どうも、燕尾です。
ラブライブ第四十五話目、出来上がりました。
どうぞご覧あれ。
海未とことりが穂乃果の、真姫と花陽が凛の、俺と希先輩でにこ先輩の勉強を見始めてから数日。
穂乃果・ことりの様子――
「穂乃果ちゃん、あとこの一問が解けたら休憩だよ。頑張って!」
「ことりちゃん」
応援することりに穂乃果は教科書とにらめっこしながら彼女の名を言う。
「なにかな?」
「――おやすみ」
「ええっ、後ちょっとだよ! 穂乃果ちゃん!?」
力尽きて机に伏す穂乃果を必死に起こすことり。そしてそれを見てため息を吐く海未。
真姫・凛・花陽の様子――
「うぅ…やっぱり英語は苦手だにゃ……これが毎日続くのかにゃ」
「当たり前でしょ」
穂乃果と同じく机に伏しながら教科書を読み進めていく凛。
「こら、まだ休憩じゃないわよ」
「ほら凛ちゃん、頑張ろう?」
真姫に叱咤され、花陽に応援されるも限界が近づいていた。
「ああ! 空に白いほかほかご飯が!!」
「ええ!? どこどこっ?」
花陽がご飯という単語に反応されて空のほうを向く。そしてその隙に凛は部室からの逃走を図ろうとする。だが、
「そんなのに騙されるわけないでしょ。引っかかってると思ってるの?」
ため息混じりに真姫がビシッと凛の頭にチョップする。
「ま、真姫ちゃん…」
「真面目にやりなさい」
「でも、わからないんだもん! 大体凛たちは日本人だよ! どうして外国の言葉を学ばないといけないの!?」
凛の叫びに真姫少し怒り気味に彼女の頬を引っ張った。
「つべこべ言わずにやりなさい! 赤点とってラブライブ出場できませんでしたなんて笑い話にもならないのよ!」
「……はい」
希・にこの様子――
「え、えーっと、えーっと――に、にっこにっこにー!」
「次ふざけたらワシワシMAXや言うたよね?」
妖しい光を目に宿し、掴みの体制に入る希先輩。それを見たにこ先輩は慌てて両手を振る。
「違う、違うの! こうすることで脳が活性化されるの!!」
苦し紛れの発言。そしてにこ先輩は教科書を凝視する。
「えーっと、ここがこうなって、こっちがこうなるから。えーと、えーっと……」
「それで? 答えは?」
「に、にこにはちょっと難しすぎにこ」
「ふふふふふ……お仕置き確定やね♪」
「え、あ、ちょっと!? やめて希! ふ、あ、んっ……んんっ!? やめてぇ!!」
「「はぁ……」」
この場を総括する俺とこれから弓道部に顔を出しに行こうとしている海未はこの光景にため息を吐く。
「大丈夫でしょうか、こんなので」
「まあ、何とかなるだろう。まだ一週間以上はあるんだから。ただその分、練習は諦めたほうがいいと思うが」
「仕方ありませんよ。学生の本分は学業なんですから。それに真姫も言っていたとおり赤点でラブライブに出られないほうが問題です」
「そうだな。確かに笑い話にもならんわ」
「遊弥には負担をかけてばかりで申し訳ないのですが…」
「いいよ、気にするな。これもマネージャーの仕事のうちだ」
「ですが遊弥はこのあと生徒会の手伝いですよね? 無理をしていませんか?」
「問題ないよ」
「ですが、穂乃果たち以外にも私たちの勉強までまとめて見ていますよね? それにいま穂乃果たちや私たちがやっている問題のペーパーは、遊弥の手作りでしょう?」
「あー、わかった?」
「わかりますよ。それぞれのレベルに合わせた問題なのですから……遊弥、わかっているとは思いますがくれぐれも――」
その先を言わせないように俺は海未の頭に手を置いた。
「わかってるよ。海未たちが心配するようなことにならないようにするさ」
もう、泣き顔を見るのはいやだからな。それに――あの看病は精神的にも体力的にも堪える。
「……はい、気をつけてくださいね」
撫でる手を気持ちよさそうに受け入れる海未に俺も少し微笑む。
「ほら、こっちは任せて早く弓道部に行ってこい。練習時間がなくなるぞ?」
「ええ、後はお願いします」
海未は部室から弓道場へと向かっていく。
