ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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どうも、燕尾です。
今年もあとわずかとなりました。
皆さんはいかがお過ごしですか?





休止

 

 

 

あれから(海未ちゃんに頬をぶたれてから)数日が経った。

 

ことりちゃんは留学の準備で学院に来なくなった。ゆうくんも学院にいる理由もないと言って来ていない。

ずっと一緒にいたい。そう望んだはずなのに、こんなにも簡単に、呆気なく私たちはばらばらになった。

 

「穂乃果!!」

 

帰る支度をしているところでヒデコちゃん、ミカちゃん、フミカちゃんたちがが慌てた様子で私のところに駆け寄る。

 

「どうしたの…?」

 

「どうしたもこうしたもないよ!」

 

「掲示板に張られてたアレ、本当なの!?」

 

彼女たちが言っているアレとは、おそらくゆうくんの退学の話だろう。

 

「うん…本当だよ。私たちはゆうくん本人から聞いたから……」

 

ゆうくんも理事長と学院長に呼ばれてそう告げられたと言っていたから、間違いない。

 

「どうして急に遊弥くんが退学になるのっ!?」

 

「書いてあるとおりだよ…音ノ木坂学院が女子校として存続するから、ゆうくんはいられないって」

 

「そんな……」

 

「それじゃあ、私たちのしたことって……」

 

「でもゆうくんはそれを知ってて、私たちを手伝ってくれた。だから私たちがそういうこと言っちゃ駄目だよ」

 

私たちは感謝しなくちゃいけない。ゆうくんのおかげでここまでこられた。廃校を阻止することができた。だから、彼にはありがとうって言わないといけない。

 

そうわかっているのに、私はその言葉を口にしたくないと思っている。

 

それを口にしてしまえば全部終わってしまう気がして、本当にゆうくんとの関係が崩れてしまう気がして。

自分の身勝手さに嫌気がさしてくる。ひどいことをしたのにまだゆうくんと離れたくない、一緒にいたいと願っているのだから。

 

「ほんと、自分勝手だよね……」

 

「穂乃果……?」

 

「私、帰るね」

 

「あ、穂乃――」

 

自己嫌悪に陥りながら、私は荷物を持って教室から出て家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 

恭しく一礼して、扉から出て行く人を見送る。

 

「すみませーん」

 

「はい、ただ今伺います」

 

それから間もなく呼ばれ、俺は対応に当たる。

 

「お待たせいたしました」

 

「マスターお勧めのティラミスとエスプレッソをお願いします」

 

「私はチーズケーキとブルーマウンテンをお願いします」

 

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 

恭しく礼をして下がる俺に対して、注文した女性たちは色めき立った声で何かを話している。

 

「マスター、オーダーです」

 

「おう、それじゃあさっきの席の片付け――」

 

「すみませーん! 注文お願いしまーす!」

 

「こっちの注文もお願いします!」

 

「こっちもお願ーい!!」

 

矢継ぎ早にくる注文。しかも注文してくる人の全員が俺に視線を向けていた。

 

『……』

 

俺とマスターはその光景に、呆然とする。

 

「マスター……」

 

「なんだ?」

 

ここ(Sky Cafe)ってこんなに人気ありましたっけ? 俺が来たときは結構閑散としていたような」

 

「おいおい、失礼なこと言うな。これが本来のうちの姿だ」

 

嘘である。俺が最初来たときめちゃくちゃ愚痴ってたことを俺は忘れてはいない。

 

「んなことはどうでもいいんだよ。ほら、さっさと注文取ってこい」

 

「マスターも手伝ってくださいよ。注文取るぐらいだったらすぐでしょう?」

 

「俺はコーヒーを淹れたり料理作るのに忙しいんだ。それに、お客さんたちはお前を希望しているんだ。文句言わずに行け、給料減らすぞ?」

 

「契約不履行で訴えますよ? 証拠の契約書もありますし」

 

「だぁ! ああ言えばこういう!!」

 

俺からしてみればそう言われる原因を作っているのが悪い。

 

「いいから、早く行ってこい!」

 

