ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どもども燕尾です。
54話目です。






歌詞作り

 

 

 

「……」

 

とある放課後、ことりはノートを目の前に、神妙な面持ちで何かを考えていた。

そしてその何かを思いついたのか、目をくわっと見開いてノートに書き込んでいく。

 

「チョコレートパフェ、おいしい……生地がパリパリのクレープ、食べたい……はちわれの猫、可愛い……五本指ソックス……気持ち良い……」

 

するとことりはうぅ、と呻いて、ついに涙目になりながら机に伏した。

 

「思いつかないよぉ――!!」

 

「「「……」」」

 

俺、穂乃果、海未の三人は頭を抱えることりを教室の外からバレないように見守っている。

こうなった事の発端はことりのバイトが知られた次の日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキバでライブよ!!」

 

広くなったアイドル研究部の部室で全員が集まったところでそういったのは絵里だった。

 

「アキバでライブですか?」

 

「それって……」

 

「路上ライブ!?」

 

穂乃果、海未、ことりの三人の問いかけに、絵里は頷いた。

 

「昨日遊弥くんと話し合ったの。そろそろ大きなことをしても良いんじゃないかって」

 

「アキバといえばA-RISEのお膝元よ!?」

 

「だが、別にアキバはA-RISEのものじゃない。むしろ、A-RISEだってアキバのごく一部でしかない」

 

「ええ。遊弥くんの言う通りアキバ=A-RISEじゃないの。誰が何をしようと自由な場所…私も実際に目にしてそう思ったわ」

 

「でも、随分大胆ね?」

 

「さっきも言っただろ真姫。そろそろ大きなことをしても良いだろうって」

 

「確かに。それに、大々的なことをするのはそれだけで面白そうやん?」

 

「アキバはアイドルファンの聖地でもある、だからこそあそこで認められるパフォーマンスが出来れば大きな宣伝にもなるわ」

 

どうかしら、と皆の反応を確認する絵里。

 

「良いと思います!」

 

「楽しそう!!」

 

すると即答する穂乃果とことり。

 

「しかし、すごい人では…?」

 

「人が居なかったらやる意味ないでしょ」

 

「そ、それは……」

 

にこ先輩の当たり前の言葉に海未がたじろぐ。まあ、海未は基本的に人前が苦手だからな。

 

「凛も賛成ー!!」

 

「じゃ、じゃあ私も!!」

 

「……決まりね」

 

各々の考えが鎖交する。楽しそうだと乗り気なもの、不安に思うもの。いろんな考えはあれど総合して皆の意見はいい方向に一致していた。

 

「それじゃあ早速日程を――」

 

「ストップ。と、その前に」

 

はやる気持ちが抑えきれず進めようとする穂乃果。そこで絵里がストップをかけた。

アキバでライブをして認めてもらう。それが今回の最終目標だが、絵里の狙い――俺と絵里が考えたことはまだ他にあった。そしてそれこそがメインとなる目的だ。

俺と絵里はお互いの顔を見合わせて頷いた。

 

「今回の作詞はいつもと違って、アキバのことよく知っている人に書いてもらうべきだと思うの――ことりさん」

 

「えっ、わたし!?」

 

話を振られて驚くことり。これが俺と絵里が出した結論だった。

 

「ええ。アキバ(あの街)でずっとアルバイトしていたんでしょ? そこで歌うのに相応しい歌詞が考えられると思うの。頼めるかしら?」

 

「――いいよ! すごくいい!!」

 

ことりが答えるよりも先に穂乃果が言った。

 

「やったほうが良いです。ことりならアキバに相応しい、いい歌詞が書けますよ!」

 

「凛もことり先輩のあまあまな歌詞で歌いたいにゃー!」

 

「そ、そうかな?」

 

あまあまなって、それは褒めているのか凛よ…

 

「ちゃんといい歌詞書きなさいよ?」

 

「期待しているわ」

 

「頑張ってね!」

 

「う、うん……」

 

みんなの期待にことりはやる気のあるようにうなずいた。しかし、

 

「……不安、か」

 

ノートを見つめることりの瞳は揺らいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてことりが隠していた不安は現実のものとなっていた。

先ほどからずっとペンを走らせて入るものの、それが歌詞になることはなくどんどん迷走している。

 

「ことりも穂乃果と変わらないセンスだったんだな……」

 

「ちょっ、それは私にもことりちゃんにも失礼だよゆうくん!?」

 

