ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です
修士論文が完成し、提出してちょっと一息つけました。
短いですが、77話目です。





私が望むこと

 

 

 

 

 

―― Eri side ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ~……雪穂、これはシュークリーム?」

 

亜里沙は真ん中に"ほ"と描かれたお饅頭をジッと興味あり気に見つめながら問いかける。

 

「違うよ。これは餡子。シュークリームじゃなくてお饅頭、小豆(あずき)を煮たものだよ」

 

雪穂ちゃんの話しにハラショー、とお饅頭を持ちながら驚く亜里沙。和菓子を見たことないから珍しいのだろう。

 

「わざわざ送ってくれてありがとうございます」

 

「お礼を言うのはこちらのほうよ。いつも亜里沙と一緒に勉強してくれてありがとう」

 

「いえいえ、私の勉強まで見てもらっちゃって、凄い助かりました」

 

図書館まで亜里沙を迎えに行ったら穂乃果の妹の雪穂ちゃんと一緒に勉強していた。

二人の勉強に少し付き合ってから図書館を出ると、外は夕暮れに染まっていたので、こうして雪穂ちゃんを送っていたのだ。

 

「良かったら上がっていってください、お姉ちゃんも喜びます」

 

いいの? と確認を取ると雪穂ちゃんはすぐに頷いた。

 

「お姉ちゃん、ここ最近はずっとすぐ帰ってきて部屋に篭りっきりですから――少しは誰かと話す必要があると思うんです」

 

「そう…それじゃあ、上がらせてもらおうかしら」

 

「はい――亜里沙、少し家に上がっていって。絵里さん、ちょっとうちのお姉ちゃんと話するみたいだから」

 

「いいの!? わーい!!」

 

ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ亜里沙に私も雪穂ちゃんも顔が綻ぶ。

 

「ありがとう、雪穂ちゃん」

 

「いえ。お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪穂ちゃんの案内で、私は穂乃果と顔を合わせることができた。

久しぶりに入った彼女の部屋は少し様変わりしていた。

スクールアイドル関連のものが一切ないのだ。掛けられていた練習着も、使っていたパソコンも、ちょっとした雑誌も何もかも――まるで最初からなかったかのように消えていた。

 

そうさせてしまったことに私は申し訳なく思った。

 

「――ごめんなさい」

 

「いえいえ、お気になさらず。いまお茶を――」

 

「違うわ。μ'sの活動を休止にしようなんて言ったこと――本当は私にそんなこと言う資格はないのに」

 

ごめんなさい、と私は頭を下げる。

ことりが抜けるまでは続けることを考えていた。しかし穂乃果が辞めると言ったことで私は身の振り方を考えよう、と活動休止を提案した。意図していなかったが、結果的には穂乃果が休止の発端のような形になってしまった。

 

「そ、そんなことないよ――っていうか、私が辞めるって言ったから」

 

そういって目を伏せる穂乃果に、私は一息吐いた。

 

「穂乃果、私のことどんな風に見てるかしら?」

 

「絵里ちゃんのこと?」

 

突拍子もない突然の質問に穂乃果は戸惑っていた。

 

「そう。どんな人だと思ってた?」

 

「え、えっと…」

 

「気を悪くしたりとかしないから、正直に言っていいわ」

 

穂乃果は暫く考えた(のち)、恐る恐るというように口を開いた。

 

「最初は、凄い真面目で、廃校のこともあったから少し怖かった、かな」

 

「うん、そのあとは?」

 

「μ'sに入ってからもしっかりとしいて、冷静で、頼れるお姉さんって思ってたかな……」

 

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ」

 

そう思ってくれていたことは嬉しいのだけど、私の予想通りの答えだった。

 

「でもね、よく穂乃果みたいなことを言ってくれる人が多いのだけど、ほんとは全然そんなことないの」

 

「えっ……?」

 

「いつも困って、迷って、泣き出しそうで――希や遊弥くんに実際恥ずかしいところを見られたこともあるのよ? 特に遊弥くんには何度もね」

 

「絵里ちゃん……」

 

そのころのことを思い出した私は少し苦笑いする。

 

「ほら、以前皆でアキバに行った時に遊弥くんが私のことをポンコツエリーチカなんて言ってたでしょう? 腹は立つけれど、あながち間違いじゃないの」

 

認めたくは無いけど、遊弥くんがそう言ってしまうほど私は彼に迷惑をかけていた。そのたびに彼は冗談交じりに私をポンコツとからかいながらも助けてくれた。私がしっかりしているように見えるのはそんな人に助けてもらった上での話だ。

本当はしっかりなんてしていない。

 

「でもね、私はそれを隠してるの」

 

自分の弱さを隠して、皆によく思われるように、理想を演じている自分がいるのだ。

 

だからこそ、私は穂乃果が羨ましい。

 

「素直に自分が思っている気持ちをそのまま行動に起こせる姿が凄いなって思う」

 

「そんなこと…」

 

穂乃果はそういうけれど、少なくとも私にはできないこと。

 

「ねえ、穂乃果」

 

私はまっすぐ穂乃果を見据える。

 

「正直私はなんて声をかけたらいいのかわからない。私たちでさえことりがいなくなることにショックを受けているから、海未や穂乃果の気持ちを考えると、辛くなる」

 

探り探りだが、何とか言葉を紡いでいく。

 

「でも、でもね、私は穂乃果や遊弥くんに大切なことを教わった。変わることを、自分の気持ちを伝えることを恐れずに進んでいく勇気を私はあなたたちから教わったの」

 

意地を張り続けることしかできなかった私を、皆が救い上げてくれた。

そのおかげで今こうしていられている。

 

「私はあのとき、あなたたちに救われた」

 

穂乃果がしてくれたように、私は穂乃果に手を差し伸べる。

 

「穂乃果――あなたが本当に望んでいることは何?」

 

そしてあの時の私が答えられなかった質問を穂乃果にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― Honoka side ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あなたが本当に望んでいることは何?

 

 

 

 

 

絵里ちゃんに問いかけが頭の中に残る。

 

 

許されないことをした、こんな私が、と思っていた。

そうやって目を逸らし続けて、逃げていたことに絵里ちゃんはもう一度目を向けることと言った。

 

 

私が、本当に望んでいること。

 

 

それは――

 

 

「……」

 

私は押入れの奥から服を取り出す。

いままでμ'sの練習のときに着ていた服。

私はそれに袖を通して一息吐く。そして、

 

 

「――っ」

 

 

両手で思い切り頬を叩いた。ぱんっ、と大きな乾いた音が自分の耳に聞こえる。

 

「……よしっ!!」

 

気合を入れた私は、家から飛び出した。

 

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に……
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