ここで言い返すと今以上の叱咤が飛んできそうなのでここら辺にしておいて俺は注文をとりにいく。

その最中、カランコロンとドアのベルが鳴る音がして、

 

「ただいまー」

 

「彩音さん、おかえり――」

 

帰ってきた彩音さんを顔だけで迎えた俺は固まった。

 

「久しぶりやね」

 

「やっぱりここで働いていたのね、遊弥くん」

 

「……彩音さん、これは一体どういうことですか?」

 

希と絵里が後ろにいることに俺は彩音さんに鋭い視線を向ける。

 

「んー? さっき偶然知り合ってね、家に招待したんだ。だからこの子達は私のお客さん。つまりここ(sky cafe)のお客さんだよ。ほらボーっとしてないで案内してよー、遊弥くん」

 

「……お席にご案内します」

 

俺は三人を席へと案内する。

 

「ブレンドコーヒー三つでお願いね」

 

「かしこまりました」

 

「あ、あと遊弥くん指名で」

 

「当店にそのようなシステムはございません」

 

「それじゃあ遊弥くんテイクアウトで」

 

「ご希望に添えず申し訳ありませんが当店では人間やテイクアウトをご提供しておりません」

 

「言うこと聞かないと(さく)ちゃんから聞いた話に脚色交えて二人に話しちゃうけど、いいの?」

 

実力行使に出やがったぞ、この人!?

 

「……なら、テイクアウトにしてください。忙しいのは分かっているでしょう?」

 

「でも二人帰る時間が遅くなっちゃうよ?」

 

彩音さんの言わんとすることに俺は頭をかく。

 

「俺が責任持って送ります、それで問題ないですか」

 

「だってさ、二人は良い?」

 

「うちは、大丈夫です」

 

「私も構いません、お仕事の邪魔をするわけにもいかないですし」

 

「それじゃあ、ブレンド三つと遊弥くんをテイクアウトでお願いね♪」

 

ウィンクする彩音さんに俺はため息を吐きながら下がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、マスター」

 

「おう、お疲れさん」

 

シフトも終わり、帰るしたくも終わらせた俺は一言マスターに挨拶を交わす。するとマスターはその後何かを思い出したように、ああそういえば、と俺に顔を向ける。

 

「遊弥の坊主よ」

 

「なんですか、改まって」

 

「いやな、お前も若いし、遊び盛りなのはわかるが……」

 

なんか雲行きが怪しくなったぞ。なんとなく次に言われることが予想できた。

 

「女は一人にしてお――」

 

「そんな考えしかできないから、奥さんは海外に逃げたんじゃないですか?」

 

「おい、言って良いことと悪いことがあるだろ。あいつはいま海外の単身赴任で働いているだけで――」

 

「……まあ、マスターがそう思いたければ思えばいいんじゃないですか? それじゃ」

 

「あ、おいっ――!?」

 

俺はドアを締めて外へ出る。

 

「待たせて悪い」

 

「ほんの十分程度なんだから気にしなくていいわよ」

 

中で待っていればよかったのに、絵里と希は閉店だからと店の前で待っていた。まあ、さっきのマスターの会話を聴かれなくて良かったと思っておけばいいか。

 

「此処から家が近いのはどっちだ?」

 

「うちや。駅からは歩いてすぐだからそこまでよろしくな?」

 

「わかった」

 

駅に向けて歩き出す俺たち。

誰かが世間話をするわけでもなく、ただ無言で駅へと向かっている。二人は俺に用があるはずなのに切り出せないようだ。

絵里と希が彩音さんと一緒にSky Cafeに来てシフト終わりまで残っていたことに理由がないはずはない。だから仕方ないと思いつつ、俺から切り出すことにした。

 

「まず始めに聞きたいんだけど、どうして彩音さんと一緒だったんだ? というか二人と彩音さんって知り合いじゃなかったよな?」

 

「それはその、遊弥くんを探しているときに彩音さんのほうから声を掛けられたというか」

 

まあそうだろうなとは思っていた。二人の話をまとめると、

 

 

学校に来なくなった俺を探しに街中へ

 

その最中に彩音さんが二人を発見

 

声を掛けて俺が彩音さんの所でバイトしていることをばらす

 

 

