ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも燕尾です
ラブライブ46話目です。





衝突

 

 

 

 

 

――Yuya Side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――何か申し開きあるかしら?」

 

 

「大変申し訳ありませんでした」

 

俺は冷たい床の上で土下座していた。

頭を下げる俺を見下ろしているのは氷の女王こと絵里先輩。氷の女王というのはいま俺が勝手に名づけた通り名だ。

だがそれもあながち間違いとはいえない。俺を睨む絵里先輩のスカイブルーの瞳は、気のせいか、凍てつく様な光を放っていた。

絵里女王様――うん、なかなかよさそう。鞭を持ってる絵里先輩も似合ってるな。

そんな俺の邪念を感じ取ったのか先輩の纏う気迫がさらに増した。

 

「……遊弥くん?」

 

「はいごめんなさい!」

 

条件反射気味に頭を下げる。

 

「遊弥くんはもう少し丁寧な女の子の扱い方を知ったほうがいいわ」

 

「これでも、紳士的に扱っているんですけど…?」

 

「有無を言わさずに女の子を悶えさせるのが紳士的なのね。へぇ~」

 

「すみません」

 

もう絵里先輩の顔を見れない。怖い、怖すぎる。

 

「……はぁ。遊弥くんが素でそうやっているのはよく知ってるから、いいわ」

 

絵里先輩は一つため息を吐いて、荷物をまとめる。

 

「今日はもう帰りましょう。私も妹を待たせてるから、長くは残らないで続きは帰ってからやろうと思っていたし」

 

「だったら意地悪なこといわないで最初から言ってくれたらよかったのに――」

 

「ん? 何か言ったかしら、ゆ・う・や・くん?」

 

「何でもございません、絵里お嬢様。さあ、帰りましょう。荷物お持ちいたします」

 

「ふふ、苦しゅうないわ」

 

絵里先輩はふざけた口調で俺に荷物を渡してくる。

俺も荷物をまとめて絵里先輩と一緒に生徒会室を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹とは学院の校門で待ち合わせをしているという絵里先輩。

 

「亜里沙」

 

待ち合わせの場所の校門には亜里沙という絵里先輩の妹と思しき女の子と、もう一人、その子と話している女の子がいた。

 

「――海未?」

 

「え? 遊弥、と生徒会長……?」

 

「あ、お姉ちゃん。と、そちらは――」

 

絵里先輩の妹は俺を見や否や、目を見開いて、

 

「――お兄ちゃん!」

 

俺に抱きついてきた。

 

「お久しぶりですお兄ちゃん! また会えて嬉しいです!!」

 

「えっ? ちょっと!?」

 

ぎゅ~っ、と力を強める彼女に俺は戸惑いを隠せない。

 

「……遊弥、これはいったいどういうことですか……?」

 

隣にいる海未の威圧がビシバシと突き刺ささってくる。

 

「どうもなにも、俺だってよくわからん。絵里先輩の妹と会うのなんて――」

 

初めてだ、と言おうとしたとき、妹さんは不安げな瞳で俺を見上げた。

 

「お兄ちゃん、亜里沙のこと覚えていませんでしたか……?」

 

今にも泣き出しそうな顔。これを見て初めてなんて言えなかった。

 

「……いや、覚えてるよ。久しぶりだね、亜里沙ちゃん」

 

俺は咄嗟に嘘をついて、よしよし、と頭を撫でてあげると亜里沙ちゃんは嬉しそうにまた抱きつく力を込めてきた。

俺は撫でる手はそのままに、絵里先輩に視線で説明を求める。絵里先輩から返ってきたのはあとで説明するという目だ。

 

「……これは後で皆の前で説明してもらわなければなりませんね」

 

今にも人を殺せそうな冷気を纏った声色に俺は背筋を伸ばす。

これから迫り来る現実から目をそらすかのように俺は亜里沙ちゃんの頭を撫でる。

そのなかで俺はこれがどこか懐かしいような感覚に陥った。

亜里沙ちゃんと俺はこれが初対面のはず。だが、初対面でお兄ちゃんと呼んで、抱きついてまでくるのだ。亜里沙ちゃんの勘違いとは考えづらい。

――なら、どこで出会った?

