ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どーもー燕尾です。

第四話です。


大成功だ。

 

 

「すごいな、わざわざ特注で制服一つ作るなんて」

 

立て掛けられている制服を見て俺は呟く。

 

前の学園とは違い、学ランではなくブレザー。藍色中心に作られており、ズボンは所々に赤の線が入っており、なかなか格好いい。

 

ブレザーに腕を通し、ネクタイを締め、気合を入れる。今日から新しい場所での生活が始まるのだ。

 

時間は八時半、今から出れば誰にも会わずに学校に行けるだろう。

 

「そろそろいい時間か。それじゃあ、行くか!」

 

戸締りを確認した後、学院までの道を歩き始める。俺が音乃木坂学院に編入することを知っているのは理事長をはじめとした教師陣と絵里先輩のみ。一般生徒には秘匿とされている。なんでも今日の臨時の全校集会で紹介するのだとか。

 

なので生徒が登校し終わった時間に来てほしいと頼まれたのだ。家から出たのが遅い理由もこのためである。

 

家から出てから約二十分、音乃木坂学院の校門までやってきた俺を待ち構えていた人がいた。

 

「おはよう、遊弥君」

 

「おはようございます、理事長」

 

「もう、理事長なんて堅苦しい言い方しないで普通に雛って呼んで頂戴」

 

いやいや、そういうわけにもいかないっす。隣になんか知らない先生もいるのに。

 

それに結構睨んでいるように見えるのは気のせい? 気のせいだよね?

 

「いや、そういうわけにもいかないですよ理事長。公私は分けないと」

 

別にいいのに、と残念がる雛さん。

 

無理です、雛さん。あなたの隣で俺をすっごい睨んでいる人をどうにかしてからそれを言ってください。というか、なんでそんなに俺を睨むの? あなたに何もしていないはずだけど?

 

「あ、彼女はこの学院の院長よ」

 

俺の視線に気づいたのか、雛さんは学院長を紹介し始める。

 

学院長はむすっとしたまま一歩前に進み出る。

 

「音乃木坂学院長の乙坂亜季です。ようこそ、音乃木坂学院へ」

 

事務的に自己紹介をする学院長。ようこそなんて言っているがまったく歓迎されている気がしない。むしろ"何で男がこの学院に"みたいに俺を見てくる。

 

「ありがとうございます。ご存知かもしれませんが、九重学園からこちらのテスト生としてきました。萩野遊弥です。これからよろしくお願いします」

 

俺は、にこやかに自己紹介をする。だが、院長はなんの反応もなく、理事長に耳打ちした。

 

すると、雛さんはそうだったと慌てるように、

 

「こんなところで立ち話している場合じゃないわね。私はお先に全校集会にいくわね。話さないこともあるし」

 

それじゃ学院長、後はよろしくね、と雛さんは足早に去っていった。

 

えっ? ちょっと待って。初っ端から俺のことを嫌っているような人と一緒にしたら駄目でしょ。

 

ほら、めっちゃ睨んでる。くっそ睨んでる。もう最上級に睨んでいる。なんか新しいものに目覚めそうだ――って言うのは冗談で。

 

「こ、ここで立ち続けているのもあれなんで、案内お願いできますか? あとこの後の予定も聞いておきたいです」

 

「あなたに言われずともそうするつもりです。ついてきなさい」

 

とげとげしく言い放たれる言葉、嫌悪する目。学院長は抑えているつもりだろうがまったく抑えられていない。

 

俺はそこでで悟った。

 

――ああ、そうか。そういうことか。

 

学院長は共学化に反対の立場なのだ。

 

加えて俺を見るときのあの目。理由はわからないが彼女は男が嫌いなのだろう。

 

だからといって共学化の反対理由としては私的すぎて不十分だけど。

 

でも、少し気をつけておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いま体育館で全校集会が行われています。萩野遊弥、あなたにはそこで挨拶をしてもらいます。そのあと、職員室で担任と顔合わせです」

 

歩きながらそう話す学院長。だが決してこちらを見ることはない。

 

「ここで待っていなさい、理事長が呼んだら入って壇上で挨拶を」

 

「わかりました」

 

体育館へと入っていく学院長。ドアを開ける音で後ろにいた数人がこちらを向いた。

 

