ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、こちらを更新するのは実に一ヶ月以上ぶりです。
卒論も終わり、発表も終わり、自由な時間が出来たのでちょこちょこ更新していきます。





A-RISE

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、見つかったか!?」

 

「いや、どこにもいない!」

 

「くそっ、どこに行きやがった!!」

 

様子を見ればいまだに周辺を男たちがうろついていた。

 

「まったく、赤の他人たちの癖にどうしてあそこまで結束力が強くなっているんだ…」

 

俺は愚痴りながら息を殺してしばらく待つ。

 

「……」

 

「ここにはいないようだ、別を探しに行くぞ!」

 

一人の男の指示で遠ざかっていく慌しい足音。山場を越えた俺は安堵する。

 

「ふぅ、ようやく行ったか」

 

俺は大きく息を吐く。常連なのかは知らないが随分とことり――ミナリンスキーにご執心のようだ。

まああの姿のことりに"お帰りなさいませご主人様"なんて奉仕されたら、そりゃ誰だって通ってしまうのはわかる。

 

「だからといってあそこまで豹変するとは、ファンってほんとに怖いなぁ。でもあのメイド喫茶に通うつもりもないし、あの男たちに会うことも早々ないからまあいっか」

 

それに俺が行ってもことりがことりが困るだけだし。にこ先輩のところに行ったときも秘密にしたがっていたしな。

 

「さて、だいぶん時間を喰われたな。とりあえず最後の場所に行くか。もしつばさがきていたら待たせることになっちゃうし」

 

さっきの男たちに見つかると厄介なので、念のために人気のない道を選びながら俺は指示された場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがUTX学園、か」

 

にこ先輩からの指示に書いてあった最後の場所――それはスクールアイドルの頂点といわれているA-RISEが通っている高校、UTX学園だ。

 

「それにしても、これもう高校っていう規模じゃないだろ…」

 

俺はUTX学園の実態に圧倒されていた。

駅の改札のようなゲートに、十数階と上に伸びている建物。正面には特大のモニターがつけられており、今話題のA-RISEのプロモーションビデオが延々と流されている。

これだけの規模で女子高だって言うのだから、すごいものだ。というかよく生徒を集められたな。

 

「これだけの最新鋭設備と憧れのA-RISEがいれば納得できることではあるな。これじゃあ音ノ木坂学院に人が来ないのは当たり前だな」

 

「遊弥、ここにいたのね」

 

「つばさ、来たんだな」

 

「そりゃ、スクールアイドルのこと教えてあげるって言ったもの」

 

そういう割には何かを教えてもらった覚えはないなけど。まあ正直このにこ先輩の指示を見てもスクールアイドルのことがわかるだなんて思ってもいなかった。

 

「どう、UTX学園は?」

 

「最新鋭、としか思いつかないな。これは十数年しか生きていない子供には贅沢すぎるんじゃないか?」

 

「同い年のあなたが言うことじゃないわね」

 

「後はA-RISEがすごい、これに尽きるな」

 

「そ、そう……? 具体的にはどこが凄いのかしら?」

 

「歌の上手さ、ダンスのキレ、人をひきつけるカリスマ力。それに綺麗さと格好良さと可愛さも備えてる」

 

「あ、ありがと……」

 

顔を赤くしたつばさが俯きがちに何か言ったが、あまりにも小さすぎて周囲の喧騒に溶けてよく聞こえなかった。

なんていったんだ、そう聞こうとしたそのとき、

 

 

 

「まさかつばさを照れさせるような猛者がいるとはな」

 

「珍しいよね、つばさがここまで顔を赤くさせるなんて。まあ可愛いからいいんだけど」

 

 

 

後ろから聞き覚えのない女の子の声が二つ聞こえた。

 

「英玲奈、あんじゅ!? どうしてここに!?」

 

「どうしてといわれても、ここは私たちが通っている高校だぞ? 居ても何もおかしくはないだろう?」

 

「うっ、それは、そうだけど…」

 

「まあいまはお茶した帰りに英玲奈の忘れ物を取りに寄っただけなんだけどね」

 

するとあんじゅと呼ばれた少女は意地の悪い笑みを浮かべてつばさの胸元をつんつんと弄る。

 

「そ・れ・よ・り・も、つばさってばお忍びでデートなんて、隅に置けないわね~」

 

