ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

52 / 102


どうも、燕尾です。
52話……結構続いてますねぇ……






アキバへ行こう!

 

 

 

絵里と希先輩が加わり、九人となったμ'sのライブ――オープンキャンパスでのライブは見事に成功を収めた。

そして、それは学院にいい影響をもたらした。

オープンキャンパス後に全校生徒に伝えられたのは廃校の延期。中学生たちへ実施したアンケートの反応がよかったのだ。

しかしまだ延期しただけ。廃校が撤回されたわけではないので気を抜くことは出来ない。だが、これは四月の状況を考えると大きな進歩でその点は喜ぶことだろう。

また、アイドル研究部にも変化が訪れた。

絵里と希先輩が加入したのもそうだが、オープンキャンパスの実績が認められてもともと使ってた部屋の隣の広い部室が与えられた。

またラブライブの出場についてだが、テスト期間中に受けられなかった俺は追試、という形でテストを受けた。

結果は言うまでもなく問題なかったのだが、作成されたテスト問題に問題があった。

俺のテストの難易度が格段に跳ね上がっていたのだ。恐らく追試のテストの問題のほとんどを共学反対派の教師たちが作ったのだろう。俺を学力不足で追い出すために。

ここ最近はなりを潜めていたのだが、そろそろ本格化するだろうと俺は考えている。

 

「まあ、そんなことしなくてもいいと思うんだけどなあ」

 

楽観的に呟く俺はいま、理事長室を目指して歩いていた。放送で理事長直々に呼ばれたからだ。

俺はドアをノックして反応を待つ。

 

「どうぞ」

 

「失礼します、理事長」

 

「いきなり呼び出してごめんなさいね遊弥くん。体調の方はどう?」

 

「問題ありません。記憶が戻った今も、状態は万全です」

 

「それならよかったわ」

 

「それで、話というのは?」

 

大体予想はつくのだが、俺は問いかける。

すると雛さん――理事長は頭を下げた。

 

「まずは謝罪を。今回のあなたの追試のテスト、難易度に問題がありました。あれは高校生が出来る範囲ではありませんでした」

 

「でしょうね。国語はともかく他の教科は大学のレベルでしたから」

 

「ええ、私が出張の間に学院長を筆頭として追試日程とかを進めていたの、他の子たちとは別に」

 

まあ、万が一他の人と一緒にやって問題が他の子に渡ったら大変だからな。

 

「それに最近、反対派の人たちの動向が怪しくなっているわ」

 

「分かります。なにやら生徒を抱きこんでいるみたいですし」

 

「知ってたの?」

 

「ええ。万が一に備えて――というところでしょうね」

 

理事長は明らかに目を見開いた。それから、申し訳なさそうに言う。

 

「そこまで、気付いていたのね」

 

「まあ、この状況にいる人間だったら誰だって考えますよ」

 

「ごめんなさいね……」

 

「いや、そこは喜ぶべきところでしょう? それだけ順調ってことなんですから」

 

「それは皮肉?」

 

「いえ、純粋な賞賛です。ほぼ決まったような廃校の状況をここまで改善できたんですから。だからこそ学院長たちも小さな嫌がらせと準備だけで留めているんでしょうし」

 

「テスト問題の不公平は学院としては大きな問題よ…」

 

頭が痛いという風に理事長はため息を吐いた。

ちなみにこのことは誰にも言っていない。こんなのが校内、校外に伝わればそれこそ音乃木坂学院は終わる。

だからこそ俺は理事長への報告だけに留めている。

まあ、問題の全てを理事長へと丸投げしているとも取れなくもないが、俺がことを大きくするより余程良いだろう。

 

「とりあえず事実確認を行ったうえで、実際に作成した教師たちは減俸処分。理事会に報告したわ」

 

「理事会に報告って、大丈夫なんですか? もし理事会が大々的に世間に公表することを決定したら……」

 

「生徒に不利益をかぶせて体制維持しようとする学院なんて、クソ喰らえよ」

 

「あなたがそれを言ったら駄目でしょうに……」

 

理事長が自分の学院をクソ喰らえって……雛さん、かなり腹に据えかねているんだな。

だが、雛さんの表情が曇る。

 

「でも、そうはいっても私も所詮同じよ。自分で公表したら良いだけなのにその是非を理事会に投げたのだから」

 

「そうですか? 俺はそうは思わないですけど?」

 

理事長はやるべきことは全てやっている。然るべき処分を下し、報告すべきところに報告している。

 

「マスコミや世間なんてただの傍観者ですよ。当事者じゃありません。そんな連中の戯言なんて受け流しておけば良いんですよ」

 

「それで済めばいいのだけれど、そうさせてくれないのが世の中というものよ」

 

集団真理を得た人間ほど調子に乗りやすく、真実を捻じ曲げる。

 

