ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、あけましたおめでとうござます

えー、事後報告になって申し訳ないのですが、90~92話を削除しました。

理由を率直に申しますと最新話から続きが思いつかなかったから、義妹を絡ませた学院生活の話が書けなかったからです(^ω^;)

今回の話は前の話を少し変化させただけなのですが、これからの話は投稿していた展開と違いますのでご注意くださいm(_ _)m

更新自体久しぶりなので、覚えている人がいるかは怪しいですが…
まあ、燕尾の自己満足と思って置いてください。




義兄妹

 

 

 

 

 

夜ご飯を食べ終え、自分の部屋戻った俺はいつの間にか置かれていたベッドに大の字になって寝転がる。

本当は食べてすぐ寝転がるのはよろしくないのだが、長距離の移動をしたせいかすこし疲れていたのを自覚しているため、気にはしなかった。

 

「……」

 

ぐるりと部屋を見渡す。

行き届いた清掃。この部屋の掃除をやってたのは愛華だろう。

俺がいなくなった後も、いつ帰ってきても良いように、隅々まで埃ひとつなかった。

 

 

 

――ずっと一緒だって、2人でひとつだって言ってたのに…!

 

 

 

――私を、一人にしないで……!

 

 

 

――嘘つき…嘘つきぃ……

 

 

 

「……」

 

愛華の言葉が頭の中に反芻する。

あのときの約束が、その場凌ぎで出たでまかせではない。だけど、愛華には一方的に俺が約束を破ったと見えてしまった。

いや、実際そうだ。"ずっと一緒"という約束を俺は破ったのだ。

約束を破ってでも、俺は音ノ木坂に行った。強引だったが最終的には爺さんの話を受け入れ、向かった。

 

爺さんも咲姉も、愛華にはあの日に俺が出発するまで言わなかった。それはあの二人が俺らの関係の危険性を分かっていてからだろう。

 

俺たち義兄妹(きょうだい)がずっと危ういところにいたことを知っているからこそ二人は言わなかった。

またそれだけではなく、俺だけの問題、そして、愛華だけの問題をちゃんと理解していたから、爺さんは俺を無理にでも東京に行かせ、愛華を京都に残した。

 

「ほんと、頭が上がらないな。あの二人には……」

 

今こうしていられていることを考えれば、爺さんや咲姉に感謝してもしきれない。

 

「今度、また落ち着いたらなんかしよう。二人に内緒で。うん、それが良い」

 

今まで、こそこそと色々したお返しをしてやろう。

そう心に決めたところに、ドアがノックされる。

 

「兄様、起きてますか?」

 

「愛華か。起きてるぞー」

 

応えると、失礼します、と礼儀正しく部屋に入ってくる愛華。

 

「どうした? なにか用か?」

 

そう問いかけると、愛華はちょっと不機嫌そうな表情をした。

 

「用ってほどじゃないんですけど――半年振りにいる兄様のそばに居たいと思ってはいけませんか?」

 

「……」

 

「また遠くに行ってしまうでしょう兄様の側に、少しでも長く居たいと思うのは、いけないことなのでしょうか?」

 

そう言われてしまうと、なにも言い返せない。

愛華はため息を付く俺のとなりではなく、膝の上に座ってきた。そして俺にもたれ掛かったり、少しはなれたりと、ゆらゆら揺れている。

 

 

――これは、催促してきてるんだろうなぁ

 

 

ここで愛華の意図を無視すると、余計に不機嫌になるのは確実だ。俺は愛華の頭を優しく撫でる。

 

「……兄様」

 

「なんだ?」

 

「久しぶりに、兄様の演奏が聞きたいです」

 

「……マジで?」

 

「マジです」

 

「いや、それは……」

 

義妹(いもうと)の願い1つも叶えてくれないのですか? 約束を破っておきながら」

 

「……俺が悪かったから、そういうのはやめてくれ。頼むから」

 

