ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です
\ツカレタ/






ラブライブと出場条件

 

 

にこ先輩を加え、新しい曲を出した俺たちは重大な壁にぶつかっていた。

 

「大変申し訳ありません!!」

 

「ません!!」

 

三つ指を突いてから深々と謝罪するのは穂乃果と凛。

 

「小学校の頃から苦手とは知っていましたが、穂乃果……」

 

「に、苦手なのはそれだけだよ! 数学は、数学だけは駄目なの。ほら、小学校の頃から算数は苦手だったでしょ!?」

 

呆れてため息を突く海未に穂乃果は噛み付く。

 

「しちし?」

 

だが花陽がボソッと出した問題に、

 

「にじゅう…ろく……?」

 

指を折りながらかなり迷って答えを出していた。しかもそれが正解なら救いようはあるが、間違っているというオマケつきで。

 

「……かなりの重症ですね」

 

「本当に高校生なのか、穂乃果……」

 

数学以前の問題にもう溜息すら出ないというような表情を浮かべる。

 

「はぁ…それで、凛はなにが苦手なんだ?」

 

「凛は英語! 英語だけはどうしても肌に合わなくてぇ……」

 

「た、確かに難しいよね」

 

「そうだよ! 大体、凛たちは日本人なのにどうして外国の言葉を勉強しないといけないの!?」

 

「屁理屈はいいの!!」

 

花陽の言葉に乗っかって言い訳を言う凛に真姫が机を叩きながら立ち上がる。突然のことに身体を竦ませる凛だが、真姫の追撃は終わらない。

 

「ま、真姫ちゃん怖いにゃ~」

 

「これでテストの点数が悪くてエントリーできなかったら恥ずかしすぎるわよ!」

 

「……そうだよね」

 

がっくりと肩を落とす凛。

 

「やっと生徒会長を突破したと思ったのに」

 

「ほ、ほんとその通りよ!」

 

今の今まで席に座らず、窓の外に身体を向けていたにこ先輩がこちらを見ずに口を開く。

 

「赤点なんか取ったら絶対駄目よ!」

 

自分は大丈夫みたいなことをいっているにこ先輩だが、俺には見えていた。先輩が二年生の数学の教科書を逆さまに持っているところに。

 

「被告人、矢澤にこ。その両手で持っているものを隠さずにこっちを向きなさい」

 

「被告人ってなによ遊弥!? 私は何も罪を犯していないわ!!」

 

この場において成績が悪過ぎる人間は全員被告人ですよ。まったく。

 

「ならにこ先輩、成績は……?」

 

言い逃れしていたにこ先輩の身体はことりの呟きによって一瞬硬直した。

 

「にに、にっこにっこにー、が赤点なんて、と、と、取るわけないでしょ~!?」

 

「にこ先輩、動揺しすぎです」

 

「う゛……」

 

海未の指摘ににこ先輩も肩を落とした。

 

「はぁ…本当に、まったく……」

 

穂乃果、凛、にこ先輩以外の人間がこの事態に頭を抱えている。

こんな状況になった、事の発端は数刻前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、大変です! 大変なんです!!」

 

放課後に入ってから間もない時間。慌てた様子で入ってきたのは花陽だった。

 

「どうしたんだ花陽? そんなに慌てて。ほら、少し落ち着け?」

 

「落ち着けません! 落ち着いている場合ですか遊弥先輩!?」

 

「いや、わけを説明して欲しいから落ち着いて欲しいのであって――顔近い、顔近いから」

 

押しのけようとする俺に顔をずいっと近寄せる花陽。

 

「「「……」」」

 

「何してんだか……」

 

なんか穂乃果たちの視線が怖いし、心なしか真姫の視線も冷たく感じる。

 

「わかった、落ち着けないのはわかったから。一体なんなんだ?」

 

「ラブライブです!」

 

状況のせいもあって俺はその単語をすぐに理解することが出来なかった。

 

「ラブライブが開催されることになりました!」

 

花陽の一言によって周りに緊張が奔る。

 

「ラブライブ!?」

 

穂乃果も深刻そうな反応をする。だが、

 

「――って、なに?」

 

