どうも燕尾です!!
久しぶりの更新です。院の中間発表が本当に地獄で地獄で……
でもそれも終わったから少し余裕が出来たぜ、ひゃっほう!!
というわけで、第58話です。
俺は海を眺めながらそんなことを思っていた。
「おーい、はやくはやくー!!」
にこが先陣を切って皆に向かって手を振る。
「こっちにゃー!」
「うんっ!」
凛に手を引かれる花陽。
「わー!」
「あはは!」
元気よく走る穂乃果とその後についていく穂乃果。
「ほらほら!」
「えっ、ちょっと!?」
絵里に押され戸惑う海未。
その誰もが練習着ではなく、水着を纏っていた。
「そーれ、いくよ!」
「それそれ!!」
「食らうにゃー!」
「えっ!? おっ、わ、わぁー!?」
「あはははは、穂乃果ちゃん、撃――わぷぷぷぷ!?」
「えっ、ちょ!? あぶぶぶぶ!」
「凛ちゃん、にこちゃん!?」
「うふふ。隙ありだよ。凛ちゃん、にこちゃん♪」
海で笑顔で楽しそうに戯れる女の子たち。
ああ。ここは
「ちょ、やめてください希先輩!」
「んー? なにか言った海未ちゃん?」
「……っ、希っ!!」
そんな皆の姿をカメラに収めていく希。
あ、希。そのデータ個人的に後で送ってくれないか? 何ならお金払うから。無修正でよろしく頼む。
「遊弥くん? なにかよからぬことを考えてないかしら?」
「……なにも考えていないぞ?」
いつの間にか隣に来ていた絵里がジト目で釘を刺してくる。
「……」
しかしそれも一瞬のこと。絵里はちらちら俺を見たり、逆に俺から視線を逸らしたりしている。
「どうした、絵里?」
「えっ? えーっと…その、どうかしら…私の水着……」
顔を紅くしながらそんなことを聞いてくる絵里。
絵里が着ているのはホルダーネックのタイプの水着。上が白色で純真さを出しながら、下が紫色と大人っぽさを醸し出している。
絵里はモデルのような体つきをしているのも相まって、どこか魅惑的でもあった。
「そ、その…私から聞いたのもあるのだけれど、あまりじろじろと見ないでほしいわ……」
胸を押さえながら恥らう絵里に、俺も顔が熱くなった。
「わ、悪い。でも…よく似合っている……その、大人らしさもあるが、今の絵里らしさもでていると思う」
「あ、ありがとう……」
「「……」」
なんとも言えない空気が俺たちの間を漂う。
互いに互いの様子を確認しようとしたせいか、チラリと見ると絵里と目が合う。
「「っ!!」」
俺と絵里は顔を真っ赤にして顔を逸らす。すると――
「ゆーうーくーん?」
「ゆーくん?」
「……遊弥?」
「……」
「絵里ちゃんだけなのかな?」
「……なにがだ?」
「わたしたちを見ても」
「なにも思いませんか?」
三人とも笑顔なのだが、どこか気迫迫っているような気がする。
「えーっと、三人とも…よく似合っている、ぞ?」
「「「……」」」
似合っていると思うのは本心で褒めているはずなのだが、じーっと不満そうに睨んでくる三人。
「お、おい。穂乃果、海未、ことり……? 一体どうしたんだ……?」
「なんでもないっ! ゆうくんの馬鹿!!」
「なんでもないよっ! ゆーくんのバカァ!!」
「何でもありませんっ! 遊弥の馬鹿!!」
三人揃って俺を罵り、ふんっ、と歩き去っていく。
「一体何がいけなかったんだ?」
「それを本気で言っているあたり、さすが遊弥くんよね……でも、穂乃果たちには悪いけど、少しはリードできたのかしら?」
絵里の小さな呟きに、首を傾げる俺は気付くことは無かった。
それからは皆でスイカ割りをしたり、ビーチボールをしたり、海ならではの遊びをしていた。
しかし、真姫だけはパラソルの下で椅子に座って本を読むばかりだった。何かに誘ってもそっぽを向いて、私はいい、という真姫に俺と絵里、希は苦笑いする。
あまりしつこくいうのもなんなのでとりあえず真姫は好きなようにさせておくことにした。
「――で、どうして俺はこんな状況になっているのだろうか?」
何かこのやり取り、既視感!!
