ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。
94話目? もうわかりません





ラブライブ、再び

 

 

 

 

 

「あ゛ぁ゛ーーや゛っと゛終わ゛った゛ぁ゛ーー」

 

パソコンの書類データを保存した俺は魔界の王も裸足で逃げ出すような声を上げ、身体を伸ばす。

一部の教師たちに押し付けられた仕事に加え、本来の生徒会業務も平行して行っていたから、すごい精神力が削られていた。

 

「結局、先週には終わらなかったな」

 

穂乃果たちと話したあの時から一週間が経っていた。でもまあ、本来ならもっと掛かるはずだから上出来な部類だろう。

 

「……ふぁ」

 

少し気を抜いた途端に、強烈な眠気が襲ってくる。

いかんいかん、この後は練習を見に行かないといけないというのに。

この一週間ぐらい、皆とのコミュニケーションもほとんどなかった。

朝も昼も放課後も、俺はずっと生徒会室に籠りっぱなしで仕事を片付けていたし、皆も俺の状況を理解してくれて集中させてくれる環境を作ってくれた。

そして少し延びてしまったが、ようやく今日の朝に目処が着くと言って、皆の練習に顔を出すと言った。それを破るわけにはいかない。だが――

 

「……あ、これ…やばい……」

 

秋に入ったというのに暖かい日差しが入り込む静かな室内。寝るのに快適な環境と予想以上に疲れが溜まっていたのか俺は抗うことが出来ず。

 

「…………」

 

心地良い微睡みに身を任せてしまい、そのまま眠りに落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Honoka side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆうくん、今日は練習に来るって言ってたのに、来なかったね…」

 

私は廊下を歩きながら小さくそう呟いた。

 

「仕方ありませんよ穂乃果。遊弥だって完璧ではないのですから」

 

「時間が掛かっちゃうものがあったのかも?」

 

「…うん、そうだよね。ごめん。早く伝えたい(・・・・・・)からって焦ってた」

 

私が考えなしに受けてしまったたくさんの仕事をゆうくん1人に押し付けた形になったのだから、そう言うのは自分勝手というものだ。

 

「それに、本当に私たちが出来ることなかったもんね……」

 

「「……」」

 

私の言葉に海未ちゃんとことりちゃんは歯噛みする。

ゆうくんの負担を減らそうと、私たちは彼がやっている仕事を分担しようと何度か提案した。

 

 

「じゃあ、穂乃果はこれの解答を作ってくれ。海未とことりはこの資料を元に来年度必要になる資料を作ってくれ」

 

 

何度も言ったおかげか、とうとう折れたゆうくんは私たちに資料とデータを渡してくれた。

 

ようやく頼りにしてくれた――そう嬉しく思いながらゆうくんが渡してきた物を見た瞬間、私たちは硬直した。

 

ゆうくんが私に頼んだのは大学受験用の各科目の問題とその解答の作成。

そして海未ちゃんとことりちゃんに頼んだのは、来年度音ノ木坂学院が必要になるであろう予算の草案だった。

 

 

「できないだろう?」

 

 

固まる私たちに、苦笑いするゆうくん。

決して馬鹿にしているわけじゃない。ただ分かって貰いたかっただけだということを感じた。

 

 

「意地悪して悪いな。でも、そういうことなんだ」

 

 

ゆうくんにそう言われてようやく私たちは理解した。決して私たちに気を使っていたわけじゃなかったのだと。

ゆうくんは最初から私たちには決してできないと理解していただけだった。分担とか、頼るとか、そういう単純な話じゃないことを分かっていた。

私たちは言葉が出なかった。なにも知らなさすぎたことに。自分達が的外れなことを言っていたことに。

 

 

「穂乃果たちが気に病むことはない。できないのが普通なんだ。だから穂乃果たちは今するべきことしてくれ」

 

 

最終的には、ゆうくんに気を使わせてしまった。

 

そんなことがあってから、私たちは自分達がやるべきことに集中することになった。それが頑張って仕事を片付けているゆうくんに対して私たちが出来る唯一のことだから、と。

それから何日が経って、今日ようやく仕事が終わるから練習に顔を出すという話をしてくれた。が、今日ゆうくんが来ることはなかった。

 

ことりちゃんの言う通り、何かで時間が掛かっているのか、それとも他の問題が出てしまったのか。

とにかく私たちは練習着から着替えた後、ゆうくんの様子を確認することにした。

 

「ゆうくん」

 

すっかり馴染んだ生徒会の扉を開けて室内を確認する。

そこにはゆうくんの姿はあった。しかし、

 

「……ゆうくん?」

 

「これは…」

 

「寝てる、のかな?」

 

机に伏せていたゆうくんから静かな寝息が聞こえる。ゆうくんのとなりにはUSBと完成させたと思われる大量の資料が積まれていた。

 

「ゆうくん」

 

揺さぶるけど、全く反応しない。結構眠りが深いようだ。

 

「起きないね…」

 