ということだ。それにしてもやっぱり確信犯だったな、あの人。

何かしらの仕返しをしたいところだが、あの人に勝てるビジョンが思いつかない。

 

「それで、なんだって俺を探していたんだ?」

 

とりあえず彩音さんのことは置いておいて、二人の理由だ。

 

「いくつかあなたに伝えないといけないことがあったの」

 

「伝えないといけないこと?」

 

聞き返す俺に絵里は神妙な面持ちで頷いた。

恐らくμ'sの話だということなのはわかる。だが、絵里の話は俺の予想を上回っていた。

 

「μ'sの活動は休止になったわ」

 

「……どうしてそうなったんだ」

 

思わず眉を顰め、原因を問う。

 

「今の状態じゃ、活動なんてできないからよ」

 

「ことりちゃんの留学に、遊弥くんの退学――それとな、穂乃果ちゃんもやめる言うたんや」

 

「何で穂乃果が……」

 

「本当にわからないの?」

 

頭を捻る俺に絵里は少しばかり俺を批難するような目をする。

 

「自責の念に駆られていたのよ、穂乃果は」

 

「……」

 

「ことりを傷つけてしまった。あなたを傷つけてしまった。私が勝手なことをしなければこんなことにはならなかったって、自分の行動が二人を傷つけてしまったんだって言っていたわ」

 

「……事実ではあるだろ」

 

「遊弥くん」

 

咎めようとする絵里に、俺は彼女の言葉をさえぎりながら続ける。

 

「何度も言うが、俺のことはどうでもいいんだよ」

 

強がりでもなんでもなく本当に、俺に対して気を使って欲しくて言ったわけではない。ただ、あのときは俺も感情的になって言ってしまったのは確かだ。そのことに関しては俺も帰ってから自己嫌悪した。

 

「それに、穂乃果だけが悪いわけじゃない。ことりも穂乃果に気を使いすぎていたし、俺だってμ'sと相反しているなんて言おうともしなかった。気づかないのだって仕方がない」

 

「じゃあどうしてあの時ああいったの?」

 

「こんなこと今さら信じられるか分からないけど、俺は気づけなかったことに怒ったんじゃない。自分本位に自分の感情を押し付けていたことに怒ったんだ」

 

簡単に言えば、人の気も知らないで、というやつだ。

穂乃果はことりがなぜ自分に伝えなかったのかを考えなかった。俺がどうして手伝ったのか考えようとしなかった。それなのにどうして、なぜ教えなかったんだと詰め寄ってきた。

 

「分かろうともしない穂乃果が、許せなかった」

 

そんなところだ、と言うと二人は俯いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほな、わざわざここまでありがとなー」

 

目的地の駅前で希は笑顔を浮かべながらお礼を言う。

 

「希、また明日」

 

「うん、また明日。遊弥くんもちゃんと学校来うてな?」

 

絵里と挨拶を交わした希は俺にそんなことを言った。

 

「俺、退学するんだけど?」

 

「そうだとしてもその日までは音ノ木坂の生徒や。サボりはいかんよ?」

 

理事長や山田先生からは好きにしろって言われてるから、行くも行かないも俺次第、なのだが――

 

「いい?」

 

「……考えておく」

 

ずいっ、と顔を近づける希に俺は身体を反らしながらお茶を濁す。

曖昧な返事だったのだが希はよしと満足そうに頷いて、

 

「またね」

 

そのまま家へと帰っていった。

 

「それじゃあ、私たちも行きましょうか」

 

「ああ……」

 

絵里の家のほうへと俺たちは歩きだす。

こうして、肩を並べて絵里と歩いて帰っていると昔を思い出す。

 

「二人でこうやって帰るのなんて、本当に久しぶりね」

 

それは絵里も同じだったようで、そんなことを呟いた。

 

「あのころは絵里に一緒に帰る他の友人なんていなかったもんな」

 

「うっ……その話はいいじゃない」

 

あまり触れられたくないのか、絵里はばつが悪そうにする。

 

「それに、高校三年間でも結局は憧れとして遠巻きに見られてただけで近づかれることもなかったと」

 

