ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。

92話目かな?
久しぶりの更新です






偶然の遭遇

 

「で、何で俺は拉致られているんだ?」

 

あれから俺はつばさと英怜奈とあんじゅの三人にそのまま連行された。

 

「せっかく一緒の新幹線に乗り合わせたもの。降りる駅も近いのだし良いでしょう?」

 

隣につばさ、正面に英怜奈とあんじゅの二人が座っている状況にため息を吐く。ファンからしたら羨ましいことこの上ないのだろうけれど。

 

「私は前に会ったときはちゃんと君と話ができなかったからな。それにつばさとの関係も気になるところだし」

 

「私もつばさとの関係をじーっくり聞きたいなー」

 

「ちょ、ちょっと! その話はちゃんとしたでしょう!?」

 

焦りを見せるつばさだが、目の前に座る二人はつばさを無視してニヤニヤと俺を見つめてくる。

 

「いやいや、つばさからじゃなくて遊弥くんから聞きたいのだよ」

 

「英怜奈も言ってたけど私たちも遊弥くんとお話してみたいしね~」

 

キラリと怪しく光る目に俺は精神の危険を感じとる。これはとっても疲れるやつだ、と。

 

「話したいって言っても特に面白いことはないぞ? 三人と比べたらそこら辺に生えてる雑草のような存在だ。という訳でこの移動中にやりたいことがあるんで戻りたいと思いますっげえ痛いィィィ!?!?」

 

退却を狙ったのだが、つばさに思いきり関節を極められる俺。

 

「逃がすわけないでしょ……大人しく座りなさい」

 

腹の底からドスの利いた声で警告するつばさに俺はすぐさま白旗を振る。

それからは地獄の質問責めに遭った。

 

つばさとの出会いやμ'sとの出会いについて。それに俺が音ノ木坂に編入することになった経緯。それと――この前の監禁事件の経緯や顛末などなど、根掘り葉掘り聞かれた。

この前のことについては流石にあそこまで大騒ぎになれば2人の耳に入るのは当然なわけで、それに加えて俺以外の当事者から当然話を聞いてるわけで。

 

「それで、何がどうなって遊弥くんはあんなことになっていたの?」

 

「話さないと駄目か?」

 

「私たちやあんじゅはともかく、当事者も知りたがっているんだ。話をする義務はあるのではないか? 私たちもここで聞く話しは口外しないし、茶化すこともしない」

 

俺はとなりのつばさに目を向ける。

 

「そうね。私はあなたの口からちゃんと聞きたい」

 

茶化すつもりのない真面目な顔したつばさ(当事者)にそんなこと言われてしまったら、誤魔化すわけにも行かないだろう。

少し長くなってしまったが、彼女たちに全てを話した。

 

俺が音ノ木坂に来た経緯。俺という異分子が加わったことによる周囲の変化に今までされてきたを。

そして、あの時のことを。

 

「基本的にはテレビとかで言っていたことが大半だよ。俺をどうしても受け入れられなかった学院長が、女子学生やらどこぞのゴロツキを使って俺の意識を奪って監禁したんだ」

 

「あの怪我は?」

 

「あの部屋から脱出したあとにゴロツキとの一悶着です。金属バットを思い切り一振されました」

 

「よく生きてるな、君」

 

「はっはっは。あの程度で死んでたら俺はとっくの昔に死んでるよ」

 

「今までどんな生き方をしてきたのよ、あなたは…」

 

「あれだ、あれ。萩野さんは特殊な訓練を受けてます。他の方は絶対に真似しないでくださいってテロップに流れるやつだよ」

 

本当にろくでもない生き方をしてきただけだ。

 

「それからはつばさに協力してもらって学院長を筆頭とした関係者を一網打尽にとっちめた。それは説明しなくてもわかってるだろう?」

 

確認の意味も込めて問いかけると、つばさは少し悩んだ素振りを見せた。

 

「その…その事について今さら聞きづらいんだけど」

 

「なんだ? ここまで言ったんだから別に隠すようなことはしないぞ?」

 