「悪いと思っているのなら、お願いします」

 

「……わかったよ」

 

俺は諦めてアコースティックギターを取る。

 

「場所は、いつもの所でいいな?」

 

「はい」

 

俺と愛華は階段を上がり、ベランダに出る。

 

「今日は絶好の演奏日和です。満点の星空です」

 

愛華の言う通り、ベランダから見上げれば幾千もの星が夜空に広がっていた。

だが、

 

「本当に久しぶりだから弾けないかもしれないぞ」

 

「兄様なら大丈夫ですよ」

 

信じて疑わない愛華に俺は小さくため息をはいて、演奏を始める。

 

 

――案外覚えているもんだ。スムーズに指が動く。

 

 

「~♪」

 

俺がなに弾くのかをわかっている愛華は、ギターの音色に鼻歌で合わせる。

二人でこんな夜を過ごすのも本当に久しぶりだ。

 

音ノ木坂に行った後はもちろん、行く前にこれをしたのもかなり前だったから。

 

「……」

 

チラリと愛華を見る。

俺の視線に気づいた愛華は鼻歌を歌いながら小さく微笑みを向けてくる。

俺も微笑み返して、演奏を続ける。

 

二人で音楽を楽しんでいると、音につられてベランダに客がやってきた。

 

「久しい音と声が聞こえると思ったら、やっぱりやっておったか」

 

「私たちにも聞かせてくださいな」

 

俺と愛華が受け入れる前に、側にある椅子に座る二人。これも前まではいつものことだった。

 

「本当に久しぶりだよね。何だかんだで一年以上振りじゃないかな?」

 

「そうじゃな、遊弥はいつの間にか弾くことを恥ずかしがっておったしな」

 

そういわれて俺はなにも言えない。

 

俺の演奏は別に、誰かに聞かせるようなものじゃないし。

しかし弾き始めれば、最初に愛華がやってきて歌い、その後に咲姉と爺さんが現れる。

 

まあいつものことだから、拒むこともなく演奏を続ける。

愛華と顔を合わせ、俺たちは同時に小さく笑う。

 

星空の下行われた小さな演奏会は少しの間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演奏会の後、俺が約半年東京で過ごして来たことについて、それから三人が過ごしてきた時間を話した。

両方の話が終わった頃にはもう日が変わりそうな時間になっていた。

 

「今日は、もう終わりだな」

 

「もうそんな時間なんだね」

 

「まだ話し足りないです」

 

「なに、焦ることはない。明日も明後日も、まだ時間はある」

 

「…そうですね」

 

名残惜しそうにする愛華だが爺さんの言葉に頷いて、おとなしく引き下がる。

 

「それじゃあ、私は部屋に戻るね――おやすみ」

 

「ワシも戻るとするかの」

 

「ああ。おやすみ、二人とも」

 

「咲姉様、お爺様、おやすみなさい」

 

一日の終わりの挨拶をした二人は自分達の部屋に戻る。

 

「さて、俺たちも寝るか」

 

じゃあ、と自分の部屋に戻ろうとすると、後ろから袖を引っ張られる。

 

「……愛華?」

 

愛華の方を向くと、愛華はどこか遠慮するような、なにか躊躇っているようにしていた。

 

「どうしたんだ?」

 

そう問いかけると愛華は小さな声で、

 

「兄様…今日は一緒に寝たいです……」

 

「…」

 

普段なら即答で駄目だと言っている。しかし、

 

「…愛華の好きにしろ」

 

「……っ、はいっ! ありがとうございますっ、兄様!」

 

喜ぶ愛華に、俺はまだまだ甘いのだと、実感する。

寝る支度を済ませた俺は先にベッドに寝転がる。

 

それから数分もしないうちに愛華が俺のベッドに潜り込んできた。

 

「……」

 

「……」

 

お互い無言で、顔を見ることもなく天井を見つめる。

 

「愛華」

 