「そ、そういう遊弥くんはどうだったのよ!?」

 

「俺も大概だな。九重学園(あそこ)は競争思考でね。そして通う生徒はいろんな界隈の子息や息女が大半なんだ」

 

幼い頃から英才教育を受けてきた才子才女の集まりだ。

そんな中で学園の理事長である爺さんの養子である俺が入ってくれば、どうなるかぐらい想像だに難くない。

 

「俺の機嫌を損ねないように上っ面な態度を取ったり、逆に勝手に敵視されたりでろくな友達なんていなかったよ」

 

「どっちもどっちね、本当に」

 

実感がこめられた言葉に絵里は苦笑いする。

 

「昔の私はこうしてまたあなたと並んで歩けるなんて思ってなかったでしょうね」

 

「そりゃそうだろ。それぞれ進む道が違ったんだから」

 

当時の俺だってそんなことは思っていなかっただろう。

 

「実を言うとね? 私は――この時間が好きだったの」

 

「そこで苦痛だったとか言われたらショックだよ」

 

「こら、茶化さないの」

 

絵里にピンとデコピンされる。

 

「一緒に帰るだけのなんでもない日常の一つ。誰かと一緒にいて、他愛のない話をしながら過ごす。ただそれだけだったけど楽しかったって思っていたわ」

 

言いはしないけど俺も絵里と同じだ。あの頃絵里と過ごした時間は俺にとっても楽しいものだった。

 

「だからあなたが音ノ木坂に入ると聞いたときは内心喜んでいたのよ? もう一度同じような時間が過ごすことができるんだって――まあ、色々あったけど」

 

「それは、悪かったよ……」

 

最後に付け加えられた色々に俺は謝る。仕方ないこととはいえそこで開き直れるほど面の皮は厚くない。

絵里も意地悪を言った自覚があるようで、冗談よ、と付け加えた。

 

「色々あったけどその分戻ってきたし、それに新しい時間ができた」

 

「新しい時間が出来たなら、それを大切にしてい――」

 

「私はこの時間も、みんなで居られる時間も、失いたくないの」

 

「相変わらず我が儘だな。それに欲張りだ」

 

「ええ、そうよ。それは前から知っていたでしょ?」

 

絵里は数歩前に出て、こちらに振り向く。

 

「あなたやみんなが作ってくれた時間を私は守りたい。いいえ、それだけじゃなくて、今度は私がそういう楽しいって思える時間を作ってみんなと共有したい。だから――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――待っててね。今度は私があなたの、みんなの手を引くから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――」

 

優しい笑みを浮かべ、夕日に照らされ輝きながら風で靡く綺麗な髪を抑えながら言う絵里に俺は思わず息を呑む。

一瞬だけ絵里がまるで本物の女神の一柱であるように見えた。

 

「あら、ついちゃったわね」

 

残念そうな絵里の声に俺は現実へと戻っていく。

 

「ここまでありがとう、急に押し掛けてごめんなさいね」

 

「い、いや、気にしなくていい」

 

どぎまぎしながら俺はなんとか言葉を絞り出す。

 

「それじゃあ、希も言ってたけどちゃんと学校に来てね? もしまだ行く理由がないって言うなら、そうね――この時間を過ごすために来て」

 

「……」

 

「いい?」

 

「あ、ああ……」

 

言われるがままに頷いてしまう。

 

「言質取ったわよ? 破らないでちょうだいね」

 

「え、あ……」

 

「じゃあ、またね」

 

「あ、ああ…また……」

 

手を振る絵里に俺も手を挙げる。それに満足したのか彼女はそのまま家へ続く曲がり角を曲がっていく。

俺はその姿を見送った後も、しばらく惚けているのだった。

 

 

 

 

 

ちなみに帰った後――

 

 

 

 

 

彩音

お父さんが気持ち悪いほど落ち込んで、あいつは逃げたんじゃないんだよな? そうだよな? って聞いてくるんだけど、何があったの? 

 

とLaneに連絡が入っていたが、知りませんとだけ答えておいた。

 

 

 







今年も一年お疲れ様でした。
来年も変わらず楽しませられるように、頑張りたいと思います。

ではでは……
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