ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です
三十五話目ですね。




設立の条件

 

 

 

次の日――

 

 

 

「部活だよ遊くん! 部活!!」

 

朝、教室へとやってきた俺に穂乃果が興奮気味に詰め寄ってきた。

 

「ああもうわかった、わかってるから一旦離れろ!」

 

いきなり迫ってきた穂乃果の顔にドキドキしてしまう。心臓に悪いと思った俺はぐい、と穂乃果を押しのける。

穂乃果は不満げな顔をしていた。

 

「部活だよ部活! 穂乃果たちすっかり忘れてたんだ!!」

 

だがそれも一瞬のことで、すぐに穂乃果は切り替える。

 

「昨日、みんなと話しをしているときに気づいたの。もう部活申請できる人数になっていることに!」

 

穂乃果の話によると昨日の帰り、みんなでハンバーガーチェーンに寄って練習場所の確保について話していたときに思い出したらしい。そして、朝練習にやってきた女子からの襲撃がまたあったとのこと。

 

「それについては俺も昨日思い出した。今まではあまり部としての体裁が必要なかったからすっかり忘れていた」

 

「まあ、今まではファーストライブを成功させるために必死だったから……わたしも忘れていたし」

 

「私もです。ですが人数も増えましたし、学校公認として活動出来ることに越したことはありませんね」

 

海未の言う通り、今後活動していくにあたって学校側が認めてくれていたほうがなにかと都合がいい。個人の範疇(はんちゅう)ではどうしても出来ないこともあるからだ。

 

「だけど申請してもいまだと少し――」

 

「――ということで皆の名前も集めたし、早速生徒会に申請しに行こう! あ、遊くんの名前はもう書いてあるから!」

 

穂乃果は俺の話を聞かずに立ち上がる。そして、そのまま俺の手を引いて教室から出て行く。

 

「何で穂乃果が俺の名前を書き込んでいるんだ!? それと俺の話を聞け! ああ、いろいろと突っ込みどころが多い!!」

 

こうなった穂乃果は人の話を聴くことはない、どこまでも突き進んでいくのだ。

 

「大丈夫だって遊くん、さあ早く早く!」

 

「だから人の話を聞けェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室にて部活創立の申請書を提出しに来たのだが、やはりというか予想通り、絵里先輩は否定の言葉を告げた。

 

「――アイドル研究部?」

 

穂乃果の問いかけに絵里先輩は頷く。隣に座っている希先輩はニコニコと笑顔を浮かべている。

 

「そう、すでにこの学校にはアイドル研究部というアイドルに関する部が存在します」

 

「まあ、でも部員は一人だけやけど」

 

「えっ? でもこの前、部員は五人以上じゃないと駄目だって……」

 

「創部するときは五人必要だけど、その後は何人になってもいいんだよ。その代わり、部費とかの予算とかはほとんど下りないだろうけど、そうですよね?」

 

「遊弥君の言う通りや、設立は五人以上、その後の人数は問わないようになっとるんよ」

 

「生徒が限られている今、いたずらに部を増やすことはしたくないの。アイドル研究部がある以上、あなたたちの申請を受けるわけにはいかないわ」

 

また絵里先輩は……それらしい言葉をつらつらと並べてくるな。よく咄嗟にそんなことが思いつくなと感心する。生徒数と部活数は関係ないというのに。

 

「そんなぁ……遊くん……」

 

いい反論が見つけられない穂乃果は何か言い方法はないかという視線を向けてくる。気づけばことりや海未も俺のほうを見ていた。

 

「これで話は終わり――」

 

絵里先輩はさっさと話を切り上げようとする。だが、そうはさせない。

 

「絵里先輩、質問なんですけど」

 

「なにかしら」

 

どうしてかムッとした怒った顔を向けて返してくる絵里先輩。まあ、関係上対立しているような位置だから気分はよくないのだろう。

 

「部活の設立が出来ない以上、穂乃果たちはそのアイドル研究部に入るか、部を(ゆず)ってもらうかしないといけないわけですけど」

 

「……ええ、まあそうなるわね」

 

絵里先輩は苦虫を噛み潰したような顔をする。認めたくない側としては思いついてほしくないことだったのだろう。

 

「もしそのアイドル研究部の人が入部も譲渡も拒否したらどうするんです?」

 

例えばで言えば、ある一年生たちが人数をそろえて部活を設立しようとする。しかし、既に同じような部活が存在しており在籍している部員は三年生の先輩のみ。

入部しようにも三年生の先輩は、お前らなんか認めない、と言って入部を拒否たとする。そうなったら説得しようにも立場的に一年生が三年生の先輩にものを言うのは難しい。となると現行の決まりでは一年生は学校で活動する術がなくなることになる。