「ふふふ、それはゆうくんが強情だからだよ!」
「さあ、遊弥。観念するのです」
正面からは穂乃果と海未がわきわきと怪しい手つきで迫ってきていた。
「さあ、遊くん覚悟するにゃー!」
「私たちの水着をまじまじ見ていたんだから、あんたも見せなさい遊弥」
後ろからは凛とにこがにじり寄ってくる。
確かに見ていたけども、まさか気付かれていたのか!
「意外と視線って気付くものよ。あんただってそうだったでしょ」
「にこが言うと本当に説得力があるな」
まだにことであったばかりの頃、練習を除いていたにこの視線を感じていたことを思い出す。
「べ、別に俺の身体何て見たってなにも面白いことはないぞ」
「何をいっているのですか。貴方が私たちの水着姿が気になっていたように、私たちだって
「お前が何を言ってるんだ海未! いつもなら止めてる立場だろう!?」
しかも顔を真っ赤にして破廉恥ですと叫ぶだろう!!
「人は皆、進歩するのです!」
「頼むからそこは停滞していてくれ!!」
ああ、海未が暴走し始めている!!
「み、みんな、やめようよ……」
唯一事情を知っていることりは皆を制止しようとするが多対一ではどうしようもなかった。
「さあ、ゆうくん」
「おとなしく」
「そのパーカーを」
「脱ぐのにゃー!」
一斉に襲いかかってくる四人。俺は四人の間を潜り抜けるようにしてなんとか避ける。
「まてまてまて! お前ら、どこまで
「どこまででもだよ!」
「真剣と書いてマジです!!」
どこかで聞いた事のあるようなフレーズをいいながら俺を捕まえようと飛び込んでくる穂乃果たち。
穂乃果を避ければ海未が、海未を避ければにこと凛が、二人をかわしたら穂乃果が、何度も何度も襲ってくる。
「だぁ! しつこい!!」
埒が空かない状態に俺はことり以外にも助けを求める。
「花陽、希! 見てないでどうにか――うぉあ!?」
俺は反射的に身体を反らした。その直後、身体の上を2つの水が交差しながら通りすぎていく。
「ごめんな、遊弥くん。うち、興味には勝てんかったよ……」
言葉では謝罪している希。だが水鉄砲を構えながら言う台詞じゃないし理由もおかしいしなにより、
「声色は申し訳なさそうにしているが顔が笑ってんぞ、希!!」
「そんなこと無いでー?」
あからさまに関係ないほうを見る希。隠すつもりも無いだろ、こいつ。
「ごめんね…ごめんねっ、ゆうやくん!」
「謝るなら、水鉄砲撃つのを止めろ花陽!!」
本気で悪いと思いながらもやってしまっている花陽もなんだかんだで性質が悪い。
穂乃果、海未、凛、にこを回避しながら希、花陽から放たれる水を避ける。もうてんやわんやだった。
「はぁ…はぁ……ゆうくん、しぶとい……」
「忘れてました…遊弥の常人ではない身体能力のことを……」
「萩野の遊弥は化け物かにゃ……」
「いい加減、墜ちなさいよ……」
「言いたい放題だな、おい」
特に凛とにこはそのネタをどこから仕入れてきたのやら。
「流石遊弥くん。一筋縄ではいかんなぁ」
見せたところで空気を悪くするだけだからな。知らないでいられるのならそれが一番なのだ。
「でも、援軍がうちと花陽ちゃんだけやと思ったら大間違いやで」
「なに……?」
希の言葉に気を取られたその瞬間、背後で大きな水飛沫が音を立てると同時に両脇から羽交い締めされた。
真姫はビーチパラソルの下にいるし、ことりもみんなから距離をとっている。襲ってきた六人を除けばこんなことができる残る人間はただ一人。
「え、絵里か……!?」
「ふふふ、油断したわね遊弥くん。援軍はもう一人いたのよ」
作戦成功と言わんばかりのどや顔。その顔は可愛いらしいと思ってしまうが、それ以上に腹立たしいことこの上ない。
そんな思考がぐちゃぐちゃになっている俺だが、はっきりしていることが一つだけある。それは――
――ああああああ! 背中に柔らかい感触が!!