「でっ……そんなんじゃないわよ!」

 

「そうやってむきになっているのがまた怪しいな~?」

 

つばさに絡むようにじゃれているあんじゅさん。

なんというか、うん。美少女二人の絡み合いって、いいよね。

 

「おいおい二人とも、じゃれあうのはそこまでにしておけ。さっきからそこの彼が置いていけぼりになっているぞ」

 

「ほらあんじゅ! いい加減離れなさい!!」

 

「あんっ♪ もう、つばさったら恥ずかしがり屋なんだから」

 

「違うわよ! まったくもう――」

 

何とかあんじゅさんを引き剥がしたつばさは身なりを整える。

その様子をずっと見ていた俺に気づいたつばさはわたわたと慌て始める。

 

「ゆ、遊弥……? 違うのよ? 普段の私はもっとしっかりしてるの、ただちょっと予想外のことがあって慌てただけなの!」

 

「わかったわかった、だから落ち着け。それでそっちの二人が誰なのか教えてくれたら助かる」

 

「え、ええ。そうね」

 

そういう俺に、つばさは頷いたが、英玲奈さんとあんじゅさんは逆に驚いた顔をしていた。

 

「……まさか、この辺で私達のことを知らない人がまだ居たとはな」

 

「ちょっと驚きかな~、それなりに有名になったとは思ってたし、目の前のスクリーンに思い切り映っているのにね~?」

 

「ん、スクリーン? 映ってる?」

 

「うん。ほらあれ見てあれ~」

 

あんじゅさんに促され俺は目の前にあるモニターを見る。モニターには目の前の三人にそっくりな人たちのプロモーションビデオが流れている。

そして先ほどつばさが呼んだこの人たちの名前。

 

「英玲奈、あんじゅ……」

 

そこで俺は思い出す。花陽やにこ先輩がA-RISEについて語っていたときのことを。確かそのグループに所属しているメンバーの名前は確か、統堂英玲奈、優木あんじゅ、そして――綺羅つばさ。

俺は冷や汗が止まらなかった。

 

「――もしかして、A-RISE…なのか?」

 

震える声で精一杯つばさに問いかけるとつばさは深くため息を吐いた。

 

「……ええ、そうよ」

 

「……」

 

一瞬の静寂の後、

 

「えええええ――――っ!?」

 

俺の驚きが木霊する。

 

「ちょっと、遊弥。声がでかい!」

 

「ああ、悪い……芸能関係者とは思っていたけど、まさかA-RISEだったとは」

 

「むしろ君は今までA-RISEの綺羅つばさと知らずに彼女と一緒に行動していたのか?」

 

「ふふふ。君、なかなか面白いね~」

 

確かに言われてみれば、アイドルショップで身分証を見たときに綺羅つばさという名前を見た時点でA-RISEということに気づくべきだった。

 

「じゃあ、改めて自己紹介しよう。私は統堂英玲奈だ。UTX学園生でA-RISEに所属している」

 

「私は優木あんじゅ。同じくUTX学園生でA-RISEだよ~よろしくね♪」

 

「俺は萩野遊弥。音ノ木坂学院で試験生として通っている。よろしく、統堂さん、優木さん」

 

「英玲奈で構わないよ。その代わり私も名前で呼ばせてもらうよ、遊弥くん」

 

「私もあんじゅでいいよ~遊弥くん」

 

「あ、ああ…よろしく、英玲奈、あんじゅ」

 

近頃の女子高生ってこんなに距離感が近いものなのか? 戸惑う俺がおかしいのだろうか。

 

「遊弥、あなたいま音ノ木坂学院に通っているって言ったわよね? あそこって女子高じゃなかったかしら?」

 

そういえばつばさには名前しか教えていなかったな。男が女子高に通っているだなんてそりゃ普通は疑問に思うだろう。

 

「試験生だって言っただろ。いま音ノ木坂学院は生徒不足で共学化が考えられているんだ。だけど実際に通ってみないと問題とかわからないだろ? そういういとも含めて先に通っているんだ」

 

「なるほど、それで試験生なのね」

 

じゃなければ普通に考えて男の俺が女子高になんて通えるわけない。

 

「それで、音ノ木坂の試験生がどうしてつばさと一緒にデートしているんだい?」

 

