ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。
話が膨らみすぎて全然終わる気がしないです笑





救出

 

 

 

 

「ことりさん以外ははじめましてね、μ'sの皆さん。A-RISEの綺羅つばさです」

 

つばさが皆に一礼する。こんなところで会うとは思わなかったであろう皆は固まっていた。

 

「ほ、本物……!」

 

花陽は目を輝かせながら、つばさを見つめていた。

 

「ど、どうしてA-RISEの人がゆうくんを――?」

 

「そもそも、遊弥知り合いだったのですか!?」

 

「前に街中で偶然知り合ってな……」

 

「そんな話聞いたことないわよ!?」

 

咎めるにこに俺はそういえば、と思い出す。皆にはつばさと知り合ったことなんてなにも言っていなかったわ。

 

「っていうか、ことりちゃんは知っていたの!?」

 

確かに。あの時のつばさはサングラスを掛けていたから、ことりも気付いてないものだと思っていたのだが、俺が命がけの鬼ごっこをしている時に二人の間で何かあったのだろう。

ただ、

 

「うん――私たちに内緒で(・・・・・・・)つばささんと(・・・・・・)一緒にお出かけしていた(・・・・・・・・・・・)ところに会ったから」

 

ことりがそう言ったその瞬間、空気が凍った気がした。

 

「言い方に悪意あるぞことり」

 

「でも本当のことよ?」

 

「うん。そうだけどな? 別に言ってなかっただけで内緒にはしてないぞ」

 

「それはどちらも同じことです。まさかあの時の女性の方がA-RISEだったなんて」

 

ほらー、海未が凄いオーラを出して俺を見下ろしてきたよ。

いや、海未だけじゃない。穂乃果や絵里も凄い俺を睨んできている。

ほかの皆からも、どこか不機嫌そうにしていた。

 

なんだか、バットで殴られたときより命の危険を感じる。

 

「ふふ。愛されてるわね」

 

小さく言うツバサ。

可愛らしいけど、悪い笑みだということを俺は見逃さない。

 

「とにかく、偶然知り合いになっただけだ」

 

「あら、知り合いだなんて他人行儀な言い方はないじゃない。あんなに濃密な時間を過ごしたのに」

 

「頼むから火に油を注がないでくれ。せっかく応急処置してくれたのに傷が更に増える」

 

「じゃあ、それなりのものがあるでしょう?」

 

「偶然知り合って友達になった」

 

「まあ、今はそれで甘んじてあげるわ」

 

釈然としないような感じだが、とりあえずは納得してくれる。

 

「随分とつばささんと仲が良いのね、遊弥くん」

 

「頼むから、少し深呼吸して落ち着いてくれ」

 

あっちを立てばこっちが立たない。そして話が進まない。

俺はつばさの膝から離れて、体を起こす。

 

「とりあえず、ここから離れよう」

 

いつそこで伸びてる男が目を覚ますかわからないし。

 

「遊弥。外で拘束している人もそうだけど、この人はどうするの?」

 

「とりあえず警察を呼ばないとな…やったことは拉致・監禁だから」

 

金のためにこんなことをした奴らに慈悲はない。

 

「なんだったら、私たちが対応しておくけど……?」

 

「いや、さすがに当事者じゃないと駄目だろ」

 

「でも、彼女たちが探しに来たってことはそれなりの理由があったからじゃないのかしら?」

 

あー…それもそうか。皆が動いたということはそういうことだ。

 

「今すぐ俺が向かわないと駄目な感じか、絵里?」

 

俺が問いかけると絵里は時間を見て頷いた。

 

「……そうね、時間はあまりないわ」

 

「なにがあった――と聞かなくても、大体の原因はあの学院長か?」

 

タイミング的にも、さっきの男たちの会話からも、しっかり乙坂亜季の学院長の話が出てたし。

 

「ええ。遊弥くんからの話を聞く場として全校集会をすることに決めたの。あなたが監禁されていて、来れない状況を作った上で」

 

いかにもあの学院長がやりそうなことだ。自分の手は一切汚してないくせに、何食わぬ顔で俺が逃げたといって、認めないと言い張りそう。

 

「それはいつからだ?」

 

「六時間目の時間。あと一時間半ぐらい後ね」

 

警察の対応していたら間に合わない時間だ。元から痛い頭が更に痛くなる。

もうこうなってしまっては、方法は一つしかない。

 

「……つばさ」

 

