ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。
79話目ですな。





謀られた……

 

 

 

「ゆうくん…どうしてここに……それに、その格好……」

 

それはこっちのセリフだと言いたい。話を聞いてやって来たのに、何で穂乃果が外に出ているのか。

それに見る限り、全然大丈夫そうなのが俺の疑念を膨らませた。

 

「俺は穂乃果にトラブルが起きたって聞いて、呼ばれたんだが…」

 

「私に、トラブル……?」

 

穂乃果は首をかしげる。どうやら穂乃果もよく分かっていない様子だった。そこで俺は思い至った。

 

「……嵌められた」

 

「嵌められた…? どういうことなの……?」

 

問いかけてくる穂乃果だが、俺は答える気力が湧いてこない。

おそらくだが、彩音さんも一枚噛んでいるはずだ。そう考えれば納得はできる。俺は質の悪いお芝居に脱力してしまう。だが、それと同時に安堵している自分がいた。

何も無いのならそれに越したことはない。こんないたずらを考えた絵里たちへ説教をする手間が増えただけなのだから。

 

「ねえ、ゆうくん…」

 

「なんでもない。海未や絵里に騙されたっていうだけだ」

 

「――っ!」

 

「俺は帰る。じゃあな」

 

俺はため息を吐きながらバイクのほうへと戻る。しかし、

 

 

 

「待って、ゆうくん!!」

 

 

 

穂乃果が俺の手を取って引き止めてきた。

 

「……どうした?」

 

「あっ…えっと、その……」

 

穂乃果は考えてなかったのかしどろもどろになり、俯く。だがそれもつかの間、何かを決意したように顔を上げた。

 

「ゆうくんに、お願いがあるの」

 

静かに、だけどきちんと意思を持つように穂乃果は言った。

 

「……」

 

無言でそのお願いとやらを促すと、穂乃果は胸に手をやった。

 

「私を、空港に連れてって」

 

「…空港?」

 

「ことりちゃんを迎えに行きたいの」

 

その一言で俺は理解した。

 

「本当は、ゆうくんには、もっと先に言わないといけないこととか、謝らないといけないことがあるのは分かってる。私がゆうくんにこんなこと頼む資格はないって思ってる。それでもお願い。もう時間が無いの」

 

頼む資格がないって言っているのに、頼むのか。あべこべだな、本当に。

 

でもまあ――それが穂乃果か。

 

「あっ……」

 

俺は手を振り払ってバイクに戻る。それを穂乃果はギュッと拳を握り締めて眺めていた。

そして俺は座席下の収納スペースからヘルメットを取り出す。

 

まったく。どこまでも手のひらで踊っているな、俺は。

 

「穂乃果」

 

俺はヘルメットを穂乃果に向かって放り投げた。

 

「え――わっ! わっ!?」

 

慌てながらもしっかりと受け止める穂乃果。そんな彼女に、俺はため息を吐きながら言った。

 

「早くそれつけて、こっちにこい」

 

一瞬何を言われているのか分からなかった様子だが、次第に理解できた穂乃果は表情を明るくさせた。

 

「――う、うん!!」

 

俺はバイクに跨り、エンジンを掛ける。

その後ろに、ヘルメットをつけた穂乃果が跨った。

 

「いいか、しっかり掴まってろよ。それとどんな体勢でも俺に委ねて同じように身体を傾けろ。じゃないと事故る」

 

「わかった」

 

「それじゃあ、行くぞ」

 

俺はスロットルを全開にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― Honoka side ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆうくんの運転するバイクは大きな音を上げながら公道を走る。

そのスピードは車よりちょっと速いぐらいなのに、風を感じているからか、疾走感がすごい。気を抜いて力を緩めばふり落とされそうなほどだった。

私はそうならないように改めてゆうくんに抱きつく力を強める。

密着しているところからはゆうくんの体温が感じられる。

 

心地のいい、彼の暖かさ。

 

自分から拒絶して、遠ざけてしまった温もり(優しさ)

 

もし許してくれるのなら、もう一度――

 

「ゆうくん……」

 

私は放さないように彼にくっついて身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクで走ること約二十分、ついに目の前に空港が見えてきた。

 

「穂乃果!! 出発ロビー近くの乗降場所に下ろすぞ!!」

 

風切る音で声が通りにくいのか、大きな声でそういうゆうくん。

 

「ゆうくんはどうするの!?」

 

私は問いかけるが、ゆうくんは聞こえてないのか、聞こえないフリをしているのか、答えてくれない。

そして言ったとおり、ゆうくんは乗降場所でバイクを止めた。

 

「ほら、行ってこい」

 

私の背中を押して、見送ろうとするゆうくんの手を私は取る。

 

「ゆうくんはどうするの?」

 

さっき答えてくれなかったことをもう一度問いかける。今度は聞こえなかったなんて言い訳はできない。

だけどゆうくんは答えない。

 

「ゆうくんも行こう、ことりちゃんのところに」

 

私が手を引こうとすると、ゆうくんはそれを振り払った。

 

「俺は帰る」

 

「どうして?」

 

「俺は空港に連れて行って欲しいって穂乃果のお願いを聞いただけだ。別にことりを引き留めようなんて思っていない」

 

ことりちゃんが決めたことだからと、あくまでゆうくんはその立場を貫いていた。

どんなことを思っていたとしても本人が留学すると決めたのだから、自分はそこには干渉しない、と。

 