「だってなぁ…おまんじゅう、うぐいすだんご、もうあきた。だぞ?」

 

「う゛っ…それを言われると辛いけど……」

 

事実を突きつけられた穂乃果は苦い顔をする。

 

「まあ、こうしてことりが頭を悩ませているのを見ると海未のセンスがどれだけいいのかわかるな。さすが中学生にポエムを書くだけのことは――っ!?」

 

そこまで言うと、海未に首根っこをつかまれた。

 

「ふふふ、遊弥ぁ?」

 

ぎゅーっとにっこりと笑いながら力を籠める海未。

 

「褒めているのか貶めているのか、どっちなのかをはっきり聞こうじゃありませんか?」

 

イタイイタイイタイ――ッ!? なにこの力!! やばい、首がへし折れるぅぅ!?

 

「ご、ごめんなさい…少し冗談を入れてしまいました。でも海未がいつも頑張っていたのはよく理解できています」

 

「――っ、まったくっ、そう言っても誤魔化されませんからねっ!!」

 

少し顔を紅くしながらそっぽを向いて、海未は力を緩めてくれた。

俺は首を撫でつつ、もう一度ことりの様子を窺う。

 

「ふわふわしたもの可愛いな、はいっ! 後はマカロンたくさん並べたら? カラフルでしーあーわーせ♪ るーるーるーるー……ぐすっ」

 

やっぱり無理だよぉ!! と叫ぶことり。

 

「やっぱり苦戦しているようですね」

 

「うん……」

 

「創作活動は一日にして成らず、もう少し様子を見てみようか」

 

「うぅ…穂乃果ちゃん、海未ちゃん……」

 

助けを求めるようなことりの声が静かな教室に響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日、ことりはずっと歌詞作りに頭を悩ませていた。

授業中も、昼休みも、放課後も……先生から注意されるほどことりは考え込んでいた。

だが、それでも依然としてノートは真っ白だった。

ことりのため息が教室へと溶ける。

 

「やっぱり、わたしじゃ……」

 

心が折れかけていることり。今にもパンクしそうな彼女にどうしたものかと穂乃果と海未は眉を顰める。

 

「ねえゆうくん。どうにかことりちゃんを助けてあげられないかな……?」

 

「……今回ばかりは穂乃果たちが手を差し伸べるのは良くない」

 

「どういうことですか?」

 

「覚えているか、メイド喫茶でことりが言っていたこと」

 

二人は静かに頷く。

 

「自分には何もない、ただ二人の後を付いているだけ――ことりはそう思っているんだ。俺たちから見たらそんなことないと思うけどな」

 

だが、俺たちはことりではない。ことりが何を考えて、何を思っているのか、それを本心から言葉で言ってくれないと知り得ないことだ。

 

「だから俺と絵里で考えたんだ。少しでも自分に自信が持てそうな、ことりが二人と足をそろえて並んで歩いているって胸張って言えるようなことをさせようって」

 

「それがアキバでのライブだったんですね」

 

海未が納得したように言う。

 

「でも、ゆうくん!」

 

穂乃果の言いたいことはわかる。だから俺は声のでかい穂乃果の口を押さえた。

 

「ああ…だがそれは少しお節介が過ぎたみたいだな。このままじゃことりはさらに自信を失いそうだ」

 

そういうことじゃなかったんだ、結局は。

俺は追い詰められていることりを見て、少し反省する。

 

「とりあえず、俺に考えがある」

 

俺は最初に穂乃果に耳打ちをする。

 

「ふむふむ……」

 

続いて海未。

 

「なるほど…」

 

俺の考えを聞いた二人は笑顔で頷いた。

 

「うん、いいと思う!」

 

「ええ、現状を打開するのに十分だと思います」

 

二人の了承を得たところで、俺はことりに歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ことり」

 

「ゆーくん……」

 

「苦戦しているみたいだな。大丈夫か?」

 

「ゆーくん、わたし…わたし……う、うわーん!!」

 

俺の姿を確認するや否や、ことりは泣きながら腰に抱きついてきた。

 

「わっ…と、大丈夫そうじゃないみたいだな」

 

「ずっと考えてるんだけど、なにも思いつかなくてぇ、わたし、もう……!!」

 

「ああ、難しいよな。ことりずっと考えていたもんな」

 

俺は安心させるようにことりの頭を撫でる。

 

「でもなことり…一人じゃ無理って思うのなら頼ってもよかったんだ」

 