俺の姿をすこし見えたのかヒソヒソと小声で話している。

 

「もう掲示板でご覧になった人もいるかもしれませんが、この音乃来坂学院は年々生徒が減少しています。今年の新入生である一年生が一クラスしかない状況です」

 

壇上では雛さんが話をしている。声色は真面目だが、どこか暗さも混じっている感じがした。。

 

「理事会でもこのことが指摘され、今後生徒が増えないと判断された場合――」

 

沈痛な表情で雛さんは決定的なひとことを言い放った。

 

「――音乃木坂学院(本校)を廃校とします」

 

雛さんの宣言に生徒一同動揺が走っている。

 

中にはあまりのショックに気を失ったものもいたみたいだ。保健室に連れて行くのかこちらへ近づいてくる。

 

「穂乃果、しっかりしてください!」

 

「ほのかちゃん!」

 

体育館から飛び出してきた少女たちが口そろえて気を失った少女に声を掛ける。

 

ん、穂乃果? 

 

「すみません、失礼します!!」

 

藍色の腰まで届くほどの髪の少女が駆け足気味で俺の横を通る。その後ろにはベージュ色で鶏冠のようなものがついている髪型の少女がついていっている。

 

二人は気を失っている少女に夢中で俺には気づいていなかったみたいだ。

 

「久しぶりだ……」

 

俺の呟きは聞こえていないようで二人は足早に保健室へと向かっていく。

 

大切な幼馴染たち。顔を見るのはだいぶ久しぶりだが、一目見てわかった。

 

「萩野遊弥君、こちらへ来てください」

 

ボーっと、二人を見送っていると体育館の中から俺を呼ぶ声が聞こえる。

 

「おっと、いかないとな」

 

体育館のドアが開かれ、皆の視線が集中する。ヒソヒソとした声が聞こえる中、歩みを進め壇上へとあがる。

 

「さて、先ほどにも説明した"共学化"において京都にある九重学園からテスト生としてこの音乃木坂学院に来てもらいました。彼には音乃木坂学院ですごしてもらうことになります。皆さん仲良くしてくださいね」

 

雛さんは一歩下がり、挨拶して、と促してくる。

 

場所を雛さんと変わり、マイクの前へと立つ。

 

「ご紹介に預かりました、萩野遊弥といいます。この学院の一生徒として学院生活を楽しくすごしたいなと思います。お互い不慣れな部分があるかと思いますが、よろしくお願いします」

 

一礼する俺に、盛大な拍手が迎えてくる。

 

こうして本格的に音乃木坂学院での生活が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全校集会が終わった後、俺が連れてこられたの職員室だった。

 

目の前には一人の女教師。

 

「私が担任の山田博子だ。よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

差し伸べてくれた山田先生の手を俺は固く握る。友好的な感じからしてこの人は学院長と違い共学化には肯定のようだ。

 

「それにしても驚いた、まさか九重学園の生徒(・・・・・・・)が来るなんて」

 

教室に向かいながら、本当に意外そうに山田先生は言った。

 

「なんとなんというか……雛さん雛さん(理事長)の頼みと、成り行き。あと九重学園の理事長(爺さん)のせいですね」

 

「理事長の恩師であの九重学園の理事長(・・・・・・・・・・)を爺さんと呼ぶか。そんなこといえるのは君だけだ、萩野」

 

はっはっはっ、と豪快に笑う先生。

 

最初は笑い事じゃなかったんですよ? いきなり女子だけの学校に放り込まれるとか、普通はありえないですし。

 

「まあ、成り行きで音乃木坂に来た君が学校生活を送りやすいようにするための私たちは支援を惜しまない。相談事でもなんでも言ってくれ」

 

頼もしい言葉だ。

 

女子しかいない中で味方が少しでもいてくれるのは心強い。

 

「それじゃあ早速、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

 

「ん、どうした?」

 

「実際、この共学化に反対の先生はどれだけいますか?」

 

そう問いかけると山田先生は気まずそうに少し黙ってしまった。その反応から少なくはないんだなと思う。

 

「こうして頼まれてわざわざきてくれた萩野には気分が悪くなる話だとは思うが、共学化に対して反対する教師は半数近い」

 

だが、山田先生は正直に言ってくれた。

 

