お久しぶりです。
久しぶりに土日が休みでした。
その理由は、ただ体調を崩しただけなんですけどねw
では第何話目か忘れた話目、どうぞ
真姫の別荘に着いてそれぞれ荷物を整理した後、一休憩入れてから俺たちは動き出した。
海未、ことり、真姫の三人は別荘に残ってそれぞれ作詞と衣装と作曲を、ほかの皆は外で動きの確認とトレーニングという流れになった。
俺は別荘に残った三人には何か手伝いが必要になったら遠慮なく連絡しろと伝えて、トレーニング組のほうを見ていた。
「――それじゃあ。休憩にしましょう」
「ふぁー!」
絵里の一言に、穂乃果は背中から倒れ込む。
「はぁ、気持ちいいねぇ」
「やっぱり山はスピリチュアルパワー全開やー…」
穂乃果につられて、凛や希も寝転がる。
「眠くなっちゃうね」
確かに。普段都市の喧騒に晒されているせいか、こういった自然に囲まれた静かな場所にいると不思議と眠気がやってくる。
ましてや、穂乃果たちは練習の疲労もあるからなおさらだろう。しかし――
「「「zzz……」」」
「寝てるっ!?」
驚くほどの速さで眠った三人に花陽も声を上げる。
こんな即落ちするほどハードなことはしていないはずだ。
「ちょっと、休憩は五分よ?」
「わかってるわよ」
「まあ、三人も狸寝入りこいているだけだろう」
ガチで寝ているようだったら叩き起こすだけだし。
俺も自然に身を任せるように横になる。
「――あれっ?」
「どうしたー、にこー?」
「いや、私のリストバンドが……って、ああっ!」
にこが叫んだほうをちらりと見るとリスがにこのリストバンドをおもちゃにしていた。
「私のリストバンド!?」
「可愛いにゃー!」
「ホントね~♪ って、そうじゃなくて!!」
「本当に、にこには芸人の才があるな」
芸人のノリツッコミを魅せるにこに俺は脱帽する。てか、そんな技術身に着けてどうするんだろうか。
「返しなさーい!!」
声を上げてリスを追いかけ始める。
「ああ、にこちゃーん!」
「無茶はするなよー?」
そのあとをついていった凛にそれだけを伝えておく。
「大丈夫かしら、あの二人」
心配そうに呟く絵里は俺に視線を向けてくる。
「ねえ、遊弥くん…」
「……わかったよ」
体を起こして、歩きながら二人の後を追う。
しかし、しばらく歩いても二人の姿が見つからない。
あの二人は一体どこまで行ったのやら。
「おーい、にこー、凛―!」
俺は大きく声を上げて、二人の反応が返ってこないか確認する。
『うわあああああ――!!』
いやな叫び声が俺の耳へと返ってきた。
「っ、あの二馬鹿ども!」
悪態をつきながら、俺は声のほうへと全力で走り出す。
するとすぐに急勾配の雑木林が見え、そこにはあの二人のものと思われる足跡があった。
俺は躊躇うことなく雑木林の中へと突入して、斜面を駆け降りていく。
『誰か止めてー!!』
叫びとともに、二人の姿が見えた。しかし、二人が走るその先は――何もない。
崖か、川か、どうなっているかはわからない。だが下手したら怪我どころじゃ済まないことになる。
「にこ、凛っ! 転んででもいいから止まれ!!」
「無理無理無理ー!!」
「遊くん、助けてぇ!」
「だあああ! ほんとに、お前らっ!!」
そう叫びながら全身の筋力をフルに稼働して、さらに加速させる。
「にこ、凛っ!!」
何とか追いついた俺は二人の腕をつかみ、後ろへと投げた。
しかしその直後に俺が感じたのは浮遊感。
「遊弥っ!」
「遊くん!」
最後に見えたのは、へたり込んでいる二人の姿と真下に流れる川だった。
「――こんの馬鹿どもっ!!」
――ゴツンッ
「いったーい!!」
――ガツンッ
「うにゃー!!」
なんとか生還を果たし、別荘に戻った俺はにこと凛に拳骨を落とした。
「何するのよ~!」
「痛いよ、遊くん~!」
頭を押さえて涙目で抗議してくる二人に俺は青筋を立てる。
「言わないとわからないのか、お前たち?」
「本当よ。下が川になってて遊弥くんが無事だったからよかったけど」
「怪我じゃ済まなかったかもしれんかったんよ?」
「「ごめんなさい……」」
咎められてしょんぼりする二人に俺は息を吐く。
「まあ、二人が無事でよかった」
「遊くんのおかげだよ。助けてくれてありがとにゃ、遊くん」
「本当にごめん。ありがとう、遊弥」
「次からは無茶するなよ――へっくし!」
着替えたとはいえ川に落ちてから長い間ずぶ濡れの状態でいたせいか、思ったよりも体が冷えていたみたいでくしゃみが出る。
「はい、ゆうやくん。お茶用意しました」
「ありがとう、花陽」
ちょうどいいタイミングに花陽がお茶を差し出してくれた。
ああ、大天使ハナヨエルだ。身も心も温まるよ。
「皆の分も用意したよ」
そう言って、花陽は皆にお茶を配っていく。
「花陽、海未たちにも持って行ってあげられるか?」
「あ、それなら私が持っていくよ!」
穂乃果が立ち上がり、二階にいる二人分のお茶を持って上がっていく。