「まあ、無理もありません。ずっとこの量を一人でやっていたわけですし。それに、早く終わらせるために家に持って帰って夜遅くまで片付けていたみたいですから、疲れも溜まっていたのでしょう」

 

穏やかな顔で眠るゆうくんを優しく見守るように見つめる海未ちゃん。

 

「どうしよう? このままって訳にも」

 

「最終下校時刻まで待っても起きなかったら起こそっか。それまでは寝させてあげよう。それに――」

 

そう言ってことりちゃんはゆうくんの前髪を上げて顔を晒す。

 

「久しぶりに、ゆーくんの寝顔を堪能したくない?」

 

「「……」」

 

にっこりと笑いながら言ったことりちゃんの提案に、私と海未ちゃんも無言で笑みを深め、

 

「そうだね、一人で置いていくのもどうかと思うし」

 

「そうですね。本当に遊弥は仕方ないです」

 

適当な言い訳をしながら、私たちはゆうくんを囲むように椅子に座るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Yuya side――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――」

 

「――――」

 

「――――」

 

なにやら、話し声が聞こえる。なんの話をしているかは分からないが。誰かがそこにいるのは分かる。

 

「ん、んぅ……」

 

小さく開いた目にぼんやりと入ったのは大切な幼馴染みの姿(穂乃果たち)

 

どうして穂乃果たちがここにいる? 今は練習の時間じゃないのか?

 

練習…練習――――練習!?

 

「のわあああ――――!!!!」

 

意識が覚醒した俺は飛び上がる。

 

「うわっ、びっくりした!」

 

「大丈夫、ゆーくん!? なにか怖い夢でも見た!?」

 

「いきなり大きな声を上げないでください。驚くじゃないですか」

 

「わ、悪い――じゃなくて! 今何時だ!? 三人とも練習は!?」

 

「落ち着いてください。今は六時前、練習はもう終わってますよ」

 

海未の話を聞いて、俺は頭を抱える。完全にやらかしてしまった。

三人がここにいるのも、練習に来ない俺の様子を見にきたわけではなく、練習に来なかった俺の様子を見に来たのだろう。

 

「その…悪い……」

 

「ううん。ゆうくんが謝ることないよ。疲れとかもあったんだよね?」

 

「家に帰っても、夜遅くまで頑張ってたみたいだし」

 

「ここ数日、あまり寝ていないのでしょう?」

 

「……」

 

どうやら、全部バレていたみたいだ。

俺は嘆息する。なんか最近、格好すら付かなくなってきた。

いや、もう穂乃果たちの前では格好もなにもないのだろう。

 

「それで、どうして三人は帰ってないんだ?」

 

「ゆうくんの寝顔を堪能しようと思って」

 

「は?」

 

「可愛かったよゆーくんの寝顔――ね? 海未ちゃん?」

 

「はい。久しぶりに良いものが見れました」

 

「おいお前らなにしとんねん」

 

悪びれもせずそう言う三人に俺はついツッコミをいれてしまう。

 

「でも皆からも良い反応貰ってるよ?」

 

「は? ちょっとまて、それって――」

 

俺は自分のスマホを確認する。

するとLaneのグループチャットにはいくつもの新規通知。

恐る恐る中を見てみると、そこには俺の寝顔の写真が何枚かアップされていた。

そしてそこにはいくつもの反応が。

 

「おい貴様らなにしてくれとんねん」

 

「ゆうくんが寝ずに来てたら、こんなことにはならなかったよ?」

 

「うっ」

 

睨む俺に対して淡々と返してきた穂乃果に、俺は呻(うめ)く。

 

「ゆーくんが今日から練習に参加できるって聞いて、皆楽しみにしてたのになぁ…」

 

「ふぐっ!」

 

ことりの追撃に俺は胸が苦しくなってくる。

 

「遊弥が来なくて、みんな落ち込んでいましたよ」

 

「げはぁ!」

 

最後、海未の言葉に止めを刺された俺は机に突っ伏した。

そうだ。俺が行かなかったからこうなった。なら寝顔の一つや二つぐらい皆にばら蒔かれても――

 

「って、良いわけあるかい。罪悪感を植えて納得させようとすな」

 

「「「チッ……」」」

 

舌打ちした? ねぇ、今あからさまに舌打ちしたよね?

