ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です
タイトルが……タイトルが思いつかないんです……





狂いだす歯車

 

 

 

咲姉が来てから何とか調子が戻り、彼女から許しを得た俺は数日振りに学校へいくことになった。しかし――放課後にだ。

 

山田先生によると、いま俺が顔を出すのはいろいろとタイミングが悪いらしかった。

なら今日も休むという旨を伝えたのだが、放課後なら来ても大丈夫だというお達しが来たため、それで良いのかという思いを持ちながら学校へとやってくる。

俺が居ない間に来週行われる文化祭に向けて事態は動き、色々なことが決まっていたようだ。

もちろん、絵里から連絡を受けていたのである程度は把握している。

 

文化祭では屋上に簡易ステージを作ってライブを行うこと。文化祭のライブは新曲を披露すること。

聞いたときは日程に少しばかりの不安があり、それを伝えたのだが、ラブライブ出場を掛けた最後の時期だから頑張りたいという意思を尊重して俺も頷いた。

部室のドアを開けようとしたとき、一つの声が聞こえた。

 

「ねえねえ! ここの振り付け、こういうのどうかな? 徹夜で考えたんだ!」

 

「……徹夜?」

 

俺は気付かれないように少しだけドアを開けて中を確認する。

穂乃果は皆の前で考えてきたという振り付けを披露する。そんな彼女に皆は戸惑いの表情を浮かべていた。

 

「待ってください穂乃果。今から変えるとなると、さすがに」

 

そう。ようやく今の振り付けも形になってきたというところなのに、これから変えるとなると時間が足りない。そうなれば必然的に完成度も足りなくなっていく。

 

「でもこっちのほうが可愛いよ!」

 

「そういう問題ではなくて――」

 

「ねね、ことりちゃんはどう思う?」

 

海未の意見を聞かずに穂乃果はことりに問いかける。

 

「わたしは……いいと思うよ」

 

「だよねだよね! そうと決まれば早速練習しよう!!」

 

「まずいっ」

 

穂乃果が意気揚々とこちらへと来る。

 

「……」

 

俺は気付かれないように部室の隅に隠れ、屋上へ行く皆をやり過ごした。

 

「これは、少し様子見だな……」

 

屋上での練習も俺は隠れて見ていた。急遽振り付けを変えたことによって柔軟が終わった後、すぐさま振り付けの確認して通しの練習を行っていた。が、

 

「――もう足が動かないよぉ!」

 

にこが限界の悲鳴を上げた。

いままでは二回に一回、通し練習をしたら必ず休憩を休んでいたのだが、いまはぶっ続けで五回も通し練習をしていた。休みも挟まず続けていればバテるのは当たり前だ。

 

「まだ駄目だよにこちゃん! ほら、もう一回っ!!」

 

しかし座り込むにこを振るい立たせて穂乃果はまだ続けようとする。

 

「えぇ! また!?」

 

「いいからやるの!! まだまだできるよ!!」

 

「いやぁー!!」

 

柵にしがみつくにこを無理やり引っ張る穂乃果。

 

「待ちなさい穂乃果。私たちならともかく、穂乃果は少し休むべきです」

 

「大丈夫! 私、燃えてるから!」

 

「昨日も夜遅くまで練習しているのでしょう?」

 

「だってもうすぐライブだよ!?」

 

「……ことり!」

 

「えっ…わたし……?」

 

「ことりからも言ってください」

 

「えっと…わたしは……穂乃果ちゃんのやりたいようにやるのが、一番だと思う……」

 

「ほら! ことりちゃんだってそう言ってるよ!」

 

ことりの同調得た穂乃果はさらに増長する。これには海未も戸惑いを隠せない様子だ。

これは少し、いやかなりまずい状況だ。

穂乃果はやる気を持て余しすぎて加減を見失っている。そしてことりは気持ちの切り替えができず穂乃果に言うべきこも言えず、全てに頷いてしまっている。

それでもまだ崩壊していないのは皆も穂乃果の言うことにも一理あると理解し、やる気に当てられて、頑張ろうという気持ちがあるからだ。

 

「さあ、もう一回やろう!」

 

意気込む穂乃果に、にこは辛そうな顔をしながらも立ち上がろうとする。

さすがにこれ以上様子見をしているわけにはいかないと思った俺は屋上に突入した。

 

「ストップだ穂乃果」

 

「ゆうくん!?」

 

「遊弥!?」

 

いきなり俺が現れたことに、穂乃果や海未はもちろん皆驚いていた。ただ一人、ことりだけは、

 