「えっと……学院長に加担してた女子学生は、どうしたの?」

 

「ああ、それ私も気になっていた。学院長に与したということは当然彼女たちも犯罪行為を働いたということだろう?」

 

歯切れの悪いつばさに変わって英玲奈が斬り込んできた。

 

「英玲奈ー、もう少しオブラートに包もうよー?」

 

「まあ、英玲奈の言うことは間違いじゃない。実際に彼女らがしたことは傷害罪として成立はするからな」

 

「じゃあ――」

 

「早とちりすな。表向きは警察に突き出してから示談成立させたってなってるけど、そもそも警察にすら突き出してない」

 

「そうなの?」

 

「入院先で謝りにきた彼女らと約束ごとをしただけだ。まあ、間に警察やら弁護士やらがいないだけである意味示談と言えるし、全部が嘘なわけじゃないから大丈夫だろ」

 

「それは詭弁じゃないかしら?」

 

「当事者がそれでいいって言ってるんだからいいんだよ。今なんて、件の女子生徒のメンタルケアを俺がやってるくらいなんだから」

 

ため息を吐く俺に三人はどういうことだというように首を傾げる。

 

「その女子生徒たちが無罪放免だったってことで下らない正義感をもった阿呆共がウジ虫のように沸き上がったんだよ」

 

その言葉に皆はああ、と理解する。

本当に頭が痛い。関係ない奴らが出てくるとロクなことにならない。

 

「その阿呆どもに二人がすっかり恐怖を覚えてな。二人には絶対に手出しはさせないし、俺も事情を知ってるμ'sの皆も口外しないから安心して良いって言ってるんだが、どうにもね」

 

「それは、そう言われても安心は出来ないでしょうね」

 

「だから困ってるんだよ」

 

もしものことなんて人間誰しも、どうしても考えてしまう。それに対する不安とかは第三者が取り除くことなんて出来ない。そこはもう自分で乗り越えるしかない。

だけど、疲弊していく二人をみて居たたまれないのだ。

 

「何とかしてあげたいけど、もう俺にできることはほとんどないんだよな」

 

「あなたができるのはもう安心させる言葉を掛け続けることぐらいしかないわよね」

 

つばさの言い分に俺はただ頷く。

 

「ちょっと話が反れたが、後はまあ、マスゴミや頭の悪い連中を相手してたら芸能事務所の連中が不躾に押し掛けてきたんだ」

 

あのしつこさには本当に参った。しばらくは遠回りして家に帰らないと行けなかったし。雛さんたちには迷惑をかけてたし。

 

「なるほど。それでしばらく雲隠れしていたわけか」

 

「まあ、当然よねぇ~。遊弥くん、うちの学校でも結構話題になってたし」

 

「そんな一介の学生を話題にする必要ないだろうに」

 

「芸能界の大物や専門家たちと呼ばれる人たちを忖度なしでぶった斬り続ければ話題にもなるだろう」

 

「それに遊弥くんのルックスも加わるとなると、尚更ねぇ~?」

 

ん? 今あんじゅからスルーできない言葉が聞こえだぞ?

 

「ちょっと待って。ルックスの話をkwsk(詳しく)

 

「え? なにも知らないの? 遊弥くん、そういう受けもすごく良かったんだよ」

 

「メディアなんかはイケメン高校生っていう見出しを結構使いたよ――ああ、あった。ほら、これだ」

 

「あとSNSとかでも凄い反響だよ」

 

記事を検索した英玲奈とあんじゅはスマホを見せてくる。

そこには確かに2人が言っていたような内容が書かれていた。

 

ほう、ほほう…なるほどなるほど……

 

一人納得しているところに冷えた視線を一つ感じる。

 

「随分と嬉しそうね、遊弥? そんなに他の女の子からキャーキャー言われるのが良いのかしら?」

 

面白くないといった様子で睨んでくるのはつばさだった。

そんな彼女に俺はため息を吐いた。

 

「分かってない。分かってないな、つばさ」

 