先に切り出したのは俺だった。

 

「爺さんも咲姉も今日はこっちに来ることはない。俺もちゃんと聞くから、全部吐け。自分が思っていることを、自分の感情を」

 

「……」

 

「俺が帰ってきてから、お前の情緒が安定してない。いろんな感情が入り混じって自分を見失いかけてるだろ」

 

「……兄様は、私のことお見通しですね」

 

「何年一緒に居たと思ってるんだ。様子がおかしいことぐらいすぐにわかるさ」

 

「居た……そうですね。兄様だけには隠し事はできないみたいです」

 

「……」

 

それは違う、と言いかけたが今は口を閉じて、愛華の話を聞く。

 

「さっきベランダで東京の話をしていた兄様は、とても楽しそうに、嬉しそうにしていました」

 

「……そうだったか?」

 

「はい。私をほったらかして、女狐たちに囲まれた生活を満喫していたようでなにより、と思ってしまうほどに」

 

「酷い言いようだな、おい」

 

異性だけしか居ない生活っていうのもなかなかに大変なんだが。

 

「ですが、兄様は――お兄ちゃんはそれがわかるほどに変わった」

 

「……」

 

「お兄ちゃんに乗っかっていた沢山の憑き物が落ちたように、お兄ちゃんの表情(かお)は変わった」

 

顔には全く出ていないはずなのだが、愛華はそう指摘する。

 

「そしてお兄ちゃんを変えたのは穂乃果さんたち――μ'sの人たち」

 

ずっと一緒にいたからこそ気づいた変化。

爺さんや咲姉では言わないと気づかないことを愛華は見抜いたのだ。

 

そして俺のその変化が愛華を不安にさせているのだろう。

 

 

 

――一人にしないで

 

 

 

その言葉に全てが集約していたのだ。

 

「お兄ちゃんは前に進み始めた。それに比べて、私は――私はなにも変われてない。あの頃のまま、ずっと立ち止まったまま」

俺に対して愛華は自分の状況を自覚した。

いや、愛華だって本当は前から分かっていたのだろう。今のままではいけないって。

 

「本当はね? 急だったのには驚いたけど…お兄ちゃんが帰ってきたとき、嬉しくて、お帰りなさいって、笑顔で言おうとしたの。あんなこと言うつもりはなかった」

 

「ああ…」

 

「お爺様や咲姉様がお兄ちゃんが東京に行くことを私に言わなかった理由だって途中で気づいたんだよ? 私たちのことを想ってあえてそうしたってわかった。だから私も私なりに頑張ったんだ――お兄ちゃんじゃない、他の誰かとも生きていくために頑張ったの」

 

俺以上に敏い愛華は、二人の意図を早くに気づいていた。

愛華は俺のほうに体を向けて、下のほうから俺を見上げる。

 

「ずっとお兄ちゃんを――出会った時からずっと、お兄ちゃん(・・・・)を私が縛ってきた。私が縛り続けていたから、お兄ちゃんは私の分まで傷ついてきてしまった。だからもう終わりにしようって、これを機に変わらなきゃって思った。そうしないと私も、なにより遊弥くんがずっと囚われてしまうから」

 

愛華は俺のことを想って行動をしてくれていた。俺がいなくて不安に思いながらも、それでもと変わろうとしていた。

 

「だけど、駄目だった。私一人じゃ前に進むことができなかった」

 

「愛華…」

 

「私…私は……今も昔も、お兄ちゃんが居ないと何もできない…どうしようもない臆病者みたい……」

 

「……」

 

「ごめん、ごめんね……」

 

ぎゅっ、と俺の胸元をつかむ愛華。

 

「わかってたの…ずっとお兄ちゃんに依存していたってことはもうずっと前から気付いていた。だから、私……」

 

そういう彼女の声は震えていた。

全部を聞いた俺は小さく溜息を吐いた。

 