ジト目で三人に視線を送っていると、生徒会室の扉が勢い良く開けられる。

 

「おい、お前たち。もう最終下校時間過ぎてるぞ」

 

巡回にきた担任の山田先生に注意された俺たちは急いで荷物をまとめて学校を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本当のところ何しにきたんだ?」

 

帰り道の最中、三人と肩を並べて歩く俺は問いかける。

 

「俺の様子を見にきたっていうのは間違いないだろうけど、それだけじゃなかったんだろう?」

 

「…流石だね、ゆうくん」

 

「流石っていうが穂乃果。何かあるっていうのは前から気付いてたぞ?」

 

えっ? と驚いた顔をする穂乃果。そんな穂乃果に俺は少し呆れたような視線を送ってしまう。

 

「なんか先週の途中から悩む素振りをしてたと思ったら、今週に入ってからはそわそわしてなにか言いたそうにしてたし。妙に落ち着きがなかった――いや、落ち着きがないのはいつものことだけど」

 

「ちょ、一言余計だよ!」

 

「流石です遊弥。穂乃果のことを見抜いていましたね、落ち着きがないのも含めて」

 

「海未ちゃんっ!? ――ことりちゃん! 私、そんな落ち着きなくないよねっ? ねっ!?」

 

「流石わたしたちの幼馴染みだね!」

 

「ことりちゃんまで……!?」

 

味方が一人も居ない穂乃果はガックリと肩を落とす。

 

「まあ話が逸れたが俺が生徒会室に籠ってる間、なんかゴタゴタがあったんだろう?」

 

「う~……そうだよ……ちょっと色々と揉め事があったの」

 

不服そうに顔を背けながら穂乃果はそう呟いた。

 

「穂乃果と誰が揉めたんだ?」

 

「私は確定なの!? ゆうくんの中で私ってどんな扱いなの!?」

 

「良くも悪くもトラブルメーカー。揉めた片割れが穂乃果じゃないっていうなら素直に謝るが?」

 

「…………間違ってない。私とにこちゃん」

 

俺の予測を裏切らない。それが穂乃果クオリティーだ。

 

「で? 何が原因なんだ?」

 

「ラブライブ」

 

「は?」

 

そこで予想もしてない単語に俺は短く返してしまった。

 

「だからラブライブだよ。もう一度開催されることになったの」

 

話が繋がらん。ラブライブの開催でどうして二人が揉めることになるんだ? にこはもちろんのこと穂乃果も――

そこまで考えた辺りで俺はある可能性に気付いた。それならば辻馬も合う。

 

「なるほど。穂乃果、お前――参加しなくても良いんじゃないかって言ったんだろ?」

 

「……凄いです」

 

「良くそこまで分かったね、ゆーくん」

 

「……」

 

感嘆の声をあげる海未とことり、そして気まずそうにしている穂乃果が俺の考えが正しいことを証明した。

 

「前科――と言ったら言葉は悪いが、色々あったからな。それをまだ引き摺ってる、いや、引き摺ってるというか怖じ気づいたんだろ?」

 

「……たまに、ゆうくんがエスパーに思えるよ。希ちゃんのようにスピリチュアルパワーが使えるの?」

 

「そんなへんてこりんな力は持ってない」

 

「へんてこりんって……希に怒られますよ」

 

本当のことだからいいんだよ。

 

「俺は少しだけ頭が回るだけだ。過去と現在にそのときの皆の様子、言動、あとは性格とかそういった情報から筋道を組み立ていっただけ。慣れれば誰でも出来るさ」

 

「たぶん誰でもは無理な気がするよ、ゆーくん」

 

「俺のことは置いておいて――それで? 結局どうなったんだ?」

 

「えっと、その…にこちゃんから勝負を持ち込まれて、色々あって、参加することになり、ました。はい」

 

「穂乃果はそれで納得してるのか?」

 

「うん。参加するのにはもう迷いはないよ」

 

それでも微妙な笑顔しか見せないのは複雑な感情を抱いてるのだろう。そこに関しては後は自分で消化してもらう他ない。

 

「皆が納得してるのなら俺から言うことはなにもない。まあ、頑張れ」

 

「あっ…えっと……」

 

「どうした?」

 

「その、ゆうくんは……」

 

不安そうにしながら言葉を切った穂乃果。その続きに何を言いたかったのか俺は理解する。

 

「邪魔だと思われてないのなら、手伝うよ」

 

「その言い方は意地悪だよぉ!」

 

「意地悪したいお年頃なんだ」

 

そういえば有耶無耶になっていたことを今の今まで忘れてた。

穂乃果が掘り返したことだから別良いだろう。

 

「あとはにこの了承を得てからだな」

 

「遊弥、悪い顔になってます」

 

「にこちゃん、大丈夫かな……?」

 

「冗談だ――あのとき、穂乃果たちは俺のことメンバーって、仲間だって言ってくれた。そして今も俺はこうして一緒にいる。ならそれ以上はいいだろ」

 

有耶無耶にするのは良くないかもしれないが、お互いの気持ちは伝わってるのだ。わざわざ掘り返すことでもないだろう。

 

「微力ながら、手伝うよ」

 

「ゆうくん!」

 

「遊弥!」

 

「ゆーくん!」

 

笑顔でそう言う俺に、三人は突然飛び付いてきた。

 

「ちょっ、おわっ!!?」

 

「ありがとう、ゆうくん!!」

 

「ありがとうございますっ、遊弥っ!」

 

「良かったよぉ! ありがとね、ゆーくん!!」

 

ありがとう、と何度も口にしながらギュッと抱きつく三人に俺はあやしながらこう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

女の子の感触ってやべぇな、と。

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回にお会いしましょう

さようならー


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