「仮に、ことりが引き留めてほしいと思っていたとしても、ことりが望んでいるのは穂乃果の言葉だ。俺は必要ない」

 

「そんなことない! ことりちゃんだってゆうくんの言葉が欲しいに決まってる!」

 

「どうして、そう言い切れるんだよ」

 

「だってそれは、ことりちゃんは――」

 

そこまで言って私は言葉を切って、

 

「――私と同じだから」

 

言いそうになった言葉を変えた。

勢いに任せてとんでもないことを言ってしまうところだった。ことりちゃんの気持ちを勝手に告げてしまうところだった。

 

「意味が分からん…」

 

「それに、ゆうくんはことりちゃんとこのままでいいの!?」

 

もしかしたらことりちゃんは行ってしまうかも知れない。海未ちゃんは大丈夫って言ってくれたけど、私の言葉だけじゃ届かないかもしれない。そうなったらすれ違ったまま別れてしまう。

 

「そんなの、駄目だよ! 絶対駄目!!」

 

「わかった。わかったから落ち着け」

 

迫る私にゆうくんは仰け反りながら、引き剥がす。

 

「俺が行くにしても、このバイクを駐車場に持っていかないといけないから」

 

そうだ。ここはあくまで送迎の乗降場所。いつまでもバイクを止まらせているわけには行かない。

 

「帰りはしないから先に行け――いいな?」

 

「う、うん! 絶対、来てねっ!」

 

「ああ」

 

そう言ってゆうくんはバイクに跨り、駐車場へと向かっていく。

私は空港に入って、ことりちゃんのところへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そんなことない! ことりちゃんだってゆうくんの言葉が欲しいに決まってる!

 

 

――ゆうくんはことりちゃんとこのままでいいの!?

 

 

「……はあ、かっこわる」

 

駐車場にバイクを止めた俺は心底自分に呆れたように、息を吐いた。

あそこまで意地になって否定することもなかったはずなのに。

俺の言葉を否定して欲しいように、否定的な言葉ばかり並べて――

 

「女々しすぎるだろ、俺……」

 

俺は自分のことを分かっていなかったようだ。だけど今こうして自覚したからこそ、自分自身の女々しさに嫌悪してしまう。

 

「なんでもないって誤魔化して、でも本当はここまで引き摺って、いや、誤魔化せていたかどうかもわからないな……それで八つ当たりみたいなことして…はあぁぁぁ……」

 

ここが自分の部屋なら転がりまわっていただろう。

自分のしたこと一つ一つに恥ずかしさがこみ上げてくる。

 

「……まあ、行くか」

 

こんなところで後悔している場合ではない。

どの面下げて顔を合わせていいのか分らないが、穂乃果と約束してしまった以上、行かなければならない。

ため息を吐きながら俺は空港内へと入り、ことりが乗るであろう航空会社の受付付近を歩いて探す。

だが人が多く、その中からあの二人を見つけ出すのは難しい。もしかしたら、穂乃果が間に合わず、それが分らずに探し回っているのなら尚更困難だ。

どうしたものか、と考えているところで後ろから肩を掴まれた。

 

「遊弥くん」

 

「うおっ!?」

 

いきなりの声と感触に思わず驚きの声を上げる。

 

「あら、驚かせちゃったみたいね。ごめんなさい」

 

苦笑いしながら謝るのは――雛さんだった。

 

「雛さん……」

 

「偶然ね遊弥くん。お見送りに来たのかしら。それとも――引き留めにきたのかしら? 穂乃果ちゃんと一緒に」

 

この人はどこまで分っていたのだろうか、俺たちのことについて。

 

「まあ私のことはいいじゃない。それより、お探しのお二人は――あっちよ」

 

雛さんが指差す先には穂乃果とことりがいた。

穂乃果は放さないようにことりを抱きしめて、ことりは涙を流しながら穂乃果を抱きしめ返していた。

 

「おおう…まさかの百合展開?」

 

「そんなボケはいらないんじゃないかしら? ほら、あなたも行ってらっしゃいな。あっ、あと帰りは私が二人を乗せていくから、そこの心配はしなくていいわ」

 

本当にどこまで分っていたのか、底知れない雛さんに俺は恐怖を隠せない。

 

「ほら、ボケッとしないの!」

 

「うおっ!?」

 

だけどそんな俺の考えなど関係なく、二人の目の前に出すように勢いよく背中を押された。

 

「あっ、ゆうくん!」

 

「えっ!? ゆ、ゆーくん!?」

 

俺の姿に気付いて明るい表情を見せる穂乃果と、戸惑うことり。

俺は後ろを見るが、雛さんの姿は一瞬にして消えていた。

 

「……」

 

この二人を目の前に、俺もどうしていいのか分らなくなる。特に、ことりとは存続パーティ以来会っていなかったから尚更何て言葉をかけていいのか分らなかった。それはことりも同じようで、俺から目を逸らしている。

だが、そんな戸惑っている俺たちの手を穂乃果が取った。

 

「穂乃果……?」

 

「穂乃果ちゃん……?」

 

「……ぐすっ」

 

二人で穂乃果を見ると、穂乃果は瞳に涙を溜めていた。

今まで我慢していたのだろう。気まずさはあるものの、こうしていられて安心しているのか、穂乃果は決壊したダムのように涙を流した。

 

そんな穂乃果の手を俺とことりはギュッと握り返した――

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に
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