共学化なんて革新的なことをすれば反対意見も出るのは当たり前だ。

 

悩みの種が別にあるといわんばかりに先生は頭をかきながら溜息をついた。

 

「保護者からの批判を心配して、もう少し慎重になるべきだと考えて反対に回った人もいるんだが……どうも、感情論での反対が思いのほか多かった」

 

「そうみたいですね。壇上での挨拶のとき生徒よりも先生からの視線があまり良くありませんでした。特に女性教員の」

 

というか、俺に厳しい視線を送っていたのは全員女性(・・・・)の教職員だった。

 

男の先生は別に共学化に反対はしていないようだった。

 

存続するための方法を提案され、現状一番それがいいと考えられたからだろう。

 

だが、女性職員はそうはいかなかった。

 

「学院長を始め、「女子高でやってきた伝統を守るべきだ」、「男子生徒をこの学院に入れるのは反対だ」なんて言っていた先生方がいてな。まあ、そんな理由は全部理事長に捻じ伏せられたんだが」

 

そりゃ、なんとしてでも存続させようとしているのに、そんな理由を並べている先生たちは雛さんに対して「廃校してしまえ」って言っている様なものだ。

 

「まったく頭の痛い話だ。ぶっちゃけ、慎重になる時間もないって言っているのにそういうこと言っていた先生方も女性職員だった。おそらく腹の中では学院長と同じなんだろう。とにかくそのときはごたごたした」

 

「大変ですね。変える、変わるって事は」

 

まったくだ、と山田先生はもう一度溜息を吐き、そして俺に忠告する。

 

「萩野、君も注意しておいてくれ。会議の決定とはいえ半ば強引に進めてきたところもある共学化だ。今回のことで理事長に反発するものも少し出てきたりしている。もしかしたら、苛立ちや怒りを君にぶつけてくるかもしれない」

 

「はい、注意しておきます。でも大丈夫ですよ、ちょっとなにかされたくらいじゃなんともありません。それに俺はテスト生(・・・・)ですから」

 

余裕のある笑みを浮べる。

 

それをみた先生は頼もしいな、と笑った。

 

そんな話をしている間に教室へとたどり着く。

 

「今日からここが君の教室だ、私が先に入るから呼んだら入ってきてくれ」

 

おーい、席につけー、ホームルームを始めるぞー。

 

先に入っていった先生は気だるそうに言い放つ。

 

「えー全校集会お疲れさん、廃校の知らせには驚いたやつやショックを受けたやつがいると思うが、残りの二年間皆が有意義に過ごせるように私たちも支えるから安心してくれ」

 

先生の言葉に教室の空気が少しばかり重たくなる。そんな空気を一片させるように山田先生は一つ咳払いをした。

 

「さて、みんな話を聞いていたと思うが、この学校に新しい仲間が加わった」

 

そして、聞いて驚けよ? 配属されるクラスは――

 

「このクラスだ」

 

少し溜めた先生のひとことはクラスを湧き上がらせた。

 

「静かにしろー。じゃあ、私ばかりが喋ってもなんだから入ってきてもらうか。萩野、入っていいぞー」

 

なんかデジャヴ……でもないか。

 

ガラッと勢いよくドアを開ける。教壇上に上がり正面をみる。その瞬間、

 

 

 

「あーーーー!」

 

「あ、あなたは!!」

 

「え~~~!?」

 

 

 

突然声を上げて立ち上がったのは三人。全校集会中に気絶していた女子にその子の介抱をしていた二人の女子。

 

「廃校でショックなのはわからなくはないが気絶したのはどうかと思うぞ穂乃果。海未とことりも久しぶりだな」

 

笑いながら言う俺を唖然として見つめてくる三人。

 

そう、この表情が見たかったんだ! ああ言ったけどある意味気絶してくれてよかったよ、穂乃果。

 

全校集会で叫ばれて注目するのもちょっとつらいしな。

 

俺は一礼して、出来るだけ明るく、爽やかにいった。

 

「改めて、萩野遊弥です。九重学園から来ました。そこで唖然としている三人の――幼馴染とでも言うのかな? 女子高に男と不自然な感じがするかもしれませんがどうぞ仲良くしてください。これからよろしくお願いします」

 

 

 






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