「……ゆーくんから邪な気持ちが感じるよ」
「気のせいです」
睨んでくることりから顔をそらす。どうして少し考えただけなのにそんなすぐ感じ取れるのだろうか。
「……遊弥くんのエッチ」
「そういうなら押し当てるのをやめて離れろよ」
顔を赤らめながらもわかっててやっている絵里に、俺は疲れたように言う。
「そういうわけにはいかないわ……あの子たちに負けたくないもの」
「誰と何を競っているんだよ」
「いずれわかるわよ」
いずれよりもいま知りたいところなのだが、この様子じゃ絵里は口を割らないだろう。それに、今はそんな状況じゃない。
「絵里ちゃん、そのまま放しちゃダメだよ!」
「ついにこのときが来ましたね」
「遊くん、覚悟するにゃ!」
「もう逃がさないわよ!」
「ゆうやくん、おとなしくしようね?」
「諦めるが吉やで遊弥くん」
正面から迫り来る穂乃果たちにサイドからにじり寄って来る花陽と希。もう俺になす術はなかった。
「さあ、脱ぎ脱ぎしようね~?」
いつぞやのことりのように言いながら穂乃果は俺のパーカーを脱がしていく。
チャックを下げられて露になる肌――その瞬間、注目していた皆の息を呑む音が聞こえた。
「……だから、面白いことなんてないって言っただろう」
楽しそうだった雰囲気から一変し重苦しい空気が周りを支配する中、俺はため息を吐きながら言った。
「ゆ、ゆうくん…その傷跡……」
声を震わしながら問いかけてくる穂乃果。
「色々とな。今は昔ってやつだ」
少しふざけたような声でそう言うが、皆の表情が変わることは無かった。俺は戸惑うように頭を掻く。
「どうしたもんかね。ことり、どうしたらいいと思う?」
「……素直に話した方がいいんじゃないかな。あの時だってゆーくんは詳しい話は聞かせてくれなかったよね」
まあ、ことりが泣きながら自分のしたことを後悔していたからな。
「ことりは知っていたのですか、遊弥の身体のことを?」
「うん…ゆーくんの看病するとき身体拭いたから、そのときに……ただ、このことは言わないでってゆーくんに言われたから」
そうなのですか? と俺のほうに確認を取る海未。
「ことりの言ってることに間違いないぞ。俺が穂乃果にも海未にも、誰にも言うなって言っておいたからな。
「それは、そうですが……納得は出来ないです」
海未の言葉に、穂乃果や絵里も頷く。
海未たちの言いたいこともわかる。いままで自分たちは信頼されていなかったのかと、長い付き合いなのに助けを求める信用に当たらない人間だったのかと。
「穂乃果と海未、ことり、絵里の四人は音乃木に入る前から付き合いはあったからな。そう思ってもおかしくは無いよな」
「遊弥くん。一つ聞きたいのだけれど、その中で一番新しい傷跡はどれなのかしら?」
「記憶を失くしたときだな。階段の角にぶつかって切れたところだから…このあたりか」
脇腹辺りにある傷跡を指すと絵里はそう、とだけ言う。だけどその顔はやっぱり厳しいものだった。
「どうして、なにも言ってくれてなかったの…?」
穂乃果の批難する声が耳に刺さる。
今この身体の話しじゃない。当時この傷が出来たときの話しだろう。穂乃果たちはこの傷が出来た時期が大方わかっているのだろう。
「そこに関してはことりにも言ったが、そのときの俺は信用とか出来なかった人間だったんだ。だからずっと突き放してただろ」
「ええ。確かに私たちを突き放すような態度を取っていました。ですがあなたは決して私たちを邪険に突き放したりはしませんでした」
「それにゆーくんあるときから普通に接してくれるようになったよね?」
そのあるときというのは三人も分かっている。爺さんに引き取られた後だ。
「それは爺さんの教育的指導ってやつだ。女の子には優しくしろって何度シバかれたことか」
「じゃあ――なら、どうして"あのとき"助けてくれたの?」
穂乃果が言うあのときというのは穂乃果、海未、ことりの三人と俺の当事者しかわからないあのときのこと。
「"あのとき"だって別に助けたつもりなんて無かった。俺の邪魔をしていたやつらを追っ払ったら、穂乃果たちが助かっただけだ」
「それじゃあ説明になってないよ」