「ほら三馬鹿! ダラダラ勉強するな!」
「「「三馬鹿ってなに(よ)(なんにゃ)!?」」」
俺は三人に活をいれ、教鞭をとるのだった。
「いいか、穂乃果。高校数学の計算問題は複雑なのは最後のほう以外出ない。そして大体の計算問題はやり方がある。そのやり方を理解できれば後は慣れだ」
「でも私、そのやり方がわからないんだよね……掛け算すら出来ないし」
予想以上の落ち込み。どうやら自分が足を引っ張っていることだけは理解できているようだ。そんな穂乃果に俺は優しく諭す。
「掛け算にしろ数学にしろ、出来ないという人は分からないんじゃなくて知ろうとしてないだけだ。だからまずは俺がやり方を教える。それから一緒に問題を解いて、出来ると思ったら穂乃果一人でやってみようか」
「う、うん。お願いします」
「凛、英語のすべては単語だといっても過言じゃない。単語がどういう意味を持っているのかわからないから読めなくなる。だからまずは根気よく単語を頭に叩き込むんだ」
「え、英単語…」
余程の苦手意識があるのだろう、凛は後ろに引いた。
「苦手意識があるのはわかるが逃げたら駄目だ。まずはこのページの新出単語で分からないものを書きだして、辞書で意味を調べて書く。それからここに書いてある英語を訳してみろ」
「訳までやらないといけないの!?」
「大丈夫。新出単語が分かれば簡単に訳せるように作ってあるから。ほら、文句を言う前にやったやった」
「いいですかにこ先輩。穂乃果にもいいましたけど数字が変わっても問題が同じならやり方は同じです。そこさえ理解できれば後はゆっくり計算していけば解けていきます」
「それが分からないから困っているのよ」
穂乃果と同じような反応。にこ先輩は穂乃果より、より複雑な問題が課されるため、困難に陥るのはよくわかる。
「ええ、分かってます。だからまずは一度、計算公式がどう出ているのか求めていきましょうか。これがわかればどんな問題がどういう計算をしないといけないか自然とわかっていきますから。それから後は例題を解いて、同じように問題を解くだけです。それじゃあやってみましょうか」
三人に教えて始めてから一時間ぐらい経った。
「――それじゃあ、少し休憩しようか」
「「「…………」」」
俺の宣言に三人は机に伏して頭から煙を出し始めた。
「ほ、穂乃果ちゃん……?」
「大丈夫、凛ちゃん?」
「ま、自業自得よね」
彼女たちを心配することりと花陽と、切り捨てる真姫。
「遊弥くん飛ばしすぎなんちゃう?」
「全然飛ばしてはいないですよ。ただこの三人の理解度が異常に低かっただけでしたから。基礎部分に焦点を絞って、そこに最大限の集中を徹底させただけです」
さすがに掛け算を間違えるレベルをどうにかするには短期間集中型のほうが効率がいい。
「しばらくはこんな感じで教えてあげてください。とにかく基礎を徹底的に何回もやらせること。ことりも花陽も真姫も、できるか?」
「うん、任せて!」
「大丈夫です」
「問題ないわ」
「それじゃあ二十分後に再開ということで、あとは頼む」
そう言って荷物をまとめる俺にことりが首を傾げた。
「あれ、ゆーくん何か用事?」
「これからは生徒会のほうの手伝いを、ね。そういう約束だし」
希先輩に向くと彼女はよろしゅうなと言わんばかりに頷いた。
「ああ、これから生徒会長と仲良くよろしくするのね」
「何でそういう言い方するんだよ、真姫さんや」
悪意のある言い方をする真姫。別に仲良くするぐらいいいじゃないか、と言いたいけど、今の状況からしてあまりいい気分ではないのだろう。
「遊弥先輩、生徒会長のところに行ってしまうんですね…」
「そんな悲壮感あふれるような目をしないで花陽。生徒会の仕事の手伝いだから」
どうしてそんな恋人との別れみたいな演出をするんだよ。
「ゆーくん、おいたは駄目だよ?」
「はいはい……――っていうかそんなことしない!!」
どんな目で見ているんだ本当に!? そんなに信用ないのか、いつもいつも!!