「任せなさい。責任持って対処するわ」

 

「助かる」

 

お礼を言う俺に、ただ、とつばさは俺の口元に指を当てる。

 

「この埋め合わせはすること! いいわね?」

 

「ああ、必ず」

 

むしろここまでしてもらっているのに礼のひとつもしない神経は持ち合わせてはいない。

 

「全部片付いたら、警察のほうに向かうから」

 

「その前に病院ね。そういうのも含めて伝えておくから」

 

何から何まで、頭が上がらない。

 

「ありがとう、つばさ。それじゃあ行ってくる」

 

「ええ。いってらっしゃい」

 

俺は皆のところに行く。だが、皆は不満げな顔で俺を迎え入れる。

 

「ど、どうしたみんな……」

 

「なんでもないよ、ただ――こんなときでもゆうくんはゆうくんだったってことがわかったから」

 

「そうですね。遊弥は相変わらずです」

 

「ゆーくんそういうところ、たまにどうかと思うな」

 

「遊弥くんはもっと周りを見るべきね」

 

次々と口にする穂乃果たちに俺はわけがわからなくなる。

 

 

 

「ここまででもわからないというのは早々いないでしょうね」

 

その光景を見ていたつばさにまで、そんなことを呟かれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂についた俺は誰にも見つからないように、校内を進み、理事長室へと到達する。

 

「遊弥くん!」

 

「うぐっ!?」

 

理事長室に入った俺の顔を見た瞬間、雛さんは勢いよく飛びついて俺を抱きしめてきた。

 

「お母さん!?」

 

『理事長!?』

 

「ひ、雛さん…苦しい……! 柔らか痛い……!!」

 

頭の前は雛さんの柔らかいお胸様に包まれるが、後頭部はガッチリ腕でホールドされているせいか、かなり痛い。

 

「ああ、ごめんなさい…あなたの顔を見た瞬間ほっとしちゃって……」

 

「…心配掛けてすみません」

 

ここまで帰ってきたことを喜ばれたところを感じると、雛さんは凄く心配してくれていたのだろう。

 

「いいのよ。こうして無事に…までとは言えないけれど、戻ってきてくれたのだから」

 

頭の包帯を見て、雛さんは申し訳なさそうに俺の頬に手を添えた。

 

「ごめんなさい。私がもっとしっかりしていれば、あなたが傷を負うことなんてならなかったのに……」

 

「雛さんが悪いことなんて一つもないですよ。それにこれは大げさに巻いているだけですから」

 

「でも、傷ついたのは本当なんでしょう?」

 

「それは、まあ…」

 

そう言われてしまうと否定はできない。

すると雛さんの雰囲気が変化した。

 

「ふふ…ふふふ……私の大事な子にこんなことするなんて……あの女、絶対に後悔させてやるわ……!」

 

うわお、雛さんからダークサイドが広がっている。

 

「お、お母さん…!?」

 

「ことりちゃんのお母さんにこんな一面があったなんて…初めて知ったよ……」

 

「私も初めて見ました…」

 

ほら、娘とその幼馴染たちが引いてるよ。

いやまあ、雛さんってSっ気があるから、やるなら徹底的にやりそうだけど。学院長大丈夫か? いや、あの学院長を心配しても仕方がないんだけど。

 

「で、穂乃果たちから聞いたんですけど、なんだか全校集会で俺が喋らないといけないらしいですね」

 

「……ええ。あの女が私のいない間に勝手に決めたようでね」

 

雛さん、さすがに学院長と呼びましょうよ。気持ちはわからんでもないけど、そんな不服そうな顔したって駄目です。

 

「あなたが本当に音ノ木坂学院に残りたいのか、私たち教員と生徒が判断するために、あなたに話して欲しいの」

 

「署名だけじゃ足りないということですね」

 

「あなたには本当に悪いと思ってるわ」

 

「いいです。全員が全員認めてもらえるなんて思っていませんから。良い機会です。それに――そろそろ叩き潰そうと思っていたので、手を出してきてくれてよかったです」

 

『……っ』

 

その言葉に、皆の顔が不安に揺れる。

そんな彼女たちを見て俺は少し苦笑いをする。

 

「別に物騒なことをしようだなんて思ってないから安心してくれ。今までのことの責任を取らせようっていうだけだ」

 

そう言っても彼女たちの顔は晴れない。底抜けに優しい皆のことだ。こういう争い自体が慣れていないのだろう。

 