「だからデートじゃない! 調査よ、調査!!」

 

「調査?」

 

「ああ、実は先輩にスクールアイドルのことを調べてこいっていわれて、つばさともその最中に出会ってな。そのあとなんだかんだで一緒に行動することになったんだ」

 

俺が掻い摘んで話すと、英玲奈とあんじゅはにやけた顔をつばさに向ける。

 

「へぇ…あのつばさが初対面にもかかわらず、か」

 

「これはちょっと、取調べが必要かもね~?」

 

英玲奈とあんじゅはつばさの両脇を片方ずつ掴みあげる。

 

「えっ、ちょ、英玲奈? あんじゅ?」

 

「せっかく会えたのだがすまないな遊弥くん。私たちは少し用事ができた」

 

「じゃあね~遊弥くん、今度は一緒にお茶しましょうね」

 

戸惑っているつばさを無視して、笑顔でUTX学園へと引きずっていく英玲奈とあんじゅ。

 

「ちょっと待ちなさい二人とも! ――――っ!!」

 

瞬く間に消えていくつばさの姿。まるで大嵐が過ぎ去った後の静けさに包まれた俺は小さくため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局スクールアイドルについては何一つわからなかったな」

 

俺はつばさに別れの挨拶の連絡を飛ばし、帰路についていた。

 

「第一アイドルショップにメイド喫茶に人気のスクールアイドルが通う学園から何を学べというんだ。それだったらライブを見に行けとか言われたほうがまだよかったわ」

 

それでレポート書けって言うんだもんなぁ。一体どうしたものか。

 

「いや、別に書かなくてもいっか。所詮はにこ先輩の戯言だし」

 

 

 

――ぬぁんですって!?

 

 

 

どこかでにこ先輩のツッコミが入ったような気がしたが、この場に居ないにこ先輩がそんなエスパーみたいなことができるわけはないだろう。

 

「それより、これからのことを考えないとな」

 

今後の穂乃果たちの活動はにこ先輩の加入――いや、穂乃果たちがアイドル研究部に入部したことで学校公式となった。

それにより大幅に活動がしやすくなった反面、いままで放置していた問題が本格的に目の前に立ちはだかることになる。その問題とは――生徒会だ。

予算編成案の作成や部の設立、入退部の窓口になっているところから少なからず部活の管理に一枚かんでいる生徒会。本来はそれだけなのだが、学生たちは何を勘違いしているのか大会の出場や何かイベントをしようとするたびに生徒会の許可を求めているらしい。

予算編成の話などで予算が削られないようにするための配慮なのだろうけど、最終決定は学院が行う。多い少ない関係なく不自然な予算編成はすぐに改善される。そう考えれば問題がないように思えるが、

 

「さて、どうしたものか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊くん!!」

 

「遊弥!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果と海未? どうしてこんなところに……?」

 

背後から声をかけてきた二人はどういうわけか息を切らし、眉を吊り上げて俺を見ていた。

 

「どうしてじゃないよ! これどういうこと遊くん!!」

 

「これはどういうことですか遊弥!?」

 

「なっ!?」

 

穂乃果と海未が見せてきたのはメイド喫茶で一緒に話している俺とつばさのツーショット画像。映っている二人の姿に間違いなかった。いつ取ったのかわからないが、とった人間には一人心当たりがある。

キョロキョロと周りを見渡しても穂乃果と海未のほかに姿は見当たらない。

 

「わたしはここいるよ、ゆーくん」

 

「こ、ことり……」

 

するといつの間に俺の背後を取っていたことりがぬるっと俺の肩をたたく。

ことりの顔は笑顔、満面の笑み。まさに天使の微笑といえるほどの可愛い顔をしている。だが俺には天使の仮面の裏に死神の顔を有しているようにしか見えなかった。

 

「ことりだな、この写真を撮って二人に流したのは」

 

「流しただなんて人聞きが悪いかな。ただことりはゆーくんの様子を二人に見せただけだよ?」

 

なんの悪びれもせずにそういうことりに俺は震える。

 

「あのときはお仕事中でちゃんと聞けなかったから。さあゆーくん――話の続きしよっか♪」

 

「――」

 

俺は声を出すこともままならず、三人に連れ去られるのだった。

この後に俺がどうなったかはもはや言うまでもないだろう。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた次回にお会いしましょう


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