ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。
そろそろ一期分が終わりそうです。






誰がための嘘

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

『えっ……?』

 

 

 

翌日、教室に入ると皆が驚いたような目で俺を見た。

まあ、無理もない。ここ数日休んでいた上に、絵里から聞いた話では俺が近々退学するということを昨日知ったみたいだし。

わけが分からない、どういうこと、と戸惑いの空気の中、俺はまだ残っていた自分の席に行く。

 

「おはよう、穂乃果」

 

「っ、おはよう…ゆうくん……」

 

隣にいた穂乃果に挨拶をする。だが、穂乃果はものすごく緊張したように挨拶を返した。

前の席の海未はいないから、おそらく弓道部の朝練習に顔を出しているのだろう。

 

「遊弥くん!」

 

席に腰掛けるところで、久しぶりのヒフミトリオがやってきた。

 

「おはよう。三人とも」

 

「うん、おはよう――って、暢気に挨拶している場合じゃないよ!?」

 

「そうか?」

 

「だってあんな(退学)話が持ち上がってたんだよ?」

 

「もう来てくれないかと思ってたんだから」

 

本当はそのつもりだったのだが、上の空だったとはいえ絵里や希と約束してしまった以上それを果たさないといけなかった。

 

「あと少しだけど、よろしくな」

 

「遊弥くん……」

 

そういう俺にヒフミたちは悲壮感を漂わせている。

彼女たちも学校の決定なのだからどうしようもないことが、自分たちにできることが何も無いとわかっているのが、この表情を作らせているのだろう。

 

「……っ」

 

そして彼女たち以上に、穂乃果が下唇を噛んで何かを我慢しているのが俺の目に入った。

声をかけたいのに、今さらどんな顔して俺と話せばいいのか分からない、そんな様子。

 

正直俺は穂乃果と話すことは何もない。あと少し立てば俺はいなくなって、関わることもなくなるのだから。

俺と穂乃果の間に流れる歪な空気。

 

「皆さん、おはようございます」

 

そんな空気を打ち破るように、朝練習が終わったのであろう海未が入ってきた。

 

「――っ!!」

 

クラスメイトたちと挨拶を交わす中、俺の姿を確認すると海未も例に漏れず驚きで目を見開いた。

 

「おはよう、海未」

 

「……おはようございます、遊弥」

 

少し無愛想に、だけど、挨拶を返さないのは失礼だというような様子で海未は挨拶を返す。

 

「もう、来ないのかと思いました」

 

「ああ。そのつもりだったんだけどな。生徒会の会長と副会長に二人そろって学校に来ることを約束させられたからな」

 

「……そうですか」

 

相槌だけを打って、自分の席で本取り出す海未。

どうやら俺がことりに言ったことに対する怒りが収まっていないのだろう。

 

それならそれでいい。どう思われようと、あと数日で終わりなのだから。

 

俺もバックから本を取り出して、本を読むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Honoka side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、私は一人で生徒玄関から出る。

海未ちゃんはホームルームが終わった途端に弓道部の方に行き、ゆうくんもすぐに教室から出ていった。

前まではことりちゃんも含めて皆一緒だったのに、今は見る影もなくバラバラで、そして私だけが取り残されたような感覚になって辛い。

 

だけどこれは自分で招いたこと。一人なのは自業自得。だから受け入れないといけない。

 

「穂乃果ー」

 

校門に差し掛かったところで声をかけられる。

 

「久しぶりに一緒に帰ろ?」

 

「…あ、うん。いいよ」

 

声を掛けてくれたのはヒデコちゃんだった。彼女の後ろにはフミコちゃんとミカちゃんもいる。いつもの3人だった。

 

「そうだ、帰る前に遊びに行かない? 放課後、フリーになったんでしょ?」

 

「ちょっと!?」

 

ミカちゃんがヒデコちゃんを咎めるが、彼女は止まらない。

 

「だって何はどうあれ目的達成したからやめたんでしょう? それは悪いことじゃないでしょ? それに――」

 