「ほら遊弥くん、そろそろ行かないといけないんとちゃう?」
「……ええ、そうですね。それじゃあ、後はよろしくお願いします」
そうして、馬鹿三人組を任せて俺は生徒会室へと向かった。
コンコン――
「――どうぞ」
生徒会室の扉をノックすると中から聞こえてくる絵里先輩の声。
「失礼します――」
「遊弥くん? どうしたのこんな時間に?」
絵里先輩はどういうわけか、俺が来たことを不思議に思っていた。
「どうしたのって、何も聞いてないんですか?」
「聞いてないって、何を?」
問いかけると絵里先輩は可愛らしく首を傾げる。それだけで俺はすべてを察した。
――希先輩め、これはまたデコピン案件だな。
心の中で指の素振りをしながら俺は息を吐く。
「いや、まあ、また最近絵里先輩が一人で色々と抱えて仕事してるらしいと、とある筋から情報を得まして」
「――それ、希でしょう?」
「それは情報提供してくれと人との約束でお教えできません。希先輩からかもしれないですし、そうじゃないかもしれないですよ?」
「もう…」
絵里先輩は諦めたようにため息を吐く。教える気がないと言うことはすぐにわかったようだ。
「そういうわけで――こっちの書類片付けますね」
俺は手伝いのときに座っている席に腰をかけてパソコンを起動する。
カタカタカタカタ――
こっちの書類がこうで、あー、これ大分溜め込んでたな。
「……」
カリカリカリカリ――
「……」
カタカタカタカタ――
ここの計算も間違ってる。チェック漏れが多いな。大分上の空でやっていたみたいだ。
「…………」
シャッシャッシャ――
「…………」
それにしても――
「「………………」」
会話がまったくなく、お互い無言で作業をしているためか、俺と絵里先輩の間になんか変な空気が漂っている。
しかも絵里先輩、時折俺のほうをちらちらと見てるし。
うーん、どうしたものか…
「……あの、絵里先輩?」
「――っ、なにかしら?」
「いや、何って、それはこっちの台詞なんですけど……ちらちらと俺のほうを見てますよね? どこかおかしいところでもありますか?」
「いえ。おかしいところはないわ。ただ――」
そこで絵里先輩は言葉を区切った。それからなにか一瞬躊躇ったような素振りをして首を横に振った。
「――なんでもないわ、ごめんなさい」
そう言って絵里先輩は自分の作業に戻るも、こちらを見る視線は止まず、少し気まずい雰囲気が続くのだった。
――Eri Side――
私は何も言えなかった。目の前にしても言う勇気が出なかった。
――いつ、私のことを思い出してくれるの?