「ゆーくん……」

 

目を合わせ辛いというようにそう呟いていた。

 

「遊弥くん、どうしてこの時間に……?」

 

「本当は今日から授業に出るはずだったんだが、色々と理由があってな。放課後からなら来ていいと言われたから少し様子を見に来た」

 

それより、と絵里には悪いが俺はすぐさま穂乃果に視線を向ける。

 

「穂乃果、休憩しろ」

 

「なんで!?」

 

本気で疑問に思っている穂乃果。そんな穂乃果に俺はため息を吐いた。

 

「なんでもなにも、一回も休憩挟まずに通し練習をぶっ続けでやってるだろ」

 

「だって、もうすぐライブなんだよ! 休んでる場合じゃないよっ」

 

「そう言って無理やり続けさせて、怪我人が出たらどうする? ラブライブどころか来週のライブすらできなくなるぞ」

 

「それは…そうだけど……」

 

不服そうではあるが、これで一応流れは変わった。俺は無理やりに空気を変える。

 

「とにかく休憩だ。皆、汗拭いて水分補給をしっかり取れ」

 

指揮を執る俺に、皆は素直に休憩し始める。

 

「すみません遊弥、助かりました。私だけではどうしようもなく……」

 

海未が俺にだけ聞こえるように小さく呟く。

 

「いや、海未が謝ることはない。こっちこそ長い間休んでて悪かった」

 

「それこそ遊弥が悪いのではありませんよ。誰が見ても分かるぐらい体調を崩していたのですから」

 

もう大丈夫なのですか? と聞いてくる海未に俺は問題ないと答える。

 

「それより海未、あとで時間あるか? これからのことについて話をしておきたい」

 

「ええ――私からもお願いしようと思っていました」

 

この状況に危機感を抱いていた海未もすぐに頷いた。

 

 

 

 

 

練習が終わってから適当な理由をつけて皆を先に帰した俺と海未は、誰にも見つからないように帰路を共にしていた。

 

「よかったのか? 急に家にお邪魔しても」

 

「ええ、お母様も遊弥に会いたいといってましたし、先ほど連絡したら是非にといっていたので」

 

そういいながら海未は門の扉を開けて、どうぞと通してくれる。お言葉に甘えて彼女の家に足を踏み入れようとしたときだった。

 

「キエェェェェェェイ!!!!」

 

「のわあああああ――!?」

 

奇声と共に目の前に薙刀が迫ってきた。よければ海未に当たるため、俺は薙刀の勢いを殺すように受け止める。

 

「性懲りもなく我が家へ来るとは、余程貴様は命がいらないと見た!!」

 

海未の目の前だって言うのにもう隠すことすらしなくなったな。いや、前々から隠し通せてはいなかったのだが。その証拠に海未はまた始まった言うように呆れている。

 

「貴様の魔の手から海未を救うためなら私は鬼にも悪魔にもなろう!」

 

「アホか! いい加減子離れしろこの親バカ!!」

 

「黙れ! 男ならここで潔く死ねい!!」

 

「――っ」

 

親父殿の言葉に俺は一瞬息が詰まった。

 

 

――死ね

 

 

「うるさい…」

 

分かっている、親父殿が本気で言っているわけではない。だから引っ込め。

 

 

――死ね

 

 

「黙れ…黙れ……」

 

古傷が痛む。過去に刻まれた身体が悲鳴を上げる

 

 

「む……」

 

「遊弥……?」

 

 

――死ね

 

 

「うるさい…黙れ…やめろ……! 消えろ……!!」

 

呼吸が荒くなる。落ち着こうとしても息が整わない。視界が定まらない。目の前にいる親父殿がどうしようもなく怖くなる。

 

 

怖い、怖い、怖い……!!

 

 

「うあ、ああ……」

 

「遊弥!!」

 

「あああああ――!!」

 

錯乱した俺はこともあろうか親父殿に殴りかかっていた。だが、その拳は親父殿に届くことなく次の瞬間には俺は地に伏せていた。

 

「……どうやら、いらん扉を開けてしまったようだな」

 

上から聞こえる落ち着いた声に、俺はようやく自分の状態に気がついた。

 

「小僧、深く呼吸をしろ。ゆっくり、心を落ち着かせるのだ」

 

俺は聞こえる声に集中して息を整え、気持ちを静めていく。

 

この人は敵じゃない。大丈夫だ。もう俺や愛華を傷つける存在はいない――

 

自分に言い聞かせるように息を吸って深く吐いた。

 