そこで、ヒデコちゃんは言葉を切って私に笑顔を向けた。

 

「それだけじゃなくても、一回難しいことは置いておいてパーっと遊んで気分転換したら、今まで見えなかったものが見えてきそうじゃない?」

 

「あ…」

 

ねっ、と言う彼女に私は小さく声をら漏らした。

多分だけど、ヒデコちゃんはなんとなく気づいていると思う。辞めた理由が単純に廃校を阻止したからではないことに。

 

「それじゃあ、いこっか!」

 

「えっ、あ、ちょ…!?」

 

「あっ、待ってよヒデコ!?」

 

「急に走り出さないでよ!?」

 

私の手を取って走り出すヒデコちゃん。そして置いてかれたフミコちゃんとミカちゃんは慌てるように後を追いかける。

 

 

 

 

 

そして、連れられて来たのはなんでも揃っている大型のショッピングモールだった。

そこでは、

 

 

 

「これとか似合うんじゃない」

 

「そ、そうかな?」

 

テナントのファッション店の一角でヒデコちゃんは手に取った服を私の前に被せる。

オレンジ色を基調としたワンピース。私には少し可愛すぎる気がした。

 

「えぇ、それよりこっちの方がいいんじゃない?」

 

フミコちゃんが被せてきたのはオレンジと白のストライプのシャツに大きめのデニムパンツ。そしてそれらに合わせるように選んだと思う色のスタジャン。

 

「こんなのはどうかな?」

 

ミカちゃんが持ってきたのは白のシャツにジーンズスカート、そして薄オレンジのロングカーディガンだ。

皆渡しに似合いそうなものを持ってくるのだが、

 

「それじゃあ、これは!?」

 

「こんなのだってあるよ!」

 

「なら、私もとっておきの出すよ!」

 

「ちょ、ちょっと待って!? そ、そんなに持ってこられても困るよー!?」

 

皆に着せ替え人形にされたり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ストロベリーチョコバナナ。ホイップ増し増しだよ!」

 

「わぁ♪ すごい美味しそう――頂きます。はむっ!」

 

私はテンション上がり気味に受け取ったクレープにかぶり付く

 

「私はマンゴーを頂きます♪」

 

「私はブルーベリーを」

 

「私はアーモンドバナナ」

 

三人も同じようにクレープを口にする。

 

『おいひー……』

 

「ね、穂乃果」

 

「ん? なーに?」

 

ヒデコちゃんに声をかけられて振り向けば目の前にクレープが差し出されていた。

 

「はい、あーん」

 

「あー…ん……んぅ~♪ マンゴーも美味しいね~…それじゃあ、私はフミコちゃん、はい、あーん」

 

「あーん」

 

皆で顔を緩ませながらクレープに舌鼓を打ったり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フミコちゃん、もうちょっと右だよっ」

 

「うん……ここ!!」

 

「よし掴んだ!」

 

「そのまま持ち上げて、よしよーし、そのままそのまま――あっ…落ちた」

 

「うそ…しっかり掴んでたはずなのに……このアーム貧弱だよ……!?」

 

「でも今ので穴には近づいたから、再挑戦するよ!」

 

 

 

 

 

クレーンゲームでみんなで機械に張り付きながら奮闘すれば、

 

 

 

 

 

「ぶっとばすよー!」

 

「あー! そこで甲羅を当てないでよ!?」

 

「その隙にばいなら~」

 

「あぁ!! また落ちちゃった!?」

 

 

 

 

 

レースゲームで白熱したりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、いいレースだったね」

 

ゲームコーナー内を歩きながらヒデコちゃんがスッキリしたように言う。

 

「ヒデコ、あのゲームになると性格変わりすぎだよ」

 

「将来、車持ったら気を付けないと駄目だね、あれは」

 

「ゲームだからああなだけよ!」

 

確かに、ヒデコちゃんの変わり様は凄かった。そしてハンドル捌きも本当に運転したことある人のようなもので、ダントツの一位だった。

ちなみに私は落ちてばっかりで全部のレースで最下位だった。

 

