ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どもども、燕尾です。
64話です。
暑くなってきているときにTVアニメ"はたらく細胞"で熱中症の話しをするなんて……公式神か!!!!






異変

 

 

 

「はぁ…またか……」

 

起きた俺はそう呟いてため息を吐く。

合宿から数日が経ってから俺は満足に寝られていなかった。原因は分かっている、古傷だ。昔の傷が痛むのだ。

 

「合宿終わってからどうして急に――いや、急じゃないな…」

 

その前から――すべての記憶が戻ってから古傷が痛むことはあった。だが、俺は意識しないようにしていたから問題はなかった。

しかし、合宿で過去の話をして無視できなくなるほど痛みが強くなったのだ。

 

「酷い顔だ…」

 

鏡を映った俺の顔は完全に調子が悪そうに見える。

μ'sの皆の前では出さないようにはしているが、昨日ついに海未と絵里にバレて練習前に強制的に帰されたのだ。

逆らうと後が怖いので彼女たちに従って早めに休んだのだが、結局は夢見が悪く、古傷が痛み、ろくに眠れなかった。こんな顔して学校に行こうものなら、登校前に会う幼馴染(穂乃果)たち三人に家に強制送還されてしまう。

どうしたものか、と悩んでいるところでピンポーンとインターフォンが鳴った。

こんな朝早くから誰だ、と思いながらも無視するわけにもいかないので頬をたたいて気合を入れて玄関へと向かう。

 

「やっほー、久しぶり」

 

手を上げて、満面の笑顔で入ってきた人物に俺は目を見張った。

 

「さ、咲姉…!? どうしてこっちに…!?」

 

「大学の講義が今週軒並み休講になって暇になったからね~」

 

来ちゃった、と言う我が義姉に俺は戸惑いを隠せない。

現在の時間は朝の六時半前。なのに京都から来たということは深夜バスを使ってきたことになる。

 

「事前に連絡してくれよ…」

 

「だってそれじゃあ面白くないから」

 

そう言ってのける義姉に俺は頭が痛くなる。基本は頼りになる姉なのだが悪戯好きというか、突拍子もないことをするのだ。

 

「だからと言ってこんな朝早くから来てどうするんだよ…俺学校だぞ?」

 

「そこはほら、遊ちゃんが学校に行っている間はここら周辺で歩いていればいいから。とりあえず決まってからは一刻も早く遊ちゃんの顔を――あれ、遊ちゃん? なんか疲れてる?」

 

「うんまあ、こんな朝早くにサプライズ仕掛けられたら誰でも疲れるわ」

 

「ううん。そういう疲労じゃなくてもっと根本的に顔色悪いよ、うん……やっぱり、来てよかった」

 

最後に小さく呟いた咲姉に俺は首をかしげる。

 

「ん、どういうことだ?」

 

俺の問いかけに答えるより早く咲姉は行動でる。スカートのポケットからさっと携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めた。

 

「あ、もしもし萩野です――あ、山田先生。弟がいつもお世話になっています」

 

「お、おい…咲姉……」

 

「弟なんですが体調が優れないみたいで、ええ。今日は学校休ませてもらいますね」

 

「何勝手なこと言ってんだ!?」

 

「遊ちゃん、電話中だよ。静かに」

 

静かにもなにも山田先生への連絡は俺がやるべきことだし、そもそもどうして休むのが決定しているんだよ。

 

「はい、はい。そういうことでお願いしますね」

 

「どういうことだ、こんなことして」

 

どうして音ノ木坂の電話番号を知っているとか、山田先生と知り合いなのかとか色々疑問は湧くのだが、今はどうでもいい。

 

「姉心だよ。遊ちゃん、今日は――というか二、三日は学校休むこと」

 

「いやいや、確かに本調子ではないけど別に風邪引いたってわけじゃないし熱も出てない。それに…」

 

それに今は大事な時期だ。ラブライブへの出場をかけて各グループが追い込みをかけている。俺も穂乃果たちをサポートする一人として今休むわけにはいかないのだ。しかし、

 

「だめ、それは体調が万全になってから」

 

咲姉は一歩も引かずに認めない。だが引くわけにはいかない気持ちは俺のほうが強い。あの手この手で言葉を弄するも目の前の城は落とせなかった。

 

「遊ちゃん、もう次はないよん。や・す・む・こ・と、いい?」

 

「わかりました」

 

むしろ笑顔で警告してくる義姉に俺は即行で白旗を揚げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでこんな体勢になってるんだ……?」

 

担任に連絡され、撤回することもできなかった俺は咲姉に逆らえないまま膝枕されていた。

 

「遊ちゃん、ここ最近寝れてないでしょ」

 

「それは…」

 

「近くで顔見たらすぐ分かったよ。それとその原因もね」

 

そういいながら咲姉は俺の手を握ってきた。そっと優しく手を取る咲姉に俺ははっとする。

 

――やっぱり、来てよかった。

 

「まさか、咲姉…」

 