 

「遊弥君、なかなか痛いところついてくるなぁ」

 

希先輩は冷や汗をたらしながらそういった。俺の言いたいことがわかっているみたいだ。

 

「活動目的があってそれに準じる気概のある人たちがいる。だけど先に設立させた"たいした活動をしていない先輩"が入部をさせないと言い張ったとき、どうすればいいんですかね?」

 

「それは」

 

「ちなみに活動するのは諦めろとか頑張って説得しろとか言うのは無しですよ。生徒会は部活の管理をしているんですから――しっかりとした解決方法をお願いしますね」

 

「それは……くっ……」

 

どんどん逃げ場をなくしていく俺に絵里先輩は悔しそうに涙をためている。

少しやりすぎただろうか。だがここは穂乃果たちのために心を鬼にせねばならない。

そんな俺と絵里先輩の間に見ていられなかったのか希先輩が割り込んできた。

 

「悪いんやけど遊弥君。うちもえりちもそこまで考えてはなかったんや」

 

「難癖をつけるわけじゃないですけど、問題に対してなにも考えられてないようではしっかりとした運営とは言い難いですよ」

 

「そこは反省点として、しっかり話し合っておくよ。だからとりあえずは先に話をしにいってくれへんかな? まだ断られると決まったわけやないんやし」

 

「そうですね、そうします。穂乃果、ことり、海未、行こうか」

 

希先輩に説得されたという形で俺は下がり、唖然としている三人に声をかける。

 

「遊弥君の……馬鹿……」

 

絵里先輩の弱々しい罵声は聞こえないフリをして俺は生徒会室から出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊くん、容赦なかったね。ちょっと怖かったかな」

 

「確かに、あんなゆーくん久しぶりに見たかも」

 

廊下を歩いている中、穂乃果とことりがそんなことを言う。

 

「そうか? 優しくしたつもりだったんだけどな」

 

「いえ、私も交渉ごとや口論で遊弥には勝てないと改めて思いました。それとあの場において生徒会長が自分でなくてホッとしましたよ」

 

海未まで同じことを言ってくる。

あまり実感がない俺は、そんなに怖かったのか、と問いかけると三人は首を揃えてうんと頷いた。

うん、もう何もつっこむまい。

 

「それより遊弥、一つ質問なんですけど」

 

「なんだ?」

 

「生徒会長に言っていたことですけどもし遊弥が生徒会のメンバーだったらどう対処するつもりですか?」

 

「あ、それ私も気になる!」

 

「わたしもかな。ゆーくんが言ってたときわたしも考えたけどいいのが思いつかなかったから」

 

「ああそれか。特に難しいことじゃない」

 

そういう俺に三人はもったいぶらずに早く話せと促す。

 

「部の存続に人数制限をつければいいんだよ。五人以上いなければ廃部にするとか。そうすればさっきの問題は解決できる」

 

「ああ、なるほど!」

 

「そうしたら確かにできるかも?」

 

穂乃果とことりは納得していた。

 

「そうですね、部員が複数の部活は入部を断ることはしないでしょうし」

 

ですが、と海未はこちらを向く。一応納得はしたもののまだ疑問が尽きないようだ。

 

「私の所属している弓道部みたいな個人競技で、一人でも活動できるような部活とかはどうするんですか。真面目に活動していた場合、定員割れで廃部というのは酷ではないですか?」

 

「その場合は存続の条件を別に設けてやればいい。例えば大会に出場するとか、文化部だったら製作物の定期的な展示だとかを行う、とか」

 

「ですが、それでは不公平だといわれるのでは?」

 

「無理難題を押し付けるわけじゃない、部活をしていれば自然とやるお題を出せばいい」

 

こういうことで条件を一つにまとめるのはナンセンスだ。活動目的が違うのだから、それに対応した条件を提示したほうがよほど建設的だ。

 

「定員数を満たしているところやしっかり活動しているところは基本入部は断らない。もし定員数を満たせなくてもちゃんと活動していればそれで良し。そもそもの前提は入部を断られた場合だ。我が物顔で部活をしているならそんな部活はないほうがいいし、駄々を捏ねるならそのまま潰れろって言う話だ」

 

「なるほど……」

 

「なんか最後の一言が黒いね、遊くん……」

 

「でもそれは我儘ばっかり言わないでっていうことだよね、ゆーくん」

 

「そういうこと」

 

全員が納得できるだなんて思っちゃいない。だが大抵、不平不満を言う輩はことりの言うような我儘な人間だ。そんな奴らに振り回される道理はない。

 

「とりあえずは放課後、アイドル研究部に話をつけに行こうか」

 