「それはそうかもしれないですけど、雛さんが罪悪感を感じる必要はないってことです。堂々としていればいいんです。問題があったから対応をした、今はこういう対策をする、それで何か問題があるか、そう言って終わりです」

 

「遊弥くんは豪胆ね」

 

雛さんは苦笑いする。恐らく呆れられてもいるのだろう。そんな雛さんに対して俺はそんなことないです、と返して、

 

「そこらのどうでもいい他人に興味がないだけです」

 

俺はにこやかに言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室から出た俺は廊下を急いで走っていることりと出会った。

 

「ことり?」

 

「ぴぃ!? ゆ、ゆーくん!?」

 

「なんでそんなに驚いているんだよ。それに何か急いでいるみたいだけど、何かあったのか?」

 

「え、えーっと、それは、その……」

 

ただ聞いているだけなのに、ことりは何かを隠すように言葉を詰まらせていた。何か言いづらいことがあるらしい。なので俺から会話を引き出すことにした。

 

「今日も練習に参加しないのか? ここ最近あまり参加していないみたいけど?」

 

「う、うん…その、用事があって……ごめんね?」

 

用事、か。高校生が用事と称して数日間も時間を使うものはそこまでない。ということは

 

「――バイトか?」

 

ことりは申し訳なさそうに頷いた。

 

「別にそんなにビクビクしなくてもいい。別にバイトで休むのが悪いとは思ってないから」

 

「ゆーくん……」

 

「店からしたらことりは重要な人材だからな。結構シフト出て欲しいって言われているんだろ?」

 

「うん……」

 

「さすがは秋葉原伝説のカリスマメイド、ミナリンスキーってところだな」

 

「ゆーくん、いまその名前出すのは悪意があるよ!?」

 

「まあ純粋に資金が欲しいのか、それともほかの目的があるのか分からないが、別に俺は何も言わないよ」

 

ことりだって何か思うところがあるのだろう。例えば、自分を変えたい、変わってみたい――とか。

 

「ありがとう、ゆーくん。それで、その……もう一つお願いがあるんだけど」

 

「ああ、分かってる。皆にはぼかして言っておくよ」

 

恐らくμ'sの皆には用事で押し通しているのだろう。だが、そろそろ誤魔化しが利かなくなっていると思う。

俺はそろそろバレるだろうなと思いつつ、それは口にせずにことりを見送った。

 

 

 

 

 

「ねえゆうくん、最近ことりちゃんの様子がおかしいと思わない?」

 

「そうか? いつも通りだとは思うけど…」

 

どうやらもう疑われているみたいだぞ、ことり。

まあ、結構あからさまな態度を取っていたし仕方が無いことだろう。

 

「だって、ここ最近ことりちゃん用事って言って休むこと多いから。何かあったのかなって。なんか隠しているみたいだし」

 

「まあその用事が立て込んでいるじゃないか? 誰だってそういうことはあるだろう。それに、休んでいるって言っても大抵はにこ先輩が考えたどうでもいいことの日ばかり――」

 

そこで俺の後頭部に衝撃が奔り、言葉が途切れる。

振り向くとそこにはこめかみに青筋を立ててスリッパを構えたにこ先輩。その後ろには絵里と希先輩が苦笑いしていた。

 

「遊弥、あんた最近ほんと調子に乗ってきていないかしら?」

 

「そんなことないです、にこ先輩の勘違いかと思いますよなのでその振り上げたスリッパを下ろしましょう、はい」

 

「そう……それが遺言ね」

 

「スリッパ装備なのにどうしてこんなに迫力があるんだ……! ごめんなさい、俺が悪かったです。だからどうかお慈悲を、お慈悲を~!?」

 

「覚悟なさい! はあああああああああ!!」

 

「ぐあああああああああ!!!!」

 

にこ先輩からの攻撃に俺は断末魔かの如く悲鳴をあげながら倒れる。

 

「ふっ……悪は滅びた」

 

刀を納めるがごとくスリッパをしまうにこ先輩。

 

「満足したかしら。したのなら今日どうするか決めたいのだけれど?」

 

俺とにこ先輩の渾身の茶番をたった一言で流す絵里。

 

「ま、そういうわけで特にことりのことついては特に気にはしていない」

 

「……結構本気でやったのに、頑丈な奴ね」

 

にこ先輩がなんとも言いがたい顔をする。アレで本気なんて笑わせてくれるわ。俺からしてみれば蚊に刺された程度だ。

 

「それで、本題に戻るとして今日はどうするんだ? にこ先輩に付き合っていくのか――アイドルショップに」

 

「せっかくだからそうしようよ、私も行ってみてみたいし!」

 

「私も最近行ってないので、行きたいです……」

 

興味津々でノリノリの穂乃果は頷き、アイドル大好きの花陽は控え目ながらも主張する。

ほかは? と聞くと皆も異論は無いといった様子だった。

 