「……あれ? そういえば真姫ちゃんは?」
花陽の疑問に俺たちも気づいた。
この広間にはグランドピアノが置いてあり、そこで真姫も作曲作業をしていたはずだ。
だけど今彼女の姿は見えない。
「どこに行ったんだ?」
そんな風に疑問に思っていると、さっき二人にお茶を持って行った穂乃果が慌てたように下りてきた。
「ゆうくん、みんなっ! 大変だよ!」
「穂乃果? どうしたんだ?」
「外! 外見て!!」
穂乃果の指摘に俺たちは窓から外を眺める。そこには――
「はぁ…」
「はぁ~…」
「はぁ……」
はぁ、とそろって息を吐きながら体育座りをしている三人の姿があるのだった。
「あー、なるほどな。つまり――――スランプってことか?」
とりあえず、三人を連れ戻して事情を聴いた俺はそう結論付けた。
別に責めているわけじゃないのだが、三人は肩を窄めている。
「今までよりも強いプレッシャーがかかっているということ?」
「はい。気にしないようにはしているのですが…」
「うまくいかなくて、予選敗退になっちゃったらどうしようと思うと」
それはそれで一つの結果で、誰のせいというわけでもないのだけれど。感じてしまうものはしょうがないだろう。
「ま、まあ! 私はそんなの関係なく、進んでいたけどねっ!」
あんな肩を落としてため息吐いていたくせに、強がりだけは欠かさない真姫には脱帽する。が、
「そう言っているけど、譜面は真っ白にゃ!」
「ちょっ! 勝手に見ないでよ!!」
そんなメッキはすぐに剥がれ落ちるというもの。真姫も明らかに重責を感じてしまっているのだろう。
「「「……」」」
申し訳なさそうに俯いている三人。
今までこの三人がそれぞれしっかりと仕上げてくれていたから、気にすることはなかったが。
「確かに、任せきりっていうのもよくないかも……」
「そうだな」
今更ながら考えてみれば、普通の練習に加えてこの作業なのだから、明らかに負担が偏っているのだ。
「そうね。責任が大きくなってるから、負担も掛かっているだろうし」
「じゃあ、みんなで話し合いながら決めていく?」
「それでいいんじゃないかしら、せっかく九人もいるんだし」
「うーん……」
「なんか引っかかっている感じね、遊弥くん?」
「ちなみに、現時点でのにこの案は?」
絵里に指摘されて、微妙な予感がしていた俺はにこに問う。
「えっ? それはやっぱり、にこに―にこちゃんに曲をつけて――」
……だと思ったよ。
微妙な顔している俺が考えていたことは希たちにも伝わったようだ。
「なるほどね。九人で話してたらいつまでも決まらない可能性があるっちゅうことやね」
「……それもそうね」
苦笑いして同意する絵里。
「だから九人で話し合うんじゃなくて、数人に分けないか?」
「どういうことよ?」
自分の考えが却下されて面白くないのか、少し不機嫌な顔で問いかけてくるにこ。
「つまりはことりを中心とした衣装を考えるチーム、海未を中心として歌詞を考えるチーム、真姫を中心として曲を考えるチーム――それぞれ三人ずつに分かれて決めていくんだ。それならある程度考えもまとまりやすいし、いいんじゃないか?」
俺の提案に絵里はハッとしたように手を合わせた。
「それ、ナイスアイデアよ、遊弥くん!」
「――決まったようね」
それぞれ、同じ色の割りばしを持った人でグループを作る。
「ことり中心とした穂乃果、花陽の衣装する班」
「海未を中心とした、希、凛の歌詞する班」
「そして真姫を中心とした私とにこの歌詞する班――この三班でいきましょう」
「ゆうくんはどうするの?」
「俺は遊撃隊としてそれぞれの様子を見に行くよ。みんな一つ、これを持って行ってくれ」
「なにこれ?」
「GPS搭載のキーホルダーだ。普段は携帯とか鍵とか財布とか、貴重品につけてもしなくしたときに探せるようにしているんだけど、今日は三班でそれぞれ分かれるみたいだからな。様子見できるように位置だけは把握させてもらうよ」
「位置だけ把握するって言うのだけ聞くと、ストーカーみたいね」
「これを人に持たせれば、何かトラブルが起きたときに緊急で紐づけしている携帯に信号を送る機能付いているんだが……にこが送っても無視するから」
「あんたたち、ちゃんと持っていなさいよ! 取り返しのつかないことになった後じゃ遅いんだから!!」
手のひらくるりんするにこに、皆が苦笑いする。だが、そういう危機感を持ってもらったほうがいい。町が近いとはいえ、少し距離のある山の中なのだから。
それについさっきにこは俺に助けられたばかりだ。その重要性は改めて認識してくれたと思う。
「それじゃあ――ユニット作戦で、曲作り頑張ろー!」
『おー!!』
「おー…」
遅れながらも、それでも声を上げるようになった真姫に微笑みを向けながら、俺も手を上にあげるのだった。
いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に