「なにがよ?」

 

「男は1度でいいからキャーキャー言われてみたいんだよ!」

 

「馬鹿なのかしら?」

 

そんな率直に言うことないじゃないか。憧れを言うぐらいいいじゃないか。ちくしょう。

 

「そんな有象無象より、自分の傍にいる人をちゃんと見なさいよ…馬鹿……」

 

不機嫌さと、どこか寂しさを含ませながら呟くつばさ。

 

「傍にいる人をちゃんと――」

 

俺はつばさの方を見る。しかし、

 

「やっぱり広いデコがぼぉ!?!?」

 

ウィットに富んだようなジョークが通じることなく。俺の腹につばさの拳が叩き込まれた。

 

「流石に今のは擁護できないな」

 

「もう少し乙女心を知った方がいいわね。μ'sの皆も大変そう」

 

目の前にいる英玲奈とあんじゅは、腹を抱えながらもピクピク震える俺を苦笑いしながら見つめるのだった。

 

 

 

 

 

「んー…着いたぁー!」

 

最寄りの駅に降りた俺は大きく身体を伸ばして空を仰ぐ。

やはり座ってるだけだと身体が固まりやすく、ポキポキと音がなる。

 

「まさかつばさたちと会うとは思いもしなかったな」

 

偶然というのは恐ろしい。そしてA-RISEの三人も恐ろしい。新幹線の中で行われた幾千もの質問に俺の精神力をごっそりと奪っていった。

女3人寄れば姦しいとはこのことか。違うか。

 

そんなくだらないことを考えながらホームへと向かう。

つばさたちは数駅前で降りていった。遅めの昼を食べてから帰るらしい。

遊弥も一緒にどうかしら、と誘われはしたが色々と疲れたからと言って断った。そのかわり不満そうにしていたつばさに今度一緒に出掛けることを約束させられたけど。

まあ、正直に本当の理由を話すのが恥ずかしかっただけなのだが。待ってくれているだろう皆を待たせるわけにはいかない。

 

俺は足早に歩き、改札を通って、皆が待つ場所へと向かう。

そして約束した場所には、彼女たちがいた。

1週間空けてただけなのに随分と久しぶりに感じる。

向こうも俺に気付いたのか、手を振ったりしていた。

 

そのなかで待ちきれないと言わんばかりに1人走ってきた。

 

「――ゆうくん!!」

 

「ほの――ごふっ!?」

 

その勢いは止まるということを知らず、穂乃果は俺の腹へと突撃してきた。

 

「ゆうくん、ゆうくん、ゆうくーん!!」

 

まるで子犬のように人目も憚らず甘えてくる穂乃果。

 

「ちょっ、穂乃果!?」

 

「なにしているんですか、穂乃果!」

 

「むぅ~…ずるいよ、穂乃果ちゃん!」

 

そんな穂乃果を咎めながら絵里と海未とことりは俺から穂乃果を引き剥がす。

 

「あたたた……」

 

「大丈夫? ゆうやくん?」

 

「ああ…なんとか……」

 

「まったく。落ち着きがないわね」

 

「本当よ。ただ遊弥を迎えるだけだっていうのに」

 

「そういうけどにこちゃんも真姫ちゃんもそわそわしてたよね?」

 

「そ、そんなことない! 変なこと言わないでよ、凛!」

 

「そうよ! この宇宙No.1アイドルのにこにーが、男のことでそわそわしないといけないのよ!」

 

「そう言ってるけど二人とも、遊弥くんが京都に行ってから上の空が多かったよね?」

 

「「希っ!!」」

 

姿だけじゃなく皆の様子を見ていると、やっぱり戻ってきたんだという実感が湧く。

 

 

 

「みんな――――ただいま」

 

 

 

『おかえりっ!!』

 

帰って来た俺に対して皆は笑顔でそう言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

 

――♪

 

 

「ん? ゆうくん、メッセージだよ?」

 

「ああ。ちょっと失礼」

 

その出迎えを遮るようにスマホが鳴ったのに気付き、俺は画面を開く。

 