良くわかっていなかったようですぐに聞き返してくる。他の人たちも雰囲気に当てられただけで、実際は穂乃果と同じような感じで首を傾げていた。

まあ、花陽とにこ先輩以外は知らない話だろうとは思っていた。

 

「ラブライブ…確かスクールアイドルたちのトップを決める大会のようなものだったか?」

 

「はい! 野球で言う甲子園のようなものです!」

 

ラブライブの特設サイトの画面を前に花陽が興奮し気味に説明する。

曰く、俺たちも登録しているスクールアイドルランキングサイトでエントリーした中から上位二十のグループがライブをしてナンバーワンを決める大会だという。

 

「噂には聞いていましたけど、まさか始まるなんて……!」

 

「へぇ……」

 

「いまのアイドルランキング上位二十組となると、A-RISEをはじめとして有名なグループが一堂に集まることに……まさに夢のイベント。チケットいつ発売するかな?」

 

「――って、花陽ちゃん見に行くの?」

 

穂乃果がそう問いかけた瞬間、花陽の眼光が鋭く光った。そして力強く立ち上がった

 

「当たり前です! これはアイドル史に残る一大イベントですよ!!」

 

見逃せません、と徐々に距離を縮めてくる花陽に穂乃果はたじろぐ。

 

「……花陽って、本当にアイドルのことになるとキャラ変わるわよね」

 

「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」

 

花陽の豹変振りにほのぼの? としている残りの一年生たち。

いや、それよりもいま重要なのはそこじゃないだろう。

 

「というか、見に行くだけなのか?」

 

「遊くんの言う通りだよ、私てっきり出場目指してがんばろって言うのかと思った」

 

「うえぇ~!?!? 私たちが出場なんて恐れ多いです!」

 

「本当、キャラ変わりすぎ」

 

「凛はこっちのかよちんも好きにゃ~!」

 

うん、凛は花陽が大好きなのはわかったよ。

 

「せっかくスクールアイドルやってるんだもん。目指してみるのも悪くないかも!」

 

「というか、目指さないと駄目でしょ!」

 

「俺も穂乃果とことりに賛成だな。廃校阻止っていう目的のほかにスクールアイドルとしての目標を掲げるのはいいことだ」

 

「そうは言っても現実は厳しいわよ?」

 

「ですね。先週見たときはとても大会に出られる順位ではありませんでしたし」

 

「ん? 真姫に海未。見てないのか?」

 

「見てないって、なにをよ?」

 

「スクールアイドルのランキングサイト」

 

そう言って俺はμ'sのマイページにアクセスする。そして画面をみんなに向ける。

 

「これは!」

 

「どうしたの海未ちゃん――わぁ! 順位が上がってる!!」

 

「本当だ、すごい!!」

 

「嘘!?」

 

「ほんとかにゃー!」

 

わらわらとパソコンの前に集まる少女たち。

 

「ほら、七人になってからPV出しただろ? あれからまた評価が上がって、"いま人気急上昇中のスクールアイドル"として注目もされているんだよ」

 

そうやって取り上げてもらえれば、多くの人に見てもらうことになり、また人づてに広がっていく。そこでの評価は個人それぞれなのだが、幸いなことにコメントのほとんどが好意的なものが多い。

 

「みんな、盛り上がっているところ悪いが現実的な話をするぞ?」

 

「えぇ~……こういうときぐらい喜ばせてよ遊くん」

 

「ありきたりだけど、こういうときだからだよ。それに十分喜んだだろ?」

 

喜びから慢心、気を緩めさせないっていうのも重要なことだ。安心をして向上心をなくせばこれから上がっていくということが無くなってしまう。

 

「さて、この順位にいて残りの期間から考えると……順調にいっても二十位圏内入れるか、入れないかの瀬戸際だな」

 

俺の試算にみんなの顔に緊張が奔る。

 

「まぁどんな順位であれ、やろうとしなかったら最初から出ることは不可能だ。それに、こういうものは何が起こるか予測できない」

 

もしかしたらA-RISEが圏外になるかもしれないし、逆に注目もされなかったグループが急激に圏内に食い込んでくる可能性もあるわけだ。

まぁ、A-RISEのあの三人はそんな油断も隙もないだろうけどな。

 