うぅ、どうして車が走るのに崖とかきちんと整備されてないんだろ……

 

「ねね、次はこれやろうよ!」

 

やりたいものを見つけたミカちゃんが立ち止まり、あるものを指差す。

 

「あ……」

 

ミカちゃんが指したのは、以前リーダー決めの時にやったダンスゲームだった。

 

「……」

 

私はボーッとそれを見つめる。

一瞬、脳裏にあの頃の光景が浮かび上がる。

わいわいと楽しく、だけど真剣にプレイする私たち。そして皆を驚かせるほどの腕前を見せたゆうくん。

 

「穂乃果ちゃん、どうしたの?」

 

「ううん、なんでもないよ!」

 

ずっと筐体を見つめている私に不思議そうにするフミコちゃん。私は誤魔化すように首を横に振る。

そうだ。もう辞めたんだから、なんでもない。

 

「スコアがいい人の勝ちってことで」

 

「……うん、負けないよ!」

 

 

なんでもないんだから――

 

 

誰でもない自分に言いながらコインを入れた。

 

 

 

 

 

「時間も時間だし、今日はここまでかな?」

 

ゲームを満喫してショッピングモールから出ると外は日が落ちていて、空はオレンジ色に染まっていた。

 

「それじゃあねー」

 

「また遊ぼうねー?」

 

「じゃあね、また学校で――」

 

「うん。三人とも今日はありがとね。ばいばい」

 

手を振って、私は三人と別れる。

放課後にこんなに遊んだのは本当に久しぶりだった。

二年生に上がってからは、ずっと体力作りやダンス、歌の練習ばかりだったから。

 

それに――今日こうして誘ってくれて、気を使わないようにいつも通りにしてくれたのは本当に嬉しかった。本当に、三人には感謝しないといけない。

 

「私も帰ろう」

 

私も自分の家へと足を進める。

その道中で、人だかりができていた。

道を歩いている人たちが立ち止まって見ているのは大きいスクリーン。

そこに映っているのは、A-RISEだった。

 

「そっか、優勝したんだ……ラブライブ」

 

凄いなぁ。こんなにたくさんの人から応援されて、みんなに好かれて。

 

「きっと凄いアイドルになるんだろうなぁ」

 

私はその場から離れる。

 

「今度は誰も傷つけない、誰も悲しませないことをやりたいな……」

 

自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、たくさんの人を笑顔にするために頑張ることができて――

 

「――でもそんなもの、あるのかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば、私は神田明神へと足を運んでいた。

石段を上がって、参道に出ると拝殿の前には見知った顔がいた。

 

「花陽ちゃん、凛ちゃん」

 

「っ、穂乃果ちゃん……」

 

練習着を着ている二人。たぶんここで走っていたんだろう。

 

「練習、続けてるんだね」

 

「うん……」

 

「――当たり前でしょ」

 

「わっ!? にこちゃん……」

 

後ろから急に声を掛けてきたにこちゃんに私は驚く。

 

「私たちはスクールアイドル続けていくんだから」

 

「えっ……?」

 

「悪い?」

 

「い、いや……」

 

μ'sの活動を休止したって聞いてたから、続けるとは思っていなかった。

 

「別にμ'sが休止したからってやっちゃいけない理由にはならないでしょ?」

 

「でも、なんで……」

 

「好きだから」

 

「っ」

 

迷いのない瞳で、真っ直ぐに即答したにこちゃんに私は言葉が出なかった。

 

「にこはアイドルが大好きなの」

 

にこちゃんは臆面もなく言う。

 

「みんなの前で歌って、ダンスして、みんなと一緒に盛り上がって、また明日から頑張ろうって気持ちにさせることができるアイドルが大好きなのっ!」

 

まっすぐなにこちゃんの気持ちに私は気圧される。

 

「穂乃果のようないい加減な"好き"とは違うの」

 

「違うっ、私だって――……っ」

 