 

「まさか――」

 

「ほら亜里沙、いつまでも抱きつかないの。遊弥君に迷惑でしょう?」

 

思考を打ち切るようなタイミングで絵里先輩は亜里沙ちゃんを引き剥がした。

だか、頭がチラチラと疼く。これはこの数ヵ月兆しがなかったあの前兆だ。

 

「遊弥、大丈夫ですか?」

 

「ああ…今はな……」

 

頭を押さえる俺の様子を悟った海未が俺を気遣う。そして、

 

「生徒会長、いくつか聞きたいことがあります。私たちのこと、それと遊弥のことについて――」

 

もしかしたら海未も色々と気づいているのかもしれない。

 

「……」

 

絵里先輩は一瞬の迷いを見せたあと、息を一つ吐いた。

 

「人のいない場所にいきましょうか」

 

 

 

 

 

「亜里沙、これで飲み物を買ってきてくれるかしら?」

 

「わかりました!」

 

絵里先輩は亜里沙ちゃんに紙幣を渡し飲み物を買って来るように指示する。わかりやすい人払いだが、今はありいがたい。

絵里先輩は亜里沙ちゃんが持っていた音楽プレイヤーを撫でる。

 

「……まさか、亜里沙からあなたに伝わるとは思ってなかったわ」

 

「前々から不思議には思っていたんです。遊弥は結構前から気づいていたみたいですけど」

 

「まあ、な…」

 

「遊弥、どうして言ってくれなかったのですか?」

 

「言うべきではないって思っただけだ。お互いのためにも」

 

どういうことですか、という海未に俺は絵里先輩に目を向ける。

 

「絵里先輩は別に評判を良くしようと動画をアップしたわけじゃないってことだ」

 

むしろ真逆で批判的な意見を募ろうとしていたはずだ。

 

「絵里先輩は周りの声を味方につけたかったんだよ。スクールアイドルの活動をやめさせる口実のために」

 

ただ絵里先輩の予想に反してファーストライブは周りには好評だった。

 

「もし絵里先輩がアップしたなんて知られたら穂乃果のことだ。お礼しに行こうなんていいかねない」

 

「たしかに、穂乃果なら言うでしょうね」

 

人の裏を読むことがあまり出来ずに、のほほんとした笑顔を浮かべる穂乃果の顔が浮かぶ。

 

「それに、どんな意図があっても結果的に俺たちのプラスになったからな。だから放っておいたんだよ」

 

「さすが遊弥くん…色々と見透かされていたわけね」

 

「ええ。だからどうせなら、最大限絵里先輩の嫌がる方向にもって行こうかと」

 

「性格悪いですね、遊弥」

 

「いいじゃないか。最初に絵里先輩が人を貶めるようなことしたんだから。仕返しぐらいしても、ね?」

 

口調は柔らかく出来ていたが、俺の目は笑っていなかった。

 

「……ええ、そうされても仕方ないわね」

 

納得しているように頷くも、口元は悔しそうに歪んでいた。

 

「どうして、そこまで…」

 

「遊弥くんの言う通り、あんな歌やダンスで人を魅せることは出来ないことを思い知らせるためよ」

 

「それはまた手厳しいことをいいますね、絵里先輩」

 

「当たり前よ。お遊びに学校の名を背負って欲しくないの。それなのに、人はどんどん増えて活動が続いているんですもの、いい迷惑よ」

 

「……」

 

こぶしを握り締めて沈痛な顔をする海未。それに対して俺は飄々としたように聞き続ける。

 

「どれだけ人気が出ようと、私から見たらスクールアイドルはみんな素人よ。A-RISEだって例外じゃない。だから私は――」

 

 

認めない

 

 