「ゆうくん…」

 

「心配するな。悪いようには絶対しないから」

 

俺は穂乃果の頭に手を置く。

 

「それにそもそもの話、こういう話は俺が決められることじゃない。雛さんが決めること。そうですよね?」

 

俺が確認を取ると、雛さんは頷いた。

 

「そうね。遊弥くんの意向はある程度考慮するけれど、偏った判断はしないし、してはいけないから。そこについては公平にやるわ」

 

「そういうことだから安心してくれ」

 

「うん…」

 

頭を撫でてやると、安心したように頷く穂乃果。

 

「ということで雛さんとの打ち合わせをやるから、皆は戻ってろ」

 

「ゆーくん、頑張ってね」

 

「ああ。色々ありがとう」

 

皆は、それぞれの教室に戻っていく。

 

 

 

 

 

「さて…それじゃあ、雛さん。始めましょうか」

「ええ。始めましょう」

 

 

 

 

 

そう言う俺と雛さんの口は三日月のように曲がっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――皆さんお集まりいただきありがとうございます。この時間は普段の授業を変更し、全校集会を開くことになりました。理由は朝に聞いているかと思いますが、萩野遊弥くんが音ノ木坂に残るか否か、それを決めるための意思表明を行ってもらうためです」

 

教員が淡々と説明している中、乙坂亜季は口元を緩める。

 

「本来であれば署名が集まった段階でわれわれが判断すべきことなのですが、ことがことだけに、このような場を設けさせていただきました」

 

学院長という立場を利用して理事長のいない隙を突き、この全校集会を無理やりねじ込む。全てが乙坂亜季が想像していたとおりのことが起きている。

 

「このあと萩野君に壇上に出てお話しをしてもらいます。賛成の方も反対の方、色々いると思いますが、まずは萩野君の言葉を静かに聞いてください」

 

萩野遊弥の言葉を聞くことなどない。何せあの男が現れることがないのだから。

あの男は逃げたのだ。邪な理由で残りたかっただけだったから。本当に残りたい理由が見つからなかったから、説明することを拒んだ。

そう言えば大半の生徒は信じるだろう。何せ現れないのだから。実際は秋葉原の廃墟のビルにいるだろうが、そんなことはこの場にいるほとんどが知らない。手伝いを買って出たあの女子生徒たちも、口封じは済んでいる。

 

「それでは、萩野遊弥くん。お願いします」

 

上手くいった。私の勝ち――ようやく音ノ木坂からあの忌々しい男がいなくなる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――なんて思ってたんだろうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……!?」

 

「――ッ!!!!」

 

俺が登壇するとざわめきが起こる。

それもそうだ。今の俺は頭に包帯を巻いたまま登場したのだから。

ざわざわと会場に響く多数の声。

 

 

――えっ…なに、あれ……

 

 

――どうして頭に包帯なんか……?

 

 

――怪我、だよね? 何があったんだろう……

 

 

「ちょっと、なに驚いているんです? 貴女が呼んだんじゃないですか」

 

「……っ」

 

周りが騒がしくしている中、俺は目の前の教員にだけ聞こえるように言う。

 

「まるで――ここには来れないはずなのに、聞いていた話と違う、と言わんばかりの驚きようですね?」

 

「っ、何でもありませんよ。あなたのその格好に驚いただけです。大丈夫なのですか?」

 

「ええ。あなた()なんかに心配される筋合いはないぐらい大丈夫ですよ」

 

"方"を強調する言い方に教員は顔を顰める。

もう少しポーカーフェイスを学んだほうが良い。今のは自分が関与したと教えているようなものだ。

 

「さて――」

 

マイクの前に立つ。その瞬間皆のざわめきが消えた。

 

俺は一つ息を吐いて、皆を見る。

皆からの視線は心配しているもの、困惑しているものそして――嫌悪しているもの様々だった。

でもそれでいい。全員から認められたいだなんて、それは強欲だ。

 

俺はそれぞれ自分のクラスのところにいるμ'sの皆を見る。

彼女たちは大丈夫と言うように微笑んでいる。そのことに俺の口元が緩む。

俺を信じてくれている人たちのために、そして何より、俺自身が望むこと(・・・・・・・・)のために。

 

「皆さんこんにちは。萩野遊弥です」

 

どんな人がいようとも、俺のやることは一つだ――

 

 

 

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
早く、早く一期分よ、終われ!
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