「――なんというか、ほんと愛華は昔から極端だな」

 

「遊弥くん…」

 

「まあ俺は俺で、意地を張り続けていたんだけどな。俺たちって本当に、融通が利かないというか、なんというか」

 

苦笑いしながら俺は愛華の頭をなでる。

 

「あのな、愛華? 俺が前に進めたのは何も自分ひとりの力でできたわけじゃない。愛華も言ってただろ、μ'sの皆が俺を変えたって――恥ずかしながらそうだ。皆と過ごしてなかったら、俺も変わらないままだった」

 

俺が変わったと愛華から見えるのなら、それは紛れもなく皆のお陰だ。

皆が俺を引き上げてくれた。俺一人じゃなにもできないままだった。

 

皆に、俺は助けられたのだ。

 

「一人で抱え込まなくていんだよ。自分でどうにもできなかったら助けを求めていいんだ」

 

「だってそれじゃあ…お兄ちゃんに助けてって言ったら、何も変わらないから…」

 

「そこで求める先が俺だけっていう時点で間違ってるんだよ。愛華の周りで、いま助けてって言えるのは俺だけなのか? 爺さんは? 咲姉は?」

 

それに愛華は表面上ではあるが俺とは違って、九重学園でもそれなりに良好な人間関係があるだろうに。愛華は上っ面な関係と言っていたが、決してそれだけじゃない人がいたはずだ。

そこから一歩踏み出せば愛華だって変われていただろう。だが、

 

「――そのことを分からなくさせたのは俺だよな」

 

愛華をずっと守らなければならないと思って、俺は守り続けた。

守るべき大切な存在として、守り続けてしまった。

本当は自分で自分の身を守る術を教えるべきだったというのに。

それをせずに俺が愛華の側から離れたから、愛華はどうして良いのか分からなくなってしまった。愛華はいま出口のない迷路をずっと歩いている。

 

彼女をこうさせてしまったのは紛れもなく俺の責任だ。

 

「本当にやることなすことうまくいかないな。俺たち」

 

呪われているのではないだろうかってたまに思ってしまうほど、上手く行った試しがほとんどない。誰かを想い、誰かのために動いても、悪いことばかりに転がっていく。

だけど、それでも俺たちは今こうしている。

 

真っ当なことでもロクでもないことでも何かをすることはできる。そうやって失敗しながらも時には成功させて俺たちは生きてきた。

考えればひどく不器用で稚拙だったけれど、なんとかなっているのだ。

 

そしてそれは今でもそうだっていえるだろう。

 

「誰かの手を借りてもいい。学園には気付いていないだけで、もう愛華にも上っ面じゃない人が出来てるはずだ。だからあとほんの少しだけ頑張ってみろ。愛華に差し伸べられた手を信用して取るんだ」

 

俺がそうだったように、愛華だってきっと出来るはずだ。

 

「お兄ちゃんは…勝手だよ……あんな約束したのに、今さら私に他の人と生きていけって……」

 

「そうだな…勝手なことをしてるって思う。だけどこれが愛華のためになるって思ってる」

 

「……うん」

 

「取り繕わなくていい。格好悪くたっていい。難しいことは全部後で考えて、自分の素を受け入れてくれる人を見つけてみろ」

 

「うん…わかった……」

 

「愛華ならできるさ。何せ、俺の自慢の義妹なんだから」

 

「……ねぇ、遊弥くん」

 

「なんだ?」

 

「遊弥くんが東京(あっち)に戻ったら、私頑張るから…」

 

愛華は俺の服をぎゅっと握って、体を寄せる。

 

「だからほんの少しでいいから、私に勇気をくれないかな……?」

 

「――ああ。わかったよ」

 

俺は愛華を包み込むように抱き締める。

そして俺たちは昔のように、体を寄せ合いながら眠るのだった。

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?

本年も皆さん実りのある一年となるよう、祈っております。

今年もよろしくお願い致します。
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