静かで、思い言葉が響く。

 

「あなたに、あなたなんかに――!」

 

「海未」

 

「っ、遊弥……」

 

怒り出しそうとした海未を手で制して、俺はふぅ、と息を吐いてひとこと、

 

「くだらないな」

 

「くだらない、ですって……」

 

底冷えた声が絵里先輩から出る。だが俺は真正面から受け止め、睨み返す。

 

「ああ、くだらない。こんなくだらないことばかり言う絵里先輩に廃校を何とかするなんて到底無理だな」

 

「なんですって……!」

 

「だってそうだろ? さっきから聞いていれば、自分の価値観を押し付けてばかり。理解しようとも、歩み寄ろうともしないんだ。自分の持っている確かな実力に固執して、人の努力にまるで目も向けようとしない。そんな人間が廃校を何とかするだなんて、それこそ片腹痛い」

 

「……っ」

 

「前に絵里先輩がすることはどこか薄っぺらいって言ったが、今の先輩は薄っぺらなんてものじゃない――なにもない」

 

いまの絵里先輩は自分の本心を隠し、蓋をして、他の不当性を突いて自分の正当性を証明しようとするだけの空虚な人間だ。

 

「そんなザマじゃ、理事長が認めないのもよく理解できる。絵里先輩が行動したって学院の評判は上がらないことをわかっているからだ」

 

俯き、歯を食いしばっている絵里先輩。身体は怒りに震え、握り締めている手からは爪が食い込んで少し血が出ているほどに。

 

「あなたに、何がわかるのよ! 私がどんな思いでやってると――」

 

それは以前にも言われた言葉。だが、俺は冷たく突き放す。

 

「さあ? 知らないし、なにより――たかが知れる思いなんて知る必要もない」

 

その言葉に絵里先輩の顔がはっきりと歪んだ。逆に俺は嘲笑ともいう笑みを浮かべる。

 

「せいぜいそのくだらないものを守っておけ。いまの絵里先輩にはそれがおに――」

 

その瞬間、右から衝撃が奔った。

 

「……」

 

ヒリヒリとする右頬。

 

「どうして、そんなことを言うのよ…」

 

小さく聞こえたその声にちらりと絵里先輩に視線を戻すと、彼女は今にもなきそうな顔をしていた。

 

「いつもあの子たちの味方をして、私がいつもどんな気持ちでいるかも知らないで――私のことを全部忘れて、なにも思い出さないで!」

 

「――!」

 

「生徒会長…あなたまさか……!?」

 

とっさに出たであろう言葉に、俺と海未は驚愕する。絵里先輩も洩れた本心に自分でも驚いていた。

 

「――っ!!」

 

そして絵里先輩は慌てて荷物を持ち、逃げるように走り去っていく。走った後には、ポツリポツリと、地面を濡らしていた。

残された俺と海未は呆然と立ち尽くしていた。

 

「あの――」

 

しかし、そんな俺たちに、声を欠ける存在が一人――絵里先輩の妹の亜里沙ちゃんだった。

 

「お兄ちゃん、大丈夫ですか?」

 

「亜里沙ちゃん、見てたのか…」

 

困ったように笑う俺に亜里沙ちゃんも申し訳なく頷いた。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃんが叩いて」

 

亜里沙ちゃんは叩かれた頬を優しく撫でてくれる。

 

「帰ったらお姉ちゃんに注意しておきます」

 

「いいんだ、それをされるだけのことを俺は言ったからね。絵里先輩は悪くないよ」

 

「ですけど…叩くのはよくないと思います」

 

納得のいかない亜里沙ちゃんの肩に手を置く。

 

「そうかもしれないけど、お願い。亜里沙ちゃんは絵里先輩のそばにいてあげてほしい。じゃないと、先輩は本当に一人になっちゃうから…」

 

「…わかりました」

 

俺の懇願に、亜里沙ちゃんはしぶしぶというように応えてくれた。

 