「それじゃあ、行ってみよー!!」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

ぞろぞろと部室を出て行く中、にこ先輩が呼び止める。

 

「あんたたち、その格好で行くつもり?」

 

「その格好も何も、いまから帰って着替えるとなると時間が無いわよ?」

 

絵里がそういうも、にこ先輩は違う! と声を上げる。

 

「絵里や希が加入してからさらに注目されたあたしたちがこの姿のままで行ったら騒ぎになるかもしれないでしょ!」

 

話が読めてきた。またこのちびっ子先輩はどうでもいいことを言うのだろう。

 

「つまり、どういうことかしら?」

 

よく理解できない絵里ににこ先輩は声高らかに言った。

 

「つまりいまから――変装するわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、身バレを防ぐために変装したのは良いが――」

 

前に言ったことのある秋葉原のアイドルショップ。そこの店前で俺はため息を吐いた。

 

「お前ら、ほとんど不審者だぞ……」

 

「不審者は失礼でしょ!!」

 

にこ先輩が噛み付く。

いやだって、こんな暑いのにコート着てマフラー巻いてサングラスかけている輩なんて周りを見ても皆無だ。

カモフラージュするつもりが逆に目立ってるぞ。

 

「――っていうか、何であんたは変装してないのよ!?」

 

「嫌だからに決まってるじゃないですか。バカみたいだし、暑いし、バカみたいだし」

 

「こ、こいつ…二回も……!!」

 

「バカみたいって……流石に傷つくわ」

 

「遊弥くんは容赦ないなぁ~」

 

マフラーとサングラスを取りながら落ち込んだように言う絵里と希先輩。

 

「というか、何で二人もやってるんですか」

 

「んー、うちはノリやな」

 

うん、分かってました。あんたがそう言う人間だってことは。

続けて絵里に視線を向けると絵里は慌てていいわけを始める!

 

「だ、だって、にこがやるべきことって言ってたから!」

 

「だからって真に受ける奴があるか、ポンコツエリーチカ」

 

「あー! ポンコツエリーチカって言った!! 言ってはいけないこと言ったわね!!」

 

絵里がガクガクと肩を揺らす。

 

「遊弥くん、ポンコツエリーチカってなんなん?」

 

「中学生の頃俺がつけた名称ですよ」

 

絵里は言ったことを理解できずに的はずれなことをすることがあるのだ。しかも割りと頻度は多目で。

 

「絵里ってしっかりしてるようでそうじゃないところが多いんで、なにかしでかした時に言ってたんです。それがポンコツエリーチカ」

 

「ポンコツじゃないわよ!」

 

いやポンコツだった。書類のチェックは甘いわ、配布物をごちゃ混ぜにするわ、完成したデータに別のものを上書き保存するわエトセトラエトセトラで、それで違うと言われても説得力の欠片もない。

それに俺は昔は賢い可愛いエリーチカって呼ばれてたと言い張っていたので新たに称号を一つ追加しただけだ。

 

「賢い可愛いポンコツエリーチカ、ほら呼びやすさ的にも問題ないだろ?」

 

「意味に問題あるのよ! 馬鹿!!」

 

「はっはっは、効かんなぁ」

 

「もぉー!」

 

ポカポカと拳をいれてくる絵里だが、全然痛くない。

 

「遊弥くん、その辺にしておき? でないと――」

 

絵里と戯れていたせいで希先輩の声が聞こえなかった俺は調子に乗っていた。そして、

 

「効かんきか――ごはぁ!?」

 

絵里からではない、強い衝撃が身体に打ち込まれる。

 

「楽しそうですね? 遊弥?」

 

「ゆうくん、私たちも混ぜてほしいなぁ?」

 

悶絶する俺の目の前に仁王立ちをしていたのは、にこ先輩流変装をしている海未と穂乃果。

「えっ…ちょ、二人とも? なんでそんなにじり寄って来るんだ……?」

 

嫌な予感に後ずさるも誰かの脚にぶつかる。

 

「遊先輩、どこにいくにゃ?」

 

「遊弥先輩、逃がしませんよ……?」

 

「覚悟はいいかしら?」

 

そこには凛、花陽、真姫が俺の逃げ道を塞いでいた。

前門の二年生、後門の一年生に俺は身体が震えた。三年生に助けを求めるように視線を送る。しかし、

 

「自業自得よ。しっかり絞ってもらいなさい」

 

「……ぷいっ」

 

「頑張ってな、遊弥くん?」

 

どうやら天は我を見放したようだった。

 

「ま、待て…待って、待ってください。てか、どうして皆怒っているんだ?! ちょ、お願いだから待ってください。そこは、そこだけはやめろ。いや、やめてくださ……ア――――!!!!」

 

アキバの町に、俺の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回にお会いしましょう!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。