「でもそれが真実だ。言っただろう、穂乃果たちは何の関係もないって。その後にももう関わるなって言って爺さんに引き取られてまた顔を合わせるまで関係を絶っただろ」
「それは…」
「そうだけど…」
「ですが…」
三人は納得できないような表情。ここで引き下がってくれればそれでいいのだが、
「――それは、巻き込みたくなかったから。かしら?」
そう指摘してくる絵里に、俺は身体が止まった。
「あなたたちが言う"あのとき"に何があったのかはわからないけれど、遊弥くんの言葉は巻き込みたくなかったからそうしたように聞こえるわ」
「それは絵里の想像だろ?」
「遊弥くんと音乃木坂で再会したときに聞いた中学の頃の話。忘れてないわよね」
「……」
あの時の俺をぶん殴ってやりたい気分だ。
いま思えば学校案内してくれた絵里に話をしたのは本能的に彼女のことを覚えていたんだろう。だからあのときに言えなかったことを真剣に問いかけてくる絵里に口を滑らせた。
「穂乃果たちが知っている昔の遊弥くんと私が知っている過去の遊弥くんは随分と差があるみたいだけど、その根幹は変わっていない――あなたは自分を犠牲にしていろんなものを守ってきたのでしょう?」
「犠牲なんて大層なものじゃない。ただみんなには関係ないと自分で判断していただけだ」
「それも嘘ね」
そこで横槍を入れてきたのはいつの間にか来ていた真姫だった。
「真姫ちゃん……?」
突然現れた真姫に戸惑う花陽。だがそんな視線を気にもせず、俺だけを見ていた。
「どうして真姫がそう断言できるんだ?」
「――愛華」
その名前が出た瞬間、俺は目を見開いた。
「「「えっ…!?」」」
「真姫、どうしてあなたがその名前を……?」
この場で愛華の名前を知っていたであろう四人も驚きを隠せなかった。
「うちの病院に入院していた時期があったのよ。そこで私は顔を合わせているわ」
「……確かにそういう時期があったが、俺には真姫と顔を合わせた記憶が無いぞ」
「それも無理は無いわ。そのときのあなたは私と妹の判断がつかないほどに壊れかけていたもの」
確かに、入院はしていたが俺にはそのときの記憶が曖昧だ。記憶喪失とかではなく、ただそのときの状況を知らないのだ。
だが、それは真姫の言っていることが正しいことだと俺の中で示していることになる。
「あのとき私は妹を守るために周りを拒絶していたのだと思っていたのだけれど、その前から他の人と関わりあるのだったら話は変わるわ」
「どういうこと?」
凛はいまいちピンと来ないのか首をかしげているが、俺は冷や汗をかいた。
真姫は知っている。程度は分からないが俺の過去を知っている。確かに爺さんに引かれて西木野総合病院に入れられた頃に西木野先生と一緒にあったのなら、先生から話を聞いていてもおかしくはない。
「信用していないのなら関わる必要もないし無視をすればいいもの。だけどあなたはそれをしなかった。全面的に信用することは無かったでしょうけど少なからず四人を信頼していたところはある――もうここまで言ったら関係ないかどうかなんてわかるでしょ?」
まっすぐと見据えてくる真姫。
いや真姫だけではない。皆が俺に視線を向けている。皆の瞳は俺の本心を映し出すかのように輝いていた。
俺は思わず苦い顔をする。もうどれだけ言っても皆の考えは変わらない。もう言い逃れは出来なさそうだ。
「――どうしてこう隠し事って言うのは簡単にバレるんだろうな。偶然って奴は本当に怖い」
俺は諦めて目を伏せて息を吐くように言った。
「では真姫や絵里の言うことは本当のことなんですか?」
そう問いかけてくる海未に、俺は頷いた。
「ただ、自分を犠牲にしてだとかじゃないのは本当だ。生きるためにどんなことでも耐えてきたし、守りたいもののために俺はやることは何でもやった」
「どういうこと?」
首をかしげる穂乃果。まあ、これだけじゃ分からないよな。
「どこから話したもんかな…」
この話をするには幼馴染の三人と出会う前。それこそ今から約十年前の話に遡らなければいけない。
「穂乃果たち三人と出会うより前、小学校入ったころから俺は――両親から虐待を受けていた」
俺は当時を思い出すように口を紡ぎ始めるのだった。
いかがでしたでしょうか?
ほかのものも更新する予定です。