「ぶっ――」

 

それを見た瞬間、俺は吹き出してしまった。

 

「どうしたの、ゆうくん?」

 

「あ、ちょっと待て!」

 

俺の反応を心配した穂乃果は俺のスマホを覗き込む。

結論からいうと送信者は義妹の愛華からだった。あいつから連絡がくるのはまだいい。だけど、送られてきた内容が問題だった。

 

 

 

――お兄ちゃんは私のものです。誰にも渡しませんから

 

 

 

宣戦布告のような文と共にあの日一緒に寝たときの写真が添えられていたのだ。

しかも横向いていて寝ている俺の唇にキスされている写真だ。

 

愛華のやつ、ほんとに俺の預かり知らぬところでこんなことしてやがったのか!? 冗談だと信じたかった!

 

 

――♪

 

続けざまに追加で誰かから送られてくるメッセージ。

 

 

 

――駄目だよ。遊ちゃんはもう私のものだよん?

 

 

 

送り主は言わずもがな。

そのメッセージの直後に送られてきたのは、駅で咲姉にキスされた写真だ。

あの義姉はいつ写真を撮ったんだ。

その疑問を解決するように、またまたメッセージが送られてくる。

 

 

――うまく撮れてるじゃろ? ぶいv(・∀・*)

 

 

あんのクソ爺ィィィィ――――!!!! 何してやがるんだぁぁぁぁぁ!!!!

しかもなに頑張って顔文字なんか使ってんだよ!!

 

 

「……」

 

そのメッセージと写真を覗き込んだ穂乃果が見るのも当然なわけで、彼女の身体は強張ったように動かなくなっていた。

だがそれも一瞬のことで、直後ものすごいスピードで俺のスマホを取り上げ操作し始める。

すると、皆のスマホからLANEの着信音が鳴った。

 

『……』

 

「まさか、穂乃果――!?」

 

嫌な予感がして穂乃果からスマホ取り戻して画面を見ると、案の定グループチャットに一連のやり取りが貼られていた。

 

「ゆーうーくーん?」

 

説明する間もなくギギギ、とまるで油の切れたロボットのようにゆっくりとこちらを睨む穂乃果。

いや、穂乃果だけでなく皆もギラリとこちらを睨んでいる。

俺は滝のように顔から、身体から冷や汗を流す。

 

――これは非常にまずい

 

早く退散せねば俺の未来は悲惨なことになるだろう。

 

「アッ! チョットヨウジヲオモイダシタ!」

 

何て不自然な言い方なのだろうかと自分でも思うがそんなことはどうでもいい。

 

「ソレジャマタナ、ミンナ!!」

 

そそくさと離脱を図る。

しかしそれを許す皆ではなく、穂乃果に物凄い力で腕を捕まれ、周りを皆に囲まれた。

 

「あ、あの……これは一体なんでしょう……?」

 

「わからない?」

 

満面の笑みで問いかけてくる穂乃果。だが、今の俺にはそれが恐怖にしか感じない。

 

「ゆうくん――ちょっとみんなでお話ししよっか?」

 

ギリギリ、と既に物凄い力で掴んでいたはずなのに、さらに穂乃果は掴む力を込めてきた。

 

「お、おお落ち着け皆? 話せば分かる。話せば分かるから、一先ずは落ち着いてくれ、な?」

 

「何を怖がってるのゆーくん?」

 

「大丈夫です。ただお話しするだけですから」

 

「海未の言う通りよ遊弥くん。だから――」

 

 

 

 

 

『正座』

 

 

 

 

 

9人息ピッタリに声を揃えて、俺に命令を下す。

 

「あの…ここ駅構内ど真ん中なんだけど――」

 

「遊弥くん? 3度目はないわよ――正座しなさい」

 

「はい」

 

絵里の警告に俺の釈明や抵抗の余地はなく、衆人環視のもと正座するのだった。

 

 

くそぅ! あいつらマジで覚えておけよ!!

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?

ではまた次回に
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