「うぅ、だってぇ……」

 

「助けて、って言ってよかったんだぞ?」

 

「でもそれじゃあ、なにも変わらないから! ずっと皆の後ろを歩いてばかりで、隣に並べない……!!」

 

そんなことない、なんて言葉をいまことりに言うのは無責任だ。

 

「せっかくゆーくんや絵里先輩がわたしの為に機会作ってくれたから、みんなも期待してくれてたから、それに応えなきゃって、わたし一人でやらなきゃって!」

 

そこまで気付いていたのか、ことり。

 

「だけど出来なかった……」

 

うな垂れることりはもう心が折れていたのだろう。そんな彼女を立ち直らせるのにはどうしたら良い?

 

「やっぱりわたしは――」

 

「ことり!」

 

「ぴっ!?」

 

その先は言わせまいと、俺はことりの方をギュッと掴んだ。突然のことに驚きと戸惑いでことりは身体をこわばらせている。

 

「それ以上は言ったら駄目だ、ことり」

 

「ゆーくん……」

 

「ことりは十分、皆の隣に立っているよ」

 

「そんなこと――」

 

「ある。ことりが気付いていないだけだ。そもそも、ことりが言う隣に並ぶって言うのはなんだ? 何かを成し遂げることか? それとも、穂乃果たちの前に立つことか?」

 

「それは…」

 

ことりは口を閉ざす。

やっぱり自分でも考えられてはいなかったみたいだ。漠然とことりがそう思い込んでいただけで。

 

「俺はな、ことりたち三人はちゃんと対等な関係を築けていると思っている」

 

「どうして?」

 

「人なんてそれぞれだ。穂乃果にも海未にもことりにも、誰かができて自分にはできないことがあるだろ?」

 

「それは、そうだけど……」

 

「例えばそうだな…ことりの言葉で言えば、穂乃果は人を引っ張っていける。海未はしっかりとしていて真面目だ。だが穂乃果は加減を知らない時があって、海未は融通が利かない時がある」

 

思い当たる節はあるだろう? と問いかけると、ことりは申し訳なさそうだが頷いた。

 

「その点、ことりは穂乃果のように人を引っ張るような力や海未のようにしっかりしていないことがある。だが二人よりも柔軟な考え方ができて、着地点を上手く見つけることができる。自分では自覚ないと思うけどな」

 

でもそれはあの二人じゃ出来ないことだ。

 

「だからことりはしっかりと二人の隣にいる。俺はそう思っている」

 

「うん…」

 

「変わりたいって、新しい自分を見つけようとする努力は間違いじゃない。でもなことり、そこだけに囚われすぎて今の自分を全部否定するもんじゃない。今のことりだからこそある魅力もあるんだから」

 

「うん……!」

 

ことりはまた涙ぐんでいた。そして、今度はことりのほうからギュッと腕に力を入れてきた。

 

「ありがとうゆーくん。ありがとうね……」

 

涙を見せまいとすることり。

俺は彼女が満足するまで、その場を動くことはしなかった。

 

 

 

 

 

それから数分後、ことりはゆっくりと俺から離れた。

 

「落ち着いたか?」

 

「う、うん……ごめんね、わたしの涙で制服がぐちょぐちょに……」

 

俺の身体にことりが顔をうずめていたせいで、俺の制服は涙で濡れていた。

 

「別に気にするな。それで、どうする? 歌詞作り」

 

「えっと、その……」

 

ことりは顔を紅くして、もじもじとする。

 

「助けて、欲しいなぁって。手伝って、ください」

 

その言葉に俺は小さく笑う。

 

「そういうことで、穂乃果、海未。二人も手伝ってくれ」

 

そういう俺にことりはえっ!? と驚いた顔をする。

彼女の視線の先――教室の入り口には穂乃果と海未が立っている。

 

「二人とも、どうして……」

 

「ことりが心配でずっと様子を見てたんだよ」

 

なっ、と確認すると二人は笑顔で頷いた。

 

「水臭いですよ、ことり」

 

「ことりちゃん、一人が駄目ならみんなで考えよう! とっておきの方法で!!」

 

「とっておき?」

 

「そ、とっておきだ。ずっと同じ場所で考えるよりも、いろんなことをしたり、見たりしたほうが何かヒントが得られそうだろ。ということで――アキバに行こうか」

 

穂乃果と海未はことりの手をとって教室から出るのだった。

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた次回にお会いしましょう。


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