ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども。この一ヶ月、学会準備で&当日で4んでいた燕尾です。






存続

 

 

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

学校を出てから、俺はあてもなくぶらぶらとアキバの街を歩いていた。

忙しそうにするサラリーマン、客を呼び込むメイド、カフェで談笑しているカップルにゲームセンターで遊ぶ高校生たち。

活気溢れる中、俺は一人考え事をしながら進む。

 

時間を遡ること昼休み。理事長室で文化祭のことで話をしたあと、

 

――遊弥くん、放課後にもう一度ここにきてくれるかしら?

 

その言葉に従って放課後に理事長のもとへと行くと、昼と同じような神妙な顔をして座っていた。

 

「ごめんなさいね、また来てもらって。あなただけに話さないといけないことがあったの」

 

「いえ、大丈夫です。話とは、進路希望の進捗についてですか?」

 

一緒にいた絵里に聞かせられず、俺と二人で話すことなんてそれぐらいしか思いつかない。

 

「ええ――この前のオープンキャンパスの時期後の周辺中学校の進路希望の情報が送られてきたの。これを見てちょうだい」

 

渡された資料をパラパラと一通り見る。

 

「この様子なら、どうにかなりそう見たいですね」

 

「ええ。嬉しいことにね」

 

音乃木坂学院へ希望している女子中学生の数が、今の高校一年生の数を軽く超えて二年生、いや、三年生あたりまで届きそうな数だった。

資料を読み進める俺。そして資料の最後の一文にはこう書かれていた。

 

――――以上の結果と実態から音乃木坂学院の女子校としての存続は可能であると考えられる、と。

 

「――なるほど。本題は、廃校うんぬんより俺の処遇についてですか」

 

「ええ、そうよ」

 

雛さんは深刻な表情で頷いた。

 

「何を悩む理由があるんですか、言うべきことを言えばいいんですよ」

 

「……あなたはそれでいいの?」

 

「試験なんてそんなものでしょう。必要のない道具をいつまでも置いておく必要もないでしょうに」

 

「あなたは道具なんかじゃない。それにこっちが無理言って呼び寄せたのだから、あなたさえ望めば、このまま――」

 

「そう望んだとしても問題にしかならないこと雛さんが一番わかっているでしょう」

 

今まで嫌がらせ程度に納めてきた学院長筆頭の反対連中がどんな行動に出てくるか、計り知れない。それに逆に女子校として存続していくのなら正当性はあちらにあると言えてしまう。

共学をしないのであれば俺は邪魔でしかないのだ。ならさっさと消えるべきだろう。

 

「ここに来たのだってもともと爺さんが勝手に決めただけの成り行きです。だから俺には想い入れも執着もないし、残る理由もないですよ」

 

彼女たち(μ's)はいいの?」

 

雛さんの言葉に俺は一瞬止まる。だが、

 

――ゆうくんには関係ない!!

 

――あんたに、あんたなんかに、私たちの気持ちなんてわからないのよ!!

脳裏に穂乃果たちの言葉が蘇る。

 

「……あっちももう俺は必要ないですよ。いや、最初から必要としていなかったのかもしれませんね」

 

俺が穂乃果たちと馴染みだったから、一緒に居たから流れで手伝っていただけ。俺が居なくても彼女たちは何とかしてやっていただろう。

 

「とりあえず俺の処遇なら気にすることはありません」

 

判断を理事長に任せ、俺は失礼しますと理事長室を後にしようとする。

 

「遊弥くん。あなたはもっと我儘になってもいいと思うわ」

 

「我儘、ですか…」

 

静かに、諭すように言う雛さんに、俺は少し困ったように笑った。

 

「残念ながら、そんなの俺にはないですよ」

 

そう言って俺は理事長室から退室した。

 

 

 

 

 

「……なんて答えればよかったんだろうな」

 

雛さんの優しさは素直に嬉しく思う。だけど俺はそれに甘えなかった。

俺が残ることで更なる問題が呼び寄せられることがわかっていた。これ以上、雛さんに抱えさせるわけにもいかなかない。

雛さんは学院のことを今まで十分頑張ってきたのだ。せっかく肩の荷が下りるところに更なる重荷を持たせるわけにもいかないだろう。

 

「はぁ…バカか、俺は……」

 

こんな言い訳のような理由ばかり並べて良いんだと言い聞かせて、これではまるで、

 

まるで――

 

「……」

 

俺は首を横に振った。考えるのもバカらしい。

流れに身を任せればいい。人生なるようになる。

 

「帰ろ」

 

思考を放棄して歩く。

 

「あれー、遊弥くん?」

 

すると間延びした声が俺の背中にかけられる。突然のことに、俺は肩をびくつかせた。

振り返ればそこには彩音さんがいた。

 

「久しぶりだねー、遊弥くん。私のこと覚えている読者さんいるのかなっていうくらい久しぶりー」

 

……ちょっと発言の意味が分からない。壊れたか?