「それじゃあ私はお姉ちゃんを追いかけます。お兄ちゃん、海未さん。さようなら」

 

「ああ、またね」

 

「気をつけて帰ってください」

 

トコトコと絵里先輩の後を追う。しかし、亜里沙ちゃんは急に立ち止まり、あの! と離れたところで大きな声を出した。

 

「私、μ's大好きです! 頑張ってください!!」

 

屈託のない笑顔で言う亜里沙ちゃんに、俺も海未も笑顔で手を振る。

亜里沙ちゃんは一礼してから、今度こそ去っていった。

残った俺と海未の間に少しの静寂が流れる。

 

「――遊弥、大丈夫ですか?」

 

海未が心配そうに声をかけてくれるも俺は応えることができなかった。

 

「……っ、はっ……っ…」

 

頭が割れるように痛い。その場に立っていられないほどに。キーンと頭の中で響く音に俺は平衡を失い、倒れる。

 

「遊弥、しっかりしてください! 遊弥――!!」

 

俺はそのまま意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Eri Side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は家の自室で後悔の念に襲われていた。

持て余した自分の気持ちをぶつけて、遊弥くんの頬をたたいて、逃げていって。

あの場ではどうしても許せなかった。いままでのことを、私のやってきたこと全てを否定されて。

そしてなにより、遊弥くんに理解されなかったことが悲しかった。

 

「私はどうしても廃校を止めないといけないの」

 

音ノ木坂学院の生徒会長として、そして――音ノ木坂が母校であるお婆様のために。

そのために私は頑張ってきた。どうすれば生徒が集まるか、何か特別なことが出来ないかを考えて。それなのに――

 

 

――くだらない

 

 

その一言は私の胸に突き刺さった。

 

「なによ…なんなのよ……」

 

冷たく言い放たれたその言葉が頭にこびりついて離れない。

 

 

「お姉ちゃん、いる?」

 

 

そんな渦巻く思考を薄れさせるように、妹の亜里沙が扉をノックしてきた。

 

「…ええ、居るわ」

 

私は目を拭い、亜里沙を迎え入れる。

 

「どうしたの、亜里沙?」

 

「お姉ちゃんに聞きたいことがあるの」

 

「聞きたいこと?」

 

冷静に問いかける私に亜里沙は少し怒るように言った。

 

「どうして、お兄ちゃんの頬を叩いたの?」

 

「っ、それは――」

 

まさか見られていたとは思わなかった。私は言葉に詰まる。しかし、見つめてくる亜里沙の視線から逃げることはできなかった。

 

「……遊弥くんと喧嘩しちゃったのよ。それで私も熱くなってしまったの」

 

「ケンカ……お姉ちゃんはお兄ちゃんのこと嫌いになったの?」

 

「そんなことないわ…ただ、遊弥くんには嫌われてしまったかもしれないわね」

 

そうなっても仕方ないと思っている。言葉での喧嘩に手を挙げてしまったのだから。

だけど亜里沙はそれを否定した。

 

「そんなことないよ。お兄ちゃんがお姉ちゃんを嫌ったなんて」

 

「どうしてそういえるの?」

 

「だってお兄ちゃん、俺はいいからお姉ちゃんのそばに居てあげてって言ってたの。居なくなったお姉ちゃんのことを心配してた」

 

「!」

 

「嫌いになった人を心配する人がいるのかな?」

 

亜里沙は諭すような笑顔を浮かべていた。

 

「今度お兄ちゃんと会ったら、ちゃんと仲直りすること。わかった?」

 

「……そうね。ちゃんと仲直りするわ」

 

よしよし、と頭を撫でてくる亜里沙に苦笑いしながらも、私は受け入れる。妹に年下の扱いをされているのだが、悪い気はしなかった。

学校に行ったら叩いたこと、きちんと謝ろう。

そう決意したものの、私はそれができないとは、このとき微塵も思っていなかった。

 

 

 

 

 

 






いかがだったでしょうか?
ではまた次回に…
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