸惑っている間にもう片方の腕が西木野さんにつかまれる。

 

「待って、どうしてもって言うなら私が連れて行くわ! 音楽に関してなら私のほうがアドバイスできるし、なにより――μ'sの曲は私が作ったんだから!!」

 

「えっ、そうなの!?」

 

知らなかった事実に、つい驚いてしまう。西木野さんも勢いで言ったらしく、少し言いよどむ。

 

「と、とにかく、行くわよ!!」

 

恥ずかしさからなのか西木野さんまで私の手を引っ張っていく。

 

「え? ちょっと……待って……!?」

 

私の声は届かず、二人は自分が連れて行くと主張しながら私を引きずっていく。足を踏ん張ろうにも二人の力には抗えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、誰か……ダレカタスケテ――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の叫びが、空に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、俺にはよく状況をつかめないけど、小泉さん――一体どんな罪を犯したの?」

 

凛ちゃんと西木野さんに挟まれた私は、どこからどう見ても連行される罪人のような感じだが、

 

「わ、私は何もしていません!!」

 

私は泣きそうな顔をしてそう叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……つまりは、メンバーになりたいってこと?」

 

一通り話を聞くと、穂乃果が話をまとめる。

 

「はいっ、かよちんはずっとずっと前からアイドルをやってみたいと思っていたんです!!」

 

ショートカットの少女が、主張する。確か彼女はファーストライブのときに途中から来てくれた子だ。

 

「そんなことはどうでもよくてっ――この子はけっこう歌唱力があるんです!」

 

「どうでも良いってどういうこと!?」

 

「言葉通りの意味よ!!」

 

小泉さんそっちのけで言い合い始める二人。

 

「わ、私はまだ……なんというか……」

 

「もう、いつまで迷っているのっ? 絶対やったほうがいいって!!」

 

「それには賛成。やってみたい気持ちがあるならやってみたほうがいいと思うわ」

 

かと思えば、意見が一致する二人。

 

「でも……」

 

「さっきも言ったでしょう、声を出すなんて簡単。貴女だったらできるわ」

 

「凛は知ってるよ。かよちんはずっとずっとアイドルになりたかったてこと」

 

二人は真剣に小泉さんを説得している。

 

「凛ちゃん……西木野さん……」

 

小泉さんは揺れている。そんな彼女に俺は一言だけ言う。

 

「小泉さん」

 

「は、はい!」

 

「覚えてる? 俺が言ったこと」

 

「あ……」

 

どうやら覚えていたみたいだ。後はその一歩を踏み出すだけ。

 

「わ、私……」

 

小泉さんは一歩前に出る。

 

「私は、小泉花陽といいます。一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものは何もないです。でも……でも、アイドルへ気持ちは誰にも負けないつもりです。だから――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――私をμ'sのメンバーにしてくださいっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕空に小泉さんの気持ちが響き渡る。目尻に涙をためながらも、精一杯勇気を振り絞って踏み出したその一歩は、一つの峠を越えた証。

彼女の勇姿を見た穂乃果たちは立ち上がり、彼女に手を差し伸べた。

 

 

「――こちらこそ、よろしくっ!」

 

 

最初は目をパチクリさせた小泉さんは涙を流しながらも次第に顔を緩め、そして、穂乃果の手をとった。

二人の姿は、夕日から祝福されているかのように輝いていた。

 

「かよちん、偉いよぉ……」

 

その姿に感化されたのか、凛と呼ばれていた少女が目を拭う。

 

「ふふ……なに、泣いているのよ……」

 

「だってぇ……って、西木野さんも泣いてる?」

 

「誰が……泣いてなんかいないわよ!」

 

そういう西木野さんの目にも一つの雫がたまっていた。西木野さんらしいといえばらしい。

 

「それで――二人は?」

 

そんな二人に、ことりが切り出した。

みんなの視線が二人に集中する。

 

「二人はどうするの?」

 

「「えっ……?」」

 

もう一度問いかけることりにきょとんとする二人。

 

「「どうするって……えっ!?」」

 

息ぴったりに顔を見合わせる西木野さんと凛さん。

 

「まだまだ、メンバーは募集中ですよ!」

 

穂乃果と小泉さんが見守る中、海未とことりが手を差し伸べる。

二人はもう一度お互いに顔を向けて、笑顔で頷いた。

こうして、新たに三人のメンバーが加わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の早朝、真姫と凛は神社の階段を登っていた。

 

「ふぁ~……朝練って毎日こんなに早起きしないといけないの~……?」

 

眠たそうにうな垂れる凛に真姫が当然と言う。

 

なんだかんだで、二人はいいコンビになれそうな雰囲気があった。

 

「あ、二人とも、おはよう」

 

階段を上りきった二人を迎えたのは、花陽だった。

私用のジャージを身にまとい、すでにストレッチを始めていた花陽の後ろには二年生三人の姿。どうやら遊弥はまだ来ていないようだ。

 

「おはよう、かよちん――って、眼鏡はどうしたの?」

 

凛の指摘にえへへ、と照れたように笑う花陽。

 

「どうかな。コンタクトにしてみたの……変、かな……?」

 

「ううん、すっごく可愛いよ!!」

 

「へぇ、いいじゃない」

 

「あ、西木野さん。おはよう」

 

花陽からの挨拶に真姫は目をそらす。

 

「ねぇ……」

 

そういう真姫の口調は何かを恥ずかしがっているようだった。顔を赤らめた真姫は口を尖らせて言う。

 

「眼鏡を取ったついでに……名前で呼んでよ……ほら、これから一緒に活動していくわけだし……私も名前で呼ぶから」

 

 

――花陽、凛。

 

 

二人は目を瞬かせる。普段クラスで一人でいる彼女からは想像できない可愛さがあった。

花陽と凛は笑顔で真姫に抱きついた。

 

「ちょ、ちょっと! 何で抱きつくのよ!?」

 

「もちろんだよ、真姫ちゃん!」

 

「真姫ちゃん、真姫ちゃん、真姫ちゃーん!!」

 

「そう何度も呼ばなくても良いから! 花陽、凛。放して!!」

 

「照れてるー、照れてる真姫ちゃん可愛い!!」

 

「照れてない、とりあえず離れて!」

 

「ふふ、改めてよろしくね。真姫ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかったから離れなさい、という声が届く。

神社の前で、元気にコミュニケーションをとっている一年生三人。

 

「――仲良きことは美しきかな。心配はしていなかったけど、早速打ち解けているみたいだな、三人とも」

 

「あ、おはようございます」

 

「おはよう、小泉さん。星空さんも西木野さんも、今日から練習よろしく」

 

「「「……」」」

 

普通の挨拶をしたのに、三人からの返答がなかった。

そして三人はそれぞれの顔を見て頷き、円を作りはじめた。

 

「「「―――」」」

 

俺には聞こえない声でなにやら相談をしている様子。

おーい、と声をかけると同時にその円が崩れた。

そして、小泉さんは柔らかな笑顔を

星空さんは元気で明るい笑顔を、

西木野さんは恥ずかしくも、いたずらを考えたような笑顔を浮かべて、

 

「「「よろしくお願いします。遊弥先輩!!」」」

 

三人はまた新たな一歩を踏み出していくのだった。

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
次の更新は近いうちに、一週間以内に出来ればいいなぁ……


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