まずは説得を試みないことには始まらない話だ。もし、普通に受け入れてくれたらそれはそれでいいし。

俺の予想が正しければそれはありえないことだが、まあ、一応というやつだ。うん。

 

 

 

 

 

そして――

 

 

 

 

 

結論からいうと俺の予想は正しかった。

 

「あー……やっぱりか」

 

俺は目の前の女子生徒の顔を見てげんなりする。

 

「あ、あなたは……!?」

 

穂乃果たちも驚いた表情をしていた。

 

「昨日ぶりですね。アイドル研究部部長、矢澤にこ先輩」

 

名前を呼ばれたのが気に食わないのか矢澤先輩は憎々しげに俺を睨んだ。

 

「遊くん知ってたの!?」

 

「知ってたというより少し調べれば昨日の人が矢澤先輩だと考えはつく」

 

「どういうこと、ゆーくん?」

 

「まず俺の名前を知っているここら辺の女子学生と言えばこの学院の生徒のみ。そしてわざわざあんなこと言いに来るのだから本人はスクールアイドルの知識や活動経験がある。もし学院で活動していたとしたらできるのは部活だけ。それで昨日は軽く調べたんだよ」

 

「あ、だから昨日は別行動だったんだ?」

 

別れ際、一緒に帰らないことを捏ねていた穂乃果がぽん、と手を打った。

 

「先輩……凄いです……」

 

「まるで探偵みたいだにゃ~」

 

その後ろからは花陽と凛が感心の声が聞こえた。別に大したことではないのだけれどそんな反応されると何だか照れる。

しかし、ここまでドンピシャだと逆に間違えているのではないかと錯覚してしまう。が、こうして対面した以上関係ない。

 

「矢澤先輩。話があります。廊下で立ち話も何ですから入れてくれませんか? もちろん中の物には触れません」

 

「私はあんた達と話すことは無いわ。それと中には絶対入れさせない」

 

強情な態度をとる矢澤先輩。だが、そんな上っ面の鎧なんて意味がない。少し脅しをかければ脆く崩れていく。

 

「いいんですかそんなこと言って。意地を張るのは結構ですが、俺には然るべき手段があることをお忘れなく」

 

「くっ……あんたね……!!」

 

矢澤先輩には効果覿面だったようで睨んでくる目が一層鋭くなった。

 

「遊弥、悪い顔になってますよ……」

 

「悪商人の顔ってまさにこんな感じなのね」

 

「そこ、うるさいよ」

 

呆れている海未と真姫にピシャリと言う。まったく、君達のことでもあるというのに。

 

「……わかったわよ。鍵開けるからどいて」

 

もう少し粘ると思っていたのだが、矢澤先輩は案外早く白旗を振った。

先輩が鍵を開けて戸を開ける。そのとき、

 

「あっ!?」

 

穂乃果が声を上げる。

矢澤先輩は素早く部室に入って、内側から鍵をかけたのだ。

 

「せんぱーい、開けてください!」

 

穂乃果は力任せに開けようとするも鍵が掛かった扉は当然開くわけがない。

中からの矢澤の反応はなく、聴こえてくるのは崩れる音だけだった。

 

「多分逃げようとしているな。どうする、諦めるか?」

 

問いかけたところで手を挙げたのは凛だった。

 

「凛が外から追い込むにゃ!」

 

そう言うか速いか、凛は駆け出していった。

 

「よし、私も行こう!」

 

「わ、私も行きます!」

 

「待って穂乃果ちゃん、花陽ちゃん!」

 

「あ、皆待ってください!? そんな大勢で行っても……って、話を聞きなさい!!」

 

凛の後に続いて行く穂乃果たち。

 

「あの人たちはどうしてこうなるのかしら」

 

一歩引いてこの場に残った真姫はため息を吐く。

 

「真姫は追いかけないのか?」

 

「それは凛だけで充分でしょう?」

 

「そうか、それじゃあ戻ってくるまで部室で待ってるか」

 

「は?」

 

俺は制服のポケットから鍵を取り出して部室の鍵を開ける。そのようすを真姫は驚いた様子で見ていた。

 

「あなた、どうして……というか、それなによ!?」

 

「なにって、マスターキーに決まってるだろ」

 

俺はくるくると鍵を指先で回して真姫に見せびらかす。

 

「俺、この学院の整備のおっさんと仲が良いんだ。開けたらすぐに返すことを条件に借りたのさ」

 

「あなたね……それを早く言いなさいよ!」

 

真姫の声と共に背中に衝撃がはしる。

そのあと鼻に絆創膏を貼った矢澤先輩が凛たちに連れてこられたのはそれから十分もしないうちだった。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
次回更新も頑張ります。


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