そんな喉元まで出掛かけた言葉を私は呑んだ。
久しぶりに会ったあの日、遊弥くんはそう遠くない未来で思い出すといっていた。だけど、二ヶ月以上経ったいまでも思い出す気配が微塵もない。
それを責めるつもりは毛頭ない。そもそも、失った記憶を取り戻すというのは数ヶ月単位じゃ足りない。それこそ数年かかるものだ。だから、仕方が無いと思っている。
だけど頭では理解できても気持ちのほうはそうはいかなかった。
こうして顔を合わせるたびに思い出すあの頃の楽しかった日々。友達がおらず、いつも一人で過ごしていた私に誰かと過ごす学校生活の楽しさを与えてくれた遊弥くん。
彼と過ごしたものは私にとって特別なものになっていた。彼にとっても私と過ごした日々が特別なものだと良いな、とそんなことも考えていた。
だけどそんな思い出もいま共有することは出来ず、私だけのものになってしまっている。
どうして…どうしてあの子たちのことは思い出せて私のことは思い出してくれないの……
「っ!!」
一瞬、変な考えが頭を過ぎった私は、頭を思い切り横に振る。
だけど、一度傾いた負の感情というものはそう簡単には消えてくれない。そしてそれはあらぬ考えへと発展していく。
どうして理事長も、遊弥くんも、あの子たちばかりに味方するのよ……
廃校を止めたいという思いはあの子たちとは変わらない。むしろ彼女たちより、その気持ちは強い。私にはこの学校を廃校させてはいけない理由が明確にある。それなのに、私に味方してくれる人はいない。
あの子たちの活動はマイナスにしかならない。なのにどうして、どうしてなのよ……!
私は焦りや苛立ちから渦巻く感情を自分の中で処理することが出来なくなってきていた。
「――絵里先輩」
「何かしら…」
「今日は帰りましょう」
私の様子を察したのか、遊弥君が帰宅の提案をしてきた。
「私はまだ残るわ。仕事が終わったのなら先に帰っていて良いわよ遊弥くん」
だけど私は素直に応じることは出来なかった。そんな私に遊弥君は小さく息を吐いた
「それじゃあ、この書類の確認だけお願いします」
「ええ――」
私は遊弥くんから受け取った書類に目を通す。
だがその書類には何も書き込まれておらず、真っ白だった。
「遊弥くん、これは――」
一体どういうこと、と聞こうとした瞬間、
ぐいっ――
「ひゃあん!?」
突然の感触に悲鳴が上がった。
「うわ、びっくりした!」
「びっくりしたのはこっちの台詞よ! いきなり何するの!?」
キッ、と睨む私に遊弥くんは真面目な顔で私に返す。
「いや、随分とお疲れみたいだから少し確認を――それにやっぱりというか、絵里先輩、肩が随分と凝り固まっていますよ。その様子じゃ、結構疲れも溜まってますよね?」
「それは――あっ、う…んんっ……」
「ファーストライブのとき絵里先輩は言ってました。辛そうな姿は見たくないって。俺も同じです。疲れてる絵里先輩はほっとけないです」
「遊弥くん……」
柔らかい口調で諭してくる遊弥くん。私のことをしっかり心配してくれているのが良くわかる。
良くわかる――のだけど、
「でも遊弥くんってば、私の心配を他所にいうこと聞いてくれなかったじゃない」
「ぐはっ!?」
渾身のカウンターが遊弥くんの懐に入った。
「それはどう説明するのかしら?」
きっと、いまの私は意地悪な顔をしているのだろう。だけど、それを理解しておきながら釣り上がっている口角はそのまま固定され続けたままだ。
「えっと、えーっと…」
普段から地頭は良いのにたまにこういうちょっとした、なんでもないことで悩む遊弥くんはなんというか、可愛らしく思う。
「――ええい! つべこべ言わず、休みなさい!! 逆らうというなら――」
「――――っ!!?」
ぐり、と肩をもむ力を強めてくる遊弥くん。私は声に鳴らない悲鳴を上げた。
「あ、ちょ……駄目よ遊弥くんっ! そんなぁ…強くしちゃ、私っ……!!」
「伊達に爺さんや姉さん、妹のマッサージをしてませんからね。覚悟してください。これ以上抵抗するなら、俺のテクニックで蕩けさせて上げましょう」
ぐいぐい、となんともいえないテクニックで私の肩を揉み解していく。
「あ、ああっ……ん、んう、あ、うん……あ、ああああああ――――!」
私の悲鳴が部屋に響き渡った。
いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に。