「それを踏まえて、エントリーするかしないかは皆で決めてくれ。まだ一人来ていないちびっ子先輩がいることだし――痛っ」

 

「だぁれがちびっ子先輩よ!」

 

スパァン! とどこから取り出したかわからないスリッパでにこ先輩に頭を叩かれる。

 

「いや、にこ先輩のこと――痛っ」

 

「あんた、最近ほんと失礼になってきたわね!?」

 

もう一度スリッパで叩かれる。

遠慮がないのは俺なりの友好の証なのだけれど、にこ先輩には通じないのか。

 

「――まあいいわ、それより、みんなに重大な知らせがあるわ!」

 

ぺったんこな胸を張るにこ先輩。だが、にこ先輩以外のみんなはどんな話が出てくるのか大体予想できた。

 

「この夏、ついに開かれることになった――スクールアイドルの祭典!!」

 

「あーはいはい、ラブライブね。今そのこと話してたから、にこ先輩も加わってな~」

 

「本当に最近私の扱いが雑になってきたわね遊弥!? 少しは先輩を立てなさいよ!!」

 

だってにこ先輩の話を聞いていたら時間がなくなるから。省くところは省かないと。

それに、立てて欲しいならもっと先輩らしく振舞ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…いつ来ても緊張するなぁ~」

 

場所は生徒会室前。ドアの前に立っていた穂乃果は顔を強ばらせていた。

 

「毎回怖じ気づいていたらきりがないですよ」

 

「でも結果はわかってるようなものと思うけど?」

 

真姫の思っている通り、今の絵里先輩にラブライブに出場したいなんて言っても許すわけがない。申請すらしてくれないだろう。

 

「学校の許可? 認められないわ」

 

「ほんのちょっと似てるのが腹立たしいからやめろ、凛」

 

「そうだよね…ラブライブだったら生徒だって集められると思ってるんだけど」

 

「そんなのはあの生徒会長には関係ないわよ。私らのこと目の敵にしているんだから」

 

「どうして、私らばかりなんでしょう…?」

 

「……あっ! もしかして学校内の人気を私に奪われるのが怖くて――!!」

 

「それはないわ」

 

「ツッコミはや!?」

 

「的外れすぎな答えを出したにこ先輩には退場してもらいましょう」

 

「ちょ、まっ……!?」

 

真姫と俺でにこ先輩を近くの教室に閉じ込める。

 

「もう許可なんてとらないで勝手にエントリーしてしまえばいいんじゃない?」

 

「駄目だよ! エントリーの条件にちゃんと学校の許可をとることって書いてあるもん」

 

「花陽の言う通りだ。それに、今までちゃんと筋を通してやってきているからこそ活動できているんだ。今ここで自分勝手なことしたらそれこそ絵里先輩に突かれるぞ」

 

「じゃあ、直接理事長に頼んでみるとか」

 

「ええっ!? そんなことできるの?」

 

「たしかに、原則部の要望は生徒会を通じてとありますが、理事長のところに直接行くことが禁止されているわけではありませんし」

 

「でしょ? それにちょうど、親族もいることだし、何とかなるわよ」

 

真姫の一言にみんなの視線が一人に向かう。

 

「……え?」

 

向けられた一人――ことりはきょとんとしていた。

 

「いや、え? じゃないだろことり。理事長の親族って言ったらことりしかいないんだから」

 

「え、あっ、うん。そうなんだけど…」

 

ことりは言いよどむ。まあ、言いたいことはなんとなくわかる。これでも俺だって雛さんとは長い付き合いだ。

 

「まあことりがいるだけでなんでも通してくれるとは思っちゃいないさ。だけど俺らは生徒会が非協力的だっていうちゃんとした理由もある」

 

「遊くん…悪い顔になってるよ」

 

「ロクでもない顔です」

 

幼馴染たちの辛らつな言葉に顔が崩れる。

 

「まあ、ルールに反してなければやれることはやろうって話だ。とりあえず、理事長のところに行くぞ」

 

そして理事長のところに行った結果、エントリーの条件として、"今度の期末試験で一人も赤点を取らない"という条件を提示された。

正直音ノ木坂のレベルだったら皆大丈夫だろうと思っていた。だが、

 