「大丈夫。今はお姉ちゃんが遊ちゃんを守るからゆっくりお休み」

 

まるで子供を眠らせるように頭を撫でる咲姉。そしてその優しい笑みに安心感を覚えた俺はいつの間にか瞼を下ろしていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Umi Side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、今日萩野は休みだ」

 

担任の山田先生からの連絡に私たちの間に衝撃が走る。

 

「体調が優れないらしくてな。長引けばしばらく休むとのことだ」

 

遊弥が居ないことにクラスの皆に落胆の色が見えた。最初こそは男性である遊弥を嫌っていたクラスの人間も含め今ではすっかりこの様子で遊弥はクラスに馴染んでいる。

 

「ゆうくん、また風邪引いちゃったのかな?」

 

「体調を崩している様子はなかったけど、ゆーくん大丈夫かな…」

 

穂乃果やことりも遊弥について心当たりはないようだ。だが、私はそんなことを口にする二人に違和感を感じた。

ここ最近、というか合宿が終わってからの遊弥は毎日疲れの色が濃くそれが蓄積しているように見えた。それなのに気付いているのが私だけで穂乃果やことりがまったく気付いていないのは普段から考えたらありえないことだ。

 

「遊弥……」

 

私はいない遊弥の席を眺める。彼が居ないことは多々あったが、それでこんなに不安を感じるのは初めてだ。

それに穂乃果とことりついてもそうだ。最近の穂乃果はラブライブが目に見えてきたのか突っ走り気味でことりはことりでどこか上の空が目立つ。

 

何ごともなければいいんですけど――

 

私の心配が気鬱ではなかったことは今後だんだんと証明されていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Yuya Side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぅ……」

 

「あ、遊ちゃん起きた?」

 

「咲姉…?」

 

瞳を開けると目の前には優しく微笑んだ咲姉の顔があった。

 

「いま、何時……?」

 

ぼんやりした頭で咲姉に問うと彼女は時計を指差した。

 

「いま午後の四時だね。ぐっすり眠ってたよ」

 

「四時…? 四時……四時だと!?」

 

時間を聞いた俺は一気に覚醒した。寝たのが朝の八時前だからかれこれ八時間は寝ていることになる。その間咲姉はずっとこのままだったのか? 昼も食べず、トイレとかも行かず?

 

「あ、遊ちゃんが心配しているようなことはないから安心して」

 

「ならいいが…どうしてこう簡単に思考を読んでくるのか本当に不思議だな」

 

「それは遊ちゃんが分かりやすい顔をしているからだよ」

 

そんなに分かりやすくはないと思う。

 

「そ、れ、よ、り――どうだった?」

 

なにが、と問い返すと咲姉はあからさまに不服そうにした。

 

「もー、分かってるくせに。私のひ・ざ・ま・く・ら♪」

 

いたずらっ子のような笑顔を浮かべる咲姉に対して俺はああ、と端的に頷いた。

 

「ソファのほうがよかった」

 

「八時間も寝ておいてそんな言い草!?」

 

「冗談。結果どおりだ」

 

直接口にするのは恥ずかしいから少しはぐらかす。

そんな俺に咲姉は優しさと心配が入り交じった表情をしながら聞いてきた。

 

「身体は、大丈夫?」

 

「……そうだな。咲姉のおかげで嫌な夢も見なかったし、過去の傷が痛くなることはなかった。ありがとう」

 

「それがお姉ちゃんの役目だからね」

 

「それでも、迷惑かけた。咲姉が来たのは記憶を取り戻した俺の様子を見に来たんだろ?」

 

爺さんに引き取られて平和な生活を送り始めた俺は夢見が悪くなることがあって眠れない時期が多発したことがあった。記憶を失ってからはそのこと自体忘れていてまったく問題なかったし、一部取り戻して魘されることはあっても寝不足になるまでにはならなかったのだが、そのたびに咲姉や愛華が魘される俺に寄り添って抑えてくれていたのを覚えている。

 

「記憶が戻ったのはお父さんから聞いて知っていたから、もしかして、と思ったの。愛華は学校だからこれないし――あっ、今週は講義が休みなのは本当だよ?」

 

そこを疑ってはいないし、まあ、一週間ぐらいサボったとしても咲姉なら問題ない。というか、咲姉なら一週間どころか一年間サボってても取り戻すのなんて一瞬のことだ。

 

「ということで今週はお姉ちゃんが遊ちゃんの世話しちゃうぞ♪」

 

「止めても無駄なんだろ…」

 

「無駄だぞ♪」

 

そのキャラクター、少しイラッとする。と言うか愛華は咲姉がこっちに行ったことを知っているのか?