「……すみません、迷惑かけました」

 

「謝るな。貴様に謝られると、調子が狂う」

 

そういいながら、親父殿は俺の拘束を解いた。

 

「海未、後のことは任せるぞ。食事はできたら那美が呼ぶだろう」

 

自分についた土埃を払いつつ後のことを海未に任せる親父殿。

 

「は、はい。わかり――」

 

「ではな」

 

海未の返答を聞く前に親父殿はこの場をあとにした。

こんなことになってしまったのは親父殿にとっても不本意だったのだろう。親父殿からはほんの少しの罪悪感が感じられた。

 

「遊弥……」

 

心配そうに見つめながらハンカチで俺の顔を拭い始める海未。

 

「悪い…ハンカチ、汚したな」

 

「気にしないでください。洗えば落ちますから」

 

そういいながら海未は土で汚れた顔をハンカチで拭いつづける。

 

「こうして世話してくれるのを見ると、海未はいい奥さんに見えるな」

 

「今はそんなこと言っている場合じゃないでしょう」

 

ぴしゃり、と切り捨てられる。どうやら発言の意図は気付かれているみたいだ。

 

「全然、割り切れていないじゃないですか……」

 

責めるような海未の視線に俺はばつが悪そうにする。

 

「そんな気はしていたんです。合宿以降、目に見えて顔色が悪くなっているあなたを見て、もしかしたらまだあなたは苦しんでいるのではないかと」

 

「……合宿のときに言ったことは、嘘じゃない」

 

海未たちを恨んでなんかいないし、奴らに仕返しをしようなんて微塵も思っていない。過去のことだと割り切っている。だが、

 

「俺が経験した事実(こと)は、消えないんだ。それが夢になって、記憶になって俺に襲ってくる」

 

もう残っている過去のことはどうしようもないことなのだ。

 

「後は時間をかけて慣れていくしかないんだが、どうもな……」

 

「なら、そういうときこそ頼ってくださいよ!」

 

海未は真剣な表情で俺に詰め寄る。

 

「前にいいましたよ。辛いなら言ってくださいと。一人で抱えるのはやめてくださいと」

 

「でもこれは」

 

「ええ、あなた自身のことです。ですが私はあなたを支えたいんです」

 

「海未……」

 

「決して過去に対する責任や罪悪感なんかじゃありません。遊弥が苦しんでいるなら私は助けたい。あなたの為に頑張りたいって思うんです」

 

海未は臆することなく、言葉を紡ぐ。

 

「だから、頼ってくださいよ。あなたが辛そうなのは私も辛いんです」

 

俺は言葉が出なかった。海未がそんなに考えてくれているなんて知らなかった。いや、知ろうとしなかったのだ。自分のことだと言って。

 

「遊弥…?」

 

なにも言わない俺に海未は不安そうに首をかしげる。

俺はそんな海未を安心させるように、抱きしめた。

 

「ゆ、ゆゆゆゆゆ遊弥!?!?」

 

戸惑う海未を離さないように、ギュッと力をこめる。

 

「ありがとう、海未」

 

短い言葉だが俺の感情が伝わるように気持ちを込めて言う。

それが伝わったのか、海未もゆっくりと俺の背に腕を回す。

そのときガラガラ、と引き戸が開けられる音がした。

 

「海未さん、遊弥さん、お夕飯ができ――あらあらまあ、失礼しました」

 

「「――っ!!」」

 

那美さんが微笑ましい顔して家の中に戻っていく。その様子に自分たちのしていることに気付いた俺たちは声にならない声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

「「……」」

 

気まずい雰囲気が俺と海未の間に漂う。

夜ご飯を頂いてから海未の部屋に移った俺たちは、文化祭までのことや、穂乃果やことりのことを話し合おうと思っていたのだが、お互い口を開くことができなかった。原因は言わずもがな。

 

「「あの!」」

 

「「……」」

 

「「えっと……」」

 

「「……」」

 

「「そっちから、どうぞ」」

 

「「……」」

 

何度も重なる俺と海未の声。言うタイミングも内容もピッタリだ。

それがなんだかおかしくて、俺たちは二人して笑ってしまった。

 

「何してるんだろうな?」

 

「本当です。おかしいですよね」

 

一拍置かれて落ち着きを取り戻した俺と海未。

俺たちの間にもう変な空気は流れていない。これなら大丈夫そうだ。

 

「それで、穂乃果とことりのことだな」

 

本題を口にすると海未の表情も一変し真剣な顔に変わるのだった。

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に

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