「「「……」」」

 

理事長室でがっくりとうな垂れていた三人を見て俺はため息をつく結果になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく! 遊弥を総監督として試験まで私とことりは穂乃果、花陽と真姫は凛の勉強を見てテストまでに何とか底上げをします」

 

「まあそれはそうとして、にこ先輩は?」

 

「だから言ってるでしょ! にこは赤点なんて――」

 

「だったら教科書逆に持っていることぐらい気づけ――にこ先輩は俺が見るよ」

 

俺の申し出に全員が疑問の目を向ける。

 

「遊弥先輩が?」

 

「遊弥先輩、三年生の内容わかるのかにゃ?」

 

「一応な」

 

前の学園にいたときは自分で大学の入試問題とかを勉強していたから、教えられる程度にはできる。

 

「一応、なんてものじゃないでしょう。あなた、今からでも大学入れるぐらいの頭しているじゃない」

 

『ええっ!?』

 

真姫の一言で周りが驚く。

 

「私、勉強見てもらったことあるけどうちの学校の教師たちより余程わかりやすかったわ」

 

あー、そんなことあったな。試験対策として色々と教えていた中で蛇足でこの先やるような内容を先取りで教えていたような気がする。

 

「真姫ちゃんがそこまで言うなんて」

 

「ゆーくん、知ってはいたけどやっぱりすごい頭いいんだね。」

 

そういう言い方するとすっごい馬鹿だと思われそうだからやめてくれ、ことり。

 

「まあでも、俺よりもっと適任の講師がいるから、基本はそっちに任せるけど」

 

「あなた以上に適任な教師がいるのかしら」

 

「真姫ちゃんがベタ褒めだにゃ…」

 

「にこ先輩の場合。まともに勉強しなさそうだからね。ある助っ人を呼んでいる」

 

「助っ人? 誰なの、遊くん?」

 

「――うちやで」

 

狙ったかのようなタイミングで入ってきたのは、似非関西弁が特徴の三年生女子。

 

「の、希!?」

 

「というわけで、試験までの特別講師。東條希先輩です」

 

よろしゅうな、と焦るにこ先輩ににこやかに手を振る希先輩。

 

「先輩、いいんですか? 自分の勉強や生徒会は…?」

 

「遊弥くんほどではないけど、教えられるぐらいの成績はあるんよ。それに交換条件として遊弥くんには生徒会を手伝ってもらったりするからおあいこってことで」

 

「えっ!? そうなの遊くん!?」

 

「いつの間にそんな話しをしていたんですか!?」

 

「ゆーくん、ことり話聞いてないよ!」

 

ぐいっと詰め寄ってくる穂乃果と海未とことり。

どうしてそんなに焦っているのかわからないが、とりあえず落ち着かせる。

 

「生徒会の手伝いは今までもしていたし、少し絵里先輩とも話したいしな」

 

「遊弥くん、それは誤解を招くで?」

 

どういうことだ、と首を傾げている所に鋭い視線を感じた。

 

「むぅ~」

 

「ぐっ……」

 

「うぅ~」

 

顔を顰めて唸る幼馴染三人組みに

 

「へえ…先輩、生徒会長と仲がいいのね」

 

「ふしゃ~!」

 

「遊弥先輩……」

 

同じように不機嫌そうな顔をする真姫と猫のように威嚇する凛。そして残念そうにする花陽。

 

「一体なんなんだ……」

 

「これでわからないって言うんだもの、私たちより余程赤点候補じゃないのよ――乙女心の」

 

「さすがやな遊弥くん。見ていて飽きないわ」

 

その様子を見て、にこ先輩は呆れたようにため息を吐き、希先輩は笑顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道――

 

「そういえばゆーくん。真姫ちゃんの勉強みてあげたって言ってたけど…」

 

「まさか二人きりってことでは……」

 

「ないよね?」

 

「いや、真姫の家で二人きりだったけど、それがなにか――ひっ!?」

 

ダークサイドが広がっているっ!? なんか笑顔なのにやっぱり怖い!

そのあと、どうなったかは語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?

次回更新……頑張ります


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