にこちゃんの言葉を聞き捨てられなかった私は一瞬反論しかけるがすぐに辞めた。

 

「……そうだね。私はいい加減だった」

 

「あんた……」

 

私の気持ちはにこちゃんなんかには遠く及ばない。

 

「それじゃあ私は帰るね。練習、頑張って」

 

目を合わせるのも辛くなった私は逃げるように背を向ける。

 

「穂乃果ちゃん!」

 

そんな私に花陽ちゃんが声をかけてきた。

 

「その、今度私たちでライブやるの。もしよかったら見に来て欲しいな」

 

「花陽ちゃん……うん。考えておくね……」

 

私は何とか笑顔を浮かべて、三人と別れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Hanayo side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にこちゃん、言いすぎだよ!」

 

「凛ちゃん、落ち着いて……」

 

「…ふんっ」

 

凛ちゃんに咎められたにこちゃんは不機嫌そうにそっぽを向く。

 

「穂乃果ちゃんがいい加減じゃなかったことぐらい分かってたじゃん!」

 

「……いい加減じゃなかったらなんだって言うのよ。簡単に辞めるなんて言って辞めたのに」

 

「にこちゃん、それ本気で言ってるの?」

 

「……」

 

真面目に言う凛ちゃんににこちゃんはばつが悪そうにする。

凛ちゃんや私を含めて、μ'sの皆は穂乃果ちゃんがスクールアイドル活動がいい加減な気持ちだったなんて少しも思っていない。

ことりちゃんやゆうやくんから言われた言葉。自分がしてきたことが二人を傷つけたと知ったら立ち直れないのも仕方がないのかもしれない。

 

「私も、スクールアイドルの活動が原因で凛ちゃんを傷つけたって知ったら、やっぱり考えちゃうかな」

 

「かよちん……」

 

その立場になっていないから、実際に直面したわけじゃないからそう言えるだけかもしれない。

ことりちゃんやゆうやくんから言われた後の穂乃果ちゃんがどんな気持ちだったのか、私には想像もできない。

 

しかしあの時の穂乃果ちゃんの言葉に、にこちゃんや海未ちゃんが怒った気持ちもわかる。

 

今まで真剣に頑張ってやってきたのに、目指しているものを無意味だと、切り捨てれば誰でも怒る。

それに――

 

「穂乃果ちゃん、やっぱり本心ではやりたいって思ってるのかにゃ?」

 

「じゃなきゃ、あんな顔しないわよ」

 

さっきのにこちゃんとのやり取りで見せた穂乃果ちゃんの反応と表情。それはどう見ても明らかだった。

 

「全く、どうして自分の気持ちに嘘をつくのかしら」

 

「にこちゃんが言えたことじゃないにゃ」

 

「なんですって?」

 

「に、にこちゃん怖いにゃー……」

 

凄むにこちゃんに凛ちゃんは後ずさる。出会った頃のにこちゃんは確かにそうだった。

 

 

 

「――だけど、誰にでもあることなんじゃないかな」

 

 

 

にこちゃんもそうだったし、私もそう。それに凛ちゃんだって、誰だって自分の気持ちに嘘をつくことはあると思う。自分を誤魔化すために、そして、自分を守るために人は嘘をつく。

だけどもう傷つきたくないと、自分を守るためについた嘘が今は穂乃果ちゃん自身を傷つけている。

 

ライブに誘ったのも、そんな穂乃果ちゃんを救いたいと思ったからでもあった。

あの時、私の手を取ってくれた穂乃果ちゃんの手を次は私が取ってあげたい。

 

「でも穂乃果ちゃん、ライブ来てくれるかな……?」

 

「うん…来てほしいよね」

 

誘いはしたけど、穂乃果ちゃんの様子からきてくれるかどうかまでは分からない。

 

「来るわよ」

 

不安に駆られる私と凛ちゃんとは反対に、にこちゃんはすぐに断言した。

 

「だって――あの子が始めたことなんだから」

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではでわまた次回に



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