 

「壊れてないよ。久々の登場だもん、少し印象に残ることしないと忘れ去られちゃうじゃん」

 

だからといってこの発言はさすがにアウトである。好き勝手にもほどがあるだろ。

 

「で…まあ私のことは置いといて、哀愁漂わせながら歩いていた遊弥くん。何かあったのかな?」

 

「彩音さんが変な登場の仕方したこと以外なにもないですよ」

 

「お悩みならおねーさんが相談乗るよ?」

 

無視ですか、そうですか。それに、

 

「別に悩みなんて…」

 

俺はそう答えるが、彩音さんは逃さない。

 

「そういえば、いい店見つけたんだ。そこで話しよっか」

 

「だから――」

 

「大丈夫、おねーさんが奢ってあげるから」

 

俺の言い分をまともに聞かず遮って、身体をくっつけて腕を取る彩音さん。

ちょ、なにこの人、力強っ!? しかも見事に関節極まって痛い痛い痛い――!?

 

「ふふふ、それじゃあ出発!」

 

「頼むから、話を聞けェー!!」

 

為す術無しというのはこういうことなのだろう。俺は関節決められたまま彩音さんに連行される。

 

 

 

 

 

「彩音さん」

 

店の前まで引っ張られた俺はげんなりしながら彩音さんを見る。

 

「ん? なに?」

 

「いや、いい店発見したって言ってたけどさ」

 

暢気に笑顔で返す彩音さんに俺は店の看板を指差して言う。

 

「ここ、あんたの家(Sky Cafe)じゃねーか!!」

 

ただのマーケティングだったよ! 普通店見つけたって言うのは新しくオープンしたとか、今まで知らなかった場所を指すだろ!

 

「なーに? 遊弥くんはここがいい店ではないって言いたいの?」

 

「そうじゃないけど、そうじゃないけどさっ!」

 

雰囲気も良いし、料理やコーヒーも美味い。いい店かそうじゃないかといわれたら間違いなくいい店だ。

ただこれ、彩音さんがただ家に帰ってきただけじゃん――そう言いたかった。

 

「さ、入った入った!」

 

彩音さんに抵抗する気も失せた俺は背中を押されて店の中に入れられる。

 

「おー、お帰り彩音。それに遊弥の坊主、久しぶりだな。俺のことを覚えている読者が――」

 

「天丼ネタはもう結構! いい加減にしろ親子揃って!!」

 

カウンターでコップを磨きながら迎えたマスターに俺は声を上げてつっこむ。

 

「だったらもっとうちの店に来てよね~」

 

「はぁ…善処しますよ」

 

けらけらと笑う彩音さんに俺は早くも疲れてきた。

 

「お父さん、あそこの席座らせてもらうから。それとブレンド二つ、私はミルクつきで」

 

「おう、客は今いる人たちだけでもう来なさそうだから好きに使え」

 

「ありがと。じゃ、遊弥くん、こっち」

 

彩音さんの案内で席へと連れられる。そこは他の人からは見えづらい場所。しづらい話をするには打って付けだった。どうやらおふざけではなく真剣に話を聞こうとしてくれているようだ。

 

「ほら、ブレンドコーヒーだ。こっちはサービス。じゃ、ごゆっくり」

 

いい香りのするブレンドと、新作であろうチーズブリュレを持ってきたマスターは雰囲気を察してか物を置いてからはなにも言うことなくさっさと下がる。

マスターが入れてくれたコーヒーに口をつけて一息入れる。

うん、やっぱりここのコーヒーは美味しい。落ち着く。

 

「美味しい?」

 

俺の感情を読み取っているのか、ニコニコと笑顔で問いかけてくる彩音さん。

 

「ええ、流石マスターです。他の店で飲むよりも美味しいです」

 

「ふふ、そうでしょう。私もお父さんのコーヒーが大好きなんだよね。本人には言わないけど」

 

言ってあげれば良いのにとは思うが、やはり気恥ずかしさがあるのだろう。

まあ、言わずともマスターには伝わっているかもしれない。

 

「まあ私の話はいいの。今は遊弥くんの話を聞くのが優先だから」

 

