ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です
63話です。





悪夢

 

 

 

 

 

どこからともなく声が聞こえる。憎しみや恨みのような負の感情がこもった声が。

 

 

――どうしてお前なんぞに食わせなきゃいけねぇんだ

 

 

――お前なんか産まなければよかった

 

 

そんなの知るか。お前らの行動の結果だろう。

 

 

――親無し家無し金無しのクセに

 

 

――この死に底ないのクソガキがっ! お前みたいなガキは生きる価値もないんだよ!!

 

 

ああそうだ、俺には生きる価値なんてない。だがその価値がある子を守るために、俺は死ねない。

 

 

――お前みたいな奴がどうして絵里先輩と!

 

 

――調子に乗るなこのクズがっ!!

 

 

お前らのことなんざ知ったことか。自分の不甲斐なさを人にぶつけるな。

 

 

――お前なんて死ねばいい

 

 

やめろ…

 

 

――死んでしまえ

 

 

やめろやめろ…

 

 

――死ね、死ね、死ねっ……!!

 

 

やめくれ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――っ!!!!」

 

俺はぱっ、と目を開けた。どうやら夢を見ていたらしい。息を切らしながら俺は身体を起こす。

 

「嫌な夢を見たな…すごい汗だ」

 

ぐっしょりになった寝巻きに俺は辟易する。よりによってこんなときにこんな夢を見るとは思いもしなかった。これも過去話をした影響だろう。

目が冴えてきた俺は時間を確認する。時計の針は五時手前を指していた。

 

「ちょっと早く目が覚めたな…」

 

起きる時間は六時と決めていたので一時間も早く起きたことになる。周りを見ればまだ皆ぐっすりと寝ていた。

今からもう一度横になって寝ても良いのだが、夢見が悪かったのと俺は一度起きたらなかなか寝付けない身体なので、諦めて伸びをして外へ出る。

 

「さて…行くか……」

 

朝日の光を浴びながら準備体操をした俺は当てもなく走り出す。

 

「はぁ…はぁ……っ!」

 

走り始めてから一時間近く、さすがにキツくなってインターバルとして少し歩く。いつもだったら自分の体力からペース配分や力加減を考えて走るのだが今日の俺は初っ端からずっと全力だ。

 

「はぁ、はぁ、は――クソッ……!」

 

俺は息を思い切り吸って再び走り出す。しかし、

 

「――っ、――っ!!」

 

一歩一歩足を踏むたびに身体が痛む。いらない考えが頭を過ぎる。

 

「やめろ、やめろやめろやめろ……!!」

 

割り切ったはずだ。断ち切ったはずだ。自分自身納得したはずだ。なのに今頃になって、なんだ。

 

「うああああああ――!!」

 

俺は全力で走り続けた。ただなにも考えないように、がむしゃらに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ……」

 

それから三十分ぐらい全力で走っていた俺は歩いて別荘へと戻っていた。

クールダウンがてら海辺を歩いているところで、皆の姿が見える。

 

「……」

 

手を繋いで朝日を眺めている九人の姿はμ'sの名前により近づいているように見えた。

 

「あっ、おーいゆうくーん!!」

 

俺の存在に気付いたのか、穂乃果がブンブンと手を振ってくる。俺が皆の元へ歩くとあちらもこちらへと距離を縮めてきた。

 

「ゆーくん、どこに行ってたの?」

 

「起きてから遊弥くんがいなくてみんな心配したのよ? まあそれは希や真姫もだけど」

 

ちらりと横目で二人を見る絵里に、希と真姫は苦笑いしている。

 

「悪い。早く目が覚めたから当てもなくランニングしてた」

 

「……ランニング、ですか」

 

怪訝そうに窺ってくる海未。すると海未は俺の脚を触ってきた。

 

「うおっ! 海未!?」

 

『海未!?』

 

『海未ちゃん!?』

 

唐突な彼女の行動に全員が驚く。しかしそんなことお構いなしに、海未は俺の脚を揉んで――いや、触診していた。

それが終わった海未は俺を睨んだ。

 

「遊弥。あなたがしたのは本当にランニングですか?」

 

「ああ…ランニ――」

 

「嘘ですね」

 

動揺しないように言おうとしたのだが、言い切る前に海未に断言された。いやいや、人の台詞を遮ってはいけませんって両親から習わなかった――いや、親父殿の娘なら納得だな。

 

「息遣いがおかしいのと、足の筋肉の感じからして――明らかにオーバーワークしましたね?」

 

もう嘘をつくことは許さないとばかりに海未は確認してくる。

 

「……どうして合宿の練習メニューにオーバーワークという言葉がなかったくせに俺のは気付くんだよ」

 

「幼馴染ですから」

 

なにそのトンデモ理論。

幼馴染というものに弱冠の恐怖を覚えてしまう俺。

 

「第一そんなこと言ったらあなたも同じじゃないですか。私に言っておいて自分はオーバーワークしているんですから」

 

それを言われると弱い。自分を律せていないのにどうして人に指摘できようか。海未はそういうことを言っているのだ。

 

「今日の予定は当然あなたも知っているはず。なのにこんなことして、一体どうしたんです?」

 

「たまにそういうこともするんだよ、そうしないと身体が鈍るから。合宿でいい機会だから」

 

「なら、どうして私の目を見てそう言わないのですか?」

 

無意識に逸らしていたことを指摘してくる海未。彼女は俺の目を見て話しているのに、気がつけば俺は海未から目を背けていた。

 

「遊弥…」

 

「悪い、汗と潮が気持ちが悪いから少しシャワー浴びてくる」

 

結局俺は逃げるように別荘に戻る。

 

「はぁ…これじゃあ何かあるっていっているようなもんだろう……アホか、俺は……」

 

そんな呟きは空虚に消えていくのだった。

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
今回は短めでした。


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