 

「愛華も知ってるよ。あの子は"お兄様のところへ行く!"って言って駄々捏ねていたけど学校があるからね~」

 

そこは安心した。まあこの義姉が押さえ込んだのだろうけど。あいつの場合本当に学校すっぽかしてこっちに来かねないから。

 

「その代わり――遊ちゃん、携帯なってるよ?」

 

「……」

 

俺はスマホの画面を見る。そこには――妹の名前。

 

「出ないとお父さんと共に乗り込んでくるよ?」

 

そう言われた俺は意を決して電話に出る。

 

「もしもし――」

 

『お兄様っ!!! ご無事ですかっ!?!?』

 

キィィン、と頭に響いた高く大きな声に俺は耳からスマホを離す。

 

『お兄様! 返事をしてくださいっ、お兄様!!』

 

「うるさいからもっと声を落とせ、愛華」

 

「お兄様! ご無事なんですね!?」

 

「無事もなにも、そもそもなにもないから」

 

「いえ! あのめぎつ――咲夜姉さまになにもされていませんか?」

 

こいつ、いま咲姉のこと女狐って言おうとしたな? 本当に俺が関わると言葉遣いが悪くなるな。

 

「愛華が心配することはなにも怒ってない。むしろ咲姉には助けてもらったんだよ」

 

「やっぱり! 咲夜姉さまは抜け駆けを!!」

 

話を聞いてないな、これ。抜け駆けって一体なんのことなんだ。

 

「とにかくこっちは大丈夫だ」

 

「駄目ですお兄様、咲夜姉さまを信用してはなりません!!」

 

「じゃあな。しっかり学校行くんだぞ?」

 

俺との電話を何とか繋ぎとめようとする愛華に俺は釘を刺す。

 

「忠告しておくけど、何度も電話かけてきたらまた着拒するからそのつもりで」

 

「そんな無慈悲な――」

 

愛華の言葉を最後まで聞かぬまま俺はそのまま通話終了のボタンをタップする。

 

「よかったの遊ちゃん? あんな言い方して」

 

「そうじゃないと暴走するだろ」

 

そういう対応するほうがあの子暴走するんだけどなぁ、と呟く咲姉。

 

「もう…愛華の気持ちを知らない遊ちゃんじゃないでしょ?」

 

「……あれはただの依存だ。俺も愛華も、お互いしか居なかったから…だから決して恋慕とかじゃない」

 

「はぁ…」

 

咲姉はため息しか吐かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Kotori Side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

わたしはわたし宛に来た手元の手紙を見つめる。

ここ最近はコレについてずっと悩んで練習にもあまり身が入っていない。

 

「…どうするの?」

 

返事の期限が迫ってきているのを知っているお母さんがわたしに問いかけてくる。だけど、わたしは未だに決められなかった。

 

「こんなチャンスは滅多にないわよ?」

 

「お母さんは…行ったほうがいいと思う?」

 

決められないからこそ、わたしは他の意見がほしかった。しかし、

 

「ことり、それは自分で決めることよ」

 

それだけを言ってお母さんはリビングへと戻る。

わかっていた。お母さんがそういう答えを言ってくるのは。だけど分かっていても聞きたかった。

いまのわたしはそれほど揺れ動いているのだ。

 

「……」

 

わたしは携帯のアドレス帳から一人の連絡先に止まる。

 

「穂乃果ちゃん…」

 

駄目だ。とわたしは穂乃果ちゃんの画面を閉じる。穂乃果ちゃんは今ラブライブにしか目がいっていない。今までだって何度も相談しようとしたけれど、彼女の邪魔をしたくなくて結局話すことができなかった。

海未ちゃんも同じ。海未ちゃんはいま新曲の作詞で手一杯だ。わたしのことで悩ませるのは気が引けた。

となると、私の選択肢は残り一人しかいなかった。

 

「ゆーくん…」

 

彼も今は体調が悪く学校を休んでいる。だけど、このことを相談できるのは今はもう彼しかいない。

様子を聞いて大丈夫そうだったら相談しよう。そう思い、わたしは電話をかける。

数コールなった後、電話口から声が聞こえる。

 

『――もしもし、ことり?』

 

一日ぶりに聞いた彼の声。それだけでわたしは言い様のない安心感を覚えてしまう。

 

「もしもし…ゆーくん、体調悪いのにごめんね? いま時間大丈夫かな……?」

 

『もちろん。それにしてもことりが電話かけてくるなんて珍しいな』

 

そう、いつもは衣装作りとかで手が放せないことが多いから連絡するときはLaneがほとんどで電話はみんなでするときぐらいしか使わない。

 

「うん、たまには電話でもいいかなって」

 

本当は違う。本当はわたしがゆーくんに縋りたかっただけ。なのにわたしは嘘をつく。

 

『なにか、悩み事か?』

 

そんな嘘を見破ってなのか、ゆーくんはわたしの核心をいきなり突いてきた。

驚きで声が出ないわたしにゆーくんは軽く笑った。

 

『声を聞けば、様子がおかしいことぐらいは分かる』

 

「……ゆーくんには、隠し事できないね」

 

いつも通りの彼に、私は安堵しながらそういった。

 

「実はね、わたし――」

 

そしてわたしは全てを話した。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
皆さん、体調には気をつけてくださいまし。


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