彩音さんもコーヒーを一口飲んで俺をまっすぐ見据える。

 

「それで、遊弥くんは何に悩んでいるのかな?」

 

「それは話さないといけないことですか?」

 

「ここに来たのが運のつき。全部吐いちゃおう!」

 

来たというか連れてこられたんだけど。痛みも一緒にね。

 

鋭い視線を向けるも彩音さんはなんのその。そして喋るまで逃がさないという意思でいた。

俺はため息と共に口を開く。

 

「悩みと言うほどのものじゃないですよ。音乃木坂学院を退学することになりそうだからその後どうしようかって考えてたんですよ」

 

事情を話すと、彩音さんは少し黙った後クズを見るような目をし始めた。

 

「遊弥くん…ついにやっちゃったのね……いい子だと思っていたのに……」

 

「……」

 

彼女の言いがかりに俺は無言で立ち上がる。

 

「ごめん、冗談だから。無言で帰ろうとしないで。お願いだから」

 

がしっと俺の腕を掴む彩音さんにため息を吐きながら席に戻る。

それに対しさすがに彩音さんは苦笑いする。

 

「まあそういう理由はなんとなくわかるよ――共学をやめるんでしょう?」

 

「ええ。μ'sのおかげで」

 

「遊弥くんからしたらせいになるんじゃないの?」

 

「今まで彼女たちの活動を手伝ってきた俺がそんなこと言ってどうするんですか」

 

だよね、と頷く彩音さん。

わかって手伝っていたのにいざそうなると文句を言うとか、そんなのはただのバカでしかない。

 

「そういうわけで、今さら京都の学園に戻るのも色々面倒なんでどうしようかと」

 

「普通は学校側が斡旋してくれるものじゃないの? それか卒業までは在籍させてくれるものだと思うんだけど」

 

「それは理事長からも言われたんですけど、色々ありましてね」

 

「遊弥くん、私たちの間に隠し事は無しだよ」

 

言い渋る俺に彩音さんから釘を刺される。こうして連れられて話させられている時点で俺に逃げ場などなかった。

 

「学院で俺のことを快く思わない連中がいるんですよ」

 

「快く思わない人たち、ねぇ」

 

「要するに生徒教師含めて共学に元々反対の人たちですよ。男は不要ってことで俺を追い出そうとしていたんですよ」

 

「随分みみっちい事する人もいたもんだね」

 

物隠されたり、テストの難易度を上げられたりetc.

あの手この手で嫌がらせを受けてきたがどれも子供じみて俺からしてみればお笑い物ばかりだった。

 

「……悪意に慣れすぎでしょ」

 

「そうですか?」

 

呆れる彩音さんに俺は首をかしげる。

まあ俺がされてきたことなんで今はどうでもいい。

 

「そんな感じでようやく廃校の話が片付いたのに俺のことでまた人騒動させるわけにもいかないでしょ。俺が居なくなることで丸く収まるならそれが一番ですよ」

 

「遊弥くんはそれで納得しているの?」

 

いきなり核心を突いてくる彩音さん。

 

「今の言葉を聞いたら、遊弥くんは自分で決めてないよね」

 

「ちゃんと決めてますよ」

 

「ううん。なまじ頭が良いだけに状況を正確に理解してるから、そう自分で思い込んでいるだけ。何一つとして君の意思がないよ」

 

「……」

 

まさか前に絵里に言ったことをそっくりそのまま彩音さんに言われるとは。

 

「もっと我がままを言っても良いんじゃない? 遊弥くんだって色々融通させていたんでしょ? それに、μ'sの子達だって残って欲しいと思っているんじゃない?」

 

そう言われるのは二人目だ。だが、俺の答えも変わらない。

 

「学院と同じでもうμ'sに俺は必要ないですよ。彼女たちだけでやっていけるんで」

 

ことりの留学如何でどうなるかはわからないが。

 

「結局のところ俺が学院に残る理由がないんです。思い入れもないですし」

 

「強情だなぁ。まあ、遊弥くんがそれで良いって言い切るんだったら私はそれ以上は言わないけど…」

 

「けどなんです?」

 

「なんでもない――まあもし学校辞めてからいく当てないならうちで働きなよ。うちもそろそろ人手が欲しいところだったし」

 

「……そうですね、そのときはそうさせてもらいます。コーヒー、ありがとうございます」

 

たぶん大丈夫だと思うけど、という彩音さんの言葉は聴かなかったことにして、俺は店を後にするのだった。

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
別なほうも出来次第上げたいと思います。


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